FGかふぇ

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『白銀の墟 玄の月〈3.4〉』の感想を好き勝手に語る【小野不由美】



──過去が現在を作る。
ならば、いまが未来を作るのだ──たとえ繋がりは見えなくても。

(引用:白銀の墟 玄の月 P417/小野不由美)

十二国記の最新刊、『白銀の墟 玄の月〈3.4〉』の感想を語っていく。
〈1.2〉の感想はコチラからどうぞ。



目次

感想

『魔性の子』から始まった泰麒の物語がやっと一段落したな…と。
1991年に『魔性の子』が発売されて泰麒の冒険が始まり、2019年『白銀の墟 玄の月』で一つの区切りを迎えた。28年かかってやっとここまできたか…。


私が十二国記シリーズと出会ったのは、ほんの一年前なので、ほぼシリーズを駆け抜けて読むことができた。それでさえ、『白銀の墟 玄の月』の発売が発表されてから刊行されるまで待ちきれない思いだった。


『魔性の子』を発売当初から読んで十二国記シリーズを追い続けてる方は、28年越しのこの展開に胸が熱くならないなんてことがあるだろうか、いやない。

──『白銀の墟 玄の月』を読み切って

過去に積み上げた小さな石が、知らぬ間に集まって大きな結果をもたらしてくれた。
李斎はこのところ、そんなふうに感じることが多い。
──過去が現在を作る。
ならば、いまが未来を作るのだ──たとえ繋がりは見えなくても。

(引用:白銀の墟 玄の月 P417/小野不由美)

この一文にすべてが詰まっているなぁと感じた。
『黄昏の岸 暁の空』の各国の協力による泰麒の救出から始まり、『白銀の墟 玄の月』では、数えきれない人物が驍宗の無事を…そして復活を祈り、信じていた結果の賜物が今回のラストに繋がっていた。


驍宗と泰麒がメインである物語には違いないが、今作で思ったのは戴国に生きる"民"たちの行動が胸を打つ点。

その供物は、正しく送りてから受け手へと辿り着いた。深い思いによって流されるささやかなそれが、まさしく王を支えている。
──送ったほうも、受け取ったほうも、それを知らない。

(引用:白銀の墟 玄の月〈3〉 P336/小野不由美)


もうこの部分読んで、うわぁ!!って声がでた。
川に食べ物を流し続けた親子…最初は驍宗が受け取ることがわかっていて流しているのかと思ってたけど、そうではなくてただ純粋な感謝の想いからやっていた行為だとわかったときの衝撃たるや…。自らの貧しい食い扶持を削ってのことだしね。


すべては過去の驍宗が積み上げた実績と、彼の人徳だと思うとこみ上げてくるものがある。


その他にも無償で兵を養い匿っていたり、ギリギリの生活の中でもしぶとく生きる戴国の民の強さと執念を感じた。

──泰麒

先程も少し触れたが、やっと…やっと泰麒に安息が訪れたようで嬉しい。


泰麒に関しては、もう語り尽くせない…。大胆不敵に阿選の元へ乗り込んだり、幽閉されていた正頼と対面したときは、今まで心に押し留めていた感情が爆発してしまった様子に涙しそうになったり…。あとは何より泰麒の「先生…」の呟き…!ここで『魔性の子』からの繫がりがくるのかよ!最高かよ!


物語の中では蓬莱から戻ってきてから、そこまで時間がたってなかったなぁと思い出して、ここでも過去作と繋がっているんだなぁと感慨深い思いになった。


再読するのは勇気がいるけど『魔性の子』を読みたくなった。今読んだら、また違う感情が湧いてきそう。


蓬莱での日々があったからこそ、他の麒麟には備わり得ない強さや覚悟があるけど、結果的にそのきっかけになったのが阿選が泰麒を襲ったからってのも何だが皮肉な気がする。阿選からしたら、まさに自分で撒いた種なのかな。

──驍宗

生きててよかった…驍宗様…!


部下たちや轍囲の民をはじめとして、どれだけ慕われているんだよ驍宗様…!2巻の終わりで絶望しかけたけど、ホント生きててよかった…。


登場してからの安心感が凄まじい。李斎をはじめとする捜索組も手探りで大変だっただろうけど、何年間も地中でたった一人って……!あげくの果てには自力で脱出しちゃう化物王。


泰麒も相当化物のだけど、驍宗はそれを超える化物だよなぁ…。これからの戴国は安泰だろ。過去に例を見ない経歴の泰麒と、カリスマ性マックスの驍宗。この二人なら瀕死の戴国をしっかりとした国に立て直してくれると思う。


──阿選

『白銀の墟 玄の月』の感想を語る上で阿選は外せない。1.2読んだ段階では謎でしかなかった阿選の考えや目的だったけど、3.4で語られた彼の考えが明かされると……複雑な気持ちになる。


かつては驍宗と肩を並べていたはずの阿選の変わりようが、読んでて苦しかった。泰麒たちからしたら敵で、過去にした事も許せないんだけど、知れば知るほど何故か憎めなくなっていった。


それが何故かというと、驍宗と比べるとあまりに人間らしさ…というか人間くささがある人物だからなのかな。驍宗は天才型の完璧人間で、阿選は努力型の普通の人間ってイメージ。


阿選の変わりよう…堕ちていく姿は見ていて辛いものがあるけど、最初は些細な事から、坂道を転がるように悪い方へ悪い方へといってしまう様子は、一度道を外れたら戻るのは難しいって教訓だよな…。


──最後に

1.2巻を読んでから3.4巻が発売されるまでの1ヶ月がホント辛かった…。

『白銀の墟 玄の月』の次には誰の物語がくるのかな?戴国の立直し編も読みたいけど、個人的にはの陽子が好きだから慶国の物語が読みたいところ…!


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