FGかふぇ

読書やらカフェ巡りが趣味。読んだ本、行ったカフェの紹介がメインのブログです。ごゆるりとどうぞ。

【14作品】読書歴10年の私が勧める絶対読んで欲しいオススメ小説【随時更新】


『いい本』とはなんだろうか?
有名な賞を受賞した本だろうか?それとも著名な作者の本だろうか?


私は、『いい本』とは読了後に自分の中に残るモノがある本だと思っている。それは感動や恐怖といった感情でもいいし、興味や発見といった知的欲求でもいいだろう。


何年後かにその作品をふと思い出した時にでも、その作品が自分にくれたモノを思い出せたら素敵だと思うし、その積み重ねが読書の醍醐味でもあると思う。


さて、そこで今回は私が何十年後でも忘れることができないであろう、大好きな小説14作品を紹介していく。

注意事項

  • 2022年現在の私が実際に読んだ作品、ベスト14を紹介している。(随時更新予定)
  • 紹介はランキング形式ではなく、ランダムに紹介する。
  • あらすじは、基本裏表紙のものを引用している。
  • 物語の核心に触れるネタバレはしていない。
  • 一人の作家に対して、一つの作品を採用している。

  

1.図書館の魔女/高田大介

──あらすじ

鍛冶の里に生まれ育った少年キリヒトは、王宮の命により、史上最古の図書館に暮らす「高い塔の魔女(ソルシエール)」マツリカに仕えることになる。古今の書物を繙き、数多の言語を操って策を巡らせるがゆえ、「魔女」と恐れられる彼女は、自分の声を持たないうら若き少女だった。超弩級異世界ファンタジー全四巻、ここに始まる!

──剣でも魔法でもない。少女は言葉で世界を拓く。

【ボーイミーツガール】であり、【知的エンタメ】であり、【国家謀略戦争】であり、【大冒険】でもある。しかし何より大きいのは、『図書館の魔女』は"言葉"がテーマのファンタジー作品だという点だ。


タイトルは『図書館の"魔女"』だが、魔術で物を浮かせたりだとか、大釜で怪しげな薬を作っていたりだとかそんなことはない。ファンタジーに出てくるような竜だとか、伝説の剣だとか魔法もでてくるわけではない。


むしろファンタジーなのに非現実的要素を全否定するような場面すらある。


そんな世界観の中、図書館の魔女・マツリカは魔法を使わずに言葉を使う。いくつもの言語を扱い、難解な書物を繙き、言葉一つで世界を動かす。それにも関わらずマツリカ本人はしゃべることができないのだ。このギャップに惹かれないことがあるだろうか、いやない。


手話を用いた意思伝達を主としているマツリカのもとにある日、少年・キリヒトが手話通訳として図書館に遣わされる。特別な境遇に生まれ、特別な能力をもった二人の出会いで物語は始まる。お互いの能力で欠点を補いながら、そして、なくてはならない存在へと変わっていく。その過程が、やりとりがたまらなく愛おしい。


文庫本では第1巻~第4巻で構成されており、合計のページは1800ページを越える長編作品だが、ページ数もさることながら内容が非常に濃密である。


ランキング形式で紹介していないのは、「どれも好きな作品で順番がつけられない」のが大きな理由なのだが、この『図書館の魔女』だけは例外だ。私にとっては、そう思えるほど圧倒的1位の作品。


「いつまでもこの物語の世界に浸っていたい。読み終えてしまいたくない。」と思ったこの『図書館の魔女』だけかもしれない。
すべての読書好きに届け!!


【関連記事】
〈あらすじ〉
『図書館の魔女』口のきけない魔女の物語はすべての読書家に捧げたい1冊だった【高田大介】 - FGかふぇ
〈高田大介の小説一覧〉
高田大介の小説一覧とこれから刊行するであろう作品まとめ【3作品+α】 - FGかふぇ

2.獣の奏者/上橋菜穂子

──あらすじ

リョザ神王国。闘蛇村に暮らす少女エリンの幸せな日々は、闘蛇を死なせた罪に問われた母との別れを境に一転する。母の不思議な指笛によって死地を逃れ、蜂飼いのジョウンに救われて九死に一生を得たエリンは、母と同じ獣ノ医術師を目指すが──。苦難に立ち向かう少女の物語が、今ここに幕を開ける!

