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『図書館の魔女』口のきけない魔女の物語はすべての読書家に捧げたい1冊だった【高田大介】

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図書館にある書物は、すべてが互いに関連しあって一つの稠密な世界を形づくっている。(中略)図書館は人の知りうる世界の縮図なんだ。図書館に携わるものの驕りを込めて言わせてもらえば、図書館こそ世界なんだよ。

(引用:図書館の魔女1巻 94P/高田大介)


「いつまでもこの物語の世界に浸っていたい。読み終えてしまいたくない。」と思った作品は『図書館の魔女』が初めてで、間違いなく私の読書人生の中で一番好きな作品になった。


文庫本では第1巻~第4巻で構成されており、合計のページは1800ページを越える長編作品だが、ページ数もさることながら内容が非常に濃密である。


今回はそんな『図書館の魔女』の魅力を重要なネタバレはなしで紹介していく。


『図書館の魔女』の感想・考察・まとめなどはコチラから
【『図書館の魔女』の記事まとめ】


目次

1.あらすじ

鍛冶の里に生まれ育った少年キリヒトは、王宮の命により、史上最古の図書館に暮らす「高い塔の魔女(ソルシエール)」マツリカに仕えることになる。古今の書物を繙き、数多の言語を操って策を巡らせるがゆえ、「魔女」と恐れられる彼女は、自分の声を持たないうら若き少女だった。超弩級異世界ファンタジー全四巻、ここに始まる!

(引用:図書館の魔女1巻 裏表紙/高田大介)



2.魅力

──剣でも魔法でもない。少女は言葉で世界を拓く。

【ボーイミーツガール】であり、【知的エンタメ】であり、【国家謀略戦争】であり、【大冒険】でもある。しかし何より『図書館の魔女』の最大の魅力は"言葉"がテーマのファンタジー作品だという点だ。


タイトルは『図書館の"魔女"』だが、魔術で物を浮かせたりだとか、大釜で怪しげな薬を作っていたりだとかそんなことはない。ファンタジーに出てくるような竜だとか、伝説の剣だとかもでてくるわけではない。


むしろファンタジーなのに非現実的要素を全否定するような場面すらある。


そんな世界観の中、図書館の魔女と呼ばれるマツリカは言葉を使って世界を拓いていく。いくつもの言語を扱い、難解な書物を繙き、言葉一つで世界を動かす。いわば”言葉の魔術師”と言える彼女なのだが、なんとマツリカ本人はしゃべることができないのだ。このギャップに惹かれないことがあるだろうか、いやない。


手話を用いた意思伝達を主としているマツリカのもとにある日、少年・キリヒトが手話通訳として図書館に遣わされる。特別な境遇に生まれ、特別な能力をもった二人の出会いで物語は幕を開ける。


──登場人物

物語の登場人物はどのキャラクターも魅力的で個人的に好きなキャラクターばかりだ。ここでは先程も少し触れた主人公の『マツリカ』と『キリヒト』に絞って紹介する。


──図書館の魔女『マツリカ』
一ノ谷の図書館「高い塔」の主であるマツリカ。


年齢はまだ若く、物語の中でも「うら若き少女」と表現されていた。(年齢は12~14歳くらいだろうか?)
が、しかしその風貌とは裏腹に頭脳明晰で知識、観察力、推理力あらゆる能力がずば抜けている。わずかな手掛かりから真実を導きだす様は、凄腕の探偵を連想させられる。


しかし、そんな彼女は声を持たない。いくつもの言語を修得しているマツリカだが、口をきくことができないため手話によってコミュニケーションをとっている。


──鍛冶の里の少年『キリヒト』
マツリカの手話通訳として鍛冶の里からやってきたのがもう一人の主人公であるキリヒト。常人を上回る、察知能力と運動能力を持った少年で、歳はマツリカと同じくらいである。


読み書きはまったく出来ないが、その感覚の鋭さをかわれ、マツリカにつかえることになる。


特別な境遇に生まれ、特別な能力をもった二人。お互いの能力で欠点を補いながら、そして、なくてはならない存在へと変わっていく。その過程が、やりとりがたまらなく愛おしい。


──言葉

この物語で一番のポイントなのがやはり”言葉”についてだ。著者の高田大介氏が言語学者なこともあり、”言葉”の魔力と魅力が物語の中に如何なく詰め込まれている。


普段、誰しもが意識せずに使っている”言葉”。では、そもそも言葉とは一体何なのか…?文盲だったキリヒトにマツリカが「言葉とは何か」を説くシーンが物語に引き込まれる最初のポイントだと思う。


文字が言葉?それとも発せられるのが言葉?そんな身近な何気ない疑問から、言語についての専門的な領域まで作中では展開している。


しかし、そんな難しげで専門的な言語の知識が独り歩きするわけではなく物語の展開に関わってくるのだから面白い。まさに言語学とファンタジーが融合して新たな世界を作り出している。


物語の中で好きなシーンの一つを引用しておく。

もし話したいことがあるのなら、伝えたいことがあるのなら、きっと人はその言葉を手に入れる。語るべきことを持つことは、語る言葉を持つよりずっと初めにあって、それでいてずっと難しいことなのだ。

(引用:図書館の魔女〈3〉P45-46/高田大介)


物語の展開から目を離せないのはもちろんのこと、こんな素敵な表現も各所に散りばめられているんだからもう最高。


──二人だけに通じる言葉

先程のべたようにマツリカは話すことができないため手話を使うのだが、物語の中で”指話”という新しい手話が登場する。


マツリカにとって手話こそが意思伝達手段なのだが、どうしても表現に限界があると感じていた。そこで感覚が鋭いキリヒトにのみ伝わる“指話”という二人だけの言葉を作り出してしまう。


指話は文字どおり、指を使って話す言葉である。手を繋いだ状態で指だけを使って話せる言葉なので、はたから見るとただ手を繋いでいるだけのように見えて、実は秘密にやりとりができていたりする。


この指話の存在が物語を一気に面白くしてくれると言っても過言ではない。


二人だけの秘密の言葉という存在だけでも尊いが、その言葉が生まれる過程から活躍する様まで図書館の魔女を語るにおいて指話の存在は欠かせない。


地の分が多く、出てくる表現も難解なものが多く読み進めるのが大変だ、などの感想をよく目にするが、この指話が登場するシーンまで頑張って読んでみてもらいたい。そこからはもう止まらないはずだ。





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