FGかふぇ

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『恋恋蓮歩の演習』の感想:罪な男の大活躍回【森博嗣】


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あなたが急いでも、あなたの人生は短くならない。

(引用:恋恋蓮歩の演習 P17/森博嗣)


『種も仕掛けもありません』なんて、トリックがあると言っている常套句のようなものだ。今回は、森博嗣のVシリーズ第6弾『恋恋蓮歩の演習』の感想を語っていく。ネタバレありなので未読の方はご注意を。

シリーズ前回の感想はコチラ。
【『魔剣天翔』の感想】


目次

感想

豪華客船が舞台ってことで、勝手に派手な事件でも起きるのかなぁと思っていたが、そんなこともなく、どちらかといえば主要メンバーたちのやり取りを眺めるシリーズもの特有のまったり回だった。むしろそれがいい。


どれくらいまったり回かというと、200ページくらいまで事件が起きない。ちなみにこれは、本書のうち約半分である。


もちろんだからといって退屈な訳ではない。先述したが主要メンバーのやりとりが面白いし、今回はしこさんと保呂草の間で新しい展開があったのもびっくりだった。


──罪な男

保呂草さん大活躍回だった今作。そしてこの男、まったくもって罪な男である。彼に惚れてしまっている、しこさんは不憫に思えてならない。結ばれることはまずないだろうなぁ……。それにしてもキスまでするとは……罪な男……。


「羽村怜人=保呂草」の図式は、最初からなんとなく予想できた。


読んでいる最中は根拠のない直感と、変装がありうる彼の性質があるための予想だったが、改めて読み直してみるとタバコを吸う点、レストランでのピザとビールの組み合わせなど保呂草の特徴が垣間見える。注意深く読んでいれば、直感的ではなく論理的に気づけていたかもしれない。


あとは大笛(羽村に惚れた女性)にとって都合の良すぎる存在だったから、明らかに怪しさは感じる。それが保呂草と感づけるかどうかは別にしても。


毎回カッコいいと思うけど、今回はとくに保呂草さんカッコよかったな。とくにラスト。だからこそ読後感がいい。普段飄々とした人物がみせるふとした時の男前さは強い。惹かれる。


未だに謎多き男、保呂草だけれども過去についてチラッと触れている箇所があった。

まだ若かった私は、貨物船に乗って海を渡った。祖国から逃げ出したのだ。そうなるまでの無数の原因を、小さな無数の蟻たちが巣穴へ運び入れた結果だった。

(引用:恋恋蓮歩の演習 P13)


海外に行っていた描写は以前にあったんだけど、それとは別にもともと日本にはいなかった…?



──『恋恋蓮歩の演習』

タイトルが印象的なので毎度おなじみの森博嗣。今回の『恋恋蓮歩の演習』の字面も、まぁ一度見たら忘れないであろうインパクトのかあるタイトル。「恋」と「演習」の並びで擬似恋愛のようなことが起きるのかな?と思っていたが……当たらずも遠からずって感じ。


ちなみに調べてみたら

『恋恋』は、「恋い慕う情の切なこと」

『蓮歩』は、中国の故事で「美人のあでやかな歩み」

とのこと。


個人的な解釈だけれども『恋い焦がれながらも、それを周りに感じさずに取り繕う』って感じかな。


読了後にタイトルの意味を踏まえてしこさんと大笛の気持ちを思うと……切なさが溢れてくるな。

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