──少女の執念は世界を変える

『獣の奏者』は、外伝も含めると5冊からなるファンタジー作品だ。


獣の奏者〈Ⅰ 闘蛇編〉
獣の奏者〈Ⅱ 王獣編〉
この2冊で一区切りつくので、興味がある方はまずこの2冊を読んでみてはいかがだろうか。(この2冊を読んでしまったら、さらに続きが読みたくなると思うが)


『獣の奏者』は、国と国の争いの物語でもあり、政治的な駆け引きの物語でもあり、決して人に懐かない王獣と少女が心を通わせていく物語でもある。


王獣闘蛇と呼ばれる二つの特殊な生き物が登場するのだが、どちらの生き物も人間では太刀打ちできないくらい強い。


闘蛇は、なんとか人が制御できるため国を守護する兵器として使われている。対する王獣は闘蛇以上に強いが決して人に懐かない。特殊な笛の音で硬直させてからでないと近づくことさえできない。


しかし、主人公・エリンは決して人に懐かないはずの王獣と心を通わせてしまう


エリンと王獣が仲良くなればなるほど、政治的な波に飲み込まれてしまう。心を通わせたい、しかしそれは王獣を兵器として使用させられてしまう事を意味する。そのときエリンが選んだ道は……。


一気読み必至のファンタジー。自信をもってオススメできる作品だ。


3.十二国記/小野不由美

──あらすじ

「お捜し申し上げました」──
女子高生の陽子の許に、ケイキと名乗る男が現れ、跪く。そして海を潜り抜け、地図にない異界へと連れ去った。男とはぐれ一人彷徨う陽子は、出会うものに裏切られ、異形の獣には襲われる。なぜ異邦に来たのか。戦わねばならないのか。怒涛のごとく押し寄せる苦難に、故国へ帰還を誓う少女の「生」への執着が迸る。シリーズ本編となる衝撃の第一作。

──圧倒的世界観が待ち受ける大人気ファンタジー

あなたは、ファンタジーに何を求めるだろうか?応援したくなる主人公?魅力あふれる登場人物?ハラハラドキドキの冒険?スカッとするようなどんでん返し?それとも作り込まれた世界観?


十二国記の世界にはそのすべてがつまっている。


『十二国記』の世界は古代中国がベースになっているが、まったく別の異世界。文明は現世よりだいぶ遅れており、電気などは通ってなく旅は徒歩か馬を使うのが主である。


世界は文字通り12の国でできている(世界の中心に『黄海』という島があるが、この島は12の国に含まれない特別な場所)。

さらにこの世界とは別に十二国記には、『現世(日本)』が登場する。我々の住む現世と十二国記の世界は虚海という広大に海に隔てられている。


本来は『現世』と『十二国』とは行き来ができないのだが、蝕(しょく)と呼ばれる天災が起こると『現世』と『十二国』の世界が混じり、『現世』から『十二国』へと、また逆に『十二国』から『現世』へと人が流れ着いてしまうことがある。


上記のあらすじは『月の影 影の海』の上巻から引用したもので、現世に生きるごくごく普通の女子高生が十二国の世界に迷い込んでしまうお話だ。


『十二国記は現在短編も含めて10作品ある。以下作品一覧。


【十二国記・作品一覧】
1.『魔性の子』
2.『月の影 影の海』
3.『風の海 迷宮の岸』
4.『東の海神 西の滄海』
5.『風の万里 黎明の空』
6.『丕緒の鳥』〈短編集〉
7.『図南の翼』
8.『黄昏の岸 暁の天』
9.『華胥の幽夢』〈短編集〉
10.『白銀の墟 玄の月』

