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『まほり』の感想をネタバレなしで語っていく【高田大介】


およそ言葉というものは、欠けるにしても足されるにしても、形が変わるのに必ず動機を必要とする。なぜなら、放っておいたら勝手には変わらないというのが言葉のかなり重要な機能の一つだからだ。世の人が一般に信じているほどに言葉というものは闊達に変化したりなどしない。

(引用:まほりP292-293/高田大介)




待ちに待った高田大介氏の新作『まほり』

ファンタジー作品の著者の前作『図書館の魔女』とは違い、現実世界を舞台にした民俗ミステリーの『まほり』だったが、どんどん物語の世界に引き込まれるのは相変わらずで、あっという間に読み切ってしまった。



今回は読了後の率直な感想を重要なネタバレは避けて書いていく。


ネタバレや細かく内容に触れた感想・疑問・などは、まだ一度読んだだけで消化しきれていないので、再読したあとにじっくりと書く予定だ。


目次

感想

『図書館の魔女 霆たける塔』の発売を待ち続けること幾年。不意に発表された高田大介氏の新作である民俗ミステリー『まほり』の刊行決定。それは高田大介=図書館の魔女のイメージだった考えに一石を投じるものだった。


冷静に考えれば、ファンタジーではなく、こちらの分野こそが著者の本領なのでは…?という考えがよぎったし、実際読んであとでは、その考えも間違ってはいないのかもしれないと思った。


知識量と情報量が『図書館の魔女』並みかそれ以上で、舞台が現実世界というのもあり、史実をベースを展開される物語はリアリティの塊だった。

──要所要所は難しいが…

白文がでてきたり、知識量と情報量の圧倒的物量で会話が進んで行くところがあったり、歴史について深く突っ込んだりと、要所要所は間違いなく難解である。


だがしかし、白文でいえば登場人物たちがうまい具合に解説をしてくれたりと、なるべくスムーズに読み進められるようになっていた。


著者のブログで『「図書館の魔女」の手紙』について触れた記事で下記のような記述がある。

全体を遠景で眺めてみてもいけているし、顕微鏡で観察すればさらにどの切片にも驚きが含まれている。そうした、山川草木、自然の巧まざる構成美、みたいなものを文章でも実現できればと精進しております。

(引用:『図書館の魔女』の手紙 | 図書館の魔女 de sortiaria bibliothecae)

文字通り『まほり』ではこの言葉通りのモノが表現されていると思った。要所要所の難解な箇所を理解しきれなくても、全体の流れを追えれば物語としてワクワクするしゾクゾクする。


さらに細い箇所に注視していけば、驚きが散りばめられているのだろう。私は歴史、民俗、漢文などには疎いので、著者のいう「顕微鏡で観察」できる状況にはいないのだが、いずれは手探りでも分析したいと思っている(できるとは言ってない)。


──史実と虚構

大衆の歴史の裏に隠れて、普段は表立っては出てこない史実をベースとして物語は展開されていくわけだが、とにかく事実と虚構(フィクション)の境目がわからなくなるくらいリアルだった(流石に行き過ぎた村の風習とかは分かるが)。


ホントに、もしかしたらどこかにこんな村が…こんな風習が残されているんじゃないか…?と思わせてくれるほどに史実を背景に虚構が違和感なく飾られている。


あとは、膨大な史料から答えを読み解いていき、少しづつ物語の全体像が浮かび上がってくる様子がたまらなく面白い。また史料を読み解くにしても、フィールドワークや実体験の昔話からのアプローチを駆使しているのも物語に引き込まれるポイントだったと思う。


──明かされていく真実

二重丸の意味
裕の母親について
そして、タイトルの『まほり』


隠れていた真実が明らかになる瞬間が、どれも鳥肌モノだった。とくに『まほり』の謎が明らかされたときはゾッとしてページを進める手が止まったほどだ。コレをタイトルにするのか、という驚きと恐怖感。


あと恐怖感といえば、裕が聞く昔話も負けず劣らずで、あんな体験をしたらなかなかのトラウマになるだろう。「実態はわからないけど、何か怖い。得体が知れなくて不気味」というのは具体的に形がハッキリしているモノの恐怖感より、よっぽどに質が悪いと思う。


この昔話の箇所を読んでいると、形而下のものではなく、得体がしれないものが怖いと言っていた某魔女の気持ちがよくわかる。


──癒し

かといってこれまで挙げたように重い、難しい話ばかりではなく、裕と香織のフィールドワークの場面は読んでいて癒やされる。二人のやり取りも見所の一つだった。


何より「関係各所……」のくだりとか香織の勝鬨とか、思わずニヤける場面も多かった。あとおにぎりとかね。


──やっぱり”言葉”

『図書館の魔女』では”言葉”に秘められた強さをまざまざと見せつけられたので、『まほり』でも”言葉”そして”言語”についてどのように触れていくのか強く期待していた…が、これはね、やられましたよ。


ネタバレになるので詳しくは書かないが、物語最大のインパクトがあったとだけ言っておく。



最後に

『図書館の魔女』のマツリカといい、続編『烏の伝言』のエゴンといい、更には『まほり』のイチといい、著者は言葉を話す事ができない人物をキーにするのに何か拘りとかがあるのかな…?


それにしても『まほり』、大満足の一冊だった。丸一日かけて読破するつもりだったのにそれでも読みきれないほどの濃密さ、更に再読してもまだまだ発見があるだろうな、と思えるくらい作り込まれた物語。『図書館の魔女』でも分かっていたことだが、『まほり』を読んで著者に永遠に着いて行くことが確信に変わった。


あと余談だが、『まほり』本文にでてきた「雷霆」の言葉で、霆ける塔…!と連想してしまった読者は残念ながら私と同類です。諦めてください。



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