FGかふぇ

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『ギンカムロ』夜空を覆う銀色の雨【美奈川護】

「花火には、二つしかない」

山頂から吹き降りてくる秋の風が、厳粛な空気の隙間を舐めるように吹いていた。

「一瞬で消えるか、永遠に残るか...その二つしかない」

(引用:ギンカムロ P7/美奈川護)

 

 

今回は花火とそれを打ち上げる花火師をテーマにした小説、「美奈川護」さんの『ギンカムロ』の紹介する。

 

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感想はこちら!

 

 

そもそも『ギンカムロ』とは?

本書ですぐにでてくるのですが、説明させてもらいます。

 

『ギンカムロ』とは花火の玉名(ぎょくめい)で、漢字で書くと『銀冠』と書きます。簡単に説明すると、銀色の光が線を引きながら垂れ下がる花火です。

 

※玉名とは、花火玉の名前の総称。

 

この花火が物語の核になってくるわけですね。

 

あらすじ

花火工場「高峰煙火」の4代目として生まれた「昇一」は、幼い頃に花火工場で起きた爆発事故により両親を亡くしてしまう。その後2代目である祖父に育てられる。

 

しかし花火に対してトラウマを持ってしまった昇一は、高校卒業後に生まれ育った町を飛び出し上京して、一人暮らしを続けていた。

  

そんな昇一の元に、ある日突然、祖父から「戻れ」という連絡が入り4年ぶりに実家に帰ることになる。

 

久しぶりに帰って来た実家で昇一は、花火職人として修行中の風間絢という女性に出会い、物語が進行していく。

 

 12年前に不幸な出来事が重なった。それぞれが様々な思いを抱え、苦しみ、悩み、葛藤していく。それぞれの思いを託された花火が、今年も打ち上げられる。

 

 

 読み終えて

本書の見所としては、「花火師」という特殊なジャンルの仕事に焦点を当てている所だろう。打ち上げ花火を見たことがない、という人はいないだろう。

 

しかし、その華やかな舞台を支える職人たちの仕事を見たことがある人がどれだけいるだろう?

 

恥ずかしながら私は、花火職人たちの仕事を見たことはない。それどころか心に残るような花火を見たことがあるのに、その花火に魂を込めた職人の事を考えた事すらなかった。

 

この物語では、そんな素晴らしい職人たちの舞台を覗くことができる。 次から見る花火は今までとは、少し違った見え方をするのではないかと思う。

 

今の時期にピッタリのこの作品、是非読んでみてはいかがだろうか。