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【映画】『コーヒーが冷めないうちに』の感想を好き勝手に語る【川口俊和】

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あの日に戻れたら、
あなたは誰に会いに行きますか?

(出典:http://coffee-movie.jp/sp/index.html


2018年9月21日にで公開された映画『コーヒーが冷めないうちに』を見てきたので感想を語っていく。ネタバレありで語っていくのでご注意を。

きっかけ

『コーヒーが冷めないうちに』は2017年の本屋大賞で10位に輝いた小説だ。「4回泣ける」をキャッチコピーに書店でも何度も見かけた。


気になっていた作品ではあったものの、今まで手をつけていなかった。それなのにも関わらずどうして映画を見ようと思ったのか。


答えは簡単
有村架純さんが主演だからだ


有村架純さん大好きなんですよ、見る理由はそれだけで十二分だ!!

感想

有村架純さんが最高に可愛かった。これに尽きる。キスされて驚いたあとに照れながらももう一度キスするシーンとか、真剣にコーヒーを入れるシーンとか...とくに最後の「大好き」っていうシーンにはやられた...。彼女が入れてくれるコーヒーを飲みたい人生だった...。



さて、もう少し真面目な感想を。
物語は面白かったし、設定もファンタジーチックで私はとても好みだった。


過去には戻れるが、起きたことは変えられない。変えられるのは自分の心と未来だ、というのも見て、なんだか元気をもらえた気がする。


キャッチコピーは「4回泣ける」とあったが、ちょっと大袈裟かな。私が泣いてしまったのは1回だけだった...が、その1回ではボロボロと泣いてしまった。もちろん他のストーリーも心温まるものだったのは間違いない。(当然、私が泣いてしまったのは有村架純さん演じる時田 数が過去に行くストーリーの所だ)


最後のストーリーは段違いに心を揺さぶられた。死んだ父親に会いに行き、そのまま過去から帰ってこなくなった母親。「自分は置いていかれたのだ」と、長年思い悩んでいたが数。


しかし現実は、母親は未来へ行っていた。数の事が心配で...。


あのシーンの数の心境を思うと涙が止まらない。母親は父親に会いに行って自分を置いていったのではなく、ちゃんと母親は自分を愛してくれていたと分かったこと。そして、母親を過去に取り残してしまったのは子供の自分が、引き止めてしまったからだと知ったこと。


これが...泣けずにいられるか!!



コーヒーが冷めるまで
それは、ほんのひと時に過ぎない。けれどそんなひと時の時間でも、その時間があれば、人は想いを伝えることができる。心を、未来を変えることができる──決して過去は変えられなくても。大事なのはこれからだから。


ならばせめてまだ時間に余裕がある私たちは、生きてるうちに想いを、気持ちをちゃんと伝えなければならないのかな、と思ったり、思わなかったり。

『沈黙のパレード』の感想を好き勝手に語る【東野圭吾】


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「湯川先生には何か確信があるんですか。そこまで強く断言できる理由を教えていただけますか」
「その理由は──」湯川は人差し指を立てた。「もし僕が新たに立てた仮設があたっているのなら、今のままではパズルを成立させるピースが一つ足りないからだ。そのピースは過去にしか存在しない」

(引用:沈黙のパレード P222東野圭吾)


ガリレオシリーズの最新長編『沈黙のパレード』の感想を語っていく。ネタバレありなので未読の方はコチラからどうぞ。

『沈黙のパレード』紹介



目次

あらすじ

突然行方不明になった町の人気娘が、数年後に遺体となって発見された。容疑者は、かつて草薙が担当した少女殺害事件で無罪となった男。だが今回も証拠不十分で釈放されてしまう。さらにその男が堂々と遺族たちの前に現れたことで、町全体を憎悪と義憤の空気が覆う。秋祭りのパレード当日、復讐劇はいかにして遂げられたのか。殺害方法は?アリバイトリックは?
超難問に突き当たった草薙は、アメリカ帰りの湯川に助けを求める

(引用:沈黙のパレード /東野圭吾)


感想

草薙は係長に、そして湯川は准教授から教授へ、と時の流れを感じると共に歳相応の変化が伺えた。また過去作(容疑者Xの献身)についても少し触れられてるのもシリーズファンとしては堪らない。



