ここには言葉が渦巻いている。針を落としてもそれと気づくほどの沈黙をたたえたこの図書館に、空恐ろしいほどの量の言葉が漲って、渦巻いているのをキリヒトは感じた。(中略)図書館の沈黙は、言葉に充ち満ちた沈黙だったのだ。
(引用:図書館の魔女1 P95-96/高田大介)
今回は、″言葉″をテーマにしたファンタジー小説『図書館の魔女』の感想を語っていく。
内容にはガッツリ触れていくので未読の方はコチラをどうぞ。
さて、初めてこの作品『図書館の魔女』を読んだときの衝撃は忘れられない。1巻序盤こそ、読み進めにくいなぁと思ったものの、キリヒトとマツリカが出会いに関心をひかれ、そして「言葉とは?図書館とは?」というマツリカの答えを読んでから一気に物語に引き込まれた。
文庫本では第1巻~第4巻で構成され、合計ページは1800ページを越える長編作品だが、何かにとりつかれたかのように読みふけってしまった。
間違いなく私の読書人生で一番の作品である。
感想
″言葉″とは、こんなにも深いものだったのかと考えずにはいられなかった。今日まで普通に話し、書き、読んでいたものの印象が変わるくらいの衝撃だった。
それがファンタジーの作品で思い知らされた事がまた衝撃だった。
そもそもファンタジーとはなんなのだろう?
空想小説。現実とは別の世界・時代などの舞台設定や,超自然的存在や生命体などといった登場人物の不可思議さに,物語の魅力を求めたもの。
(引用:https://kotobank.jp/word/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%82%B8%E3%83%BC-178426)
確かに『図書館の魔女』は現実とは別の世界の物語である。図書館の階段やマツリカたちを襲撃した怪物は確かに現実の物とはかけ離れた存在だ。
だがしかし、『図書館の魔女』の世界は、この場所が、この物が実際に存在しているかのように感じることができる。そして、そこに生きる人々も自然体に描かれている。
非現実的世界であるにも関わらず、現実世界であるような錯覚すら覚える。そこまで完成された世界観もこの作品の魅力であると思う。
第1巻
第1巻で特に印象的に残っているのは
・図書館と言葉
・指話
・井戸の冒険
だろうか?細かくあげていったらきりがないが、好きな箇所を好きなように語っていく。
図書館と言葉
私の知っている現実の図書館とは、まったくスケールの違う世界にワクワクが止まらなかった。
図書館にある書物は、すべてが互いに関連しあって一つの稠密な世界を形づくっている。(中略)図書館は人の知りうる世界の縮図なんだ。図書館に携わるものの驕りを込めて言わせてもらえば、図書館こそ世界なんだよ。
(引用:図書館の魔女1巻 94P/高田大介)
この世界における高い塔の位置付けがよくわかる一節。
この他にも図書館の、その内装、雰囲気を説明する場面では緊張感が漂っている。
また、少し長くなってしまうのだが、1巻中盤の、図書館から出て行くシーンがたまらなく好きなんですよね。
王城の尖塔ごしに月影が輝き、マツリカの影を少年の足元に映し出す。縁が褐色に枯れつつある素馨の花びらは、闇の中から月光のもとへ進み出ていく図書館の魔女の影に一瞬たわむれるようにして、キリヒトの背後へ散りうせていく。そのときの素馨のすずやかな香りがキリヒトの鼻腔をくすぐっていった。
キリンが振り向く。ハルカゼも振り向く。マツリカは塔の前庭へ進みながら、体を翻し後ろ向きに歩き続ける。キリヒトの後ろで二つの扉が大きな音を立てて、閉まる、閉まる、高い塔は閉ざされ、彼らはすでにその外へ立っていた。
そしてその時、こちらを向いた図書館の魔女は月影の逆光の中で二人の司書と並んで、表情を窺うことも出来ない影となって少年に言葉を投げかけた。
ーー高い塔へようこそ、キリヒト。
(引用:図書館の魔女 P142-143/高田大介)
ここの前後の文も好きなのだが長くなりすぎてしまうので省略。
ここに限ったことではないが、『図書館の魔女』は描写が細かくて繊細だな、というのが私のイメージ。
まさに映像で見ているかのように文章からそれが想像できる。上記に引用した場面なんて特に映像で見てみたい場面ですね。
この時、きっとマツリカは口の端をきりと持ち上げた独特の表情を作っているんだろうなぁ。
指話
キリヒトとマツリカだけが使える...いや、使えるようになった特別な手話、指話。
端から見たら手を繋いでいるだけなのに、その手の中では二人だけの言葉が行き交っている。
″二人だけの言葉″って、なんかもうずるくないですか?(語彙力)
指話が、この物語を進めてく上で欠かせない役割を果たしていますよね。
1巻で言えば、マツリカとキリヒトが早い段階で親密になれたのも、井戸を見つけたのも指話のおかげですからね。
井戸が見つかってなかったら今後の展開に支障がでてしまいますし、指話がこの物語における核となっていると言ってもいいのではないでしょうか?
井戸の冒険
1巻の終盤でようやくファンタジーらしい少年、少女の冒険シーンになる。
派手なシーンはないがそれでも面白いのは推理小説のように、小さなヒントを拾い集めて真相に迫るような雰囲気のある冒険だからだろうか?
また、今まで理知的、論理的なマツリカの暗闇が怖いという普通の女の子らしいギャップもたまらない。
井戸の冒険は2巻のほうがメインになっているので、詳しくはまたそちらで書いていこうと思う。
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