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【小説】『ダ・ヴィンチ・コード』の感想を好き勝手に語る【ダン・ブラウン】


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汝が聖杯を見つけるのではなく、聖杯が汝を見いだすのである。

(引用:ダ・ヴィンチ・コード〈下〉P57/ダン・ブラウン)


『ダ・ヴィンチ・コード』シリーズの第二作目、シリーズの名称にもなった『ダ・ヴィンチ・コード』の感想を語っていく。


シリーズ一作目は『天使と悪魔』だが何故、二作目である『ダ・ヴィンチ・コード』がシリーズの名称となっているのか?


それが納得できるほどの濃密な作品で面白いの一言に尽きる。


以下ネタバレありで感想を語っていくので未読の方はご注意を。




感想

実は『ダ・ヴィンチ・コード』を読んだのはこれで3度目になる。とはいえ以前読んだのがだいぶ昔だったのと、内容を理解しきっていなかったので新鮮な気持ちで読むことができた。


今回は『ダ・ヴィンチ・コード』を読む前にシリーズの一作目と三作目『天使と悪魔』と『インフェルノ』を直近で読んでいた。


予備知識を多少ついていたおかげか3回目の再読とは思えないほど熱中して読み進めることができた。


やはりシリーズ系統のものは忘れないうちに一気に読むに限る。


第一作『天使と悪魔』と比較するとアクションシーンは少なめで、その分を濃密な暗号につぎ込んでいる印象。

表紙

私が読んだのは単行本なのですが、インパクトがある『モナリザ』でシンプルに飾られている。


『モナリザ』に目がいってしまうが、作中に登場する暗号も書かれている。

暗号

史実を絡めた暗号がシリーズを通しての特徴である。しかし『ダ・ヴィンチ・コード』では史実に加え、数学的要素なども絡めれている。


閃き次第では読者も暗号を解けるというのはロマンがあっていい。


表紙に載っている暗号も鏡文字で閃きさえあれば読者も気付くことができる。まぁ私はまったく分からなかったが...。


序盤に登場するフィボナッチ数列とアナグラム(文の中の文字を入れ替えて、別の意味にする)の暗号

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(出典:ダ・ヴィンチ・コード〈上〉P61/ダン・ブラウン)

これを見て一気に興味をひかれた。シンプルかつ完成度が高く、暗号に含まれた多義性も見事。


しかし、これを超えていったのが白と黒のクリプテックスによる暗号。


もうこれに至っては、読者が読み解くのはまず不可能。暗号解読官のソフィー、象徴学者のラングドン、宗教学者のティーピングの三人だからこそ解ける暗号。


その暗号解読の過程をたどっていくのが楽しすぎる。鳥肌ものである。


雑学

物語の本筋とは別にして、ラングドンが語る雑学も印象に残っているものが多い。例をあげれば「黄金比について」や「13日の金曜日が不吉である由来」などである。


この情報の多彩さも『ダ・ヴィンチ・コード』シリーズの魅力の一つだと思う。


是非ともラングドン教授の授業を受けてみたいと思ってしまう。私自身、英語ができないという点で致命的だが。



黒幕

今回も見事に騙された。誘拐までもが計算のうちだとは思いもせず...。まぁ確かに執事であるレミーが主であるティーピングに気づかれることなく隠し部屋を作ったり、盗聴機器を揃えたりするのも無理な話。


冷静に考えれば分かることだが、読んでる最中にはまったく気づかなかったので、正体が明らかになったとにはラングドンたちと同じように驚きを隠せなかった。

ラスト

「やられた!!」
と思わずにはいられない。うまくまとまりすぎてて溜め息がでる。


個人的にルーヴル美術館の登場が最初だけでなんだか物足りない感はあったのだが、最後にもってくるとは...!!ルーヴルに始まりルーヴルに終わる見事な物語だった。




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【小説】『天使と悪魔』の感想を好き勝手に語る【ダン・ブラウン】

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「厳正なるコンクラーベ。その伝統のしきたりが一夜にしてすべて破られる」


『ダ・ヴィンチ・コード』シリーズの第一作目の『天使と悪魔』

宗教と科学
物質と反物質
希望と絶望
天使と悪魔

相反する二つが織り成すストーリー

文句なしに面白くて、あっという間に読み終えてしまった。


以下ネタバレありで感想を語っていくので未読の方はご注意を。






感想

  • イルミナティは本当に復活したのか?
  • 黒幕は誰なのか?
  • 何故、反物質があるのがバレたのか?
  • 四大元素の導く先は?