『沈黙のパレード』を読んで心に残ったのは、法律の不安定さ、罪とは何なのか?そして蓮沼の醜さだった。私自身、法律に詳しくはない。『沈黙のパレード』では、犯人が法律の穴をつくような場面があるわけだが、その法律の穴によって苦しめられる被害者の遺族を見ていると歯がゆさを感じずにはいられなかった。

黙秘権

「何かやって万一捕まった場合、自白したらおしまい、というわけか」
「逆に言えば自白さえしなければ勝機を見出せる──そう学習したんじゃないか」
草薙は頬杖をつき、ため息をついた。「そんなふうに考えたことはなかったな.......」
「もし僕の空想があたっていたなら、その蓮沼という怪物を作り出したのは、他でもない日本の警察組織ということになる」

(引用:沈黙のパレード P77-78/東野圭吾)


元凶である蓮沼だが、殺人、恐喝、死体遺棄とクズ中のクズとして描かれていた。しかし湯川が語るように、その怪物を作ってしまったのが警察とは...皮肉である。


そしてまた、蓮沼が冷徹で頭がキレるというのも憎たらしい。


タイトルに『沈黙』とあるが、それが指す一つの意味が蓮沼が行使した黙秘権についてだろう。


冤罪を防止できたり、自分にとって不利益になる発言をしなくてもいい、という黙秘権のメリットを最大限に活かした蓮沼。

 
もちろん、明確な証拠があれば蓮沼の発言があろうがなかろうが罪に問われるデメリットもあるわけだが、蓮沼は確固たる証拠を残していない。


冤罪を防ぐためのものが逆に利用されて、罪を逃れるなんて行き場の無い怒りを感じる。


また蓮沼は死体遺棄罪の控訴時効が成立されるまで(3年間)身を潜める。


そのあとで堂々と『なみきや』に訪れ、さらには賠償金の請求をするなど憎悪の感情しか湧いてこない。まさにクズ中のクズ。


トリックは物足りない?

正直な話、トリックに関しては物足りない気がした。警察を悩ませた最大のトリックが「どうやって液体窒素を運んだか」だった。


『パレード』という言葉がタイトルになっているのもあり、読者はパレードに何らかの仕掛けがあるのでは?と考えるのは普通の流れではないだろうか。


物語の警察側から見るとわからないが、複数人が事件に絡んでいるとわかっている読者側からするとトリックの秘密(液体窒素の運搬)に関しては、そこまで予想外なものではなかった。


湯川が導き出した真実

しかし、トリックはさておき驚かされたのは湯川がたどり着いた事件の全貌だ。

 
物語が二転三転し、次第に明らかになっていく心情描写の巧みさは、やはり流石の一言。月並みな言葉だがラストに進むにつれてページをめくる手が止まらなくなった。


蓮沼が起こした二つの事件と、蓮沼が殺害された今回の事件。一見単純そうに見えるこれらの事件。しかし裏に隠された人々の思惑は予想を越えるものだった。


やはり、『ガリレオシリーズ』では愛情が一つのテーマであると思う。過去作の『容疑者Xの献身』は言わずもがな。


今回の『沈黙のパレード』では、並木佐織への家族や町の人々の愛情。増村の妹と姪っ子への愛情。新倉夫婦の愛情。と、彼等の思いが複雑に絡み合っていた。


一人の男が私欲のためにこれだけのものを踏みにじっていると考えると...考えれば考えるほど蓮沼への憎悪がこみ上げてくる。


たとえこの様な男とはいえ、殺してしまえば罪になるというのが、理性ではわかっていてもなかなか受け入れられないことだ。


終わりに

久しぶりのガリレオ作品に自然とハードルを上げてしまって読み始めてしまったが、その期待を裏切らない素晴らしい作品だった。


湯川にとって『容疑者Xの献身』の事件はなによりも重いものだったのだな、と再確認できた。物語の終わり方も爽やかで好印象!!次回作も今から楽しみでしょうがない。





関連記事



ガリレオシリーズ最新作『沈黙のパレード』のあらすじ・紹介【東野圭吾】

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あらゆるものが沈黙を徹した。それは私欲のため、友情のため、そして──愛情のため。