『月の影 影の海』では現世に生きていた女子高生・陽子が主人公の物語だが、タイトル事に主人公が変わる(同じ作品もあるが)ため、様々な主人公の目線・立場から異世界ファンタジーを堪能することができる。


ちなみに今年(2019年)、待望の新作の『白銀の墟 玄の月』1、2巻が10月12日(土)、3、4巻が11月9日(土)に発売されると予告されたたので今から読めばノンストップで新刊を読める絶好のタイミングだ。


【関連記事】
『十二国記』の作品一覧!全10作品をまとめて紹介する【小野不由美】 - FGかふぇ


4.黄金の王 白銀の王/沢村凜

──あらすじ

二人は仇同士であった。二人は義兄弟であった。そして、二人は囚われの王と統べる王であった──。翠の国は百数十年、鳳穐と旺厦という二つの氏族が覇権を争い、現在は鳳穐の頭領・穭が治めていた。ある日、穭は幽閉してきた旺厦の頭領・薫衣と対面する。生まれた時から「敵を殺したい」という欲求を植えつけられた二人の王。彼らが選んだのは最も困難な道、「共闘」だった。日本ファンタジーの最高峰作品。

──仇敵同士の二人の王が歩む軌跡

物語のテーマは、覇権を争う二人の王の「和解」そして「共闘」。ファンタジーといば魔法がでてきたりだとか、派手なアクションをイメージする方も多いだろうが、そのような要素はなく物語は静かに淡々と進む。だが熱い。それは魅力的な二人の王が歩む軌跡を堂々と、時に残酷に、そして現実世界のように鮮明に描かれているからだろう。



大きな目標のために敵同士だった者が手を組む。これだけ聞けば、盛り上がるよくある展開だ。本書もこの展開に違いはないが、『黄金の王 白銀の王』で語られるのは「共闘」を決め、達成を目指す果てない道のりだ。


派手さのある作品ではない。しかし『黄金の王 白銀の王』は、私にとってじわじわと心に残り続ける作品だ。激しい熱量で燃焼するような炎ではなく、じわじわと燻り続ける、一見弱々しいが確かに暖かい、そして決して消えることない。そんな炎のような作品だ。



5.すべてがFになる/森博嗣

──あらすじ

孤島のハイテク研究所で、少女時代から完全に隔離された生活を送る天才工学博士・真賀田四季。彼女の部屋からウェディング・ドレスをまとい両手両足を切断された死体が現れた。偶然、島を訪れていたN大教授・犀川創平と学生・西之園萌絵が、この不可思議な密室殺人に挑む。ミステリィの世界を変えた記念碑的作品。

──衝撃のデビュー作!伝説の始まり

だれが犯人なのか?どんなトリックを使っているのか?これらの要素はミステリーで欠かせない要素だが『すべてがFになる』は、これらに対する解答が素晴らしいと思う。


天才工学博士・真賀田四季の部屋にあるコンピューターのカレンダーには、たった一行のメッセージが残されていた。そのメッセージが『すべてがFになる』


謎めいたタイトルに秘められた意味が分かったときの衝撃といったら他にない。印象的すぎるタイトルにして意味不明なタイトルであるが、読んでから考えるとこれ以上のタイトルはないだろうと思える。


『すべてがFになる』は主人公・犀川創平と西野園萌絵の頭文字をとって『S&Mシリーズ』と呼ばれており、10冊から構成されている。以下、シリーズ一覧だ。

【S&Mシリーズ作品一覧】
1.『すべてがFになる』 The Perfect Insider
2.『冷たい密室と博士たち』 Doctors in Isolated Room
3.『笑わない数学者』  Mathematical Goodbye
4.『詩的私的ジャック』 Jack the Poetical Private
5.『封印再度』 Who Inside
6.『幻惑の死と使途』 Illusion Acts Like Magic
7.『夏のレプリカ』 Replaceable Summer
8.『今はもうない』 Switch Back
9.『数奇にして模型』 Numerical Models
10.『有限と微小のパン』 The Perfect Outsider

