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『白銀の墟 玄の月〈3.4〉』の感想を好き勝手に語る【小野不由美】


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──過去が現在を作る。
ならば、いまが未来を作るのだ──たとえ繋がりは見えなくても。

(引用:白銀の墟 玄の月 P417/小野不由美)

十二国記の最新刊、『白銀の墟 玄の月〈3.4〉』の感想を語っていく。
〈1.2〉の感想はコチラからどうぞ。



目次

感想

『魔性の子』から始まった泰麒の物語がやっと一段落したな…と。
1991年に『魔性の子』が発売されて泰麒の冒険が始まり、2019年『白銀の墟 玄の月』で一つの区切りを迎えた。28年かかってやっとここまできたか…。


私が十二国記シリーズと出会ったのは、ほんの一年前なので、ほぼシリーズを駆け抜けて読むことができた。それでさえ、『白銀の墟 玄の月』の発売が発表されてから刊行されるまで待ちきれない思いだった。


『魔性の子』を発売当初から読んで十二国記シリーズを追い続けてる方は、28年越しのこの展開に胸が熱くならないなんてことがあるだろうか、いやない。

──『白銀の墟 玄の月』を読み切って

過去に積み上げた小さな石が、知らぬ間に集まって大きな結果をもたらしてくれた。
李斎はこのところ、そんなふうに感じることが多い。
──過去が現在を作る。
ならば、いまが未来を作るのだ──たとえ繋がりは見えなくても。

(引用:白銀の墟 玄の月 P417/小野不由美)

この一文にすべてが詰まっているなぁと感じた。
『黄昏の岸 暁の空』の各国の協力による泰麒の救出から始まり、『白銀の墟 玄の月』では、数えきれない人物が驍宗の無事を…そして復活を祈り、信じていた結果の賜物が今回のラストに繋がっていた。


驍宗と泰麒がメインである物語には違いないが、今作で思ったのは戴国に生きる"民"たちの行動が胸を打つ点。

その供物は、正しく送りてから受け手へと辿り着いた。深い思いによって流されるささやかなそれが、まさしく王を支えている。
──送ったほうも、受け取ったほうも、それを知らない。

(引用:白銀の墟 玄の月〈3〉 P336/小野不由美)


もうこの部分読んで、うわぁ!!って声がでた。
川に食べ物を流し続けた親子…最初は驍宗が受け取ることがわかっていて流しているのかと思ってたけど、そうではなくてただ純粋な感謝の想いからやっていた行為だとわかったときの衝撃たるや…。自らの貧しい食い扶持を削ってのことだしね。


すべては過去の驍宗が積み上げた実績と、彼の人徳だと思うとこみ上げてくるものがある。


その他にも無償で兵を養い匿っていたり、ギリギリの生活の中でもしぶとく生きる戴国の民の強さと執念を感じた。

──泰麒

先程も少し触れたが、やっと…やっと泰麒に安息が訪れたようで嬉しい。


泰麒に関しては、もう語り尽くせない…。大胆不敵に阿選の元へ乗り込んだり、幽閉されていた正頼と対面したときは、今まで心に押し留めていた感情が爆発してしまった様子に涙しそうになったり…。あとは何より泰麒の「先生…」の呟き…!ここで『魔性の子』からの繫がりがくるのかよ!最高かよ!


物語の中では蓬莱から戻ってきてから、そこまで時間がたってなかったなぁと思い出して、ここでも過去作と繋がっているんだなぁと感慨深い思いになった。


再読するのは勇気がいるけど『魔性の子』を読みたくなった。今読んだら、また違う感情が湧いてきそう。


蓬莱での日々があったからこそ、他の麒麟には備わり得ない強さや覚悟があるけど、結果的にそのきっかけになったのが阿選が泰麒を襲ったからってのも何だが皮肉な気がする。阿選からしたら、まさに自分で撒いた種なのかな。

──驍宗

生きててよかった…驍宗様…!


部下たちや轍囲の民をはじめとして、どれだけ慕われているんだよ驍宗様…!2巻の終わりで絶望しかけたけど、ホント生きててよかった…。


登場してからの安心感が凄まじい。李斎をはじめとする捜索組も手探りで大変だっただろうけど、何年間も地中でたった一人って……!あげくの果てには自力で脱出しちゃう化物王。


泰麒も相当化物のだけど、驍宗はそれを超える化物だよなぁ…。これからの戴国は安泰だろ。過去に例を見ない経歴の泰麒と、カリスマ性マックスの驍宗。この二人なら瀕死の戴国をしっかりとした国に立て直してくれると思う。


──阿選

『白銀の墟 玄の月』の感想を語る上で阿選は外せない。1.2読んだ段階では謎でしかなかった阿選の考えや目的だったけど、3.4で語られた彼の考えが明かされると……複雑な気持ちになる。


かつては驍宗と肩を並べていたはずの阿選の変わりようが、読んでて苦しかった。泰麒たちからしたら敵で、過去にした事も許せないんだけど、知れば知るほど何故か憎めなくなっていった。


それが何故かというと、驍宗と比べるとあまりに人間らしさ…というか人間くささがある人物だからなのかな。驍宗は天才型の完璧人間で、阿選は努力型の普通の人間ってイメージ。


阿選の変わりよう…堕ちていく姿は見ていて辛いものがあるけど、最初は些細な事から、坂道を転がるように悪い方へ悪い方へといってしまう様子は、一度道を外れたら戻るのは難しいって教訓だよな…。


──最後に

1.2巻を読んでから3.4巻が発売されるまでの1ヶ月がホント辛かった…。

『白銀の墟 玄の月』の次には誰の物語がくるのかな?戴国の立直し編も読みたいけど、個人的にはの陽子が好きだから慶国の物語が読みたいところ…!


【オススメ】



『図書館の魔女 烏の伝言』の全登場人物をまとめた【高田大介】

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『図書館の魔女 烏の伝言〈上.下〉』に登場人物する、名前が明らかになっている全登場人物についてまとめた。


これから刊行が期待される『霆ける塔』の復習にでもどうぞ。またこんな人物いたっけ?とシリーズを思い出しながら楽しんでもらえれば幸いである。

注意事項

  • この記事にはネタバレを含んでいる。
  • 前作『図書館の魔女』にも登場する人物は、追加の情報のみ記載している。
  • 一部のキャラには考察を添えている。


『図書館の魔女〈1〜4〉』の登場人物紹介はコチラからどうぞ。

──剛力衆

──エゴン

・剛力の一人、鳥飼。カラスやカササギを従える(上.P18、上.P66)
・長身痩躯、線の細いが肩幅の広い青年で短く刈った髪は、はげあがったように広い額をさらし、落ち窪んだ目は大きく盛り上がる眉の陰に暗く隠されている。(上.P17)
・左の顔面が傷痍に覆われており、醜く気味の悪い面構え。(上.P18)
・自分自身で仕込んだカラスだけでなく、出先で会ったカラスも手先に遣えることができる。(上.P24)
・言葉を話すことができず、発言能力は2.3歳児と同程度(上.P25)
・南方系の顔立ち、南の方の生まれ(上.P38、379)
・焼けた庄に斥候にいった3人うちの1人
・障害で言葉を理解する事はできるが、言葉を正しく配列することができない(下.P305)
・子供の頃に港の事故が原因で障害を負う。またその障害が原因で生まれの部族を離れ、スタネアという島の寺院に身を置くことになる。(上.P387、下.P303)

