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『星を継ぐもの』シリーズ一覧!全4作品+αをまとめて紹介する【J・P・ホーガン】


「夢を描くことがなくなったのだね」ダンチェッカーは悲しげに頭をふった。「それは悲劇だ。わたしたちが今当たり前と思っていることはすべて、誰かが突拍子もない夢を描いたところから始まっているのだからね」

(引用:巨人たちの星 P259/J・P・ホーガン)


名作は色褪せない。
1980年に発売したジェイムズ・P・ホーガンのデビュー小説『星を継ぐもの』。40年経った今でもその魅力はまったく衰えていない。


今回は私がSF小説にはまった原点であるこの『星を継ぐもの』について、シリーズの魅力と特徴に触れ、そのあとに各作品を一つずつピックアップして紹介していく。


一つ注意して頂きたいのは、シリーズ作品を紹介していく都合上、2作品目以降の紹介の場合、まったくネタバレに触れないというのは難しい(もちろん踏み込んだネタバレは避けているが)。


まっさらの状態で楽しみたい方は、1作品目の『星を継ぐもの』の紹介のみでブラウザバックしていただければと思う。またホーガンの作品一覧はコチラ。
作品一覧


目次

『星を継ぐもの』シリーズとは?

『星を継ぐもの』シリーズは4つ(邦訳されていない作品を入れれば5つ)の作品で構成されるハードSFシリーズである(〈ガニメアン〉シリーズとも呼ばれる)。著者はイギリスのジェイムズ・パトリック・ホーガン。

以下作品一覧

1.星を継ぐもの 〈1980年〉
2.ガニメデの優しい巨人 〈1981年〉
3.巨人たちの星 〈1983年〉
4.内なる宇宙 〈1997年〉
5.Mission to Minerva〈2005年〉

※内なる宇宙のみ上・下巻構成


『星を継ぐもの』は1980年に発売され、2018年には驚異の100刷を達成した、数字にも裏付けられた名作である。また小説の他に漫画化もされており、その人気の根強さが伺える。

シリーズの特徴・魅力

──人類は無限の宇宙へ

シリーズの時代は現代の科学より少し進んだ未来の話。人類の探究心は宇宙へ手を伸ばし、留まる所を知らなかった。火星の砂漠には探検隊が組織され、金星の雲には探査船が飛び、木星にも探検隊が着陸している。


そして月では月面探査基地があり、開削作業と現地探査が行われている。『星を継ぐもの』では月面で奇妙なモノが発見されたことによって物語の幕が開ける。


──緻密な構成と壮大なスケール

練りに練られた緻密な物語の構成と、それと対を成すような宇宙の壮大なスケールが描かれているのがこのシリーズの魅力の一つである。


小さな発見を積み重ねて真実に近づくその様は、上質なミステリのような緻密な構成であり、なおかつテーマは宇宙……月から始まり木星へ調査の足を伸ばし、地球に戻ってきたと思えば、更なる未知との遭遇が主人公たちを待ち受ける。


息をつかせない展開と驚愕の真実の連続がきっと、読み手を夢中にさせてくれるはずだ。巻を増すごとに新たなる展開を見えせくれるので、是非シリーズを通して読んでみてほしい。


1.星を継ぐもの

──あらすじ

月面で発見された真紅の宇宙服をまとった死体。だが綿密の調査の結果、驚くべき事実が判明する。死体はどの月面基地の所属でもないだけでなく、この世界の住人でさえなかった。彼は5万年前に死亡していたのだ!一方、木星の衛星ガニメデで、地球のものではない宇宙船の残骸が発見される。関連は?J・P・ホーガンがこの一作を持って現代ハードSFの巨星となった傑作長編!

評価10/10
──月面探査で見つかったのは5万年前の人間の死体だった!?
物語は月面で宇宙服を身につけた死体が発見されて幕をあける。月面で死体が発見されることでも驚きなのに、調査の結果その人物は5万年前に死んでいたことが分かったのだ!!(ちなみに地球でいう5万年前というのは、ホモ・サピエンスが登場した頃である)


『星を継ぐもの』の面白い点は、宇宙、そして宇宙人という壮大なテーマの物語であるにも関わらず、ストーリーは一貫して月面の死体は何者なのか?どこから来たのか?に特化している点だ。


物理学、言語学、天文学、数学、化学、地理……ありとあらゆる専門家が様々な視点から謎に迫っていくのだが、その様子がたまらなく面白い。


例えるとすれば難解なパズルだろう。偽物も混じるたくさんのピースの中から専門家たちが、正しいピースを見つけ出す。そしてその正しいピースを主人公のヴィクター・ハントがあるべき所に並べ変える。


こんなにワクワクする小説はそうない。私をSF沼に落とした、自信を持ってオススメできる一冊。


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あらすじ・紹介
『星を継ぐもの』あらすじ・紹介:月面探査で見つかったのは……5万年前の死体!?【ジェイムズ・P・ホーガン】 - FGかふぇ


2.ガニメデの優しい巨人

──あらすじ

木星の衛星ガニメデで発見された2500万年前の宇宙船。それを建造した異星人種はガニメアンと名づけられた。ハント、ダンチェッカーら科学者たちは、宇宙船内で目にするその進歩した技術の所産に驚きを隠せない。彼らはどこに去ったのか。だが調査中、深宇宙から非行物体がガニメデを目指し接近してきた。はるか昔に太陽系を出発したガニメアンが帰還したのだ。シリーズ第2弾!

