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『重力ピエロ』の感想を好き勝手に語る【伊坂幸太郎】


春が二階から落ちてきた。

(引用:重力ピエロ P9/伊坂幸太郎)

今回は伊坂幸太郎の『重力ピエロ』の感想を語っていく。ネタバレありなので未読の方はご注意を。

目次

あらすじ

兄は泉水、二つ下の弟は春、優しい父、美しい母。家族には、過去に辛い出来事があった。その記憶を抱えて兄弟は大人になった頃、事件は始まる。連続放火と、火事を予見するような謎のグラフィティアートの出現。そしてそのグラフィティアートと遺伝子のルールの奇妙なリンク。謎解きに乗り出した兄が遂に直面する圧倒的な真実とは──。溢れくる未知の感動、小説の軌跡が今ここに。

(引用:重力ピエロ 裏表紙/伊坂幸太郎)


感想

登場人物たちのユーモアな会話や言葉選びで軽快に物語は進むのにも関わらず、レイプ、放火、父の癌……と、取り扱っている題材は、かなり重いラインナップである。


本書の名言の一つに「本当に深刻なことは、陽気に伝えるべきなんだよ」とある。『重力ピエロ』は春の上記の名言を、まさに実行してる物語のようである。深刻なテーマな物語であるにも関わらず、軽快でユーモアある……つまり陽気なやりとりで構成されている。



読み進めているときには気づかない、何気ないエピソードの一つひとつが最後に線で結ばれる様子が圧巻。著者の作品を数多く読んでいる訳ではないが、「あぁ、この感じが伊坂幸太郎だなぁ」と思い知らされる。


──最強の家族

泉水と春のやりとりが絶妙。そして父を交えることでさらにやりとりに拍車がかかる。彼らのやりとりだけで、いかに仲の良い家族であるか、よくわかる。


泉水が遺伝子関係の仕事についたのは、因縁を感じずにはいられない。春と仲のいい兄弟だからこそ、そこに本当の繋がりがないのは、心の底では兄として寂しさがあり、怖さもあったのではないかと想像してしまった。



だからこそ

「おまえは俺に似て、嘘が下手だ」

(引用:重力ピエロ P456)

父のこの台詞は心にささる。
はたからみたら何でもない言葉。だけど二人にとっては……。


血が繋がっていないのに……いや、血が繋がっていないからこそ、彼ら家族の絆が出来上がっているのかもしれない。本書の父親の台詞にもあったが、彼らは最強の家族である。



──印象に残った台詞・名言等

好きな台詞やりとりが多すぎる。長くなるだろうがかまわず列挙する。

春が二階から落ちてきた。

(引用:重力ピエロ P9)

言わずと知れた一行目。こんなに忘れられない小説の一行目はない。

下記のページの『印象に残ってる1行目・冒頭』でも取り上げているのでよければコチラもどうぞ。


「夏子さん」と、私と父はその子を呼んだ。「春」を追いかけまわすのは、「夏」に決まっているからだ。

(引用:重力ピエロ P60)

春のストーカーだから『夏』
ユーモアとセンスが溢れてる。


「本当に深刻なことは、陽気に伝えるべきなんだよ」春は、誰にいうわけでもなさそうで、噛み締めるように言った。「重いものを背負いながら、タップを踏むように」
 それは詩のようにも聞こえ、「ピエロが空中ブランコから飛ぶ時、みんな重力のことを忘れているんだ」と続ける彼の言葉はさらに、印象的だった。

(引用:重力ピエロ P106)


「本当に深刻なことは、陽気に伝えるべきなんだよ」は、本書で一番好きな名言。

この精神はホント大事。



「人間はさ、いつも自分が一番大変だ、と思うんだ」
「何のことだ」
「不幸とか、病気だとか、仕事が忙しいだとか、とにかく、自分が他の誰よりも大変な人生を送っている。そういう顔をしている。それに比べれば、あの鳩のほうが偉い。自分が一番つらいとは思っていない」

(引用:重力ピエロ P187)

真理。

「多数決と法律は、重要なことに限って、約経たずなんだ」

(引用:重力ピエロ P209)


ピエロは、重力を忘れさせるために、メイクをし、玉に乗り、空中ブランコで優雅に飛び、時には不恰好に転ぶ。何かを忘れさせるために、だ。私が常識や法律を持ち出すまでもなく、重力は放っておいても働いてくれる。それならば、唯一の兄弟である私は、その重力に逆らってみせるべきではないか。

(引用:重力ピエロ P449)


「おまえは俺に似て、嘘が下手だ」

(引用:重力ピエロ P456)


「おまえは許されないことをやった。ただ、俺たちは許すんだよ」

(引用:重力ピエロ P459)



最後に

『春が二階から落ちてきた』
この始まりはあまりにインパクトがあって有名だし、物語の最後もこれで終わる。キレイにまとまりすぎてて畏怖の念すら湧いてくる。



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