個人的に大好きなのは『すべてがFになる』と『有限と微小のパン』である。是非とも制覇してみてほしい。

【関連記事】
〈あらすじ〉
原点にして頂点!?森博嗣の傑作小説『すべてがFになる』あらすじ・紹介 - FGかふぇ
〈シリーズ作品紹介〉
『すべてがFになる』をはじめとする『S&Mシリーズ』の作品一覧とあらすじ・感想【森博嗣】 - FGかふぇ

6.ナミヤ雑貨店の奇蹟/東野圭吾

──あらすじ

悪事を働いた3人が逃げ込んだ古い家。そこはかつて悩み相談を請け負っていた雑貨店だった。廃業しているはずの店内に、突然シャッターの郵便口から悩み相談の手紙が落ちてきた。時空を超えて過去から投函されたのか?
3人は戸惑いながらも当時の店主・波矢雄治に代わって返事を書くが・・・。次第に明らかになる雑貨店の秘密と、ある児童養護施設との関係。悩める人々を救ってきた雑貨店は、最後に再び奇蹟を起こせるか!?

──現在と過去を繋ぐ奇蹟の手紙

『東野圭吾史上、最も泣ける作品』との触れ込みもあるが、それに恥じない感動と、心暖まるストーリーである。


『ナミヤ雑貨店の奇蹟』の特徴は、ヒューマンドラマとファンタジーの性質を合わせ持っている点。ファンタジー要素というのが、青年たちが忍び込んだ廃墟に突如、30年前の過去から手紙が届くのだ


現在と未来が繋がる、また『ナミヤ雑貨店の奇蹟』のように現在と過去が繋がる。小説の設定としては、ありきたりのものだ。しかし、この物語の本質はヒューマンドラマである。過去と現在でやり取りされる手紙は、過去軸の人間の”悩み相談”を現在軸の人間が答える形式となっている。


この手紙のやり取りを通して、3人の青年は相手の事を考え、自分自身を見つめ直し成長する過程が、描かれている。


また、物語は5章構成になっていて各章ごとに新しい相談者の話になるのだが完全に独立した話という訳ではなく、端々で繋がっていることで全体像があきらかになってくる。


個人的に第二章の『夜明けにハーモニカを』の話がたまらなく好きだ。
音楽の道に進むか、家業の魚屋を継ぐか。そんな人生の二択に迫られた青年がナミヤ雑貨屋に相談の手紙を出して……。

【関連記事】
【2022年版】東野圭吾初心者に捧げるオススメ11選!迷ったらコレを読め!!【随時更新】 - FGかふぇ
東野圭吾オススメ10選!!大好きな東野作品をランキングで紹介 - FGかふぇ

7.ダ・ヴィンチ・コード/ダン・ブラウン

ルーヴル美術館館長のソニエールが館内で死体となって発見された。殺害当夜、館長と会う約束をしていたハーヴァード大教授ラングドンは、フランス警察より捜査協力を求められる。ソニエールの死体は、グランド・ギャラリーでダ・ヴィンチの最も有名な素描〈ウィトルウィウス的人体図〉を模した形で横たわっており、さらに、死体の周りには、複雑怪奇なダイイングメッセージが残されていた。館長の孫娘でもあり、現場に駆けつけてきた暗号解読官ソフィーは、一目で祖父が自分だけに分かる暗号を残したことに気付く...。
〈モナ・リザ〉〈岩窟の聖母〉〈ウィトルウィウス的人体図〉──。
数々のダ・ヴィンチ絵画の謎が導く、歴史の真実とは!?

