これは地獄だ。甘い地獄なのだ。そこからどんなに逃れようと思っても、自分のなかにいる悪魔がそれを許さない。
(引用:夜明けの街で P80/東野圭吾)
今回は東野圭吾の『夜明けの街で』の感想を語っていく。
ネタバレNGの方はコチラをどうぞ。
【『夜明けの街で』あらすじ・紹介】
感想
率直な感想としては、主人公である渡部が物語が進むごとに不倫の沼にはまっていく様子がとにかくリアル。
遊び人ではないし、家庭に不満はない。本人も「不倫をするやつなんて馬鹿」とまで言っている。それなのにいつの間にか、その底無し沼に足を突っ込んだかと思えばすぐに身動きがとれなくなっている。
悪いことなのは分かっている。不倫に対するボーダーラインが「一度だけなら...」から始まり「離婚する気がなければ...」と下がっていき自分自身を正当化していく様を見ていると、あぁこうやって人は知らず知らずのうちに堕ちていくのか、と感じた。
そんな泥沼にはまっていく渡部の心情を表した描写で心に残ったところがある。初めて秋葉と一線を越えてしまったあとのシーン。
こうして僕たちは、本来越えてはいけない境界線を跳び越えてしまった。越える前はその境界上には大きな壁が立っているのだと思っていた。だけど越えてしまうと、じつはそこには何もなく、壁は自分が作り出した幻覚だったと知るのだ。(中略)境界線の向こう側に、目眩がしそうなほど甘美な世界があると知っていて、これから永遠に踏み越えずにいられるだろうか。境界線の上には壁などなく、ひょいと一跨ぎすればいいだけのことと知ってしまった今となっては、それは非現実的なほど不可能に思えた。
(引用:夜明けの街で P73/東野圭吾)
「境界線上には壁はなく、壁は自分が作り出した幻覚だった」
これは不倫に関する事だけではないな、と。
未知の事には過大評価してしまいがちだが、いざやってみると大したことなかったというのは往々にしてあるものだと思う。(この場合悪いことだが)
渡部の友人、新谷のセリフはことごとく説得力に溢れていて感心してしまった。
「謝るっていうのは、その時だけのことじゃないんだぞ。土下座は贖罪のスタートにすぎないんだ。で、それが終わる日は来ない。一生、謝罪の日が続くんだ。女房に頭は上がらず、家でも肩身の狭い思いをすることになる。どちらかが死ぬまでそれは続く」
(引用:夜明けの街で P129-130/東野圭吾)
「いいことを教えてやる。赤い糸なんてのは、二人で紡いでいくもんなんだ。別れずにどちらかの死を看取った場合のみ、それは完成する。赤い糸で結ばれたってことになる」
(引用:夜明けの街で P143/東野圭吾)
他にも真意をついているセリフが多い。不倫に理解がありすぎるようにも思ったが、それも納得で文庫本には、おまけとして20ページほどの新谷の話が載っている。
全体を通しての感想とすれば、15年前の殺人事件の結末も読者の予想を裏切るどんでん返しが隠されていたが、やはりこの作品で印象に残るのは、不倫を通した人間関係や心情だ。
渡部が泥沼にはまっていく様子はもちろんの事。ラストシーンでの渡部と妻とのやり取りは忘れられない。作品の中では触れられなかった妻の心情を表す描写が痛々しい。
家庭の安定を守るためにすべてを気づかないふり。愛人と会うであろう夫を何も言わずに見送りだすのはどんな気持ちなんだろう。
そして最後には誰も幸せになれない。
なかなかに重く教訓になる一冊だ。
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