FGかふぇ

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『宝石商リチャード氏の謎鑑定』【辻村七子】


美しさは千差万別、幅広く、豊かなもので、そこに気づくことができるのは才能です。

(引用:宝石商リチャード氏の謎鑑定 P68/辻村七子)

辻村七子の『宝石商リチャード氏の謎鑑定』の感想を語っていく。ネタバレがあるので未読の方はご注意を。


目次

感想

読みやすくてさらっと読めた。ページ数が300ページ未満というのもあり気軽に手をつけられるし、物語のテンポもよい。続編もあるようなので読んでみたいと思う。


宝石は何故”宝石”なのか?『華やか』『贅沢品』といったイメージしかなかったけど、『支え』『絆』とか新しい考えが自分の中に入ってきた。宝石に焦点を当てた作品だから当然だけど、随所にでてくる宝石に関する蘊蓄は分かりやすいし勉強になる。なにより宝石の世界が自分にとって新しい世界だからシンプルに面白い。

──宝石商とまっすぐな青年

リチャードの経歴が気になる。何故、宝石商になったかとか、宝石が好きになったきっかけとか。一流である彼が一番好きな宝石とか。
気の回し方とかホント完璧人間。
最後のところとかね。


正義もいいキャラではあるんだけどな…まっすぐすぎるのと、鈍感すぎるので見ていて歯がゆい感が否めない。それが彼の良い所なんだけどね。


──1.ピンク・サファイアの正義

全4章のうちの始まりの章だけど、この話が一番印象に残った。


掏摸はもちろん犯罪だけど、娘を守るためにはそれ以外の選択肢がなかったんだもんなぁ…。ぎりぎりに迫られても娘と生き抜くことを選んだんだからおばあちゃんは強い…。


おばあちゃんの事を嫌う正義のお母さんの気持ちが途中までわからなかったけど、正義に語った告白を聞くとなるほどなぁって感じ。自分自身の『正義』をどこに掲げるかの違いかな…。


自殺未遂をした女性との対面、絶対に荒れるだろうと思ってたけど予想外だった。掏摸にあって、大切だろう物を失って、救われるなんてことがあるんだな。他人にとっての幸せが己にとっての幸せではない。


──2.ルビーの真実

ルビーをめぐるやりとりよりも、同性愛を取り上げたデリケートな苦悩が印象的だった。

「日本人は皆、寿司が好きで相撲を観ますか?『ああいう人』と十把一絡げに判断することは、精神を檻に閉じ込めるに等しい蛮行です。加えて統計によれば、人口の五パーセントから十パーセントは同性愛者ですよ。あなたが彼らの存在に無頓着なだけでしょう」

(引用:宝石商リチャード氏の謎鑑定 P139/辻村七子)


無頓着…グサってきたな。確かに自分は無頓着だなぁ…。物語の中では「普通でないこと」に苦しむ登場人物が描かれているわけだけど、現実世界で「普通でないこと」に苦しむ人たちの大概は今回の登場人物と同じなんじゃないかな。


同性愛について理解も深まってきてる昨今だろうけど、まだまだ「普通」にはなってないし、驚いたのは「統計的には5パーセントから10パーセント」とあって、理解が浸透していない社会だからそれを悟られたくない人もたくさんいるんだろうなぁって。


そんな社会だからこそ自分が無自覚で他人を傷つけることはないように配慮が必要だなぁとは思った。


てか「十把一絡げ」なんて語彙を使いこなせるリチャードは何者なんだよと思わざるを得ない。


──出てきた宝石などについて

宝石についての蘊蓄が印象的だったのでまとめた。


【ピンク・サファイア】
──宝石言葉
・弱者への正義

──パパラチア
・独特のオレンジがかったピンク色のサファイアをさす
・シンハラ語(スリランカ)で『蓮の花』の意


【ダイヤモンド】
──宝石言葉
・永遠
・ダイヤモンドの品質を表す4C(カラット、カラー、クラリティ、カット)


【エメラルド】
──宝石言葉
・明晰、喜び


【カラット】
・宝石特有の単位、0.2グラムで1カラット
・語源は『キャラブ』の実からきている
・宝石職人による、宝石のための、宝石にしか使わない、オーダーメイド的な単位


【ピジョン・ブラッド】
・最上級のルビーを形容する言葉
・ピジョンは、鳩の意


【コーンフラワー・ブルー】
・最上級のサファイアを形容する言葉
・コーンフラワーは、ヤグルマギクの花


【ガーネット】
・和名は『ざくろ石』


【アメシスト】
・2月の誕生石
・語源は『アメテュストス』で『酒に酔わせない』という意味


【ローズクオーツ】
・『恋愛』や『新しい出会い』によいとされるパワーストーン





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