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『内なる宇宙』の感想を好き勝手に語る【ジェイムズ・P・ホーガン】

ジェイムズ・P・ホーガンの『内なる宇宙』の感想を語っていく。ネタバレがあるので未読の方はご注意を。


目次

感想

今までのシリーズ作品とはだいぶ毛色の違う作品だった。
『内なる宇宙』は10年越しのシリーズ4 作品目で、『星を継ぐもの』『ガニメデの優しい巨人』『巨人たちの星』の3作品とは違って、初めは作者自身も「続編を書くつもりはなかった」と本書冒頭に書かれていたので毛色が違うのもなんとなく納得できる。


他の方の感想を拝見すると「3部作まででよかった」などの声が多く見られた。私もその気持ちは分かる。シリーズとしては『巨人たちの星』までのほうがまとまりがあったと思う。でもそれは『内なる宇宙』がつまらなかったという訳ではない。まとまりとしては外れていたかな、というだけ。

──タイトルの”内なる”の意味

『内なる宇宙』このタイトルの意味が分かったときは衝撃だった。

「わたしたちがいるこの現実の宇宙は空間を占める夥しい基本粒子から進化しました。複雑な構造が自律生成する潜在過程を含む物理法則と確率の法則に従って宇宙は生まれたのです」彼女は言った。「そこから知性が顕在するまでに高度に複雑な存在が登場したのみならず、その知性を認識する印象と体験の世界、それも、根底をなす量子力学的現実とはおよそかけはなれた、統一体としての世界が生まれました。だとしたら、コンピュータのマトリックス宇宙にも、これに劣らず高度に複雑な存在が出現するのはまつまたくあり得ないことだろうか……?あなたは、そうおっしゃるのですね」

(引用:内なる宇宙〈下〉P128/J・P・ホーガン)


長い上に難しい表現ですが要するに「コンピュータの膨大な情報の集積が、自分たち人間と同じように物を感じたり考えたりする人格を作り、さらにはもう一つの世界(宇宙)を形成した」ということですね。


”内なる”宇宙とはそういうことか…と。物理法則が違ったり、明らかに魔法のようなものを使っていたりと違和感のあった「どこかの世界」だが、文字通り世界の内側とは思いもしなかった。そんな突飛な仮説もハントの説明をきいていると現実の世界でもありえるのでは…!?と思えてくるんだから不思議なもんだ(難しくて理解はしきれないけど)。


その内なる宇宙、『エントヴァース』が誰かの意図によって作りだされたわけではなく、自然発生した世界。という点がまた面白い。現実の宇宙と同じ。

──過去作との繋がり

シリーズ前作のどんでん返し…というか新しい発見を納得できる、かつ興味が惹かれるように発展させてくれるのがこのシリーズの面白いところ。


過去作『巨人たちの星』では、かつて地球に送り込まれたジュベレンの工作員が、おかしな信仰や迷信を広げたせいで地球文明の発展が遅れていた…とされていた。


『内なる宇宙』では、さらにその工作員の中にエント人が乗り移っていたジュベレン人が混ざっていたのではないか…と展開していく。


今まで超能力や魔法のような論理的ではないおかしな物が信じられていたのは、実際にそのような魔法まがいの不思議な力が使えたエント人が工作員にまぎれていたためだった…と。


あとこれはジーナの仮説だけどキリストや神話について、ジュベレンの工作員を交えた話も面白い。異端審問も聖戦もすべて本来のキリストの教えとはまったく関係なかったとか(上巻のP153あたりから)、地球では、神話・伝説で片付いけていたのとも舞台が違うだけで実際の出来事だったのではないか…とか。史実を混ぜた展開は興味をひかれる。このあたりの歴史についても詳しく調べたくなる。

最後に

いつも通り物語だが、でてくる用語一つひとつが難しい上に数も多い。ある程度割り切って読まないとなかなかに読むのが大変だった。用語集とかあったらわかりやすいのかな。気が向いたら作ってみようと思う。





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