──全世界7000万部突破の衝撃作

『ダ・ヴィンチ・コード』は、ハーヴァード大学の象徴学者ロバート・ラングドンを主人公としたシリーズ作品であり『ダ・ヴィンチ・コード』はそのシリーズ第2作目の作品である。シリーズ作品の2作目ではあるが、この作品から読んでも問題ないようになっている。


とはいえ、第一作目である『天使と悪魔』も負けず劣らず面白いので、興味と時間がある方はそちらからトライしてみてもいいだろう。以下、2022年時点での『ダ・ヴィンチ・コード』シリーズ一覧

シリーズ5作品と刊行年
1.天使と悪魔〈2000年〉
2.ダ・ヴィンチ・コード〈2003年〉
3.ロスト・シンボル〈2009年〉
4.インフェルノ〈2013年〉
5.オリジン〈2017年〉


『ダ・ヴィンチ・コード』は、史実にまつわるストーリー、実在する舞台、芸術作品、名だたる偉人、宗教が登場するので、フィクションなのだがノンフィクションのようなリアルさがある。実在するものゆえに知的好奇心が刺激されてやまない。


歴史や宗教に対して予備知識があったほうが楽しみやすいし理解もしやすいだろうが、予備知識がなかったとしても十分に楽しめるはずだ(私は予備知識をもってはなかった)。逆に『ダ・ヴィンチ・コード』が新しい興味を発掘させてくらるきっかけになるかもしれない。


【関連記事】
〈シリーズ一覧〉
【2022年版】『ダ・ヴィンチ・コード』シリーズ一覧!全5作品をまとめて紹介する【ダン・ブラウン】 - FGかふぇ
〈ダン・ブラウンの作品一覧〉
【2022年版】ダン・ブラウン 全作品を発売順に紹介 おすすめ・感想 【新作随時更新】 - FGかふぇ


8.船を編む/三浦しをん

──あらすじ

出版社の営業部員・馬締光也は、言葉への鋭いセンスを買われ、辞書編集部に引き抜かれた。新しい辞書『大渡海』の完成に向け、彼と編集部の面々の長い長い旅が始まる。定年間際の下手な編集者。日本語研究に人生を過ぎる老学者。辞書作りに情熱を持ち始める同僚達。そして馬締がついに出会った運命の女性。不器用な人々の想いが胸を打つ本屋大賞受賞作!

──『言葉は海であり、辞書とは海を渡っていく舟 』

『船を編む』は、"辞書作り"がメインテーマの物語だ。誰もが一度はひいたことがあるであろう辞書。しかし、その辞書を『誰が』『どうやって』『何を思って』作ったか……考えたことはあるだろうか?


『船を編む』では、そんな辞書作りについて焦点をあてつつ、携わる人たちの成長や思い、そして辞書作りに人生をかける人たちの情熱がつまった作品である。


固いイメージが湧くかもしれないが、仕事や人間模様を静謐に、時にコミカルに描いているので軽快に読み進めることができるはずだ。主人公の不器用な恋愛も歯がゆさがあるが素直に応援したくなる。


学生のころは何気なく使っていた辞書だけど、多くの人の執念と情熱が詰まっていたのだな、と思い知らされた。『船を編む』を読んだら、電子辞書でなくてGoogleでもなくて、紙の辞書で言葉を調べてみたくなるだろう。きっとそこから彼らの情熱が感じられるはずだ。



9.羊と鋼の森/宮下奈都

──あらすじ

高校生の時、偶然ピアノ調律師の板鳥と出会って以来、調律に魅せられた外村は、念願の調律師として働き始める。ひたすら音と向き合い、人と向き合う外村。個性豊かな先輩たちや双子の姉妹に囲まれながら、調律の森へと深く分け入っていく─。一人の青年が成長する姿を温かく静謐な筆致で描いた感動作。

──静かな情熱に勇気をもらえる一冊

『羊と鋼の森』は、ピアノの調律師を目指す青年が職場の先輩や、お客さんとの関わりを経て成長していく過程を描いた物語である。劇的な展開や大きな事件が起こる訳ではないが、繊細な心情描写と、主人公の確かに成長の様子は、ジワジワと熱を帯びてくるような面白さがある。


