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『図書館の魔女』「高い塔」の考察を好き勝手に語る【高田大介】


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『図書館の魔女』のタイトルになっている『図書館』つまり「高い塔」──。
   


「高い塔」は人の意思をくみとることができるまた自らの意思を持っているという結論に達したので、そう考えるようになったきっかけを語っていく。


目次

「高い塔」についての考察

1.向きの変わる階段と回廊

読者が「高い塔」についての一番の疑問は、向きの変わる階段と回廊についてだろう。


マツリカが答えた理由を簡単にまとめる。

・言葉は時の運行に従う。(一方通行で不可逆)
・言葉は小から大へ階層構造持って組み上がっている。
・言葉を集めて、一つの書物が織りなされる。この書物は言葉の性質をそっくり受け継ぐ。(書物も一方通行で不可逆)
・図書館は書物の集積から織りなされた厖大な言葉の殿堂であり、図書館そのものが一冊の巨大な書物である。
・よって図書館は、言葉の性質を受け継ぐので、順路は一方通行で不可逆である。


しかし、どのようにして回廊が昇りも下りも時計回りに進むことができるように変化するのか?とても気になるが、回廊の変化している様子についての描写はない。


キリヒトが回廊が向きを変えたことに、進み始めてから気付いたということは、音もなく、なんの気配もなく、いつの間にか、自然に変化したということになるだろう(魔女との初めての対面に緊張して気付かなかった可能性もあるが)。


どのように変化したのか、現時点では残念ながら説明しきれない。


だが、ここで一つ大きな疑問が浮かぶ。それはマツリカたちが自然と回廊を下り始めた点だ。


マツリカたちが回廊を下ろうとしたときには、すでに回廊の向きが変わっていた。つまり、図書館がマツリカたちの意思をくみとって回廊を変化させているといっていいのではないだろうか。


2.「高い塔」は意思をくみとり、意思を持つ

先程述べたように、「高い塔」は内部にいる人間の意思をくみとっているように思える。それを示すもう一つの根拠にマツリカの発言がある。

── いずれにせよお前をここで門前払いするわけにもいくまい。門前払いも何もすでに図書館はお前を迎え入れていることだし......。爺の手前もある、お前の師匠の面目もあろう、ひとまずは試みまでにしばらく使ってやることにする。

(引用:図書館の魔女1 P91/高田大介)


図書館はお前を迎え入れている。
この一言が鍵だ。


キリヒトが初めて図書館を訪れたとき、第一の扉はキリヒト自身がひらいた。その後、第一の扉と第二の扉に挟まれた(閉じこれめられた)。そしてしばらくしてから第二の扉が自動で開いた。


第一の扉と第二の扉に挟まれているとき(「高い塔」の内部に足を踏み入れたとき)、「高い塔」はキリヒトの意思をくみとっていたのだろう。


そして、「高い塔」にとって悪意のある存在ではないと判断され、第二の扉が開かれたと考えていいのではないだろうか。


つまり、「高い塔」は内部にいる人間の意思をくみとることができる。また自らの意思を持っている。と考えられる。


3.キリヒトが初めて「高い塔」に入るシーン

キリヒトが外側の一つ目扉を開けているシーン

扉は強く押してみてもゆっくりとした一定の速さでしか開かなかった。キリヒトの手に伝わる抵抗は扉の重さと錆びた蝶番のせいばかりではないことはすぐわかった。扉が開くにつれ左右のどこかでぎりぎりと大きな歯車が軋み合って動いている気配がある。

(引用:図書館の魔女1 P47/高田大介)

 
キリヒトが内側の二つ目の扉と向かい合っているシーン

キリヒトは手を扉のに押し当てたまま、しばらくじっとしていた。ただ耳を澄ましていた。第一の扉が閉まってからしばらくたつのに、まだ軋みながら動いている歯車の音が消えていなかった。キリヒトは息を静めて、口の中で自分の呼吸の数を数えながら、やまぬ歯車の音を聞き続けていた。
歯車の音はだんだんに調子良く響きはじめた。それと前後して重たい鎖が巻き上げられる音は聞こえる。ほどなく鎖が巻き上がる音が止まり、歯車がごとりと静かになり、どこかで閂のがちりと抜ける音が響き、手を触れていた扉が軋みを上げて観音開きに向こうへ開きはじめた。こちらに光が漏れてくる。扉が開く。

