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読書やらカフェ巡りが趣味。読んだ本、行ったカフェの紹介がメインのブログです。ごゆるりとどうぞ。

『図書館の魔女 1巻』の感想を好き勝手に語る【高田大介】

ここには言葉が渦巻いている。針を落としてもそれと気づくほどの沈黙をたたえたこの図書館に、空恐ろしいほどの量の言葉が漲って、渦巻いているのをキリヒトは感じた。(中略)図書館の沈黙は、言葉に充ち満ちた沈黙だったのだ。

(引用:図書館の魔女1 P95-96/高田大介)


今回は、″言葉″をテーマにしたファンタジー小説『図書館の魔女』の感想を語っていく。


内容にはガッツリ触れていくので未読の方はコチラをどうぞ。




さて、初めてこの作品『図書館の魔女』を読んだときの衝撃は忘れられない。1巻序盤こそ、読み進めにくいなぁと思ったものの、キリヒトとマツリカが出会いに関心をひかれ、そして「言葉とは?図書館とは?」というマツリカの答えを読んでから一気に物語に引き込まれた。



文庫本では第1巻~第4巻で構成され、合計ページは1800ページを越える長編作品だが、何かにとりつかれたかのように読みふけってしまった。


間違いなく私の読書人生で一番の作品である。

感想

″言葉″とは、こんなにも深いものだったのかと考えずにはいられなかった。今日まで普通に話し、書き、読んでいたものの印象が変わるくらいの衝撃だった。


それがファンタジーの作品で思い知らされた事がまた衝撃だった。


そもそもファンタジーとはなんなのだろう?

空想小説。現実とは別の世界・時代などの舞台設定や,超自然的存在や生命体などといった登場人物の不可思議さに,物語の魅力を求めたもの。

(引用:https://kotobank.jp/word/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%82%B8%E3%83%BC-178426)

確かに『図書館の魔女』は現実とは別の世界の物語である。図書館の階段やマツリカたちを襲撃した怪物は確かに現実の物とはかけ離れた存在だ。


だがしかし、『図書館の魔女』の世界は、この場所が、この物が実際に存在しているかのように感じることができる。そして、そこに生きる人々も自然体に描かれている。


非現実的世界であるにも関わらず、現実世界であるような錯覚すら覚える。そこまで完成された世界観もこの作品の魅力であると思う。


第1巻

第1巻で特に印象的に残っているのは
・図書館と言葉
・指話
・井戸の冒険
だろうか?細かくあげていったらきりがないが、好きな箇所を好きなように語っていく。

図書館と言葉

私の知っている現実の図書館とは、まったくスケールの違う世界にワクワクが止まらなかった。

図書館にある書物は、すべてが互いに関連しあって一つの稠密な世界を形づくっている。(中略)図書館は人の知りうる世界の縮図なんだ。図書館に携わるものの驕りを込めて言わせてもらえば、図書館こそ世界なんだよ。

(引用:図書館の魔女1巻 94P/高田大介)

この世界における高い塔の位置付けがよくわかる一節。
この他にも図書館の、その内装、雰囲気を説明する場面では緊張感が漂っている。



また、少し長くなってしまうのだが、1巻中盤の、図書館から出て行くシーンがたまらなく好きなんですよね。

王城の尖塔ごしに月影が輝き、マツリカの影を少年の足元に映し出す。縁が褐色に枯れつつある素馨の花びらは、闇の中から月光のもとへ進み出ていく図書館の魔女の影に一瞬たわむれるようにして、キリヒトの背後へ散りうせていく。そのときの素馨のすずやかな香りがキリヒトの鼻腔をくすぐっていった。
キリンが振り向く。ハルカゼも振り向く。マツリカは塔の前庭へ進みながら、体を翻し後ろ向きに歩き続ける。キリヒトの後ろで二つの扉が大きな音を立てて、閉まる、閉まる、高い塔は閉ざされ、彼らはすでにその外へ立っていた。
そしてその時、こちらを向いた図書館の魔女は月影の逆光の中で二人の司書と並んで、表情を窺うことも出来ない影となって少年に言葉を投げかけた。
ーー高い塔へようこそ、キリヒト。

(引用:図書館の魔女 P142-143/高田大介)


ここの前後の文も好きなのだが長くなりすぎてしまうので省略。
ここに限ったことではないが、『図書館の魔女』は描写が細かくて繊細だな、というのが私のイメージ。


まさに映像で見ているかのように文章からそれが想像できる。上記に引用した場面なんて特に映像で見てみたい場面ですね。


この時、きっとマツリカは口の端をきりと持ち上げた独特の表情を作っているんだろうなぁ。


指話

キリヒトとマツリカだけが使える...いや、使えるようになった特別な手話、指話。


端から見たら手を繋いでいるだけなのに、その手の中では二人だけの言葉が行き交っている。



″二人だけの言葉″って、なんかもうずるくないですか?(語彙力)


指話が、この物語を進めてく上で欠かせない役割を果たしていますよね。
1巻で言えば、マツリカとキリヒトが早い段階で親密になれたのも、井戸を見つけたのも指話のおかげですからね。


井戸が見つかってなかったら今後の展開に支障がでてしまいますし、指話がこの物語における核となっていると言ってもいいのではないでしょうか?


井戸の冒険

1巻の終盤でようやくファンタジーらしい少年、少女の冒険シーンになる。


派手なシーンはないがそれでも面白いのは推理小説のように、小さなヒントを拾い集めて真相に迫るような雰囲気のある冒険だからだろうか?