──ゴイ

・剛力衆の頭、罠師の老人
・獣の残す僅かな手がかりを見抜く眼力をもつ。(上.P31)
・呼ばわり方に訛りがある(エゴン→エーゴン、ワカン→ワーカンなど)

──ワカン

・剛力の一人、若衆のまとめ役
・小男であるが胸板が厚く、手足の根本が太い、屈強な体格で、総髪を後ろで結っている。都風の顔立ち(上.P29、上.P34)
・焼けた庄に斥候にいった3人うちの1人
・頭がキレる(下.P149)
・人徳があり、仁義に厚く、慕われている人物(下.329)
・マツリカとのやり取りが個人的にすき

──エノク

・剛力の一人、寡黙な偉丈夫
・ずんぐりした全身鋼のような男で、えらのはった顎、猪首で無口(上.P34)
・剛力一のちから持ち

──カラン

・剛力の一人、エノクの弟
・エノクに次ぐちから持ち

──ナオー

・剛力の一人、島嶼系の系統
・剛力には北方系が多いが、ナオーは南方系の混血もつ。その特徴をいかして港に潜伏していた。(上.P38)
・元船乗りで、港の生まれ(上.P46、下.152)
・剛力としては新米(上.P66)
・焼けた庄に斥候にいった3人うちの1人

──テジン

・剛力の一人、港に潜伏していた連絡員
・残切り頭の小柄な若者(上.P177)
・ニザマ(ミツクビ)からの間者。廓の動きを探るように手配された(下.158.)
・猿に殺される(下.41)

──ハァウ

・エゴンが仕込んだカラス
・ハシボソガラス(上.P25)
・ハシボソガラスにしては、やや額が張っていて、嘴の線にも丸みがある。そして好奇心がありながら安全と危険を正確無比に測れる(上.P142)
・物怖じしない性格と危機意識の高さを持つ(上.P142)

──ニザマ

──ゲンマ

・近衛隊の衛士長。
・酒に盛られた毒で体の自由が奪われるが、ツォユとタイシチの助けで刺客から逃れる。

──ツォユ

・近衛隊の一人
・体格が大きく、逆立った赤い髪をもつ。そのため剛力たちからは『赤髪』と呼ばれる(上.P21)
・タイシチからは大哥〈あにき〉と慕われている。(上.P33)
・義侠心に富み部下への配慮が篤い(上.P255)
・ゲンマの甥(上.P256)

──タイシチ

・近衛隊の一人、古くからのツォユの部下
・ツォユからは、人目のないところでは小チ〈シャオ〉と呼ばれていたが、いつしか鼠も剛力もまねして小チと呼ぶようになる。小〈シャオ〉は弟分に呼びかける物言いである。(上.P119)

──ルゥスゥ

・近衛隊の一人
・細面で吊りあがった細い目から、剛力からは陰で「狐」と呼ばれていた(上.P123)
・下戸(上.P251)
・蔵に監禁されたが、カロイの進言で救出される。

──ガゥイ

・近衛の一人
・初登場は、残念ながら猿〈マシラ〉に首を切られた後。南無(上.P264)

──マォリゥ

・近衛の一人
・番頭に頼まれた見回りでガゥイと組んでいた人物。ガゥイと同じく初登場時には猿〈マシラ〉にやられていた。


──ユシャッバ

・ニザマ中原南部の地方官吏、巡撫兼都御史の弟姫(上.P34)
・黒髪を左右に玉に結い、淡い翡翠の正絹〈しょうねん〉の襦に裙〈もすそ〉は交領と腰帯が共布で、薄縁の地に金糸銀糸の刺繍が散っている。(上.P121)
・鼻も口も顎も小作りで引き締まり、伏せた目元は涼やかで切れ長に濃いまつ毛が伏せている。(上.P121)
・ロッロアから託された大粒の真珠の耳飾りをつけている(上.P146、下.346)
・温室育ちのお姫さまではなく、危機を察する目耳をもっている。(上.P343)
・ユシャッバとは南方の言葉で『翡翠』の意(下.346)

──ロッロア

・ユシャッバの姉(下.77)
・薄く浅葱がかった真珠の簪をしていた(下.79)
・廓にいたが、廓の陰謀に巻き込まれ売り飛ばされてしまう(下.79)
・ロッロアとは、南方の言葉で『真珠』の意(下.346)

──カロイ

・ヴァーシャ
・やや薄い髪の色に、少しやつれた彫りの深い面立ち(上.P178)
・隻腕で義手をつけられる。義手の先は三嘴の鉤爪がついている(上.P184、下.P25、下.P38)

──杣の里

──黒〈はく〉

・漆黒の肌の少年で、瀟洒な出で立ち(上.P95、上.P105)
・黒〈はく〉とは、鼠たちが勝手に名付けたのは名前で、本名は『アブダライム』(上.P319、下.434)
・薬師(上.P360)
・一ノ谷から黒の郷里の南大陸へ帰る(予定)(下.432)
・廓が本当に追っていた人物(焼けた庄の生き残りだから)(下.408.)

──白い少年

・毛深い白い肌で、黒〈はく〉と共に埋められていた少年(上.P95)
・息を吹き返すことはなく死んでしまう(上.P103)
・黒〈はく〉の友達(?)と推測されているが本当の事は定かではない(上.P362)

──犬

・焼かれた庄で出会った黒い犬
・ワカンは犬〈せった〉と呼んでいた(上.P94)
・白い尾を持つ(上.P320)

──廓

──遣手

・廓を取り仕切る御上
・隻腕の売国奴
・深紅の絹地に花々の刺繍、ぎらぎらと金糸が散った帯で派手な恰好(上.P154)
・太り肉で首まで白塗りの顔、分厚い唇に紅をさした丸顔。(上.P154)
・ニザマ宦官中常侍尚書令閣下、隻腕の左僕射メテ(下.360、下.P373)

──大番頭

・ニザマから派遣されてきた上役(下.81)
・メテの腹心の部下で愛人(下.P386-387)

──飯盛り女

・廓の奉公人、若い娘
・ユシャッバの監視。文字通り主にユシャッバの飯の世話をしている(上.P418)

──床廻し

・廓の奉公人、閨房周りの世話

──掛廻り

・廓の奉公人、渉外と雑用

──猿〈ましら〉

・廓の鏢客
・上背のある丈夫で六尺半(約195cm)ほどの長身、面長の陰鬱な顔で、総髪を無造作に後ろに結って垂らしている。(上.P186、421)
・腕が長い(上.P419)
・服装は闇に紛れる黒装束(下.123)
・細い弦〈糸〉を使って首をはねていた(下.332)

