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『第六大陸』感想:緻密な構成と宇宙のロマンが詰まった一冊【小川一水】

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月への挑戦と少女の想いを描いた近未来ハードSF小説、小川一水の『第六大陸』の感想を語っていく。導入から読者を惹き付ける流れが完璧で、あれよあれよという間に読み切ってしまった。以下ネタバレありのため未読の方はコチラからどうぞ。

【『第六大陸』あらすじ・紹介】


目次

感想

導入から本編(月)への流れが完璧で、あっという間に物語の世界に引き込まれた。海底都市の建築、謎の少女との出会い、そして月への旅立ち…。テンポよく流れるストーリーは飽きがこないし、今後の展開にワクワクが止まらない。

──ストーリーについて

まだ人が住んでいない月に初めて作る建物が結婚式っていう発想がぶっ飛んでて好き。加えてそれの主導者がまだ年端もいかない少女ってのがまた面白い。


幼さ故の発想かも、とも思ったけど物語序盤から妙がただの少女だとは思えなかったし、月に結婚式場を作る計画…『第六大陸』の真の目的がなんなのか?それが気になってどんどん読み進めてしまった。
ただ個人のわがままで宇宙に進出するスケールは規格外すぎる。


もちろん、妙の目的がなんなのか?最初はそれが読み進める大きな原動力にはなっていたが、途中からは『第六大陸』計画に立ちはだかる様々な困難を解決していく過程がたまらなく面白く夢中になって読んでいった。


『第六大陸』計画は確かに、ぶっ飛んだ計画ではあるが、それを実現させるための過程はとてもリアルに描かれている。


月に基地を作るにあたって、まずロケットを打ち上げて荷物を運ばなければならない。もちろん基地をつくるためには重機も必要になる。その重機を動かすためのエネルギーを確保しなければならない。もちろん重機は月の過酷な環境に適応させた形にしなければならない。


自分が考えもしなかった問題と次々と直面する。あぁ、これが宇宙へ行くことなんだなぁと思い知らされる。


後半になるにつれ、妙の考えが明らかになっていくわけだが、彼女の恐ろしさと、それ以上の哀れさに見舞われる。しかし拍子抜け…というか意外だったのが、妙の真の目的(原動力?)が父親への対抗心だったこと。もっと壮大なモノを持っているかと思っていた。まぁ逆に考えれば妙も一人の少女だったということかな。



──宇宙へ”行く”ことのリアル

宇宙に関する知識については言わずもがな丁寧に描かれている。そんな中でひときわ印象に残っているのが宇宙へ行くこと、月に安定した拠点を作ることの難しさ、そしてそれにどれほどお金がかかるのか。


国ではなく民間企業が宇宙を目指す物語なのもあってかこのお金の面が、とてもリアルに描かれていた。宇宙へ行くのは技術以上に金銭問題が深刻なんだと思い知らされた。


今まで似たような宇宙をテーマにしたSF小説はいくつか読んだ事があったが、これほど現実的な問題と向き合った小説は初めてだった。


月面に安定した基地を作るのにかかる費用が1兆2000億……。物語の中では技術革新で10分の1ほどに抑えられるということになっていたが、それにしても果てしない額。


あとは宇宙のリアルについて語るなら危険性については避けて通れない。ロケット墜落などの危険もあるし、なにより月では、死と隣合わせだということ。−170〜110℃まで変化する気温、降り注ぐ放射能、真空etc…。泰の死がなによりも、宇宙は夢ばかりではない、危険な場所なんだということを教えてくれた。

最後に

1969年にアメリカのアポロ計画によって人類は初めて月に降り立った。そこからすでに約50年がたっている。宇宙へ行く技術があるのに何故そこから進んでいないのか?漠然とは思っていた疑問だが『第六大陸』を読んで分かった。単純明快だった。


お金がかかりすぎるから
そしてそれに見合うリターンがないから。


現実的すぎだったなぁ……。でもだからこそ、それを覆す『第六大陸』は面白いんだろうな。


自分が生きているうちに『第六大陸』のように月に人類が進出できることを祈っている。是非ともこの目で見てみたい。




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