東野圭吾の『赤い指』を読んだ。
加賀恭一郎シリーズの第7作であり、累計部数は135万部を越えた人気作品である。
私はまだ加賀恭一郎シリーズは第1作の『卒業』しか読んでいないのだが、何故か第7作である『赤い指』に手を出してしまった。
問題なく読み進めることはできたのでよかったが、あたりまえだが順番に読んでいったほうが楽しめるだろうなと思った。反省。
あらすじ
少女の遺体が住宅街で発見された。捜査上に浮かんだ平凡な家庭。一体どんな悪夢が彼等を狂わせたのか。「この家には、隠された真実がある。それはこの家の中で、彼等自身によって明かされなければならない。」刑事・加賀恭一郎の謎めいた言葉の意味は?家族のあり方を問う直木賞受賞後第一作。
(引用:赤い指 裏表紙/東野圭吾)
トリックや誰が犯人なのか?を追及するのではなく、ひたすらに人間関係、家族関係についてスポットをあてた作品。
しかし最後にはミステリーらしく、どんでん返しのような予想外の展開もまっている。読んでいて心苦しくなること間違いなしだ。
感想
率直に言うと、終始なかなかに暗く重い作品だった。ゆえに考えさせらることも多かったが。
2、3日前までは『四畳半神話大系』なんてこの物語と真逆、180°どころか540°くらい違う物語を読んでいたもんだから、この作品との落差が激しかった。
さて
両親の介護問題、学校でうまくいっていない息子に、過保護な母、孤立気味な父となんだか現在社会の問題を詰め込んだような家庭だな、と思ってしまった。
この家庭にスポットを当てているんだから明るい話にはなりようがないですよね。
その時ふと、ある考えが彼の脳裏を横切った。それは彼の心をひきつけるものだった。(中略)同時に、たった今生じたアイデアを振り払おうとした。それについては今後一切考えまいとした。考えること自体がおぞましく、思いついた自分自身を嫌悪しなければならないほど、ほのアイデアは邪悪なものだったからだ。
(引用:赤い指 P77/東野圭吾)
事件を起こした一家の父親、前原昭夫の考えが書かれた一文。
これを読んだ時点ではまだ、それがどんな邪悪なアイデアなのか?は予想できなかった。
しかし、物語が進むうちに「もしかして...」という疑惑が湧き、また進むうちに「いや、まさか...」と目を背けたくなる。
そして昭夫のアイデアが実際にあきらかになったときは、やるせなさが溢れた。
それだけでも十分やるせないのに、どんでん返しで知る衝撃の事実。そこを踏まえた上で母親の気持ちを思うと、なんだかもう挫けそうになった。
加賀が言った。「平凡な家庭など、この世にひとつもない。外からでも平穏な一家に見えても、みんないろいろと抱えているもんだ」
(引用:赤い指 P145/東野圭吾)
心に残った一言。
平凡なんて、他人から見たらそう見えるってだけで、どこの家庭でも何かしらありますよね。なんだかとっても納得してしまいました。
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