──鼠

──トゥアン

・鼠の頭
・少女のような声をした体の小さい少年、小柄で童顔だが眉毛が濃く意志の強そうな眼差し(上.P212-213)
・焼き討ちで母親を失った。そのときに背中と肩に大きな火傷を負う(上.P323-324)

──チャク

・鼠の一人、鼠のなかでは一番大柄な年長組の鼠(上.P291)
・親に虐待されていて、兄貴と片耳を失う。(上.P326)

──ヒュイ

・鼠の一人
・『どぅだっかねぇ』が口癖
・天邪鬼(上.P311)
・猿の正体を追っていたが捕まり蔵に監禁される(下.P33)

──ファン

・鼠の一人、年少組
・女物とみえる両側に垂れのついた毛編み帽子をかぶっている(上.P207)
・体が小さくすばしっこい
・剛力に憧れがあり、弟子入りする気持ちを抱く(上.P308、下.394)

──オーリン

・鼠の一人、長髪の少年(上.P231)

──ダオ

・鼠の一人、年少組、最年少(上.P317)
・木の枝をしゃぶっている少年(上.P236)

──ジェン

・鼠の一人、年少組(上.P317)
・元住んでいた村は焼かれてしまった(上.P323)
・黒〈はく〉の言いたい事を一番正しく捉えている(下.P394)


──一ノ谷

──マツリカ

・六角堂の地下に隠されていた経文を保護するために訪れていた(下.P279)
・犬が苦手(下.P289)

──オルハン

・図書館付きの衛兵

──アダン

・図書館付きの衛兵

──アキーム

・図書館付きの衛兵

──ハルカゼ

・司書

──その他

──牛目〈ぐもく〉

・浅黒い顔で面長の頬には皺が縦に深く刻まれ、黒髪を後ろに結って長く垂らしている。上背はアダンたち衛兵よりも高い。(下.P377)
・鈍い灰色の長作務衣、これはニザマの扮装。裾を絞った裸足の足先に粗末な草履。(下.P377)
・藍緑〈らんりょく〉の瞳で白眼が見えない。眼球が著しく大きいのか開いた瞼から眼球がせり出しているように見える。(下.380)
・キリヒトの立ち姿と同じ。(下.P377-378)
・扉に音を忍ばせて近づいたアダンめがけて正確に刀を振ってきている様子から、微かな物音から周りの状況を察知しているとわかる。(下.P376)
・カロイのほうを視認していることから、目は悪そうだが見えないわけではなさそう(下.P380)
・先天緑内障という病気があるが、別名を牛眼〈ぎゅうがん〉という。角膜や強膜が伸展し眼球全体が大きくなり牛の眼のようであるところから,牛眼と呼ばれる。(下.P380)の描写から、牛目〈ぐもく〉がこの病気であり、その見た目からこのような名前がついたと考えられる。
・ニザマの生え抜き、ミツクビの子飼い(下.P382)

──最後に

烏の伝言の登場人物は、ほぼ巻頭の人物紹介で書かれていた。書かれていなかったのは『牛目』と『ロッロア』くらいだろうか。


やはり気になるのは、キリヒトと牛目の関係について。身体的特徴や立ち振る舞いが似てる点、なにより音での判断能力を見ると牛目も"キリヒト"となにかしら関係があると考えるのが普通だろう。


"キリヒト"が出る家系があると前作で書かれていたので、牛目がその出身で実はキリヒトの親なのか?とも考えられるが、それくらいは誰でも考えつく事だろうし安直すぎるかな…とは思う。何はともあれ『霆ける塔』に期待である。



【関連記事】




『図書館の魔女』の登場人物を全員まとめて紹介する【高田大介】

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『図書館の魔女〈1〜4〉』に登場人物する、名前が明らかになっている全登場人物についてまとめた。


これから刊行が期待される『霆ける塔』の復習にでもどうぞ。またこんな人物いたっけ?とシリーズを思い出しながら楽しんでもらえれば幸いである。

注意事項

  • この記事にはネタバレを含んでいる。
  • 『図書館の魔女 烏の伝言』の情報は含んでいない。
  • 一部のキャラには考察を添えている。
  • 主に登場した順番に紹介している。

『烏の伝言』の登場人物紹介はコチラから

それでは早速どうぞ。

──キリヒト

・マツリカの手話通訳兼護衛。
・人より鋭い耳と目を持つ、また状況把握の素早さ、勘のよさを兼ね備えている。
・1巻でロワン曰く12〜13歳の少年という描写がある。
・"キリヒト"の名前は先代から受け継いだもの。一子相伝で名が譲られる。
・キリヒト=切人?、アカリ=灯?
・"キリヒト"になれるものが出る家系がある。


──先代

・キリヒトの師であり、先代の”キリヒト”。本名は不明。
・キリヒトの父とされているが、キリヒトとは歳が離れすぎていることからマツリカたちは疑いの目を持っている。謎多き人物の一人。

──黒石〈くろいし〉

・キリヒトが住む鍛冶の里で、鍛冶場の二番槌を務める青年。
・キリヒトに餞別で包丁を渡した人物。
・1巻P17から登場。

──犬尾〈いぬお〉

・鍛冶の里の鍛冶場で働く青年(少年?)。
・名前だけの登場。
・1巻P20で登場。

──親方

・本名不明の鍛冶の里の親方。
・親方と書いて、ルビは「むらげ」
・むらげとは

たたら集団の長を意味した言葉とされている。

(引用:村下(むらげ)とは - コトバンク)
・1巻P21で登場。

・「キリヒトはすぐには戻ってこない。戻ってきた例はない。」

(引用:図書館の魔女 P22/高田大介)
と、意味深な台詞を残している。何か事情を知っているのか?

──ロワン

・王宮の高官、以前は図書館付きだった。
・目元や鼻筋に鋭角の線のある白い肌に髭の濃い、一ノ谷の典型的な顔立ちの四十歳くらいの男。
・1巻P27から登場
・先代"キリヒト"をタイキに紹介した。
・ヴァーシャールヘイは「参事官殿」と呼んでいた。

──タイキ

・先代の「高い塔の魔法使い」
・マツリカの祖父にあたる。
・1巻P29から登場
・重要人物ではあるが直接物語に登場したことはまだない。

──マツリカ

・当代の図書館の番人で「図書館の魔女」と呼ばれる少女。
・口をきくことができない。いつから話せないのか、何故話せないかは明らかになってない。
・肩まである黒い巻毛をもち「お嬢様」だとか「姫様」と呼ばれるのを嫌う。
・甘党。
・酒好き。
・朝が弱く、一晩の睡眠時間が長いにも関わらず疲れやすくひとたび眠ればなかなか起きない。本編では「持病にも近い習癖」と書かれており、この事実はマツリカの弱点になるため外部には隠されている。
・マツリカ=茉莉花(マツリカ)=素馨(ソケイ)=ジャスミン
・ジャスミンの花言葉は色によって変わるが、ジャスミン全般の花言葉は、「愛想のよい」「優美」「愛らしさ」「官能的」である。
・特殊な生まれで、厳密にいって貴族ではないし、議会筋にも王宮にも血縁はない。
 