また、今まで理知的、論理的なマツリカの暗闇が怖いという普通の女の子らしいギャップもたまらない。


井戸の冒険は2巻のほうがメインになっているので、詳しくはまたそちらで書いていこうと思う。

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原点にして頂点!?森博嗣の傑作小説『すべてがFになる』あらすじ・紹介


「先生......、現実ってなんでしょう?」萌絵は小さな顔を少し傾げて言った。
「現実とは何か、と考える瞬間にだけ、人間の思考にあらわれる幻想だ」犀川はすぐ答えた。「普段はそんなものは存在しない」

(引用:すべてがFになる P357/森博嗣)



今回は森博嗣のデビュー作であり大人気の理系ミステリー『すべてがFになる』のあらすじ・紹介をしていく。


感想はコチラ。
『すべてがFになる』感想


目次

1. あらすじ

孤島のハイテク研究所で、少女時代から完全に隔離された生活を送る天才工学博士・真賀田四季。彼女の部屋からウェディング・ドレスをまとい両手両足を切断された死体が現れた。偶然、島を訪れていたN大教授・犀川創平と学生・西之園萌絵が、この不可思議な密室殺人に挑む。ミステリィの世界を変えた記念碑的作品

(引用:すべてがFになる 裏表紙/森博嗣)


目の前に現れたのは純白の死体

N大教授・犀川創平と学生・西之園萌絵は研究室のゼミ旅行で、ある孤島に訪れていた。その孤島に唯一の建物は最先端の研究所。


犀川と萌絵は、天才工学博士の真賀田四季に会うために研究所を訪れる。萌絵は以前に研究所を訪れた事があり、彼女と会うとは二度目だった。


しかし、そこで犀川と萌絵の前に現れたのは、純白のウエディングドレスを身にまとい、両手両足を切断された彼女の死体だったのだ。


すべてがFになる

真賀田四季の部屋にあるコンピューターのカレンダーには、たった一行のメッセージが残されていた。そのメッセージが『すべてがFになる』

「すべてがFになる?」犀川が口にしたので、山根が画面を覗き込んできた。
「Fってなんのことだ?」と後ろに立っていた弓永医師が言った。
「フィニッシュ......?」萌絵が言った。

(引用:すべてがFになる P176/森博嗣)



真意が掴めない犀川たち。彼女が残したメッセージの真意とはなんなのか。すべてとは?なにが『F』になる?


一度聞いたら忘れられない印象的なタイトル『すべてがFになる』。


読む前では意味不明なタイトルだが、読み終わった後では、これ以上のタイトルはない!と思えるはず。
 

2.魅力

キャラクター

主人公であり大学教授の犀川創平。現実的であり、かつ哲学チックでもある彼のセリフは印象的なものが多かった。冒頭に引用した「現実」についての会話も、犀川のセリフである。


その犀川の思考を引き出す、もう一人の主人公・西之園萌絵大学生である彼女は優れた洞察力と観察力、記憶力を持ち、驚異的な計算能力を有している。冷静沈着な犀川とは対照的に好奇心旺盛で突飛な思考の持ち主。


お互いの足りないところを埋め合わすような、いいコンビ。


そしてこの物語を語る上ではずせないのは天才・真賀田四季博士。14歳の時に両親を殺害した異例の経歴を持つ。事件以後15年間、研究所のある孤島に閉じこもって表に姿を現していない。


その実、天才プログラマーであり情報工学、特に仮想現実、人工知能の領域で卓逸した才能を発揮している。


物語冒頭での萌絵との会話からだけでも、その他を超越したような頭脳の一部を見ることができる。

 

不可能犯罪

外界から隔離された孤島
出入り口が一つしかない研究所
監視カメラがあり出入りが制限された部屋


いわば、三重密室で起きた殺人事件。外部からの人の出入りはなく、監視カメラの映像もそれを裏付ける。


はたして犯人の正体は?その目的は?そして驚愕の真実とは?読めば読むほど深まる謎に夢中になれるはずだ。


3.理系ミステリー

作者の森博嗣は某国立大学の工学部助教授の傍ら1996年に『すべてがFになる』で第1回メフィスト賞を受賞しデビューをはたした。


その知識を生かして書かれた『すべてがFになる』は工学系、コンピュータ系に尖った作品になっている。


刊行されたのは1996年なのだが、事件の舞台になる研究所の設備が、IOTやAI、更にはVRなど、現在の技術となんら変わらないのである。とても20年前に書かれた作品とは思えない。


メフィスト賞とは?

メフィスト賞ってなんぞや?って方へ。
講談社BOOK倶楽部のHPにはこんな説明が載っていました。

メフィスト賞とは?

  1. 編集者が直接選びます。下読みはありません。
  2. 読んで面白いこと。内容制限はそれだけです。
  3. 賞金はありません。読者の感動が賞金です。
  4. 面白かったら、絶対本になります。
  5. 日本で一番尖った賞です。

(引用:メフィスト賞応募要項・座談会|メフィスト賞応募要項|tree)


「内容制限は読んで面白いこと」とは、わかりやすい事この上ないですね。
2018年現在で58作品がこの賞に輝いている。



4.S&Mシリーズ

森博嗣さんの代表的作品であるS&Mシリーズ。


以下、全10作品

1.『すべてがFになる』 The Perfect Insider
2.『冷たい密室と博士たち』 Doctors in Isolated Room
3.『笑わない数学者』  Mathematical Goodbye
4.『詩的私的ジャック』 Jack the Poetical Private
5.『封印再度』 Who Inside
6.『幻惑の死と使途』 Illusion Acts Like Magic
7.『夏のレプリカ』 Replaceable Summer
8.『今はもうない』 Switch Back
9.『数奇にして模型』 Numerical Models
10.『有限と微小のパン』 The Perfect Outsider

5.最後に

小説やドラマ、映画など物語全般に言えることだが、初めて読んだときの感動・衝撃は何事にも変え難い。


紹介を書くにあたって、一年越しくらいに『すべてがFになる』を読み返した。もちろん面白いことは面白いのだが、展開、トリック、犯人、ほとんど覚えてしまっているので、やはり物足りない感はあった。


再読する楽しみは、初見と違った目線で物語を堪能できることだ。隠された伏線に気付くことができたり、犯人がわかっているので犯人の行動に注視して読んだりと。


だけどやっぱり、初めて読む快感を超えることはないと思う。


出来ることなら記憶をなくして『すべてがFになる』を読み返したい!!思えるってくらい初見の衝撃は凄まじい。


逆に読んで無い方には、「この物語を楽しめるチャンスが残っている」と思うと羨ましい限りだ。ちょっと大袈裟かもしれませんが、それくらい推せるオススメの一冊だ。








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【森博嗣】『すべてがFになる』の感想と彼女の真実を徹底解説【ネタバレあり】