読みやすくスッキリした読了感。そして単行本で243ページと文量も多過ぎず少なすぎず、普段あまり本に触れない方も読みやすい作品だと思う。


『羊と鋼の森』は、一つひとつの表現が、心理描写が、情景が繊細だと思う。とくにピアノ…つまり"音"を表現する描写が必然的に多い。もちろん本で音を聴けるはずがないのだが…「こんな音なんだろうなぁ」と自然とピアノの音が頭に浮かぶような、そんな繊細な表現が魅力の一つだ。


ピアノの音と向き合って、ピアノを通してお客さんや職場の先輩と向き合って成長していく。ひた向きに調律の道を進む主人公の静かな情熱が私は少し羨ましかった。


【関連記事】
〈あらすじ〉
【小説】音は作り磨くモノ──『羊と鋼の森』あらすじ・紹介【宮下奈都】 - FGかふぇ


10.星を継ぐもの/ジェイムズ・P・ホーガン

──あらすじ

月面で発見された真紅の宇宙服をまとった死体。だが綿密の調査の結果、驚くべき事実が判明する。死体はどの月面基地の所属でもないだけでなく、この世界の住人でさえなかった。彼は5万年前に死亡していたのだ!一方、木星の衛星ガニメデで、地球のものではない宇宙船の残骸が発見される。関連は?J・P・ホーガンがこの一作を持って現代ハードSFの巨星となった傑作長編!

──月面探査で見つかったのは5万年前の人間の死体だった!?

『星を継ぐもの』がきっかけでSFが好きになり色々読み漁っているが、未だにコレを超える作品には出会えていない。


名作は色褪せない。『星を継ぐもの』は1977年に発売され、2018年には驚異の100刷を達成した、数字にも裏付けられた名作である。


物語は月面で宇宙服を身につけた死体が発見されて幕をあける。月面で死体が発見されることでも驚きなのに、調査の結果その人物は5万年前に死んでいたことが分かったのだ!!


『星を継ぐもの』の面白い点は、宇宙、そして宇宙人という壮大なテーマの物語であるにも関わらず、ストーリーは一貫して月面の死体は何者なのか?どこから来たのか?に特化している点だ。


物理学、言語学、天文学、数学、化学、地理...ありとあらゆる専門家が様々な視点から謎に迫っていくのだが、その様子がたまらなく面白い。


例えるとすれば難解なパズルだろう。偽物も混じるたくさんのピースの中から専門家たちが、正しいピースを見つけ出す。そしてその正しいピースを主人公のヴィクター・ハントがあるべき所に並べ変える。


こんなにワクワクする小説は、そうないだろう。緻密な構成と宇宙の壮大なスケールが織りなす極上のハード系SF小説だ。


【関連記事】
〈あらすじ〉
『星を継ぐもの』あらすじ・紹介:月面探査で見つかったのは……5万年前の死体!?【ジェイムズ・P・ホーガン】 - FGかふぇ
〈著者の作品一覧〉
『ジェイムズ・P・ホーガン』の作品一覧と和訳されている作品まとめ【33作品】 - FGかふぇ
〈シリーズ一覧〉
『星を継ぐもの』シリーズ一覧!全4作品+αをまとめて紹介する【J・P・ホーガン】 - FGかふぇ

11.四月になれば彼女は/川村元気

──あらすじ

4月、精神科医の藤代のもとに、初めての恋人・ハルから手紙が届いた。だか藤代は1年後に結婚を決めていた。愛しているのかわからない恋人・弥生と。失った恋に翻弄される12ヶ月がはじまる──なぜ、恋も愛も、やがては過ぎ去ってしまうのか。川村元気が挑む、恋愛なき時代における異形の恋愛小説。

──普通の恋愛小説に飽きたあなたへ

『四月になれば彼女は』は心躍る恋心から人間らしい欲望を孕んだ生々しさまで、振り幅のある表現で描かれている。あらすじでは「異形の恋愛小説」とあるがまさにその通りで、人間の真理が見えてしまうような恋愛模様に、思わず息をのむ瞬間があるはずだ。


物語は、主人公の藤代の元に届いた一通の手紙で、幕を開ける。それは大学時代の恋人であったハルからの9年越しに便りだった。手紙は、日本から見たら地球の果て、ボリビアのウユニから送られてきていた。そこには、ハルの現状と9年前に秘めた思いが綴られていた。


どうして彼女は1人で旅に出たのだろう?
どうして彼女はかつての恋人に手紙を送ったのだろう?
そして……この二人はどうして別れてしまったのだろう?