──ハルカゼ

・「高い塔」の図書館司書。
・背が高くほっそりとした体付き、真っ白な肌に真っ白な髪、声は低めのアルト。
・身体が弱く陽の光の元にでられない。この体質は母の血統。
・笑い上戸
・キリヒト曰く歳はおそらく20代の半ば
・鉱物好き。
・元は図書館に議会筋が送り込んだ間者であったが、図書館側についた。

──キリン

・「高い塔」の図書館司書。
・濃い褐色の肌、南方の血統、黒い瞳に黒い髪。
・キリヒト曰く歳は20代半ばより下
・軍事や政争にたける。
・蝶々好き。
・カリーム・レコンクィシストルの養女
・『キリン』の名は二つ名で、「東方の想像上の獣類、若くして才あるものを意味する"キリン"」。
・本名は、ソフォニスバ(?)。
・ソフォニスバとはイタリアの女性画家の名前である。

ソフォニスバ・アングイッソラ (Sofonisba Anguissola、Anguisciolaの綴りもある。姓はアンギッソラと表記することもあり。 1532年 - 1625年11月16日)は、イタリアのルネサンス期の女性画家。

(引用:ソフォニスバ・アングイッソラ - Wikipedia)

──セト

・高い塔出入りの復元・装丁職人
・1巻P125で名前だけ登場
・名前だけの登場にも関わらずに巻頭の『主要登場人物』欄に名前がある。今後の登場に期待。


──ヒヨコ

・本名は、マールキー・トゥッリイー(キリヒトは、マールクスと呼んでいた)
・文人政治家、後に執政官総監。
・歳は40ほどで髪も髭も赤。
・精悍な顔立ちに瞳は薄い茶色の演説巧者。
・マツリカ主催の輪読会に参加している。
・マツリカに「あれが一番手強い」とまで言わせる曲者。
・1巻P147で初登場。

──ミツクビ

・ニザマの宦官中常侍。
・外交万事にわたる鋭い判断力と交渉能力を持つ。
・何十年たってもいっこうに衰えを見せない容貌で、高齢だが頭髪は豊かで色は黒。
・その名の通り三つの首を持つ。
・重度の薬物中毒者。自らで薬の調合も行う
・かつては類い稀なる知識と感受性を兼ね備えた天才として地位を築く。歳と共にそれらは衰えていったが、それを薬物によって補っている。


──薬師〈パルマキー〉

・小柄で背丈はマツリカと変わらないくらい。
・薬使いであり、毒使いでもある。
・意味深な伏線もあり今後の出番が気になる人物

薬師の名前にも一人の人間を指すには不自然な部分がある──彼らの呼び名はいずれも複数形の語尾を持っている。

(引用:図書館の魔女〈1〉P174/高田大介)
・1巻P172で登場

ミツクビ・薬師については別のページで考察を書いているのでよろしければければどうぞ
『図書館の魔女』ニザマについて&ミツクビ・薬師〈パルマキー〉の疑問・考察【高田大介】 - FGかふぇ

──コクシネル

・ミツクビを王宮に招いた一ノ谷の議員
・元元老院の富裕層の1人。
・コクシネルとはフランス語で「テントウムシ」の意。
・1巻P172で登場
・キリンやハルカゼに「目前の実利に敏いばかりの小人物」と評される。

──コリブリ

・引退した議員
・「知りたらましかば」の1件でマツリカたちが命を救った人物。
・コクシネルの周りに監視をつけていたため、事件に巻き込まれる。
・コリブリ=Colibrí はスペイン語で、日本語では「ハチドリ」の意。ちなみにハチドリは世界最小の鳥である。

──カリーム・レコンクィシストル

・背の高い黒髪・黒髭の男。
・一ノ谷の王族で磊落な気質。
・西方の防衛戦を受け持つ属領総督格の武官。
・失地回復者〈レコンクィシストル〉の二つ名を持つが、この名は古代の名将に肖ったものであり、彼は失地を許したことさえない。
・1巻P191で初登場。
・「西方の守護者」とも呼ばれる。

──イラム

・離れの家刀自。
・顎が細く、眉が濃い目鼻立ちはくっきりしている。
・聾唖者だがおしゃべり。
・いつから、どういった経緯で離れの家刀自をしているかは明かされていない。
・抜けているようで物事の本質をつく鋭さがある。

──カシム

・離れの門衛、愛想はないが実直な老人。
・関節炎のため片足を引きずるように歩く。
・キリヒトの正体を最初から知っていた人物。

──アリワルヒム

・泉の広場の古書店主

──ウルハイ

・コクシネル暗殺の絵図を描いたと思われる。
・ウルハイの元ネタはトルコの町であると思われる。

シャンルウルファ(トルコ語:Şanlıurfa)、通称ウルファ(Urfa)はトルコ南東部の都市でシャンルウルファ県の県都。《中略》
アルメニア語ではウルハイ(Urhai)またはルハ(Ruha)、クルド語ではリハ(Riha)と呼ばれ、古代から中世にかけての西洋ではエデッサ(Edessa、en)の名でも知られた。

(引用:シャンルウルファ - Wikipedia)
・ハルカゼの生家と繋りの深い立法府きっての名家である。
・ニザマ陣営と利害(一ノ谷の弱体化)が一致しており協力関係にある。

──アラシェヒル伯

・コクシネル暗殺に携わっている。ウルハイからの指示。
・2巻P145で名前だけ登場。
・アラシェヒルの元ネタもトルコにある町だと思われる。

アラシェヒル(Alaşehir、Alasehir)はトルコ西部マニサ県にある古代から続く町。かつてはギリシャ語で「フィラデルフィア(Philadelphia)」と呼ばれていた

(引用:アラシェヒル - Wikipedia)

──ギュミュシュハーネ伯

・コクシネル暗殺に携わっている。ウルハイからの指示。
・2巻P145で名前だけ登場。
・コリブリ暗殺にも関与。
・ギュミュシュハーネの元ネタもトルコの町だと考えられる。

ギュミュシュハーネ(Gümüşhane)は、トルコ黒海地方ギュミュシュハーネ県の都市で同県の県都。
名前の意味は「銀の家」で、トルコ語の"gümüş (銀)"と、ペルシア語の"خانه (hane=khane) (家)"の合成語である。

(引用:ギュミュシュハーネ - Wikipedia)

──ディディム伯

・カリームの腹心の部下。
・2巻P163で名前だけ登場。
・他国から協定の打診を受ける(一ノ谷を裏切るように打診される)
・ディディムの元ネタもまたトルコの町である。

ディディムは小さな町だが、人気の海辺のリゾート地であり、トルコ西部のエーゲ海沿岸にあるアイドゥンの地区にある。

(参考:Didim - Wikipedia)

──アッラシド

・近衛大尉
・「知りたらましかば」の1件でマツリカたちに協力した人物。
・2巻P215で登場。

──カマール

・ヒヨコの執事
・2巻P227で名が明かされる。

──ユースフ

・近衛兵
・獅子鼻、やや厳つ顔の顎の張った顔立ち
・マツリカの川遊びに付き添ったときの分隊長。
・彼だけ図書館の近衛兵にならなかった。(怪我が重傷だったからか?)

