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『赤緑黒白』の感想を好き勝手に語る【森博嗣】


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「端的にいえば、それは問題解決です。その邪魔ものが科学的な謎であれば、解決した者は科学者として成功し、その邪魔ものが技術的困難であれば、解決した者は一流のエンジニアになる。その邪魔ものが、たまたま生きた人間だったときは、解決した者が、殺人者と呼ばれるのです」

(引用:赤緑黒白 P336/森博嗣)

森博嗣のVシリーズ、最後の第10弾『赤緑黒白』の感想を語っていく。ネタバレありなので未読の方はご注意を。

前回の感想はコチラ。


目次

あらすじ

鮮やかな赤に塗装された死体が、深夜マンションの駐車場で発見された。死んでいた男は、赤い。彼の恋人だったという女性が「犯人は誰かは、わかっている。それを証明して欲しい」と保呂草に依頼する。そして発生した第二の事件では、死者は緑色に塗られていた。シリーズ完結編にして、新たな始動を告げる傑作

(引用:赤緑黒白 裏表紙)

感想

ついに……ついにVシリーズを読み切ってしまった……。シリーズ最終巻に相応しい癖者の犯人、遺体に色を塗る謎……。そして次のシリーズの足がかりとなる伏線。まだまだ森博嗣沼から抜け出すことは出来なそうだ。


『森博嗣作品といえば密室トリック』のようなイメージが強いが、今回はそれに反して密室ではなく、殺害後の遺体に色が塗られるという猟奇的とも取れる連続殺人事件。


遺体に色を塗った理由、そして想像以上に練り込まれた犯人の計画……赤井と田口美登里の出会いすらも仕組まれたことだったとは、思いもよらなかった。


殺人事件の顛末もシリーズ最後に相応しい見ごたえのあるものだったが、登場人物たちのやりとりもそれと同じくらい惹かれるものがあった。


今回のキーパーソンである秋野秀和。すっかり忘れてたいたのだが、彼はシリーズ第1弾『黒猫の三角』で登場した犯人である。


一年に一度、ゾロ目の日付にゾロ目の年齢の人間が殺されていく殺人事件……。


言われて見れば確かに今回とパターンが同じなんだよな……。結論から言えば両者とも”美しいものを作りたかっただけ”。


違うのは、規則に従って色を塗るのか、それとも日付と歳の関連性に従うのか……。


必ず何かしらの意味が隠されていると勘ぐってしまう時点で彼らの思う壺。ここで秋野秀和を登場させてくるとは一本取られた。


しかも表紙をよく見てみると『黒猫の三角』と『赤緑黒白』はかなり似てる構成になっている。ここでも今回の事件の共通点を密かに訴えかけていたんだな……。


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──Vシリーズを支えた登場人物たち

保呂草、紅子、紫子、練無、七夏、林……個性豊かすぎる彼らのやりとりをこれ以上見ることができないのは少し残念だが、シリーズ最終巻にこれでもかってくらい、彼らの個性がひきたっていたところを見れた気がする。


保呂草の怪盗としての顔、紅子の華麗な推理と林への想い、紫子と練無のいつもの漫才のようなやりとりと、優しい一面、七夏のプライドの高さ、林の掴みどころがない感じ……。


中でも特に印象的だったのは、紫子が保呂草への想いをついに伝えたシーン。保呂草が紅子に別れを告げるシーン。そして林の名前が明らかになったシーン。


紫子と保呂草が結ばれることがないだろうことはわかってたけど、切なかったなぁ……。保呂草さん罪な男やで……。


そしてP555-561にかけての保呂草と紅子のやりとりが今回で一番好きな所。長くすぎて全部は引用はできないので一部だけ。

「貴女の幸せは、僕の幸せです」保呂草は言った。
紅子はじっと彼を見据え、やがて微笑む。
夜が逃げ出すのではないか、とさえ思えた。
「下がってよろしい」紅子は片手を差し出した。
保呂草は彼女の手を取り、地面に片膝をつく。
彼女の手に、キスをした。
「ご苦労でした」紅子は首を傾げて言う。
「おやすみなさい」保呂草は紅子の手を離す。
紅子は背中を向けて、遠ざかる。
しかし、数メートルほどのところで立ち止まり、振り返った。
「また、会えますか?」彼女はきいた。
「紅子さんが、そう思えば、いつだって」保呂草は答える。
彼女は頷く。
「じゃあ、さようならは、やめておこう」紅子は最後にそう言った。

(引用:赤緑黒赤 P559-560)

このシーンのためにこれまでのVシリーズがあったと言ってもいいだろう(言い過ぎ)。

夜が逃げ出すのではないか、とさえ思えた。ってなんだよ……この表現はずるい……。



もう一点、順当に読んでいった読者へのサプライズは”林”の名前、そしてそれによって明らかになる真実だろう。


P575、エピローグで林が無言亭に置いて行った祝儀袋に書いてある名前は、練無と紫子の証言曰く『○川 林』と書かれている。


ここで林は苗字ではなく、名前であることがあきらかになる。つまり林のフルネームは『犀川 林』。へっくんとはS&Mシリーズの主人公『犀川 創平』なのである。


シリーズ最後で、ものすごい爆弾を残してた……。林と紅子の遺伝子を継いだ犀川創平……前シリーズでの活躍も納得というわけだ。


私はVシリーズの先に四季シリーズを読んでしまったので紅子と犀川の関係は知っていたのだが、林の名前のトリックはここで初めて気付いた。『林』と『瀬在丸』の子供なのに、なんで『犀川』なのだろうと疑問に思ってたけど……まさか『林』が苗字じゃなく名前とは思わんやん。


──『赤緑黒白』は次への伏線

※以下、若干次のシリーズの内容に触れる。
ネタバレってほどではないけど、まっさらな状態で次が読みたい方は、ここで戻ることを進める。





さて、へっくんの正体が明らかになるのも『赤緑黒白』の大きな衝撃だが、今巻一の出来事は真賀田四季の登場だ。


具体的なページを挙げれば、P95-97、P313、P578-583。

「赤、緑、黒、白の4色は、四つの季節を表しています」
「ええ、風水の方角にも対応している。緑が青と表現されることが多いけど」紅子はいった「博学なのね」
「貴女ほどではありません」栗本は言う。
「その、春夏秋冬が、どうかしたの?」
「それが妹の名前なんです」少女は微笑んだ。「妹のために、彼女は、あれをやったんですよ」
「え?彼女って……室生さんが?」

(引用:赤緑黒白 P582-583)

室生の殺人の本当の動機が明らかになって鳥肌たった。


ここのやりとりは紅子視点で描かれているが、次の四季シリーズの『春』では四季(栗本)視点でP243から描かれている。ここで面白いのは、『春』のほうでは室生に関する情報はうまく隠されていてスムーズに読めるようになっている点。




そしてこの『赤緑黒白』が四季シリーズのどんな伏線かというと、タイトルがそれをものがたっている。


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『四季 春《Green Spring》』
『四季 夏《Red Summer》』
『四季 秋《White Autumn》』
『四季 冬《Black Winter》』

『赤緑黒白』が順番が違うものの、次シリーズのタイトルに入っているのである。


──印刷に残った台詞・名言

「端的にいえば、それは問題解決です。その邪魔ものが科学的な謎であれば、解決した者は科学者として成功し、その邪魔ものが技術的困難であれば、解決した者は一流のエンジニアになる。その邪魔ものが、たまたま生きた人間だったときは、解決した者が、殺人者と呼ばれるのです」

(引用:赤緑黒白 P336)




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