と今回も興味をひかれる謎が満載。そして史実を絡めた設定と次々現れる暗号は読んでいて飽きがこない。


暗号

一時間ごとに一人が殺されていくという極限状態下での推理。専門分野とはいえラングドンの有能っぷりはお見事。


最近読んだ『ダ・ヴィンチ・コード』シリーズの『インフェルノ』と比べると暗号のボリュームがある。


四大元素に関する暗号は私にとっては必要な知識が専門的すぎて「考える」までいかず、ラングドンが解く過程をなぞるだけだった。


しかしそれでもテンポの良さと、時間制限のあるドキドキ感と、新たに触れる知識に読みごたえは抜群。


そして作中に登場するアンビグラムは感動すら覚えた。


「土:earth」

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(出典:天使と悪魔〈中〉P159/ダン・ブラウン )

「空気:air」

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(出典:天使と悪魔 〈中〉P205/ダン・ブラウン)


「火:fire」


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(出典:天使と悪魔〈中〉P317/ダン・ブラウン )


「水:water」


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(出典:天使と悪魔〈下〉P77/ダン・ブラウン )



各単語だけでもすごいと思ったのに、それをすべて合わせた「イルミナティ・ダイヤモンド」
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(出典:天使と悪魔 〈下〉P77/ダン・ブラウン)


ずっと眺めてられる...。
fireとair掛け合わせてる所とか素晴らしすぎると思うのですがどうでしょう?




ラスト

下巻のラスト半分で一気にひっくり返えった印象。コーラーが黒幕かと思っていたがカメルレンゴだったとは...今回も見事に騙された。


とは言え違和感を感じた所はあって、それがヘリコプターのシーン。ラングドンのことを置き去りにして自分だけパラシュートで降りるというのが今までのカメルレンゴのイメージとは異なった。


私のイメージは、もっと慈悲深い...というか、あの場面で人を見捨てるような人物ではないと思っていたので、そこで少し疑問は芽生えた。


コーラーがカメルレンゴが黒幕だったという映像と音声さえ残していなかったら、すべてが彼の思い描く通りになっていただろう。


自作自演といえばそれまでかもしれないが、そんな言葉ではすまされない狂気に似た執念を感じた。


事実、イルミナティを仕立てあげての計画は見事だったし、人々に信仰心を復活させたてのけたは流石の一言。


父親の隠された真実は、カメルレンゴにとっては残酷この上ないものだった。


黒幕として間接的に多くの人間を殺害した彼だが、拒否感を抱くほど嫌いになれないのは宗教について、神について説いたカメルレンゴの演説に痺れたが大きいと思う。


ラングドンのヘリコプターダイブは如何せん現実離れしすぎな感はあったが、確かに物語始めでコーラーが自由落下についての伏線を張っていたなぁと思い出した。


最後に

『天使と悪魔』は宗教と科学の対立について片寄りなく双方からの主張がなされてた印象。


前半・中盤は、暗号を解読して枢機卿たちを救うことができるのか?そして後半はイルミナティの真実と黒幕の正体は?


と、隙のない構成になっており久しぶりに時間を忘れて読みふけってしまえる作品と出会えることができた。


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【小説】『インフェルノ』の感想を好き勝手に語る【ダン・ブラウン】