──アキーム

・近衛兵、後に図書館付き。
・玉蜀黍の穂のような金色の巻げ毛。
・准尉
・鬼の襲撃によって顔に大きな傷痍を負う。
・山育ち
・洒落者
・イラムに恋をする。

──ヴァーシャールヘイ

・近衛兵、後に図書館付き。
・瞳に憂いのある優男。
・准尉
・手先が器用で木工の心得がある
・排簫を吹く。排簫は中国古代の管楽器である。
・古アルデシュの生まれ
・双子座の片割れ
・マツリカから「ヴァシリー・ヴァザレリ」の名を授かる。
・ヴァーシャールヘイの元ネタはハンガリーの都市だと思われる。

ホードメゼーヴァーシャールヘイ (マジャル語:Hódmezővásárhely、ドイツ語:Neumarkt an der Theiß、ルーマニア語:Ioneşti)は、ハンガリー、チョングラード県の都市。

(引用:ホードメゼーヴァーシャールヘイ - Wikipedia)

──オルハン

・近衛兵、後に図書館付き
・長い黒髪を後ろに縛っている。
・衛兵の中でも若手。

──アダン

・近衛兵、後に図書館付き
・上背がありがっしりしているのに、まるで少年のように目がくりくりしている。
・衛兵の中でも若手。


──イズミル

・近衛兵、後に図書館付き
・細身
・一族郎党が軍務に就く生粋の軍人だが、書籍や東西の文物に詳しい。
・イズミルの元ネタもトルコの都市だと思われる。

イズミル(İzmir)は、エーゲ海に面するトルコ西部の都市。イズミールとも表記される。古くはスミュルナ(Smyrna, スミルナとも。ギリシア語でΣμύρνη)と呼ばれた。

(引用:イズミル - Wikipedia)

──鬼〈オルクス〉

・川遊びに来ていたマツリカに向けられた刺客。
・身の丈は一丈程(一丈=約3メートル)
・マツリカが「なぜこんな辺境の奴らが…」と言っていたので、鬼が生息する地域がある?
・オルクスの元ネタはローマ神話の死神だと思われる。

オルクス(Orcus)は、ローマ神話に登場する死の神。
本来はエトルリアの神で、墳墓の壁画では髭を生やした恐ろしげな巨人の姿で描かれる

(引用:オルクス - Wikipedia)

──ソトゥレル

・司書、宮廷図書館から出向して図書館へ。
・3巻P15で登場

──ヘパティオス博士

・老年の農学博士
・止めなければいつまでも話し続けるような特徴的な喋り方。
・3巻P145で初登場

──ラーオコオーン博士

・壮年の地質学者
・ラーオコオーンの元ネタはギリシャ神話だと思われる。

ラーオコオーン(古代ギリシャ語: Λαοκόων, Lāokoōn、 ラテン語: Laocoon)は、ギリシア神話に登場する、イーリオス(トロイア)の神官である。

(引用:ラーオコオーン - Wikipedia)

──双子座〈ミトゥナ〉

・二手に分かれる二本管の笛〈アウロス〉を扱う。
・マツリカの左手を縛ったときに演奏していたのは、古アルデシュの武勲誌
・歳はおそらく30手前くらい。
・傀儡使いの名は明らかになっていないし、その後も物語には登場していない。
・薬で正気を失わせ、催眠術と暗示で動きを拘束する。それで条件づきで動きを叩き込み人を操る(鬼や蚩尤を操っていた)

──コランダン伯

・西方最前線に立つ伯領を任されている。
・キリンの乳兄弟の一人
・本名は、アドヘルバル・マッサエシュリイー・コランダン。
・4巻P362で鋼玉に〈コランダン〉のルビがついていた。これが名前の元ネタか?

──ニザマ帝

・心臓に病を抱えている。
・美食家、健啖家。
・短く結った髪、額は玉のように張り出して広い。
・タイキのことを恩人と言っていた(太子と関係あり?)。

──カダ師

・ニザマ帝室典医長

──サルキシャン

・ニザマへの使節団の大使
・東方の文物に通じ、素朴で篤実な人柄

──メテ

・ミツクビの腹心の部下
・尚書省の次官
・「隻腕の左僕射メテ」
・4巻P32で登場

──コダーイ・ヤーノシュ

・アルデシュ軍大佐、東部監軍部長
・4巻P53で登場
・コシュートとは義兄弟
・冷静沈着
・アルデシュの参謀の中で間諜の手綱を一手に握る、用間の首領。
・「ヤーノシュ」はハンガリーの男性名である。
・「コダーイ」の元ネタは、実在した人物からだと思われる。

コダーイ・ゾルターン(Kodály Zoltán, 1882年12月16日 - 1967年3月6日)は、ハンガリーの作曲家、民俗音楽学者、教育家、言語学者、哲学者。

(引用:コダーイ・ゾルターン - Wikipedia)

──コシュート・ゾルターン

・アルデシュ軍中佐、山麓鎮台司令
・4巻P53で登場
・コダーイとは義兄弟
・「ゾルターン」の元ネタはコダーイの欄で引用した通りである。

──ニザマ太子

・ニザマ帝の第二側室の実子
・先代キリヒトとタイキが探している人物。
・幼い頃から天性の才を讃えられていた。
・ニザマ帝が彼の人格と英才を見込んで世から隠した。

──ヒエンプサル

・コランダン伯(アドヘルバル)の弟
・キリンの乳兄弟

──ウルバン

・アルデシュの水利工学技官
・「ウルバン」の元ネタと思われるのは以下の通りである。

ウルバンまたはオルバン、オルバーン (トルコ語: Urban ハンガリー語: Orbán 1453年没)は、ハンガリー王国トランシルヴァニアのブラッショー(現ルーマニア、ブラショヴ)出身の技術者。1453年のコンスタンティノープル包囲戦において、オスマン帝国軍にバシリカ砲と呼ばれる巨大な射石砲を提供したことで知られる。

(引用:ウルバン (技術者) - Wikipedia)
技官と技術者で近いものがあること、他の登場人物もハンガリーに由来するものが多いため、この人物が由来だと思われる。


──エトヴェシュ

・古アルデシュに潜伏する間諜
・40がらみの子男、やや浅黒い肌で目つきが鋭い。
・4巻P228から登場
・「エトヴェシュ」の名前の由来と思われるのは以下の通りである。

エトヴェシュ・ペーテル(Eötvös Péter, or Peter Eötvös, ペーテル・エトヴェシュ、ペーター・エトヴェシュ、1944年1月2日 - )は、ハンガリーの作曲者、指揮者。

(引用:エトヴェシュ・ペーテル - Wikipedia)

──ペーテル

・古アルデシュに登場する間諜
・4巻P231で登場
・「ペーテル」の由来はエトヴェシュと同様、上記の引用の通りである。登場が少ないにも関わらずにわざわざ名前が与えられているのは、エトヴェシュとセットにしたためか?