2018年10月11日に待ちに待ったガリレオシリーズ最新長編『沈黙のパレード』が発売された。


そこで今回は『沈黙のパレード』のあらすじや見所を紹介していく。また『沈黙のパレード』からでも問題ないが、ガリレオシリーズの過去作から読んだほうが、より楽しめると思うので未読の方はコチラをどうぞ。

『沈黙のパレード』の感想はコチラ


目次

あらすじ

突然行方不明になった町の人気娘が、数年後に遺体となって発見された。容疑者は、かつて草薙が担当した少女殺害事件で無罪となった男。だが今回も証拠不十分で釈放されてしまう。さらにその男が堂々と遺族たちの前に現れたことで、町全体を憎悪と義憤の空気が覆う。秋祭りのパレード当日、復讐劇はいかにして遂げられたのか。殺害方法は?アリバイトリックは?
超難問に突き当たった草薙は、アメリカ帰りの湯川に助けを求める

(引用:沈黙のパレード /東野圭吾)

あらすじ補足

19年前、捜査一課の新人・草薙の活躍によって解決に向かっていた少女殺害事件は決定的な証拠を挙げることができず、そして容疑者は自供を行わず沈黙を守ったことで釈放となってしまった。


草薙にとっては因縁のその相手・蓮沼が再び殺人事件の容疑者として草薙の前に現れる。


殺されたのは町の人気娘・並木佐織。今回こそは...と意気込む草薙。しかし、死体遺棄までは証明できるものの、またもや殺人の決定的な証拠を掴むことができず、蓮沼の処分は保留となってしまう。


蓮沼という男が殺したことは、ほとんど間違いない。にも関わらず、証拠不十分によって処分が下されない。残された遺族や佐織と親しかった者たちが怒り、警察に不満を覚えるのは当然のことだった。「ならば自分たちで...」と考え始めるのも自然な発想だろう。


そんな中、佐織の両親が経営する飲食店『なみきや』に堂々と蓮沼がやってくる。遺族を前にして横暴な態度を取る蓮沼に対して、両親はもちろん、常連の客もさらなる憎悪を向ける。


そして秋祭りのパレード当日、蓮沼は寝泊まりをしていた倉庫から遺体となって発見される──。



見所

約20年前、草薙が新人時代に携わった因縁の事件。その容疑者・蓮沼との因縁の対決...と思いきや、蓮沼は謎の死を遂げる。


『沈黙のパレード』の形式は過去作『容疑者Xの献身』や『聖女の救済』と同様、犯人たち(復讐者たち)がすでに明らかになっている倒叙のミステリーである。 


その為、見所としては、どのようにして犯行が行われたのか?


そして、ガリレオシリーズの特徴である科学を用いたトリックも登場する。次第に明らかになっていく心情描写の巧みさにも注目したい。

草薙と湯川

草薙と湯川は4年ぶりの再開を果たした。草薙は係長に、湯川は教授になっている。


主観だが二人は丸くなった(?)ような印象を受けた。歳相応な成長というべきか。お互いに地位があがり立場が変わる中、昔と同じような二人のやりとりが交わされるのを見ると...なんだか懐かしい感じがする。


キャラクターの成長が見ることができるのもシリーズ物の醍醐味だと思う。


過去の事件と今回の事件

『沈黙のパレード』では三つの事件について描かれている。

1.19年前の少女殺害事件
2.並木佐織の失踪事件
3.蓮沼の殺害事件


「君たちに先入観を与えたくない。しかしこれだけは教えておこう。過去の事件と現在の事件は、必ずどこかで繫がっている。ある人物によってね」

(引用:沈黙のパレード P246-247/東野圭吾)


事件の繋りとはなんなのか?またその意外な人物は誰なのか?草薙と湯川がたどり着く事件の真相とは──。

沈黙

タイトルに含まれる『沈黙』。これが物語の中で何度もでてくる。


一口に『沈黙』と言っても、それは様々な意味をもっている。


私欲のための沈黙であったり、長年の親友のための沈黙であったり、そして愛する者のための沈黙であったり──。


それがパレードの行列のように並んでいるようだった。


終わりに

シリーズ長編の第三段『真夏の方程式』が2011年の発売だったので、7年ぶりの新作長編の『沈黙のパレード』。二転三転する物語に一気読み必至の一冊になっていた。

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『図書館の魔女』「高い塔」の考察を好き勝手に語る【高田大介】