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『インフェルノ』日本語訳で『地獄』





歴史、美術史に疎く、今回スポットがあてられている「ダンテ」ですら名前しか知らなかった私だが、存分に楽しむことができた。


そんな私ですら面白かったのだから、元々そちらの方面に教養のある方ならさぞかし楽しめたことだろう。


ヨーロッパの歴史や美術が好きな方には、もちろんオススメできる一冊だ。だが今まで歴史や美術に興味がなかった方に逆にオススメしたいと私は思った


確かに歴史的・芸術的・宗教的にも物語中の情報量は半端ではない。有名な人物・建造物も山程出てくる。


それらが物語の進行と暗号と供に登場するので、ただ教科書を眺めているよりはよっぽど興味を持つきっかけになるし、印象にも残ると思う。



以下ネタバレありで感想を語っていくので、未読の方はご注意下さい。





感想

さて、「ダン・ブラウン」の作品を読んだのは『ダヴィンチ・コード』に続いて2作品目。


単刀直入に言おう、面白かった。


芸術・建造物の歴史を巡る謎解きでもあり、現代の社会問題を提起している作品でもある。


相変わらずラングドンは様々な場所に飛び回ることになるのだが、そのおかげかイタリアのフェレンツェには行きたくなるしトルコのイスタンブールにも行きたくなった。


再読してなお面白い。2回目だからこそ気づける箇所があって、こんなに細かな伏線が散らばっていたのかと感心する。


再読していない方は、「ゾブリスト」が登場する冒頭場面だけでも読んでいただきたい。


一周してから改めて読むと、彼の行動、決意が身に染みて感じられる。

わたしが贈るのは、未来だ。
わたしが贈るのは、救済だ。
わたしが贈るのは、地獄(インフェルノ)だ。

(引用:インフェルノ〈上〉P12/ダン・ブラウン)

の本当の意味が理解できる。
「わたしが贈るのは、地獄」まさに文字通りだった。



暗号

現存する美術品や歴史的建造物をなぞっての暗号は健在。だが『ダ・ヴィンチ・コード』と比べると単純でスムーズに進みすぎな感はあった。



ラスト

予想外の連続。シエナが敵側だったというのも驚いたが、てっきりラングドンたちがウィルスを拡散させる前に発見するとばっかり思っていた。無事に発見してめでたしめでたし...と。


しかし、そうは問屋がおろさない。いざゾブリストの動画の場所にたどり着くと、「もうウイルスは放たれてる!?しかも一週間も前!?」


「えぇ...もう絶望しかないじゃん」



物語中で黒死病のイメージを散々植え付けられてしまっていたので、ウィルス=黒死病 の発想をしていて、あと少ないページ数でどうまとめるのだろうと不安になった。


人口問題

ダンテの『神曲』と供にもうひとつスポットをあてられているのが人口爆発の問題。改めてグラフを見るとゾッとする。


実際に現代で起こっている問題なだけに、他人事ではない。この人口爆発に対して警鐘を鳴らし、そして強行手段に踏み切ったゾブリスト


「世の中を変えるのは大衆ではなく、一人の天才なんだな」と。


フィクションとは分かっているものの、『生殖能力を奪うウィルス』とはゾッとする反面、よくこんなこと考えつくなぁと思った。


これ以上に速効性があり、効果的な手段は他にないのではないだろうか。黒死病とは異なり死体があちこちに転がることもないし。



この物語が指し示すように私たちは目を背けがちだが、もっと人口問題を真摯に考えなければならないのでないだろうか。


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【ネタバレあり】『魔力の胎動』の感想・解説を好き勝手に語る【東野圭吾】


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不幸な偶然の重なり──そんな簡単な言葉で片付けていいものだろうか。
しかしそれ以外には考えられない。人為的なものが関わる余地などゼロだ。この世に魔力とでもいうべきものが存在しないかぎりは──。

(引用:魔力の胎動/東野圭吾)





『ラプラスの魔女』の前日譚である『魔力の胎動』の感想を語っていく。未読の方はコチラをどうぞ。
─『魔力の胎動』紹介─






以下『ラプラスの魔女・魔力の胎動』双方のネタバレありなのでご注意を。





感想・解説

『ラプラスの魔女』の時系列より完全に前の物語だと思っていたので、タケオが登場した時点で「あれ...この人は...!?」と驚いた。


時系列を整理すると
『魔力の胎動』でタケオは三章から登場する。タケオはボディーガードという名目で円華の外出にはいつも付き添っているが、二章までは円華と供に行動していない。


