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『S&Mシリーズ』の作品一覧とあらすじ・感想【森博嗣】

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『すべてがFになる』をはじめとする森博嗣の人気シリーズ『S&Mシリーズ』を物語の核心に触れるネタバレはしないで、簡単な感想と紹介をしていく。

目次

1.【S&Mシリーズ作品一覧】

1.『すべてがFになる』 The Perfect Insider
2.『冷たい密室と博士たち』 Doctors in Isolated Room
3.『笑わない数学者』  Mathematical Goodbye
4.『詩的私的ジャック』 Jack the Poetical Private
5.『封印再度』 Who Inside
6.『幻惑の死と使途』 Illusion Acts Like Magic
7.『夏のレプリカ』 Replaceable Summer
8.『今はもうない』 Switch Back
9.『数奇にして模型』 Numerical Models
10.『有限と微小のパン』 The Perfect Outsider

2.S&Mシリーズとは?

シリーズ名の『S&M』とは、主人公のイニシャルに由来するもので、犀川創平〈サイカワソウヘイ〉の『S』、西之園萌絵〈ニシノソノモエ〉の『M』からそれぞれ取られたものである。


シリーズの大まかな流れとしては、萌絵が事件に巻き込まれ、犀川がやむを得ず解決するという流れが多い。またトリックの多くに工学などの理系分野で構成されているのが大きな特徴であるため、「理系ミステリー」と称されることもしばしば。


森博嗣いちばんの代表作と言っても過言ではないのが『すべてがFになる』である。第1回メフィスト賞を受賞したデビュー作であり、『S&Mシリーズ』口切りの作品である。

3.作品紹介

──すべてがFになる

あらすじ

孤島のハイテク研究所で、少女時代から完全に隔離された生活を送る天才工学博士・真賀田四季。彼女の部屋からウェディング・ドレスをまとい両手両足を切断された死体が現れた。偶然、島を訪れていたN大教授・犀川創平と学生・西之園萌絵が、この不可思議な密室殺人に挑む。ミステリィの世界を変えた記念碑的作品。


〈評価10/10〉
衝撃のデビュー作!伝説の始まり
だれが犯人なのか?どんなトリックを使っているのか?これらの要素はミステリーで欠かせない要素だが『すべてがFになる』は、これらに対する解答が素晴らしいと思う。


天才工学博士・真賀田四季の部屋にあるコンピューターのカレンダーには、たった一行のメッセージが残されていた。そのメッセージが『すべてがFになる』


謎めいたタイトルに秘められた意味が分かったときの衝撃といったら他にない。印象的すぎるタイトルにして意味不明なタイトルであるが、読んでから考えるとこれ以上のタイトルはないだろうと思える。


──冷たい密室と博士たち

あらすじ

同僚の誘いで低温度実験室を訪ねた犀川助教授とお嬢様学生の西之園萌絵。たがその夜、衆人環視かつ密室状態の実験室の中で、男女二名の大学院生が死体となって発見された。被害者は、そして犯人は、どうやって中に入ったのか!?明かされる驚愕の真相そしてトリック。ますます研ぎ澄まされるシリーズ第2弾。

〈評価5/10〉
シリーズ第2弾、王道ミステリィ
シリーズ第1弾『すべてがFになる』に比べると『冷たい密室と博士たち』は、王道の本格ミステリィに近い感じである。


事件そのものはかなりシンプルではあるが、そのシンプルさの裏に隠された真実をぜひ堪能してみてほしい。


──笑わない数学者

あらすじ

偉大な数学者、天王寺翔蔵博士の住む「三ツ星館」。そこで開かれたパーティの席上、博士は庭にある大きなオリオン像を消してみせた。一夜あけて、再びオリオン像が現れた時、2つの死体が発見され……。犀川助教授と西之園萌絵の理系師弟コンビが館の謎もと殺人事件の真相を探る。超絶の森ミステリィ第3弾。

〈評価7/10〉
巨大なオリオン像の消失の先で…
物語上でのインパクトのある事件は、高さ5メートルほど、重さ推定10トンを超えるであろうブロンズ像が一夜にして消え、さらに翌朝には復活してしまう。


ミステリをよく読む方なら像消失のトリック自体はそこまで難しくないかもしれないが、そこからどう犯人を予測していくのかが本番だと思う。


終わり方も印象的で、タイトルの意味を考えながら読んでもらいたい一冊。


──詩的私的ジャック

あらすじ

大学施設で女子大生が連続して殺された。現場は密室状態で死体には文字状の傷が残されていた。捜査線上に浮かんだのはロック歌手の結城稔。被害者と面識があった上、事件と彼の歌詞が似ていたのだ。N大学工学部助教授・犀川創平とお嬢様学生・西之園萌絵が、明敏な知性を駆使して事件の構造を解体する!

評価6/10
詩的な理系ミステリィ!?
現場を”何故”密室にしたのか?
密室をどうやって『作ったか』ではなく、どうして『その状態にしたのか』という理由というのがとても面白い。


理系ミステリィと詩的な要素の組み合わせが印象的。犀川と萌絵の進展がみられる一冊でもある。


──封印再度

あらすじ

50年前、日本画家・香山風采は息子・林水に家宝「天地の瓢」と「無我の匣」を残して密室の中で謎の死をとげた。不思議な言い伝えのある家宝と風采の死の秘密は、現在にいたるまで誰にも解かれていない。そして今度は、林水が死体となって発見された。二つの死と家宝の謎に人気の犀川・西之園コンビが迫る。

評価6/10
封印再度〈Who inside〉 
壺の中の取り出せない鍵と、その鍵で開く箱の謎。そして凶器が見当たらない蔵の中で亡くなる事件の謎。


封印再度とサブタイトルの〈Who inside〉のダブルミーミングが洒落てていい。この二つのタイトルに秘められた意味とは……!?