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『図書館の魔女』のタイトルになっている『図書館』──つまり「高い塔」
   


「高い塔」は人の意思をくみとることができるまた自らの意思を持っているという結論に達したので、そう考えるようになったきっかけを語っていく。


目次

「高い塔」についての考察

向きの変わる階段と回廊

読者が「高い塔」についての一番の疑問は、向きの変わる階段と回廊についてだろう。


マツリカが答えた理由を簡単にまとめる。

・言葉は時の運行に従う。(一方通行で不可逆)
・言葉は小から大へ階層構造持って組み上がっている。
・言葉を集めて、一つの書物が織りなされる。この書物は言葉の性質をそっくり受け継ぐ。(書物も一方通行で不可逆)
・図書館は書物の集積から織りなされた厖大な言葉の殿堂であり、図書館そのものが一冊の巨大な書物である。
・よって図書館は、言葉の性質を受け継ぐので、順路は一方通行で不可逆である。


しかし、どのようにして回廊が昇りも下りも時計回りに進むことができるように変化するのか?とても気になるが、回廊の変化している様子についての描写はない。


キリヒトが回廊が向きを変えたことに、進み始めてから気付いたということは、音もなく、なんの気配もなく、いつの間にか、自然に変化したということになるだろう(魔女との初めての対面に緊張して気付かなかった可能性もあるが)。


どのように変化したのか、現時点では残念ながら説明しきれない。


だが、ここで一つ大きな疑問が浮かぶ。それはマツリカたちが自然と回廊を下り始めた点だ。


マツリカたちが回廊を下ろうとしたときには、すでに回廊の向きが変わっていた。つまり、図書館がマツリカたちの意思をくみとって回廊を変化させているといっていいではないだろうか。


「高い塔」は意思をくみとり、意思を持つ

先程述べたように、「高い塔」は内部にいる人間の意思をくみとっているように思える。それを示すもう一つの根拠にマツリカの発言がある。

── いずれにせよお前をここで門前払いするわけにもいくまい。門前払いも何もすでに図書館はお前を迎え入れていることだし......。爺の手前もある、お前の師匠の面目もあろう、ひとまずは試みまでにしばらく使ってやることにする。

(引用:図書館の魔女1 P91/高田大介)


図書館はお前を迎え入れている。
この一言が鍵だ。


キリヒトが初めて図書館を訪れたとき、第一の扉はキリヒト自身がひらいた。その後、第一の扉と第二の扉に挟まれた(閉じこれめられた)。そしてしばらくしてから第二の扉が自動で開いた。


第一の扉と第二の扉に挟まれているとき(「高い塔」の内部に足を踏み入れたとき)、「高い塔」はキリヒトの意思をくみとっていたのだろう。


そして、「高い塔」にとって悪意のある存在ではないと判断され、第二の扉が開かれたと考えていいのではないだろうか。


つまり、「高い塔」は内部にいる人間の意思をくみとることができる。また自らの意思を持っている。と考えられる。


キリヒトが初めて「高い塔」に入るシーン

キリヒトが外側の一つ目扉を開けているシーン

扉は強く押してみてもゆっくりとした一定の速さでしか開かなかった。キリヒトの手に伝わる抵抗は扉の重さと錆びた蝶番のせいばかりではないことはすぐわかった。扉が開くにつれ左右のどこかでぎりぎりと大きな歯車が軋み合って動いている気配がある。

(引用:図書館の魔女1 P47/高田大介)

 
キリヒトが内側の二つ目の扉と向かい合っているシーン

キリヒトは手を扉のに押し当てたまま、しばらくじっとしていた。ただ耳を澄ましていた。第一の扉が閉まってからしばらくたつのに、まだ軋みながら動いている歯車の音が消えていなかった。キリヒトは息を静めて、口の中で自分の呼吸の数を数えながら、やまぬ歯車の音を聞き続けていた。
歯車の音はだんだんに調子良く響きはじめた。それと前後して重たい鎖が巻き上げられる音は聞こえる。ほどなく鎖が巻き上がる音が止まり、歯車がごとりと静かになり、どこかで閂のがちりと抜ける音が響き、手を触れていた扉が軋みを上げて観音開きに向こうへ開きはじめた。こちらに光が漏れてくる。扉が開く。

(引用:図書館の魔女1 P49/高田大介)


