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『黄金の黄金 白銀の王』の感想を好き勝手に語る【沢村凜】

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「薫衣様。私はお教えしたことのなかで、いちばん大切なことは何でしたでしょうか」
「この血に恥じぬよう生きること。事切れる間際まで」

(引用:黄金の王 白銀の王 P27/沢村凜)


沢村凜の和製ファンタジー、『黄金の王 白銀の王』の感想を語っていく。ネタバレありなので未読の方はご注意を。


感想

綺麗事だけで国をまとめる事はできない。仇敵同士の二人が新しい国を築いていく様子は心あつくなるが、私はひたすらに薫衣という人物に心動かされ続けた。


薫衣は常に先を見据えていた。常に天秤にかけ最良の道を見据えていた。
「小事に目を奪われて大事をおろそかにしない」
迪学の教えをひたすら忠実に守り抜いていく薫衣だが、その姿が余りに痛々しい。  


「小事に目を奪われて大事をおろそかにしない」それはどれだけ大変なことか。誘惑をひたすらに押しのけつつ、誹謗中傷に耐え、更には同じ一族の者すら切る。茨の道を突き進む薫衣はあまりに強い、強すぎる。


そんな薫衣だから、何にも負けることはないと思っていたが、第二夫人の河鹿と、その子である鵤の言葉、そして自害による抗議で心が折れたところを目の当たりにしたときは、「薫衣も同じ、一人の人間なんだ」という当たり前のことを思い出さされた。


どんなに強くても、やっぱり一人の人間。身体も心も、限界がある。苦悩から逃げてもしまう。でも追い詰めるのが人間なら、救ってくれるのも人間。稲積の存在は、本当に救われる。P439あたりからの稲積の溢れ出る本音に薫衣はどれだけ救われたのだろう。


この場合、薫衣に本当に必要だったのは同じ一族である旺廈の河鹿ではなく、仇敵である鳳穐の稲積だった。と言っていいよね?


特にラストの約100ページがもう止まらない。447ページから薫衣と穭ふたりが放牧場で会話をするシーンとか忘れられない。もし、お互いの立場が逆だったらどうなっていたのか。そんな穭の問に対して薫衣は

「私は私のやり方で、そなたがなしただけをなし、そなたはそなたのやり方で、私がなしただけをなしただろう」

「どちらの風が吹いていても、そなたと私のいる場所が入れ替わっていただけなのだ」

(引用:黄金の王 白銀の王 P451/沢村凜)


極めつけは薫衣のこのセリフだ。


「私だって、同じだ。誰にも理解されないことをなしつづける力など、きっと、持ち合わせていない。だが、そなたがいる。そなたは私が、何を、なぜ、なしてきたか、知っている。一人いればじゅうぶんだ」

(引用:黄金の王 白銀の王 P450/沢村凜)
薫衣の口からこんな言葉が聞けるなんて……。この数ページに物語のすべてがつまっていると言っても過言ではないと思う。


薫衣と穭、殺し合う運命にあったはずの二人が、お互いがお互いを認めあえる関係にまでなっている。胸が熱くなる。激動の時を共に生きて、翠国に新しい風を吹かせた二人。


これからも鳳穐と旺廈が共に生きれる和解の道を順調に進むのかと思いきや、爆弾を落とされて衝撃が走った。

薫衣の死の、一年前の出来事だった。

なんで!こんな和やかな雰囲気なのに!!これから更にいい方向に向かいそうなのに!!そんなタイミングで薫衣が一年後に死ぬと宣告されるって!!衝撃以上の何者でもない!!


私は、薫衣に死んでほしくなかった。一族のためではなく、己の幸せのため稲積たちとこれからも生きてほしかった。


私も知らず知らずのうちに薫衣の人をひきつける"力"にかかっていたらしい。旺廈の人間を説得させた力。また穭が薫衣の処刑前に語っていたように死んでほしくないという気持ちが私の中にも溢れていた。