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『聖女の救済』の感想を好き勝手に語る【東野圭吾】


「理論的には考えられるが、現実にはありえない、という意味だ。北海道にいる夫人が東京にいる夫に毒を飲ませる方法が一つだけある。だけどそれを実行した可能性は、限りなくゼロに近い。わかるかい?トリックは可能だが、実行することは不可能だということなんだ」

(引用:聖女の救済 P287/東野圭吾)


ガリレオシリーズ第5作品目、東野圭吾の『聖女の救済』の感想を語っていく。ネタバレありなので未読の方はご注意を。あらすじ・紹介はコチラから。


目次

感想

”誰が”、”どうやって”犯行を実行したのか?その謎を徐々に解き明かす過程を楽しむのが一般なミステリーと言っていいだろう。


『聖女の救済』はあらかじめ犯人は明らかである。”誰が”の部分は明らかで、”どうやって”のトリック部分だけで勝負した作品になっている。


あえて殺害方法だけがわからない状態だからそこ、読者は”どうやって”殺害したのかに絞って知恵を巡らせることができる。
なのにトリックがわからない。


このトリックを初見で見抜ける人っているのかな……。少なくとも私は完敗。

「今日、君が帰った後も、あれこれと考えてみた。真柴夫人が毒を入れたと仮定して、どういう方法を用いたのかをね。だけどどうしてもわからない。僕が出した結論は、この方程式に解はない、というものだった。ただ一つを除いてね」
「ただ一つ?じゃあ、あるんじゃないですか」
「ただし、虚数解だ」
「虚数解?」
「理論的には考えられるが、現実にはありえない、という意味だ。北海道にいる夫人が東京にいる夫に毒を飲ませる方法が一つだけある。だけどそれを実行した可能性は、限りなくゼロに近い。わかるかい?トリックは可能だが、実行することは不可能だということなんだ」

(引用:聖女の救済 P287/東野圭吾)


この台詞が『聖女の救済』一番の名言だと思う。


いくら考えてもわからなかったトリックの解を論理的に導き出した湯川は流石の一言……。しかしそれ以上にそのトリックが『虚数解』である……と。この謎めいた発言で更に物語に引き込まれた。



「理論的には考えられるが、現実にはありえない、という意味だ。北海道にいる夫人が東京にいる夫に毒を飲ませる方法が一つだけある。だけどそれを実行した可能性は、限りなくゼロに近い。わかるかい?トリックは可能だが、実行することは不可能だということなんだ」

このトリックを『虚数解』と例えるのが言い得て妙である。


──ガリレオシリーズだからこそ……

『予想外のトリック』が『聖女の救済』一番の見所なのは間違いないが、もう一つ、物語を面白くしているポイントは草薙が犯人に心惹かれてしまうところだと思う。


綾音が夫を遠くから毒殺する方法を考える薫と湯川。逆に綾音に恋心を抱いてしまったが故に、犯人ではない証拠を探す草薙。

 
普段は協力?している湯川と草薙が対立するように事件に挑むのは新鮮で面白い。まぁ草薙の恋心があったからこそ、犯人を追い込むことができたというのは皮肉すぎたが……。


このトリックがあれば単発の作品でも間違いなく面白いと思うが、ガリレオシリーズだからこそ……湯川と草薙の二人がいたからこそ感情移入ができて面白さが際立っていると思った。

──名言・印象に残ってる台詞等

「この一年間、夫人はいつでも真柴氏を殺すことが出来た。その上で、彼が誤って毒を飲まないよう、細心の注意を払い続けてきた。ふつうの人間は、どうやって人を殺すかに腐心し、労力を使う。だが今回の犯人は逆だ。殺さないことに全精力を傾けた。こんな犯人はいない。古今東西、どこにもいない。

(引用:聖女の救済 P392/東野圭吾)

『虚数解』の理由。
その虚数解を導き出せる湯川がすごいよ。

「明日からニ、三日、家を留守にしたいの。あなたを一人にしておくのは心配なんだけど」
彼は、何だそんなことか、と笑った。
「構わないよ。俺は一人で大丈夫だから」
そう、と綾音は頷いた。夫への救済が終わった瞬間だった。

(引用:聖女の救済 P420/東野圭吾)

タイトルの意味がわかるところ。鳥肌ポイント。



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