評価9/10
──未知との遭遇、溢れるロマン
シリーズ第2弾『ガニメデの優しい巨人』では、『〈ガニメアン〉シリーズ』と言われる所以になっている地球外生命体”ガニメアン”との邂逅から物語がはじまる。


このガニメアンとの邂逅シーン、これが最初の見所だと思う。裏表紙のあらすじなどで、ガニメアンと接触があることは、あらかじめ分かっている。分かってはいるものの、このシーンは読んでいて面白い。宇宙人との邂逅なんてロマンの塊でしかない。


前作では「ガニメアンが2500万年前に忽然と姿を消してしまった」という事実しか分からなかったが、その『星を継ぐもの』で残された伏線も徐々に明らかになっていく。


また本書では、生物論、進化論についての話題が非常に興味をひかれる。何故、鳥の形態が生まれたのか?何故、地球人の技術発展のスピードがめざましいのか?ミネルヴァ(木星の衛星)での進化の過程etc...ホーガンによって綴られた生物論・進化論の世界観は独特だがストンと納得できた。


何が面白いかって地球人目線ではなく、ガニメアン目線でも地球の生物について語られるので、今までに気にしたこともないことにも気付かされた。とくにガニメアンから見た地球人への見解が興味深い。


3.巨人たちの星

──あらすじ

冥王星のかなたなら届く〈巨人たちの星〉のガニメアンの通信は、地球人の言葉で、データ伝送コードで送られていた。ということは、この地球はどこからか監視されているに違いない。それも、かなり以前から……!五万年前に月面で死んで男たちの謎、月が地球の衛星になった謎、ミネルヴァを離れたガニメアンたちの謎など、前二作の謎が見事に解き明かされる、シリーズたちの3作!

評価9/10
──シリーズ三作目、裏切らない面白さ
さらなる異星人との闘いがはじまるシリーズ3弾『巨人たちの星』。私が一番面白いと思った所は、現代社会に蔓延る謎や、過去の地球人の歴史と異星人の侵略をうまく溶け込ませて物語が描かれている点だ。


過去長い間、地球人は呪術や無力な偶像などの迷信を信じ非科学的な精神構造を持っていた。なぜ、合理主義的な生き方ができていなかったのか?


なぜ、19世紀のヨーロッパで科学や理性の発達を妨害するような、心霊教やオカルトなど荒唐無稽な信仰や運動が蔓延したのか?史実を絡めた展開にリアリティを感じずにはいられない。


さらには前2作の伏線も見事に回収していくのだからもうたまらない。シリーズの一区切りとなる圧巻の一冊。

4.内なる宇宙

──あらすじ

架空戦争に敗れたジェヴレン。その全土を管理/運営くる超電子頭脳ジェヴェックスは、一方で人々を架空世界漬けにし、政治宗教団体の乱立を助長していた。一指導者による惑星規模の大プロジェクトが密かに進行するなか、進退谷まった行政側は、ついに地球の旧き友、ハント博士とダンチェッカー教授に助力を求めるが……《巨人たちの星》3部作から10年、待望の第4部登場!

(引用:内なる宇宙〈上〉/J・P・ホーガン)


評価8/10
──壮大なる物語の終着点
シリーズの最後のストーリーとなる『内なる宇宙』。これまでのシリーズとは少し毛色は異なるが、間違いなく傑作。


というのも、『内なる宇宙』は10年越しのシリーズ4作品目で、『星を継ぐもの』『ガニメデの優しい巨人』『巨人たちの星』の3作品とは違って、初めは作者自身も「続編を書くつもりはなかった」と本書冒頭に書かれている。毛色が違うのもなんとなく納得できる。


タイトルの意味がわかったときが圧巻……。是非ともタイトルの意味を推理しながらこの『内なる宇宙』を読んでみてもらいたい。


他の方のブログや感想を拝見すると「3部作まででよかった」などの声が多く見られた。私もその気持ちは分かる。シリーズとしては『巨人たちの星』までのほうがまとまりがあったと思う。でもそれは『内なる宇宙』がつまらなかったという訳ではない。シリーズとしてのまとまりからは少し外れていたかな、というだけ。面白さは保証する。

5.Mission to Minerva【追記(2021.5.29)】

邦訳はされていないものの、シリーズ5作目が『Mission to Minerva』。私は原文で読める気がしないので手を出さてはいないが、英語が得意な方はチャレンジしてみてはいかがだろうか。


最後に

間違いなく面白いシリーズではある。しかし一つ懸念点をあげるとすれば”難しい”ところ。SF用語……というか科学用語が目白押しなのでSF慣れしていない方からすると拒否反応がでてしまうかもしれない。


だけれども”なんとなく”で読み進めても物語は楽しめるようにできている。事実、科学分野に疎い私だが『星を継ぐもの』がSFにはまったきっかけである。


SFアレルギーを出さず、「よくわからんけど、そういうものがあるのか」程度に肩の力を抜いてチャレンジしてみてほしい。SFにあまり触れてこなかったあなたにこそ、新しい世界が見えるシリーズのはずだ。


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