これらを読むと、第一の扉が開かれたことと連動して第二の扉が開かれたように思える。


しかしそんな単純な理由ではないだろう。なによりそれならわざわざ二重の扉にする必要がない。
(※追記:書物の管理環境を守るという点では、二重扉は十分な役割を果たしている)


単に連動する扉ならいつでも、誰でも「高い塔」に侵入できる道理となってしまう(第一の扉に鍵穴などがないことは、P47で語られている)。


このようなことからも「高い塔」が意思を持って、入場する者を選別しているように思われる。


またマツリカたちが図書館から出ていくシーンに決定的な説明が成されている。

図書館は真に心得のある者、その言葉を聞き取る者には、躊躇いもなく扉を開くのだ。

(引用:図書館の魔女1 P142/高田大介)


最後に

まだまだ多くの疑問を残す『図書館の魔女』。今回の考察があなたに何か新しい発見や疑問の提示ができていれば、なによりだと思う。


第三部 『霆ける塔』の詳細が未だにでてきていないのは心苦しい限りだ。


塔という文字が入っているし、「高い塔」にスポット当てた作品なのかな?「霆ける」の意味は、(雷が)激しく鳴り響く。だし、「高い塔」が直接侵略でも受けるのかな?


そんな妄想を繰り広げながら、じっくりと新作の発表を待とうと思う。



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『向日葵の咲かない夏』の感想を好き勝手に語る。爽やかな皮を被ったえげつない物語。【道尾秀介】


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油蝉の声を耳にして、すぐに蝉の姿を思い浮かべる人は、あまりいないだろう。雨音を聞いて、雨音のそれぞれが地面に接している瞬間を想像する人がいないように。

(引用:向日葵の咲かない夏 P5/道尾秀介)



『向日葵の咲かない夏』の感想を語っていく。ネタバレありなので未読の方はご注意を。

目次

あらすじ

夏休みを迎える終業式の日。先生に頼まれ、欠席した級友の家を訪れた。きい、きい。妙な音聞こえる S 君は首を吊って死んでいた。だがその衝撃もつかの間、彼の死体が忽然と消えてしまう。一週間後、 S 君はあるものに姿を変えて現れた。「僕は殺されたんだ」と訴えながら。僕は妹のミカと、彼の無念を晴らすため、事件を追い始めた。あなたの目の前に広がる、もうひとつの夏休み

(引用:向日葵の咲かない夏 裏表紙/道尾秀介)


感想

かなり好き嫌いが分かれる作品なのは間違いない。私は...あまり好きにはなれなかったかな。


「では、なんでわざわざ感想なんて書いてるんだ?」と思われる方もいるかも知れないが、好き嫌いととは関係なく、衝撃を受けた作品だったからだ。


物語自体が放つ異様な雰囲気、そして巧みに描かれた叙述トリック、ラストの展開などなど...。


読み始めたきっかけは『向日葵の咲かない夏』というタイトルにひかれたからだ。あらすじだけ読むと、「夏休みに生まれ変わった友人の頼みを聞いて事件を解決させる小学生の物語」と、爽やかなイメージを予想していたが、まったく逆の展開に、もうビックリ。(あらすじは読んでいたが前情報はまったく持っていなかった)


ジャンルとしてはホラー寄りのミステリーになるのだろうか。好きになれなかったのは、私自身がホラー系が苦手というのが大きいだろう。


絶望が見える

物語が始まって序盤から、「あ、これは救われない物語かもしれない」と感じた。

妹の遺骨の一部を、僕はいまでも大事に持っている。当時僕が使っていた、背の高い硝子のコップに入れて、ラップをかけ、机の上に置いている。

(引用:向日葵の咲かない夏 P6/道尾秀介)


最初に読んだこの一文だけでも若干の狂気を感じたが、読了しすべてを把握したうえだと、より一層の狂気を感じる。



S君が死んで、妹が死ぬこともあかされてて、主人公の家庭環境みると暗い未来しかみえない。


まぁ、そんな私の憶測では足りないくらい、真相はぶっとんでいたわけだが。

登場人物について

歪んでる。この一言に尽きる。
主要な登場人物全員の人格が歪んでるといっても過言ではないのでは?