『すべてがFになる』は森博嗣のデビュー作にして最高傑作と名高い作品だ


だれが犯人なのか?どんなトリックを使っているのか?ミステリーでは欠かせない要素に対する解答も素晴らしいし、謎めいたタイトルに秘められた意味が分かったときの衝撃といったら他にない。


さて、感想はネタバレありなのでご注意を。未読の方はコチラをどうぞ。
『すべてがFになる』あらすじ・紹介


目次

1.感想

──すべては天才の手の中に

犀川や萌絵ももちろん魅力的なキャラクターではあるが、『すべてがFになる』においては天才・真賀田四季博士の存在感が圧倒的である。


14歳で両親を殺害した異例の過去。現在の研究所での見せる存在感。そして15年間もの間、一歩も外に出ていないという考えられない真実。


序盤の萌絵との会話だけでも、その天才の思考が垣間見える。その会話だけでも物語に引き込まれる魅力に満ちている。

「ほら、7だけが孤独でしょう?」真加田女史が言った。「私の人格の中で、両親を殺す動機を持っているのは、私、真加田四季だけなの。ですから、私の肉体が両親を殺したのなら、私が覚えていないはずはない。私だけが、7なのよ......。それにBとDもそうね」

(引用:すべてがFになる P16/森博嗣)


ミ、ミステリアスー!!この会話だけではなく、前後にある萌絵にいきなり計算させるくだりとかも印象的。


インパクトを与えるだけ与えておいて、そんな天才がいきなり異様な死体で登場するのだから、もう衝撃しかない。ここまで読んでしまったらもう真相が気になりすぎて後には引き返せなくなってしまう。(本当は死んでないけど)



四季に関して言えば、ラストの犀川と四季の会話も印象深い。

「死刑って、いつ執行されるか教えてくれるのかしら?私、自分が死ぬ日をカレンダーに書きたいわ...。こんな贅沢なスケジュールって、他にあるかしら?」
「どうして、ご自分で...、その...、自殺されないのですが?」
「たぶん、他の方に殺されたいのね...」四季はうっとりした表情で遠くを見た。「自分の人生を他人に干渉してもらいたい、それが、愛されたい、という言葉の意味ではありませんか?犀川先生...。自分の意思で生まれてくる生命はありません。他人の干渉によって死ぬということは、自分の意思ではなく生まれたものの、本能的な欲求ではないでしょうか?」

(引用:すべてがFになる P/森博嗣)



まぁ彼女のセリフ一つひとつが深すぎて書ききれない。小説に限らず、物語の中には様々な天才が出てくる。天才物理学者だとか、天才数学者だとか、天才スポーツ選手だとか...。


私が今まで読んだ小説での一番の天才はぶっちぎりで真加田四季なんだよな。『すべてがFになる』で仕掛けられたトリックなどの発想もそうだが、彼女のもつ空気感や思考の展開、会話の随所に感じられる異質さが、私をひきつけてやまない。


彼女のキャラクターを創り上げた森博嗣に尊敬の念しかない。


『すべてがFになる』をまとめるとしたら、”天才の手の上の物語”だと思えるほどだ。


──すべてが”F”になる

なんといっても、タイトルである『すべてがFになる』この意味が明かされるときが、一番の鳥肌物だった。


物語序盤に真賀田博士と萌絵の会話にあった、真賀田博士の「7は孤独な数字。それにBとDもそうね」というセリフは、読んでいてずっと心の中で引っ掛かっていたのだが、まさかそれがタイトルの伏線を回収するヒントになっているとは思いもしなかった。


『すべてがFになる』
印象的すぎるタイトルにして意味不明なタイトルであるが、読んでから考えるとこれ以上のタイトルはないだろうと思われる。

──犀川

現実的であり哲学チックでもある彼のセリフも心に残るものが多かった。

「自然を見て美しいなと思うこと自体が、不自然なんだよね。汚れた生活をしている証拠だ。(中略)つまらない仕事や汚れた生活をしているから、自然、自然って、ご褒美みたいなものが欲しくなるんだ」

(引用:すべてがFになる P78-79/森博嗣)

他にも詳細は省くが、
「生きている」という定義。
大人になるということ。
現実とはなにか?

など、ハッとさせられるものや、感心してしまうものがあり、彼の思考や価値観もこの作品を魅力である。


──『ドグラ・マグラ』

犀川と萌絵の会話の中で『ドグラ・マグラ』という小説の話がでてくる。


萌絵が「最高のミステリィ」と話すこの作品。調べてみると実在する小説なのですね、知らなかった...。


好きになってしまった作品の登場人物が「最高のミステリィ」と話すこの作品。そんなの読まないわけにはいかない。

ということで!!


表紙をみる限りクセがすごい
古本屋で見つけて内容すら見ずにひとまず買ったしまったが...私に読めるだろうか...


裏表紙には「これを読む者には一度は精神に異常をきたすと伝えられる、一大奇書」とある。なるほど、心して読む必要がありそう...。


2.『すべてがFになる』はまだ終わっていない!? 追記(2019.4.15)

『すべてがFになる』はこの一冊で終わったわけではない。それは『すべてがFになる』がS&Mシリーズの第一作目だからまだ犀川と萌絵の物語は続いている!!と言っているわけではない。文字通りまだ『すべてがFになる』は完結していないのである。


『すべてがFになる』のすべては、真賀田四季を主人公として展開される『四季シリーズ』で明かされる。例えば『四季 春』には、真賀田四季の子供時代、『四季 夏』は『すべてがFになる』では明かされていなかった真賀田四季と新藤の関係について…など、それぞれの巻でこれまでの"真相"と天才"真加田四季"に焦点を合わせて物語が進んでいく。


そして、『四季シリーズ』もう一つ見所は『S&Mシリーズ』と『Vシリーズ』、2つのシリーズの登場人物の人間関係が明らかにされることだ。


なので『四季シリーズ』を最大限に楽しむためには、『S&Mシリーズ』(全10冊)と『Vシリーズ』(全10冊)、合計20冊を読んだうえで『四季』に臨むのが一番なわけだ。


しかし、「真相は気になるが、そんなにいっぱい読む暇ないよ!!」という読者も多いはずだ。


そこで、
・何故、四季は新藤と子供をつくったのか?
・パソコンに残された四季の人格、其志雄とは?
・何故、四季は死ぬつもりだったのに、外へ逃げたのか?