──ミクローシュ

・古アルデシュに登場する間諜(?)
・4巻P248で名前だけ登場
・「ミクローシュ」とはハンガリー語圏の男性名である。

──蚩尤〈シユウ〉

・双子座に操られてマツリカたちに襲いかかった化物
・山に住む民でニザマからもアルデシュからも独立して独自の文化風俗を保っている。
・牛頭の仮面(兜)を付けている。
・偶蹄目の足に近づけるための義足を付けている。
・蚩尤とは中国神話に登場する神である。

蚩尤(しゆう、拼音: Chīyóu)は中国神話に登場する神である。『路史』では姓は姜で炎帝神農氏の子孫であるとされる。獣身で銅の頭に鉄の額を持つという。また四目六臂で人の身体に牛の頭と鳥の蹄を持つとか、頭に角があるなどといわれる。

(引用:蚩尤 - Wikipedia)

──イシュトバーン

・イズミルとキリヒトが助けたアルデシュ兵「しっかりつかめよ!かみのごかごを」の人。
・コダーイの配下
・「イシュトバーン」の元ネタは下記の通りだと思われる。

イシュトヴァーン1世(I. István、969年または975年 - 1038年8月15日 エステルゴム、大首長・ハンガリー国王として997年 - 1038年)は、ハンガリー王国の初代国王。幼名はヴァイク(Vajk)。

(引用:イシュトヴァーン1世 - Wikipedia)

──ドホナーニ

・アルデシュ重騎兵団の旅団長
・4巻P576で登場

最後に

高い塔の主要登場たちなどは各々好きなものについてなど詳細も語られているわけだが(マツリカは叙事詩やお酒、ハルカゼは鉱物、キリンは蝶など)、キリヒトだけは恐らく語られていなかった(強いて言うなら食べる事とか?)。こういった部分でも彼はずっと自分の運命に縛られて生きてきたんだろうなと思えて切なくなった。


勢いで書ききったので、抜けている登場人物がいたら申し訳ない。もしコイツが入ってないぞ!!ってのがあれば教えて頂けると非常にありがたいです。


【関連記事】





十二国記『白銀の墟 玄の月〈一、ニ〉』の感想を好き勝手に語る【小野不由美】


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街に待った十二国記の新作『白銀の墟 玄の月〈一、ニ〉』を読んだ。続きの〈三、四〉は来月11月発売なので、ひとまず〈一、ニ〉を読んだ時点での感想・疑問などを書いていく。内容にはがっつり触れていくので未読の方はご注文を。


目次

感想

『白銀の墟 玄の月』を読む前にシリーズを読み返そうと思ったが時間が取れずに久しぶりに十二国記の世界に飛び込んだわけだが、相変わらず貧困や低迷していく国の現実がリアルすぎて初めて『月の影 影の海』を読んだときの絶望感を思い出した。 


〈ニ〉まで読み終わってもう来月の発売が待ちきれなくなってしまった。すでに読み終わった方がTwitterで「続きがでる11月まで待っていっきに読んだほうがいい!!」とのことを仰っていたが、まさかにその通りで今後の展開が気になりすぎる。


というのも、〈四〉まであるので〈ニ〉まで読んだとしてもまだ前半戦終了にすぎず、ここまでは戴の現状や不穏な王宮の様子の説明などが多い。


良く言えば今後の展開が気になる。悪く言えばあまり派手な展開がない〈一、ニ〉だったという印象。そのなかでも泰麒の突然の行動などビックリした点もあったけど。


──不穏な王宮

王宮内の現状が今までにない不気味さ。玉座を奪ったのに引きこもっている阿選、傀儡のようになっていく官吏たち、自分たちの国の内情が把握できていなく混沌する王宮内。


本当の黒幕は泰麒を襲った阿選なのか?それとも阿選をさらに操る人物がいるのか?


天の条理に詳しく、阿選との関係も詳細が明かされていない琅燦の存在も気にかかる。今回の鍵を握ってそうだし何を狙っているのかもよくわからない。


あとは、強調して登場してくる鳩の存在。


──もう幼かった頃の泰麒ではない

泰麒の成長が感慨深い…以上に怖く感じた。どうしても利斎が泰麒に向けるのと似た感情を抱いてしまう。


幼い頃の純粋無垢な泰麒を知っているだけに成長は嬉しいけど、順調な成長というより無理矢理に大人にならざるを得なかったみたいな感じが心苦しくはある。


麒麟が慈悲の生き物とはいえ、泰麒の本心がどこにあるのか?
角を失い、蓬莱で人々の悪意に触れ、普通の麒麟とはかけ離れた存在のはずなので、これまでの従来の麒麟の習性とは異なっていてもおかしくはないと思う。


琅燦や張運たちが推測しているように、「泰麒が民のために動いている」に間違いはないだろうが、泰麒の思考の裏にはどんな考えがあるのか?泰麒の言葉がどこまで真実なのか?泰麒が感じた天の意図とは本当なのか?泰麒の今後の動向も気になるところだが、それ以上に気になるのが驍宗について。


──驍宗は生きている

いや、生きていてほしい(願望)
泰麒と驍宗の再開を希望に読み勧めていたのに、気づけば泰麒は敵陣に乗り込んでるし、極めつけは〈ニ〉の最後がとんでもない終わり方だったけど、驍宗は生きてるのではないかと思ってる。白雉が落ちてないってのが証明ではあるし。


明らかに驍宗が死んだように書かれているけど、実際に確認したのは遺品だけで、驍宗の遺体を確認したわけではない。驍宗の特徴を述べて、遺品を確認させることで(実際に遺品は驍宗の持ち物だった?)死んだようにカモフラージュしているんだと思いたい。または驍宗に似た人物だったかだが…人違いはさすがにないか…。


とはいえ十二国記だもんなぁ……死んでてもおかしくはないと思えるのが怖いところ…。

──天の条理

先程も少し触れたが琅燦が今回の鍵を握ってそう。阿選との関係、そして何を狙っているのか?また彼女が話していた天の条理についての考えがまた面白い。


これまでの作中でもまだまだ不明な点が多い「天」。彼女らの考察の真偽はわからないが、「天」についても明かされていくことを期待したい。


【オススメ】


『まほり』の感想をネタバレなしで語っていく【高田大介】


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およそ言葉というものは、欠けるにしても足されるにしても、形が変わるのに必ず動機を必要とする。なぜなら、放っておいたら勝手には変わらないというのが言葉のかなり重要な機能の一つだからだ。世の人が一般に信じているほどに言葉というものは闊達に変化したりなどしない。

(引用:まほりP292-293/高田大介)




待ちに待った高田大介氏の新作『まほり』

ファンタジー作品の著者の前作『図書館の魔女』とは違い、現実世界を舞台にした民俗ミステリーの『まほり』だったが、どんどん物語の世界に引き込まれるのは相変わらずで、あっという間に読み切ってしまった。



今回は読了後の率直な感想を重要なネタバレは避けて書いていく。


ネタバレや細かく内容に触れた感想・疑問・などは、まだ一度読んだだけで消化しきれていないので、再読したあとにじっくりと書く予定だ。


目次

感想

『図書館の魔女 霆たける塔』の発売を待ち続けること幾年。不意に発表された高田大介氏の新作である民俗ミステリー『まほり』の刊行決定。それは高田大介=図書館の魔女のイメージだった考えに一石を投じるものだった。