(引用:図書館の魔女1 P49/高田大介)


これらを読むと、第一の扉が開かれたことと連動して第二の扉が開かれたように思える。


しかしそんな単純な理由ではないだろう。なによりそれならわざわざ二重の扉にする必要がない。
(※追記:書物の管理環境を守るという点では、二重扉は十分な役割を果たしている)


単に連動する扉ならいつでも、誰でも「高い塔」に侵入できる道理となってしまう(第一の扉に鍵穴などがないことは、P47で語られている)。


このようなことからも「高い塔」が意思を持って、入場する者を選別しているように思われる。


またマツリカたちが図書館から出ていくシーンに決定的な説明が成されている。

図書館は真に心得のある者、その言葉を聞き取る者には、躊躇いもなく扉を開くのだ。

(引用:図書館の魔女1 P142/高田大介)


4.「最も高い塔」のルビ

下巻の最後のほうに「最も高い塔」の文字があり、そこには「トゥッリス・アルティッシマ(turris altissima)」とあてたルビがついていた。


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(参照:図書館の魔女〈下〉P803)

気になって調べてみると、turris altissimaはラテン語で

・turris=塔
・altissima=最も背が高い

という意味を持つ。

「アルテシマ」とは、ゴムの木の一種である。また「アルテシマ」の種類であるゴムの木の花言葉は「永遠の幸せ」だ。


つまり「最も高い塔」は「永遠の幸せの塔」ともいえるのではないだろうか。


正直な話、「高い塔」というネーミングが簡素すぎるような単純すぎる気がしていたが、ラテン語の意味を考えるとこれ以上ないネーミングに思える。


しかもコレを最後の最後にもってくるとか...最高かよ...。


5.帳面の文字は誰が書いた?

文字は飾り気のない古い角張った書体で、かすかに赤みがかった黒い烏賊墨で紙面の上を横切っている。キリヒトは文字が読めなかったので気にも留めなかったが、もし彼にその一行を読むことができていたとしたら、キリヒトがその時感じていたうすら寒さが倍にも感じられて、踵からくびすじまで震えが走ったことだろう。そこに書かれた一行には、この街にきてまだ一度も名のったためしのない少年の通り名が記されていたのだから。そしてまたキリヒトに烏賊墨で文字を刻む習慣が仮にあったならば、まだ赤黒い縁取りを周囲に残し、墨跡が黒々と紙の上に盛り上がっている問題の一行がたったいま書き記されたばかりの筆跡だということに気づいたかもしれない。

(引用:図書館の魔女 1 P56/高田大介)

キリヒトが初めて「高い塔」を訪れた時、紙に書かれてた『少年の通り名』。これはいったい誰が書いたのだろうか?

この場面で高い塔にいたのは、キリヒトを除くとマツリカとハルカゼとキリン。しかし、マツリカは本を読んでいたし、ハルカゼはマツリカについていたし、キリンも本を読んでいたようだし...。この三人が書いたとは思えない。


そもそもキリヒトとマツリカたちが初めて会ったときマツリカたちは、誰かが来るとは知らされていたようだが、それがキリヒトだとは知らなかった。(名前を聞きてましたしね)


マツリカたちはキリヒトの名前を知らなかった訳なので、そもそもキリヒトの名前を帳面に書くことは出来ないはずだ。


逆にキリヒトが高い塔に行くことを知っていたのはタイキ・ロワン・先代キリヒトだけだと思われる。しかし、もちろんこの3人は高い塔にはいなかった。


つまり誰も帳面を書くことは不可能である。一番可能性があるのは高い塔が書いた説ではないだろうか?回廊の向きを変えるくらいなので、帳面に名前を書き記すくらい、突拍子な考えではないだろうと思われる。


最後に

まだまだ多くの疑問を残す『図書館の魔女』。今回の考察があなたに何か新しい発見や疑問の提示ができていれば、なによりだと思う。


第三部 『霆ける塔』の詳細が未だにでてきていないのは心苦しい限りだ。


塔という文字が入っているし、「高い塔」にスポット当てた作品なのかな?「霆ける」の意味は、(雷が)激しく鳴り響く。だし、「高い塔」が直接侵略でも受けるのかな?


そんな妄想を繰り広げながら、じっくりと新作の発表を待とうと思う。



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