など『すべてがFになる』では明かされず、『四季シリーズ』で明らかになった真実を以下で記していく。


3.『すべてがFになる』の真実


以下では、四季シリーズのネタバレありで『すべてがFになる』では明かされていなかった真相を書いていく。なお、『S&Mシリーズ』と『Vシリーズ』の人間関係には触れずに『すべてがFになる』の真実だけにスポットを当てている。『四季シリーズ』未読の方はご注意を。

──四季と新藤の関係は?

四季と新藤の間には子供・道流がいた。天才にも恋愛感情はあり、四季は新藤のことを愛していた。四季が身籠ったのは14歳の頃。四季は14歳ですでに圧倒的な存在で、新藤は四季に逆らうことができなかった。


『すべてがFになる』で新藤は、ヘリコプターの中で四季にナイフで刺されたにも関わらず、それを周りの人間には告げずに四季をかばっていた。それは新藤にとって四季がすべてだったからだろう。彼女のために生き、そして彼女のために死ぬ。そしていつの日か殺される日が来ると、新藤はわかっていたからだ。彼は、予告されていた死を受けいれただけだった。

「すべて私がやって、叔父様は、私を止めようとしたのです。わかりましたか?私は未成年です。すべての資産は叔父様のものになります。もう後戻りはできないわ」
「四季、僕を殺してくれ」
「私の産む子が大きくなれば、私や、叔父様をきっと殺すでしょう」四季はそう言ってナイフを床に置いた。「それまでの間、正しく、そして人の誇りを信じて生きましょう」

(引用:四季 夏 P277/森博嗣)


──四季が両親を殺した理由

『すべてがFになる』では人形が両親を殺した…と理解に苦しむ発言があったが、この事件の真実も『四季 夏』で語られている。


四季が両親を殺害した理由は、新藤との間に子供ができたことを受け入れてもらえなかったからだ


四季は、新藤との間に子供ができた事実を両親に告白。当然、四季の両親は激怒する。それを予期していた四季は用意していたナイフで両親を刺殺する。


『すべてがFになる』のなかでは、新藤がナイフを持っている四季の体を操って四季の両親を刺し殺した、と話があったが、これは四季の嘘の供述である。実際は四季が両親を殺害している(新藤も殺害の意志はあったが)。


「どうして、両親を殺したのに、新藤氏は殺さなかったのか」
という問いに対して四季は
「お父様とお母様の遺伝子は私が引き継いだから」…と。

……天才ってわからない。


──四季が部屋から出た理由

四季は道流に殺されるつもりだったのに、何故研究所から逃げ出したのか?


それはもう一つの疑問である遺体の手足が切断されていた本当の理由と共に説明できる。


まず『四季 秋』で道流の本当の死因は、感電死による自殺だと四季は語っている。では何故、遺体の手足を切断したのか?その理由は道流の細胞を持ち出すためだった。これが四季が研究所から逃げ出した理由でもある。


コンピュータ工学では圧倒的高みに登りつめた四季。設備ともども研究所で間に合っていたが、バイオテクノロジーの面では孤島の研究所では設備が間に合っていなかった。


そのため切断した腕の細胞から道流のクローンを作成するために、クローンの知識と設備をそなえる人物のもとに四季は逃げ出した、というわけだ。


──パソコンに残されていた四季の他の人格

四季のパソコンには、真賀田 四季の他に「栗本 其志雄」と「佐々木 栖麻」なる者からのメッセージが残されていた。(すべてがFになる/P177)


ここでは、真賀田四季の作り出した人格…と簡単にしか説明されていないが、この二人の人格は四季『春〜秋』の間に、モデルとなった人物と共に登場する。

4.最後に

『すべてがFになる』一言でいえば、大満足の一作。
間違いなく、今年読んだ中でベスト5に入る面白さだった。


これから森博嗣の作品を読み漁れると思うとワクワクが止まりらない。





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11月に読んだ本


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・夜明けの街で/東野圭吾
【391ページ】

・星を継ぐもの/ジェイムズ・P・ホーガン
【307ページ】

・時生/東野圭吾
【533ページ】

・すべてがFになる/森博嗣
【522ページ】

・ICO-霧の城-(上)/宮部みゆき
【330ページ】

・ICO-霧の城-(下)/宮部みゆき
【381ページ】

・悪意/東野圭吾
【365ページ】

・雪煙チェイス/東野圭吾
【409ページ】


合計8冊3238ページ

日当たり108ページ


自分としてはかなり読んだほう
月に8冊も読んだのは初めてかもしれない。

ベスト3を選ぶとしたら
1.『すべてがFになる』
2.『悪意』
3.『星を継ぐもの』


『すべてがFになる』の衝撃が強すぎた。いつかは読もう思ってて、先延ばしにしていた作品だったが、予想以上に楽しめた。


森博嗣の作品は初めて読んだ。『S&
Mシリーズ』という『すべてがFになる』のシリーズ作品があるので、今後は読み漁っていこうと思う。


好きな作家さんが見つかって、当分はまた退屈せずにすみそうです。

【2023年版】東野圭吾初心者に捧げるオススメ11選!迷ったらコレを読め!!【随時更新】



1つの作品を読んだだけで、その作者の良し悪しを決めてしまうのはあまりにもったいない。東野圭吾は2023年現在で100近い作品を世に放ち、映像化作品も数多くある。


作品数があまりに多いので、何から読めばいいか迷う人も多いであろう。そんな「東野圭吾の作品を読んだことがない」または、「何冊か読んだことあるが次に何を読めばいいか悩んでいる」方へ、東野圭吾ファンの私がこれを読んでおけば間違いない!と思うオススメ11作品を紹介する。


コチラでは、私が好きな東野圭吾作品をランキングで紹介している。合わせてどうぞ。
『好きな東野圭吾作品10選』


1.『容疑者Xの献身』

──あらすじ

天才数学者でありながら不遇な日々を送っていた高校教師の石神は、一人娘と暮らす隣人の靖子に秘かな想いを寄せていた。彼女たちが前夫を殺害したことを知った彼は、二人を救うため完全犯罪を企てる。だが皮肉にも、石神のかつての親友である物理学者の湯川学が、その謎に挑むことになる。ガリレオシリーズ初の長篇、直木賞受賞作。