主人公のミチオも、S君も、ミチオのお母さんも、岩村先生も、古瀬お爺さんも。


物語の至るところにその異常さが滲み出ているわけだが、その一番最初のインパクトがある部分がS君の書いた作文だった。

印象に残った部分

先程挙げたSくんの作文

やがて、王様の前に置かれたお皿の上に、ころころと二つの丸いものは転がり落ちてきます。それは塔のてっぺんにとらわれた人の、目玉なのです。
王様はフォークでそれをつきさし、うまそうにペロリと食べてしまいます。そして言うのでした。
『ああ、希望。私はこれを食べるのが大好きなんだ』
王様の好物とは、希望なのでした。王様はそれを食べて、国を大きくしていたのでした。しかしやがてその国は滅びてしまったといいます

(引用:向日葵の咲かない夏 P80/道尾秀介)

目玉を食べるというのもゾッとするが、その過程もえぐい。Sくん本来の異常性が伺える。

何かをずっと覚えておくということは大変なことだ。しかし、何かをわざと忘れることに比べると、大したことはない

(引用:向日葵の咲かない夏 P93/道尾秀介)


「ミカ、S君、死んじゃったよ」
指先でS君の体を挟み込んだまま、ゆっくりとミカに近づく。
「ねぇミカ──S君の事、好きだった?」
しゃがみ込み、ミカの身体を左手で捕える。
「食べちゃいなよ、ミカ」
左手をミカの口許に近づける。
「もう我慢しなくていいんだよ。S君なんて、食べちゃいな」
ミカは嬉しそうに口をあけた。S君の身体は、その中に消えた。

(引用:向日葵の咲かない夏 P378/道尾秀介)

これを読んでいるときにはまだ、ミカ=トカゲと分かっていなかったので、とにかく不気味だった。


しかし、あとから見ると「なるほど」と感心する。
「しゃがみ込み、ミカの身体を左手で捕らえる」とある。違和感なく読めるが、真相を知った後だとトカゲに対面しているとよく分かる。


「しゃがみ込み」は、それだけ小さいモノと対面しているのが分かるし、「ミカの身体を左手で捕らえる」は、『つかむ』ではなく『捕らえる』と表現していることが、人ではなく、トカゲと対面しているのだと想像させる。


見せ方は秀逸の一言

さて、先程『ミカ=トカゲ』と述べた通り『向日葵の咲かない夏』のトリックは、「Sくんやミカが他の生き物に生まれ変わった訳ではなく、すべてがミチオの妄想で、それを叙述トリックによって見事に隠している」ことである。


叙述トリックの見せ方がとにかく秀逸。叙述トリックにいて、まとめている方のサイトがあったので貼っておく。見事に考察なされているので是非とも。
http://www5a.biglobe.ne.jp/~sakatam/book/himawari.html


ラスト

太陽は、僕たちの真後ろに回り、アスファルトには長い影が一つ、伸びていた。

(引用:向日葵の咲かない夏 P462/道尾秀介)


「僕たち」と言っておきながら、「長い影が一つ」と言っているので、両親は火事で亡くなりミチオだけ生き残ったということは分かるが、ミチオが両親を何の生き物で妄想していたかは明らかにされていない。


しかし、ミチオ自身がP69-70でお父さんはカメだろう。お母さんはカマキリに違いない。と語っている。


恐らくラストでミチオが持っている生き物は、その通りトカゲとカメとカマキリだと思う。深読みをすればこの生き物の選択もなかなかに残酷だ。


カメが長生きなのは言うまでもない。実はトカゲも長生きで、日本全土に生息するニホンカナヘビも寿命は7年前後とされている。(ミカは4年だったが)


それに比べるとカマキリは生きても1年と、かなり短命だ。この寿命の差もミチオの家族に対する好き、嫌いが現れているように思える。


メスのカマキリがオスのカマキリを食べてしまうという性質があるが、お母さんが圧倒的に幅をきかせている家庭環境を見るとその例えも、なんだかしっくりとくる。

最後に

実に、爽やかな皮(タイトル)を被った、えげつない物語だった。


ホラー系が苦手な私からすると、なかなかにトラウマが植え付けられそうな展開だったが、いい意味でも悪い意味でも決して忘れる事ができない一冊になったことは間違いない。

『容疑者Xの献身』の感想を好き勝手に語る【東野圭吾】


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ガリレオシリーズ長編第一作目の『容疑者Xの献身』の感想を語っていく。


