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【小説】音は作り磨くモノ──『羊と鋼の森』あらすじ・紹介【宮下奈都】

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言葉で伝えきれないなら、
音〈ピアノ〉で表せるようになればいい。

(引用:羊と鋼の森/宮下奈都)


2016年に「本屋大賞」を受賞した宮下奈都のベストセラー小説『羊と鋼の森』を紹介していく。


『羊と鋼の森』を簡単に説明すれば、ピアノの調律師を目指す青年が職場の先輩や、お客さんとの関わりを経て成長していく過程を描いた物語である。劇的な展開や大きな事件が起こる訳ではないが、繊細な心情描写と、主人公の確かに成長の様子は、ジワジワと熱を帯びてくるような面白さがある。


個人的には、読みやすくスッキリした読了感。そして単行本で243ページと文量も多過ぎず少なすぎず、普段あまり本に触れない方も読みやすい作品だと思う。



感想はコチラ。
【『羊と鋼の森』感想】


目次

あらすじ

高校生の時、偶然ピアノ調律師の板鳥と出会って以来、調律に魅せられた外村は、念願の調律師として働き始める。ひたすら音と向き合い、人と向き合う外村。個性豊かな先輩たちや双子の姉妹に囲まれながら、調律の森へと深く分け入っていく─。一人の青年が成長する姿を温かく静謐な筆致で描いた感動作。

(引用:「BOOK」データベース)    

見どころ

──調律師を志した青年の物語

主人公は高校生の外村。ピアノにも、もちろん調律師にも興味をもっていなかった外村。ある日、偶然出会ったピアノ調律師の板鳥と出会い"調律師"という仕事に魅せられる。


それまでは、物事にあまり関心が持てていなかった外村がピアノと調律の世界に没頭する。ピアノの音と向き合って、ピアノを通してお客さんや職場の先輩と向き合って成長していく。ひた向きに調律の道を進む外村の静かな情熱が私は少し羨ましかった。


どんな想いを抱えた人が、ピアノの調律師になろうと思うのだろうか?
少なくとも共通するのは、元々ピアノが身近にある生活を送っていた人だろうと思う。しかし外村はピアノの調律師になろうと思うまで、ピアノに関してまったく関心がなかった。


そのために様々な葛藤を抱えることになるのだが、そんな外村に対して職場の先輩たちがアドバイスをおくったり、自分の調律に対する想いを告げたりする様子…人間関係に温かな気持ちになれる。

 

──"調律"という仕事の奥深さ

物語のメインテーマは、主人公・外村の成長を描いたものであるが、"調律"という普段、ピアノに触れない方には縁のない仕事について触れることができるのも『羊と鋼の森』の面白いところだ。


調律は音程を合わせるだけでは終わらない。
「相手が求める音を作る」
これが物語で語られる調律の本質だ。明るい音、暗い音、大きい音、小さい音、硬い音、柔らかい音、響く音、鈍い音……。音程とはまた違う、感覚に近い部分。だから相手が本当に求めるものをくみ取る感性と、更にそれを再現する技術力…。調律の奥深さと、それを可能にする調律師の技術や感性を味わえる。調律師とは、まさにピアノに命を吹き込む仕事だ。そんな奥深い世界を繊細に表現している『羊と鋼の森』が面白くないはずがない。


──言葉って美しい

もう一つ、私が『羊と鋼の森』をよんでいて、感じたのは言葉って美しいんだなということだった。言葉の美しさ、表現の美しさがこの物語を引き立てていると思う。

「さっきよりずいぶんはっきりしました」
「何がはっきりしたんでしょう」
「この音の景色が」
音の連れてくる景色がはっきりと浮かぶ。一連の作業を終えた今、その景色は、最初に弾いたときに見えた景色より格段に鮮やかになった。

(引用:羊と鋼の森 P10/宮下奈都)

"音の景色"
音の感想なのに、視覚の表現の景色って表現するあたりとっても好き。


一つひとつの表現が、心理描写が、情景が繊細だ。とくにピアノ…つまり"音"を表現する描写が『羊と鋼の森』は必然的に多い。もちろん本で音を聴けるはずがないのだが…「こんな音なんだろうなぁ」と自然とピアノの音が頭に浮かぶような、そんな繊細な表現が魅力の一つだと思う。



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