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『容疑者Xの献身』の感想を好き勝手に語る【東野圭吾】


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ガリレオシリーズ長編第一作目の『容疑者Xの献身』の感想を語っていく。


ネタバレありなので、未読の方はコチラをどうぞ。
『容疑者Xの献身』あらすじ・紹介

長編ガリレオシリーズ あらすじ・紹介


目次

感想

湯川が石神の家を訪れたときにした数学に関する会話がトリックの全体像をさり気なく伝えているのと流石だなと思った。

「P≠NP問題というのは当然知ってるよな」湯川が後ろから声をかけてきた。
石神は振り返った。
「数学の問題に対し、自分で考えて答えを出すのと、他人から聞いた答えが正しいかどうかを確認するするのとでは、どちらが簡単か。あるいはその難しさの度合いはどの程度か──クレイ数学研究所が賞金をかけて出している問題の一つだ」
「さすがだな」湯川は笑ってグラスを傾けた。
石神は机に向き直った。
数学は宝探しに似ている、と彼は思っている。まずどのポイントを攻めればいいかを見極め、解答に辿り着くまでの発掘ルートを考察するのだ。そのプラン通りに数式を組み立てていき、手がかりを得ていく。何も得られなければ、ルートを変更しなければならない。そうしたことを地道に、気長に、しかし大胆に行うことによって、誰も見つけられなかった宝すなわち正解に行き着けるのだ。
そうした喩えを使うなら、他人の解法を検証するということは、単に発掘ルートをなぞるだけの簡単なことのように思える。しかし実際はそうではなかった。間違ったルートを進み、偽の宝物に辿り着いている結果について、その宝が偽物だと証明するのは、時に本物を探すよりも難しい場合がある。だからこそP≠NP問題などという途方もない問題が提示されているのだ。

(引用:容疑者Xの献身 P117-118/東野圭吾)

間違ったルートを進み、偽の宝物に辿り着いている結果について、その宝が偽物だと証明するのは、時に本物を探すよりも難しい場合がある。
この部分がそのまま今回のトリックに当てはまる所だ。



表紙

漆黒の中に咲いている一輪の赤い薔薇。シンプルながらも、とても印象深い表紙の『容疑者Xの献身』


作品中に薔薇は出てこないと記憶している。一見関係ないように思えるが、花言葉などを含めて考えると、なんとなく答えが見えてくる。


薔薇は、色や本数によって花言葉が変わる。ちなみに赤色は 「あなたを愛してます」「愛情」「美」「情熱」「熱烈な恋」「美貌」


そして1本だと「一目ぼれ」「あなたしかいない」


まさに石神の気持ちを表現しているとしか思えない。黒一色の所は自殺しようと真っ暗の気持ちだった石神を、そして薔薇は挨拶に来た花岡靖子に対しての気持ち、と考えるとしっくりくる。

ラスト

尽くす事を愛と呼ぶのなら、石神以上の愛を私は見たことがない。


P358〜、湯川が靖子に真実を語り始める。ここからの物語の収束具合がえげつない。


工藤も普通に気のきく”いい人”なのだが、石神とは比べ物にならない(比較できるものではないかもしれないが)。工藤の存在が石神の献身さ、というものを際立たせている。


石神が靖子に送った手紙が私は忘れられない。

『工藤邦明は誠実で信用できる人物だと思われます。彼と結ばれることは、貴女と美里さんが幸せになる確率を高めるでしょう。私のことはすべて忘れてください。決して罪悪感などを持ってはいけません。貴女が幸せにならなければ、私の行為はすべて無駄になるのですから。』

(引用:容疑者Xの献身 P/東野圭吾)

自分がしたことをすべて伏せたうえで、このような手紙が送れるものなのだろうか。自分のすべてを犠牲にして、彼女の幸せを願い、自分を忘れて嫉妬を抱いていて相手と結ばれたほうがいい。なんて...。


やりきれない切なさと、悲しさと、石神の覚悟に本当に涙がでる。献身という言葉以上に相応しい言葉が見つからない。




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