嘘でもいいから賢帝だと信じたい。──そこにつけこむ」
「お前、王より詐欺師のほうが向いてないか?」
(引用:東の海神 西の滄海 P158-159/小野不由美)
500年続く雁国の延王・尚隆と麒麟・六太の始まりの物語、十二国記シリーズの『東の海神 西の滄海』の感想を語っていく。ネタバレありなので未読の方はご注意を。
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感想
このシリーズはとにかく読了後の爽快感がいい。前に読んだ『月の影 影の海』然り『風の海 迷宮の岸』然り、物語の終わりが何か新しい事が始まるような終わり方な気がする。
もちろん物語が終わってしまう名残惜しさはあるが、それ以上に、彼ら、彼女たちのこれからの物語に期待する気持ちのほうが大きくなるのでわくわくした気持ちのまま本を閉じることができる。
尚隆と六太は、500年間ずっと馬鹿みたいなやりとりを繰り返しながら国を納めていったんだろうなぁ。仲の良い兄弟みたいで羨ましい。
尚隆がとにかくカッコイイ
不真面目なように見えて、実は考えを巡らせて最善の一手を打つ尚隆が無茶苦茶だがとにかくカッコイイ。
臣下たちにボロボロに言われながらも、とても王とは思えない軽いやり取り、気取ってないところに好意がいくのかな。
「……おれ、ときどきお前って正真正銘のバカ殿なんじゃないかと思う」
「ほう。ときどきか?」
「うん。常日頃は単なる大ボケ野郎だと思ってるからな」
(引用:東の海神 西の滄海 P63/小野不由美)
尚隆の強さを支えるのは、過去の一度すべてを失った経験と国を、民を守り抜こうとする意地。一度、大きな失敗をしている尚隆と、過ちを怖れている斡由とじゃ器が違う。結果は一目瞭然だったんだよなぁ
「生き恥晒して落ち延びたはなぜだ!俺は一度すでに託された国を亡くした!民に殉じて死んでしまえばよかったものを、それをしなかったのは、まだ託される国があると聞いたからだ!」
(引用:東の海神 西の滄海 P271/小野不由美)
普通に生きていれば巡り合うはずのない二度目のチャンスを麒麟に選ばれた事によって得られた尚隆の意地を感じるセリフ。
普段は馬鹿な王として振舞ってはいるものの、尚隆のラストのセリフは一言ひとことがホント心に刺さる。
出会いで人は変わる
生まれた環境もそうだが、生きていく環境と、特に出会った人によって人生は大きく変わってしまうのだな、と六太と更夜を見ていると改めて考えさせられた。
六太と更夜、口減らしのために捨てられた哀れな境遇をもつ二人。運命の分かれ道はそれぞれ仕えた人物の違い。
更夜がどんどん暗い道に墜ちていく様子が哀れすぎる…。もしも最初に斡由ではなく尚隆に会っていれば…ってついつい思ってしまう。
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