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『虚空の旅人』の感想を好き勝手に語る【上橋菜穂子】

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「……そなたの才能を、政だけにすり減らすな。驚きをもって異界を見るまなざしを決ししてくもらせないでくれ」

(引用:虚空の旅人 P380/上橋菜穂子)

上橋菜穂子氏による大人気シリーズ、『守り人』シリーズの外伝『虚空の旅人』の感想を語っていく。


ネタバレありなので未読の方はご注意を。

感想

『妖精の守り人』、『闇の守り人』、『夢の守り人』と順番に読み進めてきてからの今回の『虚空の旅人』。初のチャグム視点の物語だったが、相変わらず期待を裏切らない面白さに大満足だった。


バルサ、タンダ、トロガイは登場せず(名前だけなら出てくるが)、皇太子であるチャグムを主人公にした物語なこともあって、アクションシーンは少なめなものの、チャグムの視点で語られる国同士の駆け引きや陰謀が今までにないシリーズの展開で面白い。


初登場では11歳で弱々しかった少年が14歳となり、今までの王と同じではなく、自分の道を歩み始めたチャグムが、一本太い芯の通った皇太子に成長していたのが印象的。登場人物たちの成長が垣間見えるのがシリーズ作品を追っている醍醐味でもあるよね。


自らの立場をわきまえつつ、助けの手を差し伸べられたら全力で答えようとするチャグムの姿が、なんだかバルサの姿と重なるようで、バルサの影響をうけつつ成長してくれたのだなと思うと胸が熱くなる。バルサから教わった護身術を続けてる所とか、いつかそれを披露したいと思っている所とか健気……。またバルサとチャグムのやり取りを見たい……きっとあるよね。


このシリーズにだいたい共通するのだが、タイトルの意味が明かされるシーンがたまらなく好き。タイトルに秘められた想いなど、知ってしまったらこれ以上のタイトルはないと感じさせてくれる。

「わたしは、あえて、この危うさをもち続けていく。天と海の狭間にひろがる虚空を飛ぶハヤブサのように、どちらとも関わりながら、どちらにもひきずられずに、ひたすらに飛んでいきたいと思う。
そして、いつか新ヨゴ皇国を、兵士が駒のように死なない国に……わたしが、薄布など被らずに、民とむきあえる国にしたいと思う。〈略〉」

(引用:虚空の旅人 p379-380/上橋菜穂子)



ちなみに虚空の意味は
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(出典:虚空(きょくう)とは何? Weblio辞書

今作は『虚空〈こくう〉の旅人』だが、虚空〈きょくう〉の意味に「むなしいこと。」とある。


先程の引用にチャグムの決意が明かされているわけだが、頼もしいと思うと共になんだが、とても寂しいように……むなしいように感じてしまった。


「どちらとも関わりながら、どちらにもひきずられずに、ひたすらに飛んでいきたいと思う。」
王族の人間とも民とも、深い関係を築くことなく孤独に生きていくと宣言しているようで、この一文がとくに突き刺さった。


こう宣言できるのは、心の支えとしてバルサやタンダたちがいるからなのかな…と。はやく『夢の守り人』のときのように少しでもいいから再開してほしい。


あと、「そして、いつか新ヨゴ皇国を、兵士が駒のように死なない国に……」とあったが、このセリフで一番に浮かんだのが、守り人シリーズとはまったく関係ないけど、某図書館の軍師様なんだよなぁ……。

(ファンタジー大好きなみなさま、『図書館の魔女』オススメです。)


最後に

あとがきを読んでいてハッとさせられたのが、チャグムが救われたって点。

『精霊の守り人』を書いていたとき、私はすっかりバルサの気分になっていたもので、たったひとり冷たい宮へ戻っていかねばならないチャグムがかわいそうでなりませんでした。物語を書き終わる頃には、すっかり、このやんちゃで真直ぐなチビスケが好きになっていたからです。

(引用:虚空の旅人 P381/上橋菜穂子)

このあとがきを読んでシリーズ化されてよかったなぁと心から思った。『精霊の守り人』では確か、ラストシーンでチャグムが自ら決意を固めて、バルサたちから離れて宮へ戻っていったと思うのだけど、私も著者と同じ気持ちで、王族として生まれたことで縛られるチャグムがかわいそうで仕方がなかった。


だからこそ『虚空の旅人』では成長した、そして一時とはいえ宮を離れて生き生きとしたチャグムをみれて本当によかった。


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