冷静に考えれば、ファンタジーではなく、こちらの分野こそが著者の本領なのでは…?という考えがよぎったし、実際読んであとでは、その考えも間違ってはいないのかもしれないと思った。


知識量と情報量が『図書館の魔女』並みかそれ以上で、舞台が現実世界というのもあり、史実をベースを展開される物語はリアリティの塊だった。

──要所要所は難しいが…

白文がでてきたり、知識量と情報量の圧倒的物量で会話が進んで行くところがあったり、歴史について深く突っ込んだりと、要所要所は間違いなく難解である。


だがしかし、白文でいえば登場人物たちがうまい具合に解説をしてくれたりと、なるべくスムーズに読み進められるようになっていた。


著者のブログで『「図書館の魔女」の手紙』について触れた記事で下記のような記述がある。

全体を遠景で眺めてみてもいけているし、顕微鏡で観察すればさらにどの切片にも驚きが含まれている。そうした、山川草木、自然の巧まざる構成美、みたいなものを文章でも実現できればと精進しております。

(引用:『図書館の魔女』の手紙 | 図書館の魔女 de sortiaria bibliothecae)

文字通り『まほり』ではこの言葉通りのモノが表現されていると思った。要所要所の難解な箇所を理解しきれなくても、全体の流れを追えれば物語としてワクワクするしゾクゾクする。


さらに細い箇所に注視していけば、驚きが散りばめられているのだろう。私は歴史、民俗、漢文などには疎いので、著者のいう「顕微鏡で観察」できる状況にはいないのだが、いずれは手探りでも分析したいと思っている(できるとは言ってない)。


──史実と虚構

大衆の歴史の裏に隠れて、普段は表立っては出てこない史実をベースとして物語は展開されていくわけだが、とにかく事実と虚構(フィクション)の境目がわからなくなるくらいリアルだった(流石に行き過ぎた村の風習とかは分かるが)。


ホントに、もしかしたらどこかにこんな村が…こんな風習が残されているんじゃないか…?と思わせてくれるほどに史実を背景に虚構が違和感なく飾られている。


あとは、膨大な史料から答えを読み解いていき、少しづつ物語の全体像が浮かび上がってくる様子がたまらなく面白い。また史料を読み解くにしても、フィールドワークや実体験の昔話からのアプローチを駆使しているのも物語に引き込まれるポイントだったと思う。


──明かされていく真実

二重丸の意味
裕の母親について
そして、タイトルの『まほり』


隠れていた真実が明らかになる瞬間が、どれも鳥肌モノだった。とくに『まほり』の謎が明らかされたときはゾッとしてページを進める手が止まったほどだ。コレをタイトルにするのか、という驚きと恐怖感。


あと恐怖感といえば、裕が聞く昔話も負けず劣らずで、あんな体験をしたらなかなかのトラウマになるだろう。「実態はわからないけど、何か怖い。得体が知れなくて不気味」というのは具体的に形がハッキリしているモノの恐怖感より、よっぽどに質が悪いと思う。


この昔話の箇所を読んでいると、形而下のものではなく、得体がしれないものが怖いと言っていた某魔女の気持ちがよくわかる。


──癒し

かといってこれまで挙げたように重い、難しい話ばかりではなく、裕と香織のフィールドワークの場面は読んでいて癒やされる。二人のやり取りも見所の一つだった。


何より「関係各所……」のくだりとか香織の勝鬨とか、思わずニヤける場面も多かった。あとおにぎりとかね。


──やっぱり”言葉”

『図書館の魔女』では”言葉”に秘められた強さをまざまざと見せつけられたので、『まほり』でも”言葉”そして”言語”についてどのように触れていくのか強く期待していた…が、これはね、やられましたよ。


ネタバレになるので詳しくは書かないが、物語最大のインパクトがあったとだけ言っておく。



最後に

『図書館の魔女』のマツリカといい、続編『烏の伝言』のエゴンといい、更には『まほり』のイチといい、著者は言葉を話す事ができない人物をキーにするのに何か拘りとかがあるのかな…?


それにしても『まほり』、大満足の一冊だった。丸一日かけて読破するつもりだったのにそれでも読みきれないほどの濃密さ、更に再読してもまだまだ発見があるだろうな、と思えるくらい作り込まれた物語。『図書館の魔女』でも分かっていたことだが、『まほり』を読んで著者に永遠に着いて行くことが確信に変わった。


あと余談だが、『まほり』本文にでてきた「雷霆」の言葉で、霆ける塔…!と連想してしまった読者は残念ながら私と同類です。諦めてください。

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オススメの小説をひたすらに紹介していく【随時更新】


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詳細はいいから、とにかく面白い小説を教えてくれ!!って方のために私が今まで読んだ中で面白かった小説(評価をつけるとしたら10点満点のうち9or10点の作品)をひたすらに挙げていく。テンポ重視であらすじとかは全カット。


また作品名の後には大まかな【ジャンル】も添えたので参考にどうぞ。


私の趣味的にファンタジーとミステリーの作品が多いのはご容赦ください。面白い作品と出会え次第、随時更新予定なのでまた時間をあけて覗いてもらえると嬉しい。
さっそくどうぞ!


──アガサ・クリスティ

そして誰もいなくなった 【ミステリー】

──有川浩

空の中 【SF・ミリタリー】

──乾石智子

夜の写本師 【ファンタジー】

──上橋菜穂子

精霊の守り人シリーズ 【ファンタジー】
・精霊の守り人
・闇の守り人
・夢の守り人
・虚空の旅人
・神の守り人
・蒼路の旅人
・天と地の守り人
獣の奏者 【ファンタジー】
鹿の王 【ファンタジー】

──小野不由美

十二国記シリーズ 【ファンタジー】
・魔性の子
・月の影 影の海
・風の海 迷宮の岸
・東の海神 西の滄海
・風の万里 黎明の空
・図南の翼
・黄昏の岸 暁の空

──川村元気

四月になれば彼女は 【恋愛】

──沢村凜

黄金の王 白銀の王 【ファンタジー】

──ジェイムズ・P・ホーガン

星を継ぐもの 【SF】
ガニメデの優しい巨人 【SF】
巨人たちの星 【SF】

高田大介

図書館の魔女 【ファンタジー】
図書館の魔女 烏の伝言 【ファンタジー】

ダン・ブラウン

天使と悪魔 【ミステリー】
ダ・ヴィンチ・コード 【ミステリー】
インフェルノ 【ミステリー】
オリジン 【ミステリー】
デセプション・ポイント 【ミステリー】

七月隆文

ぼくは明日、昨日の君とデートする 【恋愛】

──支倉凍砂

狼と香辛料 【ファンタジー】

──東野圭吾

マスカレード・ホテル 【ミステリー】
マスカレード・ナイト 【ミステリー】
ナミヤ雑貨店の奇蹟 【ミステリー】
容疑者Xの献身 【ミステリー】
真夏の方程式 【ミステリー】
白夜行 【ミステリー】
夢幻花 【ミステリー】