ネタバレありなので、未読の方はコチラをどうぞ。
『容疑者Xの献身』あらすじ・紹介

長編ガリレオシリーズ あらすじ・紹介


目次

感想

湯川が石神の家を訪れたときにした数学に関する会話がトリックの全体像をさり気なく伝えているのと流石だなと思った。

「P≠NP問題というのは当然知ってるよな」湯川が後ろから声をかけてきた。
石神は振り返った。
「数学の問題に対し、自分で考えて答えを出すのと、他人から聞いた答えが正しいかどうかを確認するするのとでは、どちらが簡単か。あるいはその難しさの度合いはどの程度か──クレイ数学研究所が賞金をかけて出している問題の一つだ」
「さすがだな」湯川は笑ってグラスを傾けた。
石神は机に向き直った。
数学は宝探しに似ている、と彼は思っている。まずどのポイントを攻めればいいかを見極め、解答に辿り着くまでの発掘ルートを考察するのだ。そのプラン通りに数式を組み立てていき、手がかりを得ていく。何も得られなければ、ルートを変更しなければならない。そうしたことを地道に、気長に、しかし大胆に行うことによって、誰も見つけられなかった宝すなわち正解に行き着けるのだ。
そうした喩えを使うなら、他人の解法を検証するということは、単に発掘ルートをなぞるだけの簡単なことのように思える。しかし実際はそうではなかった。間違ったルートを進み、偽の宝物に辿り着いている結果について、その宝が偽物だと証明するのは、時に本物を探すよりも難しい場合がある。だからこそP≠NP問題などという途方もない問題が提示されているのだ。

(引用:容疑者Xの献身 P117-118/東野圭吾)

間違ったルートを進み、偽の宝物に辿り着いている結果について、その宝が偽物だと証明するのは、時に本物を探すよりも難しい場合がある。
この部分がそのまま今回のトリックに当てはまる所だ。



表紙

漆黒の中に咲いている一輪の赤い薔薇。シンプルながらも、とても印象深い表紙の『容疑者Xの献身』


作品中に薔薇は出てこないと記憶している。一見関係ないように思えるが、花言葉などを含めて考えると、なんとなく答えが見えてくる。


薔薇は、色や本数によって花言葉が変わる。ちなみに赤色は 「あなたを愛してます」「愛情」「美」「情熱」「熱烈な恋」「美貌」


そして1本だと「一目ぼれ」「あなたしかいない」


まさに石神の気持ちを表現しているとしか思えない。黒一色の所は自殺しようと真っ暗の気持ちだった石神を、そして薔薇は挨拶に来た花岡靖子に対しての気持ち、と考えるとしっくりくる。

ラスト

尽くす事を愛と呼ぶのなら、石神以上の愛を私は見たことがない。


P358〜、湯川が靖子に真実を語り始める。ここからの物語の収束具合がえげつない。


工藤も普通に気のきく”いい人”なのだが、石神とは比べ物にならない(比較できるものではないかもしれないが)。工藤の存在が石神の献身さ、というものを際立たせている。


石神が靖子に送った手紙が私は忘れられない。

『工藤邦明は誠実で信用できる人物だと思われます。彼と結ばれることは、貴女と美里さんが幸せになる確率を高めるでしょう。私のことはすべて忘れてください。決して罪悪感などを持ってはいけません。貴女が幸せにならなければ、私の行為はすべて無駄になるのですから。』

(引用:容疑者Xの献身 P/東野圭吾)

自分がしたことをすべて伏せたうえで、このような手紙が送れるものなのだろうか。自分のすべてを犠牲にして、彼女の幸せを願い、自分を忘れて嫉妬を抱いていて相手と結ばれたほうがいい。なんて...。


やりきれない切なさと、悲しさと、石神の覚悟に本当に涙がでる。献身という言葉以上に相応しい言葉が見つからない。




関連記事


『容疑者Xの献身』のあらすじ・紹介【東野圭吾】


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長編”ガリレオ”シリーズ第一作目の『容疑者Xの献身』を紹介していく。