──天才vs天才 慟哭のミステリー

″ガリレオシリーズ″と呼ばれる物理学者・湯川学を主人公とした物語。シリーズ作品ではあるが、この作品から読み始めてもまったく問題はない。2008年には映画化もされている作品である。


”ガリレオシリーズ”通しての特徴としては、大学時代の友人である刑事・草薙俊平の依頼を受けて、一見超常現象とも取れる事件を科学によって、または論理的な推理によって解決していくものだ。


『容疑者Xの献身』を簡単に説明すれば、惚れた女性の犯罪を隠す石神と、犯罪の秘密に迫る湯川の二人の天才による対決が描かれた物語だ。
 

石神と湯川は大学時代の同期であり、お互いに「天才」という意味では同じであったが、決して似ている二人ではない。


湯川は頭脳明晰、容姿端麗おまけにスポーツ万能...とすべてを兼ね備えた完璧人間と言っても過言ではない。このようなことに対して石神は、湯川と対極の人物である、と説明すればわかりやすいだろう。


この二人によって展開される頭脳戦が『容疑者Xの献身』の見所の一つである。石神による人の盲点を突く、天才的発想の隠蔽工作は予想の斜め上をいく。また、その石神の隠蔽工作に対して湯川はどこから真実を見抜くのか...!?


もう一つの見所としてはタイトルの意味だろうか。読了後にはタイトルの意味を深く噛み締める事になるだろう。そして石神という人間に対してきっと涙するはずだ。


【長編ガリレオシリーズ紹介】
【東野圭吾】長編ガリレオシリーズにハズレなし!!最新作『透明な螺旋』含む6作品のあらすじ・見所をまとめて紹介する - FGかふぇ


  

2.『真夏の方程式』

夏休みを玻璃ヶ浦にある伯母一家経営の旅館で過ごすことになった少年・恭平。一方、仕事で訪れた湯川も、その宿に宿泊することになった。翌朝、もう一人の宿泊客が死体で見つかった。その客は元刑事で、かつて玻璃ヶ浦に縁のある男を逮捕したことがあったという。これは事故か、殺人か。湯川が気づいてしまった真相とは──。

──博士と少年 一夏のストーリー

ガリレオシリーズからもう一つオススメするのが『真夏の方程式』。これを読んだら湯川のことが好きになるに違いない。


恭平は両親の仕事の都合により、一人で伯母の家に泊まらされることに対して不満をつのらせていた。しかし皆が恭平のことを子供扱いするなかで唯一、正面から向き合ってくれたのが湯川であった。


自らを「子供嫌い」と語る湯川が恭平と親交を深めるようすがミスマッチのようで、どこか微笑ましい。恭平のために湯川は「ある実験」を行うのだが、その場面はとても印象的だ。


湯川と少年・恭平を中心に物語がすすんで行くのはもちろんだが、やがて、東京 と玻璃ケ浦、現在の事件と過去の事件、そして人間関係...それぞれの絡まり合ったすべての糸が解けるとき...!!




3.『マスカレード・ホテル』

──あらすじ

都内で起きた不可解な連続殺人事件。容疑者もターゲットも不明。残された暗号から判明したのは、次の犯行場所が一流ホテル・コルテシア東京ということのみ。若き刑事・新田浩介は、ホテルマンに化けて潜入捜査に就くことを命じられる。彼を教育するのは、女性フロントクラークの山岸尚美。次から次へと怪しげな客たちが訪れる中、二人は真相に辿り着けるのか!? いま幕が開く傑作新シリーズ。

──名コンビ誕生 伝説のはじまり

”マスカレード”シリーズは、一流シティホテル「コルテシア」を舞台に繰り広げられる物語。2022年現在では
『マスカレード・ホテル』
『マスカレード・イブ』
『マスカレード・ナイト』
『マスカレード・ゲーム』
以上の4作品が刊行されている。


そして、新田&山岸のコンビが誕生したのがシリーズこの第一作『マスカレード・ホテル』だ。


犯人不明
動機不明
いつ事件が起こるか分からないし
誰が狙われるかもわからない


判明しているのは次の犯行現場が一流ホテル「コルテシア東京」だということのみ。


優秀だがプライドの高い刑事の新田
ホテルウーマンとして優秀な能力を持つ山岸


犯人の仮面を暴こうとする新田と、お客様の仮面を守ろうとする山岸。職業柄、価値観のまったく違う二人は最悪の印象で物語は始まる。


しかし、警察という仕事、フロントクラークという仕事を通して、お互いがお互いをプロとして認め、信頼関係を気付いていく様子がとても印象的な作品。


ミステリーのジャンルの作品だが、ホテルという舞台、そしてそこで働く人たちの喜びや苦労が楽しめるのもこの作品の大きな魅力の一つだろう。最後まで予測のつかない犯人と、その緊張感。そして主人公二人の息のあったコンビがたまらない。



″マスカレードシリーズ″として他の作品がすでに出ているが、このシリーズは是非とも順番にこの『マスカレード・ホテル』から読むことをオススメする。


マスカレードシリーズ紹介
『マスカレードシリーズ』の作品一覧とあらすじ・内容を全4作品まとめて紹介する【東野圭吾】 - FGかふぇ




4.『ナミヤ雑貨屋の奇蹟』

──あらすじ

悪事を働いた3人が逃げ込んだ古い家。そこはかつて悩み相談を請け負っていた雑貨店だった。廃業しているはずの店内に、突然シャッターの郵便口から悩み相談の手紙が落ちてきた。時空を超えて過去から投函されたのか?
3人は戸惑いながらも当時の店主・波矢雄治に代わって返事を書くが・・・。次第に明らかになる雑貨店の秘密と、ある児童養護施設との関係。悩める人々を救ってきた雑貨店は、最後に再び奇蹟を起こせるか!?


