2018年本屋大賞二位に輝いたミステリー作品
柚月裕子の『盤上の向日葵』を紹介する。
タイトルの『盤上』、そして表紙の『王将』を見て分かる通り、将棋、そして将棋の駒が物語の中核をなすミステリー作品。
もちろん対局の様子も描かれていて将棋を知っている方ならイメージしやすいと思う。将棋のルールを知らない方でも楽しめる内容になっているので、その辺りは安心してほしい。
ネタバレありの感想はコチラ
《『盤上の向日葵』感想》
目次
あらすじ
実業界の寵児で天才棋士――。 男は果たして殺人犯なのか! ? さいたま市天木山山中で発見された白骨死体。唯一残された手がかりは初代菊水月作の名駒のみ。それから4ヶ月、叩き上げ刑事・石破と、かつて将棋を志した若手刑事・佐野は真冬の天童市に降り立つ。向かう先は、世紀の一戦が行われようとしている竜昇戦会場。果たしてその先で二人が目撃したものとは! ?日本推理作家協会賞作家が描く、渾身の将棋ミステリー!
(引用:Amazon)
物語は
・白骨死体と駒の謎に迫る刑事・石破と佐野の視点
・異色の天才棋士・上条の視点
この二つの視点で物語が進展していく。
物語のポイント
- 死体は誰なのか?何故、駒が埋められていたのか?
- 異色の天才棋士・上条の生い立ち
- 向日葵
1.死体は誰なのか、何故駒が埋められていたのか?
『盤上の向日葵』の大きな謎は、上記の二つだろう。
その二つの謎、そして犯人について石破と佐野が迫ることとなる。
死体と共に埋められていたいた駒は普通の将棋の駒ではなく、初代菊水月作錦旗島黄楊根杢盛り上げ駒という、時価600万は下らない高価な駒であった。そんな貴重な駒を何故、一緒に埋めなければならなかったのか?
些細な手掛かりから徐々に真相に迫っていく様子は読者にワクワクを与え、その先にあるものの想像を掻き立てる。
異色の天才棋士・上条の生い立ち
もう一つの視点が、元実業家で異色の天才棋士・上条の視点である。
奨励会(将棋のプロ養成施設)を介さずにプロにまで登りつめた上条。彼の幼少期から現在までの様子がもう一つの視点で描かれている。
コチラのほうの見所の一つが、上条を取り巻く登場人物。上条自身も魅力的ですが、その他に出てくる人物も実にキャラがたっている。
なかでも二人の男が上条の人生に大きな影響を与える。
父親からの虐待を受け幼少期から辛い日々を過ごしていた上条。そんな彼に救いの手を差し伸べたのが唐沢であり、上条が将棋を始めるきっかけを与えた人物である。
そしてもう一人が真剣師(金を賭けて将棋を指す人物)である東名。大学生になった上条の前に表れる東名。上条は将棋に命を賭ける東名の将棋にひかれ、なかば強引だが行動を共にするようになる。
そんな二人の影響を受けて上条の人生はどのように進んでいくのか?それがこちらの視点での見所ではないだろうか?
3.向日葵
タイトルになっている『向日葵』
向日葵といえば夏における代表的な花で、青空と太陽の似合う明るいイメージを連想させる。それにも関わらず、表紙は『王将』とそして『雪』。
表紙をめくれば『向日葵』が出てくるものの、モノクロのそれは明るさを感じさせない、それ以上に寂しさを感じるものとなっている。
詳しいことはネタバレになってしまうので伏せるが、確かに彼は盤上に大輪を咲かせ、その花は彼にとっていくつもの意味を持つ花であった。
最後に
一言で感想を言うとすれば
「将棋を物語の中心に置き、一人の人生を追った慟哭のミステリー」
ここ最近で読んだ本の中で、一番心に残っている作品。
将棋初心者の方も是非。
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