冒頭のハルからの手紙を読んでしまったら、もう物語からは抜け出せない。


【関連記事】
普通の恋愛小説が飽きたあなたへ『四月になれば彼女は』のあらすじ・紹介【川村元気】 - FGかふぇ

12.三体/劉慈欣

──あらすじ

物理学者の父を文化大革命で惨殺され、人類に絶望した中国人エリート科学者・葉文潔(イエ・ウェンジエ)。
失意の日々を過ごす彼女は、ある日、巨大パラボラアンテナを備える謎めいた軍事基地にスカウトされる。
そこでは、人類の運命を左右するかもしれないプロジェクトが、極秘裏に進行していた。
数十年後。ナノテク素材の研究者・汪森(ワン・ミャオ)は、ある会議に招集され、世界的な科学者が次々に自殺している事実を告げられる。
その陰に見え隠れする学術団体“科学フロンティア”への潜入を引き受けた彼を、科学的にありえない怪現象“ゴースト・カウントダウン”が襲う。
そして汪森が入り込む、三つの太陽を持つ異星を舞台にしたVRゲーム『三体』の驚くべき真実とは?

──圧倒的スケールの傑作SF

『三体』は三部作で構成されている。


第一部:『三体』
第二部:『三体 黒暗森林』
第三部:『三体 死神永生』

2021年についに第三部:死神永生まで発売され、無事完結を迎えた。

紹介しておいていきなり「読みにくいよ!」というのは恐縮なのだが、序盤は読むのに苦労するだろうと思う。逆にいえばそこを乗り越えられれば、あとはノンストップでいけるはずなので、少し我慢して読み進めてみてほしい。その「読みにくい!」と感じてしまう理由は、主に3つある。



1つ目は、作者が中国の方であり物語の舞台が中国であること。私自身、中国の文化や歴史や地理に疎いため、世界観に順応するのに少し手間取った。


2つ目は、登場人物が覚えづらい。これはあるあるだが、海外の作品で横文字の登場人物の名前がわかりにくい、覚えづらい、というのはよくあると思う。これと同じで、登場人物が総じて馴染みのない漢字と読み方なのでスッと頭に入ってこなかった。


3つ目は、序盤は先がまったく見えないこと。『三体』の”さ”の字もでてこないし、歴史の闇を見るような暗い話もでてきて、とっつきにくい感がある。


少し具体的に説明すると、『三体』は3章で構成されている。


第1章 沈黙の春
第2章 三体
第3章 人類の落日

この第1章が先程述べたようになかなかに曲者な部分。あとから振り返ってみれば必要不可欠なことがわかるわけだが、この最初が難問。しかし450ページほどの本書で、第1章は50ページほどしかないので、そこは安心してほしい。

13.スロウハイツの神様/辻村深月

──あらすじ

人気作家チヨダ・コーキの小説で人が死んだ──あの事件から十年。アパート「スロウハイツ」ではオーナーである脚本家の赤羽環とコーキ、そして友人たちが共同生活を送っていた。夢を語り、物語を作る。好きなことに没頭し、刺激しあってた6人。空室だった201号室に、新たな住人がやってくるまでは。

(引用:スロウハイツの神様〈上〉/辻村深月)

──物語は衝撃で幕をあける

物語は小説家であるチヨダ・コーキの大ファンが廃屋で殺人事件を起こす場面から始まる。そしてこの殺人事件が普通の事件ではない。

「チヨダ・コーキの小説のせいで人が死んだ」その日の天気は、快晴だった。
《略》
二十一歳、大学生の園宮章吾の発案による自殺ゲーム。下は十五歳から、上は三八歳までの、参加者十五名は全員死亡。(発案者、園宮含む)