”ガリレオ”シリーズの説明や他作品の紹介はコチラをどうぞ。
長編”ガリレオ”シリーズの紹介

感想はコチラ
『容疑者Xの献身』感想


目次

あらすじ

天才数学者でありながら不遇な日々を送っていた高校教師の石神は、一人娘と暮らす隣人の靖子に秘かな想いを寄せていた。彼女たちが前夫を殺害したことを知った彼は、二人を救うため完全犯罪を企てる。だが皮肉にも、石神のかつての親友である物理学者の湯川学が、その謎に挑むことになる。ガリレオシリーズ初の長篇、直木賞受賞作。

(引用:容疑者Xの献身 裏表紙/東野圭吾)


登場人物とあらすじ補足

花岡親子

花岡靖子は中学生の娘・美里とアパートで二人暮らし。ある日、靖子の元夫・富樫慎二がアパートを訪ねてくる。富樫とはDVなどが原因で離婚したのだった。


富樫から逃げるように離婚をしたのは、ずいぶんと前の話。しかし富樫は金をせびるために、再び靖子たちの前に現れる。また生活を壊されると思った靖子と美里は衝動的に富樫を殺してしまう。


死体を前に途方に暮れる靖子だったが、その時アパートの隣の住人石神が訪ねてくる。一度は誤魔化すも、石神に殺人を行ったことを知られてしまう。

天才数学者 石神哲哉

部屋を一瞥しただけで、花岡家に起こった悲劇を把握してしまう。その観察力と論理的推理力は、まさに天才的。
   

そんな天才的な頭脳の持ち主だが、報われない日々を過ごしていた。結局その頭脳を生かすことができずに高校教師として働いたていた。


隣人の靖子には秘かな想いを寄せていた石神は、二人を救うため完全犯罪を企てる。死体の処理を請け負い、それだけでなく、花岡親子にこれから来るであろう警察にどのような対応をするのか、アリバイをどう作るのか、など様々な策略をたてる。


だがそんな折に、石神の大学時代の友人である物理学者の湯川学が現れる。

刑事 草薙俊平

湯川と石神を引き合わせたのは草薙であった。草薙は捜査を進める中で石神が自身の出身大学と同じ「帝都大学」と知り、そのことを湯川に話したことがきっかけである。


湯川と草薙はかつて帝都大学バドミントン部での同期だった。以前にあった摩訶不思議な事件の相談を行って以来、たびたび湯川の知恵を拝借している。

天才物理学者 湯川学

石神と湯川は大学時代の同期である。


草薙から石神の存在を聞かされた湯川は、石神のアパートを訪ねる。久しぶりに再開した二人、湯川から見た石神は以前と変わらず数学一筋の人間であった。


湯川がそんな石神から違和感を感じ取ったのは、他の人間では気づかない、ほんの些細な言動からで...。


天才vs天才 愛とはなんだ

『容疑者Xの献身』を簡単に説明すれば、惚れた女性の犯罪を隠す石神と、犯罪の秘密に迫る湯川の二人の天才による対決が描かれた物語だ。


あらすじなどから分かる通り『容疑者Xの献身』は倒叙もののミステリーである。(倒叙とは、ミステリーで最初から犯人が明かされて、主に犯人視点で物語が進行していくもの)
 

石神と湯川は大学時代の同期であり、お互いに「天才」という意味では同じであったが、決して似ている二人ではない。


湯川は頭脳明晰、容姿端麗おまけにスポーツ万能...とすべてを兼ね備えた完璧人間と言っても過言ではない。このようなことに対して石神は、湯川と対極の人物である、と説明すればわかりやすいだろう。


この二人によって展開される頭脳戦が『容疑者Xの献身』の見所の一つである。石神による人の盲点を突く、天才的発想の隠蔽工作は予想の斜め上をいく。また、その石神の隠蔽工作に対して湯川はどこから真実を見抜くのか...!?



読み終えて

ガリレオシリーズといえば科学を使った摩訶不思議なトリックの印象があったが、『容疑者Xの献身』はそれとは違い、ひたすらな論理的思考に基づいたトリックだった。


そのため、今回のトリックは特別な知識がなくても読者は予想することができる。(難しいとは思うが...)


知ってしまえば、「なるほど!」となるかもしれないが、まぁ思いつかない。そトリックは『論理的には実現可能だが、実行は限りなく難しい』ものだ。


読了後にはタイトルの意味を深く噛み締める事になるだろう。そして石神という人間に対してきっと涙するはずだ。

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