つまり二章と三章の間で『ラプラスの魔女』がスタートしている。


そしてタケオが円華の護衛についてから七ヶ月ほどたってから、円華は雪の日にタケオたちの元から逃亡する。


「七ヶ月」というのは『ラプラスの魔女』本編では省略されているが、その「七ヶ月」の間にあった出来事が『魔力の胎動』の三章、四章にあたる。


そして青江視点でいうと『魔力の胎動』五章の終了時点が『ラプラスの魔女』のスタートに繋がっている。


ということで完全に前の話という訳ではなく双方が交差している物語となっていて、『ラプラスの魔女』を読んだ方なら、より楽しめる作品だと思う。


というより『ラプラスの魔女』を読んだ方でないと不完全燃焼感が強いだろう。五章の終わり方なんて特に。


予想外

三章までは、普通に円華が能力で人助けしつつ気流・乱流について理解を深めていくというもの。


このあたりが『ラプラスの魔女』に繋がってるのかと軽く思っていたが四章から人助けの物語だったのが一変衝撃の連続だった。



ナユタの正体についてもビックリだったし、なにより「甘粕才生」「凍える唇」「水城義郎」のワードが立て続けに登場して「こうやって繋がるのか!やられた!!」と思わずにはいられなかった。


水城義郎は『ラプラスの魔女』では財産目当てであっさりと殺されてしまい、哀れな被害者だが『魔力の胎動』を読むと、因果応報だったんだなと思い知らされた。



最後に

『ラプラスの魔女』ありきの物語であり、欠けているところ...ではないが、歯痒いところを補った作品というのが『魔力の胎動』の印象。


一章のスキージャンプの話も、二章のナックルボールの話も東野圭吾らしい読み進めやすい理系チックな話。感動を誘ういい話だが、後半のインパクトが強すぎた。






 

『魔力の胎動』は前作『ラプラスの魔女』を再読したくなる一冊だった【東野圭吾】


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自然現象を見事に言い当てる、彼女の不思議な“力”はいったい何なのか――。彼女によって、悩める人たちが救われて行く……。

(引用:魔力の胎動 東野 圭吾:書籍 | KADOKAWA)


2018年3月23日に発売した東野圭吾の最新作
『魔力の胎動』を紹介する。

感想はコチラ
─『魔力の胎動』感想─

はじめに

『魔力の胎動』は2018年2月に文庫化され、5月に映画化を控えている『ラプラスの魔女』の前日譚となっている。


『ラプラスの魔女』を読んだことがない方は先にそちらを読むことを強くオススメする。


-『ラプラスの魔女』紹介-

-『ラプラスの魔女』感想-



紹介

冒頭にも述べたが『ラプラスの魔女』の前日譚になっている本作『魔力の胎動』


私は『ラプラスの魔女』は好きな作品なのだが、ネットで評判を見ると否定的な意見が数多く見られる。


そのような方には『魔力の胎動』はあまりオススメできない。これを読んだからといって『ラプラスの魔女』に対する考え方が変わるかといったら、そんなことはないだろう。


逆に『ラプラスの魔女』が好きな方には是非読んでもらいたい一冊。



『ラプラスの魔女』と交差してる部分もあるので、それらの伏線も気にしながら読むと、よりいっそう楽しめるはずだ。



そして読了後は前作を読み返したくなるだろう。


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主な登場人物


羽原 円華(ウハラ マドカ)
前作にも登場したラプラスの魔女

工藤 ナユタ
患者の元へ各地を飛び回る鍼灸師(シンキュウシ)
その腕をかわれトップアスリートの患者も多い。

筒井 利之(ツツイ トシユキ)
大学准教授。専門は流体工学


青江 修介(アオエ シュウスケ)
前作にも登場した大学教授。専門は地球科学


ストーリー

第一章:あの風に向かって翔べ
第二章:この手で魔球を
第三章:その流れの行方は
第四章:どの道で迷っていようとも
第五章:魔力の胎動


一~四章は円華がラプラスの魔女の力を使って悩める人たちを救っていく物語。


そして五章は青江が過去に出会った事件で、『ラプラスの魔女』の事件に呼ばれるきっかけとなる物語。


あらすじ

鍼灸師の工藤ナユタは不思議な力を持つ少女、羽原円華に出会う。円華は一目見た人物の身体の異常が分かったり、風向きが読めるなど常識を逸した能力を持っていた。
ナユタと円華はその不思議な力で悩める人たちを救っていくが、ある日円華が口にしたタイトルにナユタは衝撃を受け......。