  

──現在と過去を繋ぐ奇蹟の手紙

『東野圭吾史上、最も泣ける作品』との触れ込みもあるが、それに恥じない感動と、心暖まるストーリーである。


『ナミヤ雑貨店の奇蹟』の特徴は、ヒューマンドラマとファンタジーの性質を合わせ持っている点。ファンタジー要素というのが、30年前の過去から手紙が届くのだ。


現在と未来が繋がる、また『ナミヤ雑貨店の奇蹟』のように現在と過去が繋がる。小説の設定としては、ありきたりのものだ。


しかし、この物語の本質はヒューマンドラマである。過去と現在でやり取りされる手紙は、過去軸の人間の”悩み相談”を現在軸の人間が答える形式となっている。


この手紙のやり取りを通して、3人の青年は相手の事を考え、自分自身を見つめ直し成長する過程が、描かれている。


また、物語は5章構成になっていて各章ごとに新しい相談者の話になる。だが完全に独立した話という訳ではなく、端々で繋がっていく。


個人的に第二章の『夜明けにハーモニカを』の話がたまらなく好きだ。
音楽の道に進むか、家業の魚屋を継ぐか。そんな人生の二択に迫られた青年がナミヤ雑貨屋に相談の手紙を出して……という流れなのだが最後は思わず涙があふれるだろう。




5.『白夜行』

──あらすじ

1973年、大阪の廃墟ビルで一人の質屋が殺された。容疑者は次々に浮かぶが、結局、事件は迷宮入りする。被害者の息子・桐原亮司と、「容疑者」の娘・西本雪穂――暗い眼をした少年と、並外れて美しい少女は、その後、全く別々の道を歩んで行く。二人の周囲に見え隠れする、幾つもの恐るべき犯罪。だが、何も「証拠」はない。そして十九年……。息詰まる精緻な構成と、叙事詩的スケール。心を失った人間の悲劇を描く、傑作ミステリー長篇!

──かすかな灯火を元に、二人は生きる

まず目を引くのは間違いなく『白夜行』の厚さだろう。文庫本で全860ページと圧巻のボリュームである。そのボリュームに私はなかなか手を出せずにいたが、読み始めてしまえば一気に物語に引き込まれてしまった。


さて、殺人事件もあるので、ミステリーの部類に入ると思うが、本格派ミステリーのような謎解きは一切ない。


『白夜行』の何より特徴的なのは主人公である二人の心理描写が一切描かれておらず、第三者の視点や周りの状況だけで二人の人間性・関係性が表現されていることだろう。


物語は、大阪の廃ビルで一人の男が殺害されることで幕が開ける。被害者の息子・桐原亮司と容疑者の娘・西本雪穂は、その接点を持たせないままに、二人の心情は直接語らせないまま物語が進行していく。


太陽のように明るくはない。しかし夜の闇のように真っ暗でもない。そんな白夜を歩む二人の19年の長い道のりが描かれているのが『白夜行』だ。


『白夜行』を「東野圭吾の最高傑作である」という意見も多々見受けられる。その納得のストーリー、是非体感して頂きたい。



6.『秘密』

──あらすじ

妻・直子と小学5年生の娘・藻奈美を乗せたバスが崖から転落。妻の葬儀の夜、意識を取り戻した娘の体に宿っていたのは、死んだはずの妻だった。その日から杉田家の切なく奇妙な”秘密”の生活が始まった。映画「秘密」の原作であり、98年度の ベストミステリーとして話題をさらった長篇、ついに文庫化

──予感めいたものなど、何ひとつなかった。

この一文から始まる『秘密』


ここまで心を揺さぶられる作品はそうないと思う。そしてここまで男女の意見が分かれる小説もまた、ないだろう。


娘と妻が事故によって入れ替わってしまうという奇妙な現象がおき物語がスタートする。しかし、普通の入れ替わりと違うのは、母親の肉体は死に、母親の精神だけが娘に宿るという点だ。(当然娘の精神はない)



体は娘なのに中身は妻...非現実的な出来事に夫・平介は今後、どう生きていくのか?また妻は、妻として生きるのか、それとも娘として生きるのか。選択に迫られる。妻として生きるとすれば、体は娘なので性生活などはどうなるのか?また、立場としては学生なので、学校生活はどうするのか?


娘として生きるとすれば、夫との関係はどうなるのか?いずれは夫ではない誰かと結婚する日がきてしまうのか?直子の決断に、またそれまでの過程に拒否反応が起こる女性読者が多いようだ。


「もしも誰かと入れ替わったら...」そんな誰しも一度は考えるような平凡な発想も、東野圭吾の手にかかれば、この上ない上質なミステリーに変化する。男目線の私としては、非常に考えさせられる一冊だった。


7.『手紙』

──あらすじ

強盗殺人の罪で服役中の兄、剛。弟・直貴の元には獄中から月に一度、手紙が届く……。しかし、進学、恋愛、就職と、直貴が幸せをつかもうとするたびに「強盗殺人犯の弟」という運命が立ちはだかる。人の絆とは何か。いつか罪は償えるのだろうか。犯罪加害者の家族を真正面から描き、感動を呼んだ不屈の名作。

──絆と償い、手紙に込められた想い

『手紙』は、2003年には映画化、さらに2017年にはドラマ化もされたか人気作品だ。


東野圭吾といえばミステリーの印象が強い作家であり、これまで紹介してきた5作品もミステリーの物語だった。しかし『手紙』は涙なしには見られない社会派ヒューマンドラマである。


罪を犯すということは、このような現実が付きまとうのだ。と、加害者本人だけではなく、周りの人に降りかかる厳しい現実を含めて突きつけられる一冊。


不条理な世の中に感じれるかもしれないが、現実を受け入れて前に進む兄弟の決断に涙が止まらない。



8.『夢幻花』

──あらすじ

花を愛でながら余生を送っていた老人・秋山周治が殺された。第一発見者の孫娘・梨乃は、祖父の庭から消えた黄色い花の植木鉢が気になり、ブログにアップするとともに、この花が縁で知り合った大学院生・蒼太と真相解明に乗り出す。一方、西荻窪署の刑事・早瀬も、別の思いを胸に事件を追っていた……。宿命を背負った者たちの人間ドラマが展開していく"東野ミステリーの真骨頂"。

──"禁断の花"を巡る傑作ミステリー

構想10年。東野圭吾が構想に10年をかけた、といわれる『夢幻花』。「追い求めると身を滅ぼす」と言われる禁断の花……黄色いアサガオを中心に、物語は複数の視点から進行していく。