(引用:スロウハイツの神様〈上〉P9/辻村深月)


こんなインパクトのある始まりなわけだが、本筋は夢を追いかける創作家たちの青春物語が描かれている。


『スロウハイツの神様』を簡単に説明すると、現代版『トキワ荘』を舞台とした物語である。トキワ荘とは、手塚治虫、藤子不二雄、石ノ森章太郎など、今なお語り継がれる漫画家たちが住んでいた実在のアパートだ。


『スロウハイツの神様』は登場人物こそ漫画家ではないが、脚本家、作家、漫画家etc…創作に情熱を注ぐ人たち共同生活をするアパートで、そのため現代版トキワ荘という訳である。


なぜ彼らは共同生活をしているのか?登場人物たちの関係は?そして殺人事件については?など、初めに多くの気になる情報を与えられて、後々なぜそうなったのかじっくり明かされていく形なので、気づかないうちに物語の世界に一気に惹き込まれることになるだろう。


読み終わる頃にはきっと、とある登場人物がとても好きになるはずだ。

14.天冥の標

──あらすじ

西暦2803年、植民星メニー・メニー・シープは入植300周年を迎えようとしていた。しかし臨時総督のユレイン3世は、地中深くに眠る植民船シェパード号の発電炉不調を理由に、植民地全域に配電規制などの弾圧を加えつつあった。そんな状況下、セナーセー市の医師カドムは、《海の一統》のアクリラから緊急の要請を受ける。街に謎の疫病が蔓延しているというのだが……小川一水が満を持して放つ全10巻の新シリーズ開幕編。


──宇宙の支配者は誰だ…!?
物語は、今からおよそ800年後、地球から遥か彼方にある植民星、『メニー・メニー・シープ』で幕を開ける。


2800年という圧倒的未来の話……かと思いきや、実はそうではない。すべては現代と繋がっているのである。1巻こそ未来の話なのだが、2巻の舞台はまさかの2000年の現代に巻き戻る。そして巻を重ねるごとに再び2800年に近づいていくのである。


1巻はこれから始まる壮絶な物語の序章にすぎない。2巻以降で歴史が語られ、徐々に1巻で描かれていた物語の裏側が明らかになってくる。その1巻では隠されていた真実が明らかになり、パズルのピースがハマるようか感覚がたまらない。しかしそれ以上に、それらの真実は過酷な現実でもあり心が揺さぶられる。


人々の歴史、異星人との邂逅、ヒトの底力、そして想像もできないような存在…。


圧倒的スケールで語られる10巻、全17冊構成の特大ボリュームSF。

最後に

長い記事ですが、最後まで読んでくれてありがとうございます。読んで見たくなった作品はありましたか?

是非、あなたの好きな作品を教えて下さい…!


気になっている小説・漫画が30日間無料で楽しめる!『Kindle Unlimited』


【こんな方にオススメ】

・欲しい本がたくさんあるけど、お金をあまりかけたくない
・部屋に本を置くスペースがない
・本を持ち運ぶのが大変
・時間が空いたときに気軽に読書をしたい

そんな方は是非、読書のサブスク
『Kindle Unlimited』
を利用してみてはいかがでしょうか!?
『Kindle Unlimited』はAmazonが提供するサービスで、いつでも気軽に読書ができます。

Kindleの無料アプリから気になった本をダウンロードして、スマホ・タブレット・PCなど、好きな端末で利用可能。しかも、なんと200万冊以上の小説、漫画、雑誌などを読み放題!


月額980円のサービスなので、月にたった2冊読むだけで、元をとることができるこのサービスが、今なら30日間無料で体験可能できるんです!


無料期間中に解約すれば、一切お金はかからないのでお気軽に登録してみてください!!『Kindle Unlimited』で素敵な読書体験をどうぞ!!

↓↓30日間無料登録は以下のバナーをクリック!!↓↓




【オススメ記事】