──三浦しをん

船を編む 【青春】

──宮下奈都

羊と鋼の森 【青春・文学】

──森博嗣

すべてがFになる 【ミステリー】
有限と微小のパン 【ミステリー】

──柚月裕子

盤上の向日葵 【ミステリー】


詳しくあらすじやポイントも知りたい!って方は、コチラでオススメの10作品を紹介しているのでよろしければどうぞ。


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普通の恋愛小説が飽きたあなたへ『四月になれば彼女は』のあらすじ・紹介【川村元気】

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「 でも僕、思うんです。人は誰のことも愛せないと気付いたときに、孤独になるんだと思う。それって自分を愛していないってことだから」

(引用:四月になれば彼女は P250/川村元気)


ありきたりな恋愛小説に飽きたあなたへ。
心躍る恋心から人間らしい欲望を孕む生々しさまで、振り幅のある表現で描かれる『四月になれば彼女は』。人間の真理が見えてしまうような恋愛模様に、思わず息をのむ瞬間があるはずだ。


裏表紙のあらすじには、異形の恋愛小説なんて紹介があったがまさにその通り。今まで自分が持っていた価値観や常識が、手ですくった砂のようにサラサラとこぼれ落ちていく、私はそんな感覚を味わった。


そんな川村元気の『四月になれば彼女は』を重要なネタバレは避けて紹介していく。


目次

【書籍情報】

タイトル:四月になれば彼女は
著者:川村元気
出版社:文春文庫
ジャンル・要素:恋愛
ページ数:274ページ
刊行年:2019年7月10日
映像化:なし(2019年9月現在)
読後感:すっきり、考えさせられる


あらすじ

4月、精神科医の藤代のもとに、初めての恋人・ハルから手紙が届いた。だか藤代は1年後に結婚を決めていた。愛しているのかわからない恋人・弥生と。失った恋に翻弄される12ヶ月がはじまる──なぜ、恋も愛も、やがては過ぎ去ってしまうのか。川村元気が挑む、恋愛なき時代における異形の恋愛小説。

(引用:四月になれば彼女は 裏表紙/川村元気)

章題も『月』で統一されていてとっても印象的

四月になれば彼女は
五月の横顔
六月のいもうと
七月のプラハ
八月の嘘
九月の幽霊
十月の青空
十一月の猿
十二月の子供
一月のカケラ
二月の海 
三月の終わりに彼は


 

──「いまわたしは、ボリビアのウユニにいます。」

物語は、主人公の藤代の元に届いた一通の手紙で、幕を開ける。それは大学時代の恋人であったハルからの9年越しに便りだった。


手紙は、日本から見たら地球の果て、ボリビアのウユニから送られてきていた。そこには、ハルの現状と9年前に秘めた思いが綴られていた。


どうして彼女は1人で旅に出たのだろう?
どうして彼女はかつての恋人に手紙を送ったのだろう?
そして……この二人はどうして別れてしまったのだろう?

たった4ページに書かれた手紙は、読者を物語に没頭させるだけの魔力を持っている。


──大学時代、写真部での出会い

藤代とハルは大学の写真部で出会う。先輩である藤代が新入部員であるハルに指導をする所から、二人の関係が始まっていくわけだが……二人が恋に落ちていく様子がキュンキュンしてたまらない。


自分が他人を好きになる瞬間、または自分はこの人の事が好きなんだな……って気づく瞬間。ハッキリとはわからなくても、なんとなくの経験はあるかと思う。


その恋に気づいた瞬間のシチュエーションがもうずるい。ハルが撮った写真に写っていた藤代自身の笑顔が、自分でも見たことないくらい輝いていたものだった……そこで自身の恋心に気づくって、最高だと思いません?


そんな幸せに浸っていく二人だったが……。


──付き受けられる現実

2章目である『五月の横顔』では、幸せな大学時代の雰囲気とは一変して、物語は大学時代から9年経った時系列で始まる。


そこで読者が突き付けらる現実が藤代がハルとは付き合っておらず、ハルとは違う婚約者・弥生と付き合っているという点だ。


三年間の同棲を経て、すでに結婚を決めていた藤代と弥生。だがしかし、幸せを迎えるはずの結婚式の打ち合わせでもどこか影が伺える二人の関係。


そんなタイミングで藤代の元に、ボリビアからハルの手紙が届くのだ。ただでさえ先の読めない展開に焦燥感が加速され、後戻りできなくなる。


はたして、あんなに仲睦まじかった藤代とハルに何があったのだろう?
何故、ハルは手紙を書いたのだろう?
藤代と弥生の関係はどこへ向かっていくのか?


──幸せな時間は永遠には続かない

思わず心惹かれるような、淀みのない、澄んだ表現も登場するなか、それ以上に心に刺さってくるのは、人間が奥底に抱えるリアルな感情、そして現実だ。


そんなハッとしてしまうモノの一部を引用しておく。

「愛情といえば何もかもが許されるのが嫌なんですよ。愛し合うふたりは無条件で美しくて素晴らしいものだという感じが」

(引用:四月になれば彼女は P99/川村元気)

「誰かのことを心から愛している、と思えるのは一瞬だしね」
〈中略〉
「その一瞬が永遠に続くはずだ、というのは幻想ですよ。それなのに、男と女が運命的に出会って恋に落ち、一生の伴侶として愛し合うということが前提になっているのがおかしい。誰と恋愛しても行き着くところは一緒なんです。だから結婚の先のセックスレスだって当然のことだと思いますけど」

(引用:四月になれば彼女は P100/川村元気)

愛を終わらせない方法はひとつしかない。それは手に入れないことだ。決して自分のものにならないものしか、永遠に愛することはできない。

(引用:四月になれば彼女は P198/川村元気)



まだまだ引用して紹介したいところだがこのくらいにしておく。
『四月になれば彼女は』では、ページをめくる手を止めて、一言一言を噛み砕くように消化しなければならなくなる瞬間がいくつもあるはずだ。是非とも物語を堪能しながら、自分の価値観と摺り合わせながら読み進めてみてほしい。


最後に

この物語の解説をあさのさつこさんが書いてくれているのだがその一部を引用しておく。

軽やかに生きていきたいと望む人は、すてきな恋をしたいと願う人は、すてきな恋をしていると公言できる人は、誰かが愛しくて、幸せにしてくれると信じている人は、読書は楽しくてためになると口にする人は、この本を読まないほうがいいと思う。残酷なシーンなど一つも出てこない最上等の残酷な物語、わたしの、あなたの、人間の正体に肉薄する物語。 うん、やっぱり怖い、怖すぎる。

(引用:四月になれば彼女は P281)


「残酷なシーンなど一つも出てこない最上等の残酷な物語」そう、この解説に私が言いたかったことが詰まっている。恋愛というキレイな幻想の裏側、人々が見ようとしない部分をさらけ出している残酷な物語。だがしかし、そんな幻想と知ってなお、葛藤する主人公の姿が胸をうつのだろう。



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