終わりに

『魔力の胎動』は前作の復讐劇とはうってかわって心温まるようなヒューマンミステリーといった印象を受けた...が、それだけで終わらないのが東野圭吾。



所々に見え隠れする前作の影に、「あれ?これって確か...」と思うところがあるはずだ。



2018月5月4日に映画が公開される『ラプラスの魔女』を控え、この作品で気持ちを昂らせておくのも一興ではないだろうか。


 

『図書館の魔女』ニザマとミツクビについての解説・考察【高田大介】


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『図書館の魔女』でマツリカたちにとって宿敵の相手であるニザマの宦官中常侍ミツクビ


今回はミツクビの考察、またモチーフとなった存在に迫る。それに伴い、ニザマについての解説・考察が必要と判断したため、前半はニザマについて軽く説明し、後半はミツクビについて述べていく。


ニザマ

まずはニザマについて


物語の中ではカタカナ表記で「ニザマ」と書かれているが、物語序盤では漢字で「二津間」と紹介されており、「二つの岬に囲まれた入り江」の意。


さて、この「ニザマ」だが文化や言語に注目すると、モデルとしては中国の影響を大きく受けていると考えられる。


例を挙げると、宦官・避諱・漢文などである。

宦官(かんがん)

宦官は中国の文化でもある。

東洋諸国で宮廷や貴族の後宮に仕えた、去勢された男子。中国・オスマン帝国・ムガル帝国などに多かった。王や後宮に近接しているため勢力を得やすく、政治に種々の影響を及ぼした。宦者(かんじゃ)。

(引用:宦官(かんがん)とは - コトバンク)


避諱(ひき)

マツリカが見破った避諱も中国の文化

中国を中心とする漢字文化圏にかつて見られた、皇帝など目上の人物の本名(諱)を直接口にしたり、書いたりすることをタブー視する風習のこと。

(引用:避諱とは - 日本語表現辞典 Weblio辞書)


などなど中国の文化を色濃く反映している。

ミツクビ

リアルな世界観にある『図書館の魔女』においてミツクビはかなり異質な存在である。


川でマツリカたちを襲撃したや人形の館での蚩尤(こいつも中国に関連があり、中国神話に登場)も異質ではあるが、珍しい種族として納得はできる。


しかし、ミツクビは人であるにも関わらず、最大の特長である三つの首。これほど特異である人は『図書館の魔女』世界では唯一と言っていいのではないだろうか。まさに魔術師。

(鬼を秒殺した彼も十分異質だが今回は置いておく)

特長

外交万事にわたる鋭い判断力と交渉能力、時には政敵の弱みを見逃さぬ非情さ、また何十年たってもいっこうに衰えを見せぬその容貌──同盟市諸侯の中には彼を魔術師といって敬遠し、〈略〉

(引用:図書館の魔1巻 P167/高田大介)


ミツクビは何歳なのでしょう?私はニザマ帝よりも上のイメージなのですが。



さて、ミツクビの最大の特長・謎である三つの首について。

ミツクビの左の影は自分の眼窩に指を突き立てんばかりにきつく両の手をまなこに押し当て、小刻みに痙攣する首を左右に回していた。〈中略〉右に立つ影の方は反対に、顔の左右に両手をぴたりと押し当てて、すべての音を拒絶しているような仕草である。

(引用:図書館の魔女 1巻 P186-187/高田大介)

この場面を読んでいて日光東照宮の三猿(見猿・聞か猿・言わ猿)を思い浮かべたのはきっと私だけではないはず...(ないよね?)


