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『図書館の魔女』を紹介する。口のきけない魔女の物語はすべての読書家に捧げたい1冊だった【高田大介】

図書館にある書物は、すべてが互いに関連しあって一つの稠密な世界を形づくっている。(中略)図書館は人の知りうる世界の縮図なんだ。図書館に携わるものの驕りを込めて言わせてもらえば、図書館こそ世界なんだよ。

(引用:図書館の魔女1巻 94P/高田大介)


「いつまでもこの物語の世界に浸っていたい。読み終えてしまいたくない。」と思った作品はこの『図書館の魔女』が初めてだった。

間違いなく私の読書人生の中で一番好きな作品になった。


文庫本では第1巻~第4巻で構成されており、合計のページは1800ページを越える長編作品だが、ページ数もさることながら内容が非常に濃密であった。


今回はそんな『図書館の魔女』の魅力をあらすじ以上、重要なネタバレ未満で伝えられればと思う。

あらすじ

鍛冶の里に生まれ育った少年キリヒトは、王宮の命により、史上最古の図書館に暮らす「高い塔の魔女(ソルシエール)」マツリカに仕えることになる。古今の書物を繙き、数多の言語を操って策を巡らせるがゆえ、「魔女」と恐れられる彼女は、自分の声を持たないうら若き少女だった。超弩級異世界ファンタジー全四巻、ここに始まる!図書館のある一ノ谷は、海を挟んで接する大国ニザマの剥き出しの覇権意識により、重大な危機に晒されていた。マツリカ率いる図書館は、軍縮を提案するも、ニザマ側は一ノ谷政界を混乱させるべく、重鎮政治家に刺客を放つ。マツリカはその智慧と機転で暗殺計画を蹉跌に追い込むが、次の凶刃は自身に及ぶ!深刻な麦の不作に苦しむアルデシュは、背後に接するニザマに嗾けられ、今まさに一ノ谷に戦端を開こうとしていた。高い塔のマツリカは、アルデシュの穀倉を回復する奇策を見出し、戦争を回避せんとする。しかし、彼女の誤算は、雄弁に言葉を紡ぐ自身の利き腕、左手を狙った敵の罠を見過ごしていたことにあった。手を汚さずして海峡に覇権を及ぼす、ニザマの宦官宰相ミツクビの策謀に対し、マツリカは三国和睦会議の実現に動く。列座したのは、宦官宰相の専横に甘んじてきたニザマ帝、アルデシュ、一ノ谷の代表団。和議は成るのか。そして、マツリカの左手を縛めた傀儡師の行方は?超大作完結編。第45回メフィスト賞受賞作。

(引用:図書館の魔女1~4巻 裏表紙/高田大介)


魅力

広大な世界観

タイトルは「図書館の″魔女″」だが魔術で物を浮かせたりだとか、大釜で怪しげな薬を作っていたりだとかそんなことはない。ファンタジーに出てくるような竜だとか、伝説の剣だとか魔法もでてくるわけではない。


むしろファンタジーなのに非現実的要素を全否定するような場面すらある。


また物語の世界感が驚くくらい詳細に述べられており、架空世界であることを忘れてしまう程だった。自然、言語、人種、軍事、政治、建築、地政学など幅広い分野の話が出てくるが、どれをとっても内容が深く著者の造詣の深さが伺える。

登場人物

物語の登場人物はどのキャラクターも魅力的で個人的に好きなキャラクターばかりだ。ここでは主人公である『マツリカ』と『キリヒト』に絞って紹介する。

図書館の魔女『マツリカ』

マツリカの年齢はまだ若く、物語の中でも「うら若き少女」と表現されていた。(年齢は12~14歳くらいだろうか?)
が、しかしその風貌とは裏腹に頭脳明晰で知識、観察力、推理力あらゆる能力がずば抜けている。わずかな手掛かりから真実を導きだす様は、凄腕の探偵を連想させられた。


しかし、そんな彼女は声を持たない。

いくつもの言語を修得しているマツリカだが、口をきくことができないため手話によってコミュニケーションをとる。


そのため手話がわからない相手とは手話通訳を通さなければ、会話を進めることができなかったり、通訳を通すことで相手とのタイムラグが出来たりと手話による表現に限界を感じている。

鍛冶の里の少年『キリヒト』

マツリカの手話通訳として鍛冶の里からやってきたのがもう一人の主人公であるキリヒト。


常人を上回る、察知能力を持った少年で、歳はマツリカと同じくらいであろうか?


読み書きはまったく出来ないが、その感覚の鋭さをかわれ、マツリカにつかえることになる。

言葉

図書館の魔女が操るのは″言葉″のみ。剣をとらずに世界を変えていくマツリカの″言葉″の力に圧倒されずにはいられない。


また、著者の高田大介さんは言語学者である。そのためか作中に出てくる言葉も難しく、今まで見たことがない言葉がいくつもあった。


例えば「杣道(そまみち)」という言葉をご存知だろうか?1巻の最初のページから出てくる言葉なのだが、恥ずかしながら私は初めて見た。

意味は「細くけわしい山道」


なるほど、語彙力があるとはこういう人の事を言うのだな、と思わずにはいられなかった。


このやや難解なくらいの言葉のチョイスが、″言葉をテーマにしたファンタジー″であるこの作品には丁度いいのかもしれない。

最後に

冒頭に述べたように全4冊と重厚な本書であるが、1巻の序盤1/3くらい(キリヒトとマツリカが出会うまで)はなかなかに読みづらい印象を受けた。


しかしそこさえ過ぎてしまえば加速度的に面白くなり、物語に没頭できると思う。



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