「世の中には負の遺産というものがある。それが放っておけば消えてなくなるものなら、そのままにしておけばいい。でもそうならないのなら、誰かが引き受けるしかない」


日本の現代社会に残る大きな問題も絡めつつ物語は展開されていく。意味深なプロローグから、納得のラストまで、最後まで目が離せない一冊だ。

9.『ラプラスの魔女』

──あらすじ

円華という若い女性のボディーガードを依頼された元警官の武尾は、行動を共にするにつれ彼女には不思議な《力》が備わっているのではと、疑いはじめる。
同じ頃、遠く離れた2つの温泉地で硫化水素による死亡事故が起きていた。検証に赴いた地球化学の研究者・青江は、双方の現場で謎の娘・円華を目撃する──。
価値観をくつがえされる衝撃。物語に翻弄される興奮。
作家デビュー30年、80作目の到達点。
これまでの私の小説をぶっ壊してみたかった。
そしたらこんな作品ができました。──東野圭吾

──彼女の瞳は何を写すのか

『ラプラスの魔女』は、フランス人数学者の「ピエール・シモン・ラプラス(1749-1827)」が提唱した「ラプラスの悪魔」という仮説を題材にした物語となっている。どんか仮説かというと以下の通りだ。
 

 「もし、この世に存在するすべての原子の現在位置と運動量を把握する知性が存在するならば、その存在は、物理学を用いることでこれらの原子の時間的変化を計算できるだろうから、未来の状態のがどうなるか完全に予知できる。」

これは実際に『ラプラスの魔女』本文から引用したものだ。


「もし、未来がわかったら…」と、だれもが一度は考えたことがあるはず。そんな力を得てしまった登場人物と、巻き起こる事件に一気読み必死の作品だ。


賛否がわかれる作品ではあるが、個人的には推したい一冊。また映画化もされているが……小説で楽しむ事をオススメする。


10.『流星の絆』

──あらすじ

何者かに両親を惨殺された三兄妹は、流れ星に仇討ちを誓う。14年後、互いのことだけを信じ、世間を敵視しながら生きる彼らの前に、犯人を突き止める最初で最後の機会が訪れる。三人で完璧に仕掛けはずの復讐計画。その最大の誤算は、妹の恋心だった。涙があふれる衝撃の真相。著者会心の新たな代表作。

──兄弟たちの復讐劇

『流星の絆』は、両親を殺害された幼い三兄妹による復讐劇が描かれた一冊だ。その復讐劇に「詐欺」「禁じられた恋」などの要素が絡められながら物語が進んでいく。


メインは復讐劇のわけだが、あらすじに『最大の誤算は、妹の恋心だった』とある。妹が好きなってしまった相手が実は……という訳なのだが、この妹の葛藤が実に胸にくる。


ページ数は600ページと多いが、それを感じさせないスリリングな展開の連続、そして最後の最後まで気が抜けない小説の醍醐味をあじわえる作品だ。



11.『さまよう刃』

──あらすじ

長峰の一人娘・絵摩の死体が荒川から発見された。花火大会の帰りに、未成年の少年グループによって蹂躪された末の遺棄だった。謎の密告電話によって犯人を知った長峰は、突き動かされるように娘の復讐に乗り出した。犯人の一人を殺害し、さらに逃走する父親を、警察とマスコミが追う。正義とは何か。誰が犯人を裁くのか。世論を巻き込み、事件は予想外の結末を迎える―。重く哀しいテーマに挑んだ、心を揺さぶる傑作長編。

──正義とは何なのか

『さまよう刃』はこれまで紹介してきた作品とは違い、社会派の考えさせれる"重い"作品だ。東野圭吾の″重い″作品はなんだろう?と考えたときに一番最初に浮かんだのがこの作品『さまよう刃』だった。


どんな理由があっても暴力は許されない、たとえそれが復讐であっても。誰だって理解はしている″常識″だ。だが、いざ我が身に主人公のような出来事が振りかかったときに、果たしてその″常識″を突き通せるのだろうか?


少年法は本当に必要なのだろうか?正義とは何だ?悪とは何だ?生々しく目を覆いたくなるような場面も多かったが、目を反らさずに読んでよかったと思える一冊だ。


重い作品ゆえに『さまよう刃』は東野圭吾作品を初めて読む人には向かないとは思うが、いつかは手にとってもらいたいと思う。



最後に

今回は加賀恭一郎シリーズの作品は取り上げなかった。個人的には加賀恭一郎シリーズは、最後の『祈るの幕が下りる時』が一番好きなのだが、これはシリーズを通して読んでこそ刺さる作品。


シリーズの特徴的に、気になる作品をかいつまんで読むより、刊行順に読むほうが面白いと思っているので今回の紹介では取り上げなかった。


加賀恭一郎シリーズは、ガリレオシリーズと並ぶ東野圭吾の大人気シリーズなので、是非そちらも手を出してみてほしい。

加賀恭一郎シリーズ紹介・あらすじ


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【東野圭吾】『夜明けの街で』の感想を好き勝手に語る【ネタバレあり】

これは地獄だ。甘い地獄なのだ。そこからどんなに逃れようと思っても、自分のなかにいる悪魔がそれを許さない。

(引用:夜明けの街で P80/東野圭吾)


今回は東野圭吾の『夜明けの街で』の感想を語っていく。
ネタバレNGの方はコチラをどうぞ。
【『夜明けの街で』あらすじ・紹介】


感想

率直な感想としては、主人公である渡部が物語が進むごとに不倫の沼にはまっていく様子がとにかくリアル。


遊び人ではないし、家庭に不満はない。本人も「不倫をするやつなんて馬鹿」とまで言っている。それなのにいつの間にか、その底無し沼に足を突っ込んだかと思えばすぐに身動きがとれなくなっている。


悪いことなのは分かっている。不倫に対するボーダーラインが「一度だけなら...」から始まり「離婚する気がなければ...」と下がっていき自分自身を正当化していく様を見ていると、あぁこうやって人は知らず知らずのうちに堕ちていくのか、と感じた。