しかし、この三猿ではなく、ミツクビの元と思われる存在が別にあった。


今まで散々ニザマと中国の関連を述べたが、ミツクビの存在も中国の伝説に由来するものだと考えられる。それが

三首国民(サン・ショウ・クオ・ヤン)

中国の伝説と伝承に登場する怪奇な部族。人間型の体に3つの頭を持つとされる『山海経』に書かれており、中世ヨーロッパの動物寓話集と同じく、旅行者の話が大げさに伝わったものである。

(引用:世界の怪物・神獣事典 P207/キャロル・ローズ)


文字通りの三首


てっきりオリジナルかと思ってた...『図書館の魔女』におけるミツクビの描写とは若干異なるが、この存在『三首国民』がミツクビのルーツではないだろうか。

最後に

余談だが3つの身体に1つの頭をもつという『三身国民(サン・シェン・クオ・ヤン)』という伝説もあるようだ。


薬師(パルマキー)がこれだったり...流石にないか。


また彼の通り名が、ミツクビのそれと同じく個人の名前としてはいささか不可解な特徴を持っていたことにも触れておこう。ミツクビはその名に三という数詞を含んでいることからも予想されることであるが、薬師の名前にも一人の人間を指すには不自然な部分がある──彼らの呼び名はいずれも複数形の語尾をもっている。

(引用:図書館の魔女1巻 P173-174/高田大介)



第一作『図書館の魔女』では、無惨にも退散するしかなくなったミツクビ。


しかし第二作『図書館の魔女 烏の伝言』では、裏切り者を見つけ更に刺客を送り込むことまでしている。


状況は整ってきているということだろうか?遂に第三作『霆ける塔』ではマツリカたちとの直接対決になるのかもしれない。


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月面版ミッション・インポッシブル『アルテミス』を紹介する【アンディ・ウィアー】


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密輸ガール・「ジャズ」が月面都市で大暴れ!?
『アルテミス』を紹介する。
感想はコチラ


あらすじ

人類の初の月面都市アルテミス───
直径500メートルのスペースに建造された5つのドームに2000人の住民が生活するこの都市で合法/非合法の品物を運ぶポーターとして暮らす女性ジャズ・バシャラは、大物実業家のトロンドから謎の仕事を受ける。それは都市の未来を左右する陰謀へと繋がっていた‥....。『火星の人』で極限状態のサバイバルを描いた作者が、舞台を月に移してハリウッド映画さながらの展開で描く第二作

(引用:アルテミス〈上〉裏表紙/アンディ・ウィアー)

月面都市『アルテミス』

表紙には月が描かれ、さらに「4つの大きな丸」と「1つの小さい丸」が線で繋がっているのがわかる。


これこそがタイトルになっている月面都市『アルテミス』を表している。


街全体は直径500メートル。大小5つの球体は″バブル″と呼ばれ、球体の半分は月面に顔を出し、もう半分は地下に埋まった構造だ。


そして表紙でいう球体を繋ぐ線の部分は、各バブルを行き来するためのトンネルとなっている。



ジャズ

ジャスミン=バシャラ、通称ジャズ。この物語の主人公で、ポーター(現代の配達人)として働いている。


何があってもへこたれない性格、どんな場面でも見せるユーモアなセンス、そして有能すぎるほどの技術と知恵と思考力。


彼女の軽快な語りで物語は進行していく。


ジャズはポーターの正式な仕事とは別に地球からの密輸品を取り扱っている。ある日、密輸相手のお得意様「トロンド」から謎の仕事を依頼されるが、成功報酬はジャズの月収のおよそ100倍


二つ返事で仕事を受けたジャズに待ち受けているのは...

不可能と思われるミッション

トロンドから依頼されたミッションは、まさに「不可能」と言っていいほど無謀なものだった。


そのミッションにジャズは己の頭脳を最大限に活かして挑む。しかしそのミッションさえも物語の序章にすぎず......



リアル

地球の1/6の重力下にある月、その重力だと私たちの生活とはどう違うのか?また真空中ではどのような問題があるのか?


それら月ならではの事情がジャズの軽快な語り口調で述べられていて、とてもサクサクと頭に入ってくる。


そしてなにより月面都市アルテミスの設定がなによりリアル。解説を読んでいて納得した。


そもそも何故、月面に都市を建設する必要があるのか?もっともな疑問だ。


わざわざ月面都市を作ったのは何故か?そのメリットはなんなのか?


そんな裏事情も推測しながら読むとより楽しめるかもしれない。