宮部みゆきの『龍は眠る』を紹介する。
感想は別でこちらに書いています。
宮部みゆきの作品が読みたくなり古本屋でたまたま手に取った作品だったのだが、1992年に第45回日本推理作家協会賞(長編部門)を受賞している作品だった。どうりで面白い訳だ。
もし自分が不思議な力を使えて、透視ができたり、相手の考えを知ることができたら...
なんて妄想を誰しも1度はしたことがあるのではないだろうか?
便利だろうなぁと漠然なイメージしかなかった私だが、本書を読んで考えを改めることになった。
「世の中そんな甘くはないな」と
また便利以上の苦悩が待ってるだろう。
そうリアルに思わせてくれる、作りこまれ考え抜かれた作品だった。
あらすじ
嵐の晩だった。雑誌記者の高坂昭吾は、車で東京に向かう道すがら、道端で自転車をパンクさせ、立ち往生していた少年を拾った。何となく不思議なところがある少年、稲村慎司は言った。「僕は超常能力者なんだ」。その言葉を証明するかのように、二人が走行中に遭遇した死亡事故の真相を語り始めた。それが全ての始まりだったのだ......。
(引用:龍が眠る 裏表紙/宮部みゆき)
語り手である高坂昭吾は、自称超能力の稲村慎司との出会いをきっかけに、呼応するように次々と自身の回りでトラブルが起き始める。
取り外されたマンホール、白紙の脅迫状、縁を切ったはずの元彼女、そして二人の少年。
最後までワクワクが止まりません。
魅力
少年は少年
たとえ超能力を持っているとしても、子供であることには変わらない。逆に言えば超能力を持っているだけで、他は普通の子供と変わらないのだ。
悩みもするし、わからないこともあるし、間違いもする。
そんな少年にスポットを当てた作品
超能力という非現実的な要素が出てくるのに現実離れした感がなく読めるのは、少年の超能力を持ってしまったがゆえの苦悩がリアルに描かれているからだろう。
高坂と生駒
全体的にシリアスな雰囲気が多く、どうしても物語が重たく感じてしまうかもしれない。
しかし、そんな雰囲気を和らげてくれるのが語り手である高坂と会社仲間の生駒である。二人のコミカルかつ諧謔的なやり取りは張りつめがちな緊張の糸を、フッと緩めてくれる。
事件の真相
複雑に絡み合った事件。特にラストの加速度的に真相に近づいていくのでページをめくる手が止まらなかった。