そんな泥沼にはまっていく渡部の心情を表した描写で心に残ったところがある。初めて秋葉と一線を越えてしまったあとのシーン。

こうして僕たちは、本来越えてはいけない境界線を跳び越えてしまった。越える前はその境界上には大きな壁が立っているのだと思っていた。だけど越えてしまうと、じつはそこには何もなく、壁は自分が作り出した幻覚だったと知るのだ。(中略)境界線の向こう側に、目眩がしそうなほど甘美な世界があると知っていて、これから永遠に踏み越えずにいられるだろうか。境界線の上には壁などなく、ひょいと一跨ぎすればいいだけのことと知ってしまった今となっては、それは非現実的なほど不可能に思えた。

(引用:夜明けの街で P73/東野圭吾)

「境界線上には壁はなく、壁は自分が作り出した幻覚だった」
これは不倫に関する事だけではないな、と。
未知の事には過大評価してしまいがちだが、いざやってみると大したことなかったというのは往々にしてあるものだと思う。(この場合悪いことだが)




渡部の友人、新谷のセリフはことごとく説得力に溢れていて感心してしまった。

「謝るっていうのは、その時だけのことじゃないんだぞ。土下座は贖罪のスタートにすぎないんだ。で、それが終わる日は来ない。一生、謝罪の日が続くんだ。女房に頭は上がらず、家でも肩身の狭い思いをすることになる。どちらかが死ぬまでそれは続く」

(引用:夜明けの街で P129-130/東野圭吾)

「いいことを教えてやる。赤い糸なんてのは、二人で紡いでいくもんなんだ。別れずにどちらかの死を看取った場合のみ、それは完成する。赤い糸で結ばれたってことになる」

(引用:夜明けの街で P143/東野圭吾)


他にも真意をついているセリフが多い。不倫に理解がありすぎるようにも思ったが、それも納得で文庫本には、おまけとして20ページほどの新谷の話が載っている。



全体を通しての感想とすれば、15年前の殺人事件の結末も読者の予想を裏切るどんでん返しが隠されていたが、やはりこの作品で印象に残るのは、不倫を通した人間関係や心情だ。


渡部が泥沼にはまっていく様子はもちろんの事。ラストシーンでの渡部と妻とのやり取りは忘れられない。作品の中では触れられなかった妻の心情を表す描写が痛々しい。


家庭の安定を守るためにすべてを気づかないふり。愛人と会うであろう夫を何も言わずに見送りだすのはどんな気持ちなんだろう。


そして最後には誰も幸せになれない。
なかなかに重く教訓になる一冊だ。

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不倫とは甘い地獄である『夜明けの街で』のあらすじ・紹介。【東野圭吾】

「謝るっていうのは、その時だけのことじゃないんだぞ。土下座は贖罪のスタートにすぎないんだ。で、それが終わる日は来ない。一生、謝罪の日が続くんだ。女房に頭は上がらず、家でも肩身の狭い思いをすることになる。どちらかが死ぬまでそれは続く」

(引用:夜明けの街で P129-130/東野圭吾)

今回は不倫を主軸にした東野圭吾のミステリー『夜明けの街で』を紹介する。


感想はコチラで書いてます。

『夜明けの街で』は2007年に刊行され、2011年には、岸谷五郎・深田恭子主演で映画化された作品である。


私は本書を読み終えてから知ったのだが、この作品は東野圭吾がサザンオールスターズの『LOVE AFFAIR~秘密のデート~』に感化されて書かれたらしい。


なるほど、確かにそう言われると歌い出しは「夜明けの街で~」からだし、歌詞の中には本書の場面を思わせる箇所がいくつも見受けられる。

目次

あらすじ

不倫する奴なんて馬鹿だと思っていた。
ところが僕はその台詞を自分に対して発しなければならなくなる―。建設会社に勤める渡部は、派遣社員の仲西秋葉と不倫の恋に墜ちた。2人の仲は急速に深まり、渡部は彼女が抱える複雑な事情を知ることになる。15年前、父親の愛人が殺される事件が起こり、秋葉はその容疑者とされているのだ。彼女は真犯人なのか?渡部の心は揺れ動く。まもなく事件は時効を迎えようとしていた…...。

(引用:夜明けの街で 裏表紙/東野圭吾)




見所

主人公目線

主人公である渡部は一部上場の会社に勤めいる。面倒見のよい妻と可愛らしい娘がいる、いわゆる普通の家族だ。
「不倫なんてするやつはバカ」と思っていた渡部が、思わぬ巡り会わせで不倫の泥沼にはまってしまう心理描写が恐いくらい丁寧に書かれている。


家族に不満があるわけでもない。むしろ恵まれていると言ってもいい。不倫に対しても批判的であった。そんな主人公が堕ちていく姿は妙にリアルで生々しい。


的確な表現

この記事冒頭の言葉は、主人公・渡部の友人である新谷の台詞である。


新谷の不倫に対しての考え、表現、例えがわかりやすく、思わず「なるほど、確かに」と納得してしまうほど説得力がある。


またそんな説得力のある新谷の話が、おまけとして番外編のような形で載っている。


ミステリー

不倫の事ばかりの紹介になってしまっていたが、そこは東野圭吾、もちろんミステリー特有のどんでん返しの展開も用意されているだろう!?


とは言うものの、やはり主軸は不倫による主人公の心理である事には変わりない。


終わりに

私個人の話をすると、このような不倫を主軸にした物語は初めて読んだ。何故、今までそのようなテーマの物語を読んでいなかったというと理由は単純明快、好きではないからだ。


最初では、ドラマや映画などで不倫や浮気をテーマにした作品がとても増えたと思う。また芸能人や政治家のそのようなニュースも毎日のように放送されている気がしてならない。


そんな他人の色恋沙汰を騒ぎ立てて何が楽しいのか理解に苦しむ所ではある。


この作品『夜明けの街で』を読もうと思ったきっかけは著者が東野圭吾だったからだ。彼のファンである以上、「嫌いなジャンルだから読まない」という選択肢はなかった。


まぁ結果としては食わず嫌いをせずに読んでよかったな、と。
人間、経験から学ばなければ分からないことも多い。だからといって学ぶために不倫をするほど馬鹿な事はない。そういった意味ではいい勉強になったと思う。


主人公の最初の立場、考え方は世の一般的男性のそれに近しいものがあると思うので、もし自分が主人公だったら...と思わず考えてしまうかもしれない。

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