──幻惑の死と使途

あらすじ

「諸君が、一度でも私の名を呼べば、どんな密室からも抜け出してみせよう」いかなる状況からも奇跡の脱出を果たす天才奇術師・有里匠幻が、衆人環視のショーの最中に殺された。しかも遺体は、霊柩車から消失。これは匠幻最後の脱出か?幾重にも重なる謎に秘められた真実を犀川・西之園の理系師弟が解明する。

評価8/10
手品の最中に巻き起こる殺人事件
『幻惑の死と使途』は、マジックショーを舞台としたミステリ。マジックとミステリ、いずれも相手を驚かせるという点で一致している両者だが、それが組み合わさった作品である。


本書でまず驚くのが『幻惑の死と使途』は奇数章だけで構成されている点だ。なんとも奇妙だが、その理由は、次作の『夏のレプリカ』と対になっていてコチラが偶数章のみの構成となっている。


シリーズを通して犀川の哲学的なセリフが面白い天秤だが今回の物語では〈名前について〉が印象的。
「ものには名前がある、という概念なんだよ。すべてのものに名前がある、ということに気づけば、あとな簡単なんだ。」


──夏のレプリカ

T大学大学院生の蓑沢杜萌は、夏休みに帰省した実家で仮面の誘拐者に捕らえられた。杜萌も別の場所に拉致されていた家族も無事だったが、実家にいたはずの兄だけが、どこかへ消えてしまった。眩い光、朦朧とする意識、夏の日に起こった事件に隠された過去とは?『幻惑の死と使途』と同時期に起こった事件を描く。

評価7/10
表と裏の物語
先述した通り『幻惑の死と使途』と対になる物語。


奇数章、偶数章で交互に展開されているだけではなく、物語の内容自体もまさに表と裏。派手な内容な『幻惑の死と使途』と比べると『夏のレプリカ』は人の心の闇を覗くような鬱々とした物語となっている。


事件そのものは密室も複雑なトリックも無くシンプルで、人の心情をひたすらに追った印象。S&Mシリーズの中では、かなり異質であると言えるだろう。


──今はもうない

避暑地にある別荘で、美人姉妹が隣り合わせた部屋で一人ずつ死体となって発見された。二つの部屋は、映写室と鑑賞室で、いずれも密室状態。遺体が発見されたときスクリーンには、まだ映画が……。おりしも嵐が襲い、電話さえ通じなくなる。S&Mシリーズナンバーワンに挙げる声も多い清洌な森ミステリィ。

評価8/10
二つ密室ともう一つの謎
『今はもうない』では、犀川と萌絵の視点ではなく、”笹木”という人物の視点で物語が進行していく。この笹木がかなり曲者で読みすすめる上で賛否両論があると思う。正直、私は苦手だった。


しかし、苦手だったのはこの笹木だけで、物語は上質そのもの。S&Mシリーズを読み続けている人は思わず唸る、そんな作品となっている。本書には密室の殺人事件の他にもう一つ隠された謎があって……!


──数奇にして模型

模型交換会場の公会堂でモデルの女性の死体が発見された。死体の首は切断されており、発見された部屋は密室状態。同じ密室内で昏倒していた大学院生・寺林高司に嫌疑がかけられたが、彼は同じ頃にM工業大で起こった女子大学院生密室殺人の容疑者でもあった。複雑に絡まった謎に犀川・西之園師弟が挑む。

評価8/10
あなたは正常?それとも異常?
人にとって、正常と異常の違いはなにか?そんな疑問が『数奇にして模型』のテーマの一つであると思う。


これまで数多くの変人を生み出してきたS&Mシリーズのなかでも、ひときわ癖のある人物が登場する。こういった人格を創造できる著者すごいなと改めて思い知らされる。


──有限と微小のパン

日本最大のソフトメーカが経営するテーマパークを訪れた西之園萌絵と友人・牧野洋子、反町愛。パークでは過去に「シードラゴンの事件」と呼ばれる死体消失事件があったという。萌絵たちを待ち受ける新たな事件、そして謎。核心に存在する、偉大な知性の正体は……。S&Mシリーズの金字塔となる傑作長編。


評価10/10
再びの邂逅、納得のシリーズ最終章
「そうだ、私はこんなミステリーを求めていたんだ」
読み終わったあとに素直にそう思った。シリーズを締めくくるにふさわしい一冊。


これまで積み上げたモノすべてが一瞬でひっくり返され、想像もしていなかった結末を与えてくれる。もちろんそれは荒唐無稽なものではない。


ラスト100ページ、怒涛の展開を見逃すな…!


最後に

S&Mシリーズ10作品いかがだっただろうか。刊行順に読んでいくのがもちろん一番だが、個人的に『すべてがFになる』と『有限と微小のパン』は必ず読んでほしいと思う。理由はネタバレになってしまうので言えないが…。読んだ方なら二つの作品の共通点がわかると思う。


理由については下記リンク先で書いている。『有限と微小のパン』のネタバレありなので注意。
【『有限と微小のパン』感想】




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