今回は森博嗣『Gシリーズ』の作品一覧、またあらすじ・紹介とネタバレなしの感想を述べていく。
個人的には、『Gシリーズ』より先に『S&Mシリーズ』、『Vシリーズ』を読むことをオススメする。以下、各シリーズの紹介。
【S&Mシリーズの一覧・紹介】
【Vシリーズの一覧・紹介】
【四季シリーズの一覧・紹介】
目次
1.Gシリーズの作品一覧・読む順番
『Gシリーズ』のGは、ギリシャ文字の頭文字Gからきていると言われている。シリーズ作品はすべてタイトルにギリシャ文字が含まれており、タイトルに特徴のある森博嗣作品の中でも、特に目を引くシリーズだと言っても過言ではないだろう。
以外、シリーズの刊行順でのタイトル一覧
1.Φは壊れたね
2.θは遊んでくれたよ
3.τになるまで待って
4.εに誓って
5.λに歯がない
6.ηなのに夢のよう
7.目薬αで殺菌します
8.ジグβは神ですか
9.キウイγは機械仕掛け
10.χの悲劇
11.ψの悲劇
12.ωの悲劇
全12作品構成。読む順番は、刊行順で読み進めていけばいいだろう。ここで注意していただきたいのは、最終巻『ωの悲劇』はまだ発売されていないという点だ。
『ψの悲劇』は2021年6月、だいたい2-3年周期で新作がでているので2023-2024年には発売されるのではないかと期待している。
2.Gシリーズの特徴・登場人物
『Gシリーズ』の特徴として、まず主な登場人物たちについて述べる。
今回のシリーズでは、大学生の加部谷恵美、海月及介、山吹早月らが中心となってストーリーが進んでいく。
山吹は、四季シリーズの『秋』で、加部谷は、S&Mシリーズ『幻惑の死と使徒』で登場している人物である。
つまり、この『Gシリーズ』も『S&Mシリーズ』、『Vシリーズ』と同じ世界線であることが伺える。なので新たな人間関係が明らかになることも……!?
もう一つの『Gシリーズ』の特徴として、加部谷たちが遭遇する事件がかなり特徴的である(グロいとかそういう訳ではないので安心してほしい)。
事件についてはネタバレになってしまうので多くは語れないが……『S&Mシリーズ』、『Vシリーズ』と同じ気持ちで読み始めると面食らう事になるのではないかと思われる。
ここからは、各作品について簡単な紹介と感想を述べていく。
──1.Φは壊れたね
──あらすじその死体は、Yの字に吊られていた。背中に作りものの翼をつけて。部屋は密室状態。さらに死体発見の一部始終が、ビデオに録画されていた。タイトルは「Φは壊れたね」。これは挑戦なのか?N大のスーパ大学院生、西之園萌絵が、山吹ら学生たちと、事件解明に挑む。Gシリーズ、待望の文庫版スタート!
──感想
本書あらすじの後半では、『N大のスーパ大学院生、西之園萌絵が、山吹ら学生たちと、事件解明に挑む。』とある。萌絵が探偵役として事件の真相を解き明かしていくのかと思っていきや、ところがどっこい新たな探偵役が登場してシリーズ序盤を盛り上げてくれる。
登場人物は、先程ふれた西之園萌絵をはじめ、犀川、国枝、鵜飼刑事……とS&Mシリーズを読んでいた方にはお馴染みのメンバーが登場してとても懐かしい気分になれるだろう。
質のある密室トリック、そして新たな探偵。S&M、Vとはまた違う空気感の中、Gシリーズはどこへ向かうのか。
──2.θは遊んでくれたよ
25歳の誕生日にマンションから転落死した男性の額には、θという文字が書かれていた。半月後、今度は手のひらに赤いθが書かれた女性の死体が。その後も、θがマーキングされた事件は続く。N大の旧友・反町愛から事件について聞き及んだ西之園萌絵は、山吹ら学生三人組、探偵・赤柳らと、推理を展開する!
──感想
予想通り……っていうか出てこなきゃ拍子抜けだけど、無事に彼女がでてきた。Gシリーズでは、どのような思考を見せてくれるのか。どんな役割なのか。
事件のほうは、森博嗣作品にしては珍しく密室ではない事件。事件に関しては若干のモヤモヤが残る。
──3.τになるまで待って
森に建つ洋館は”超能力者”神居静哉の別荘で《伽羅離館》と呼ばれていた。この屋敷のに探偵・赤柳初朗、山吹、加部谷ら7人が訪れる。突然轟く雷鳴、そして雨。豪華な晩餐のあと、密室で館の主が殺された。死ぬ直前に聴いていたラジオドラマは、「τになるまで待って」。大きな謎を孕む、人気のGシリーズ第三作。
──感想
密室トリックやらは面白みに欠けるところがあったが、シリーズ全体で考えた際には今後の展開が更に期待される巻であった。
正直に言えばちょっと不完全燃焼感がある。
──4.εに誓って
山吹早月と加部谷恵美が乗り込んだ中部国際空港行きの高速バスが、ジャックされてしまった。犯人グループからは都市部とバスに爆弾をしかけたという声明が出される。乗客名簿にあった「εに誓って」という団体客名は、「Φは壊れたね」から続く事件と関係があるのか。西之園たちが見守る中、バスは疾走する
──感想
山吹と加部谷の乗ったバスがジャックされ、二人の命運やいかに……!?ってハラハラしながら読んでいたけど、更に驚きにの真実が……!?
これはね、詳しいことは言えないが見事と言う他ない。さらには、謎多き海月の秘密が少し垣間見える巻でもある。
──5.λに歯がない
完全に施錠されていたT研究室で、四人の銃殺死体が発見された。いずれも近距離から撃たれており、全員のポケットに「λに歯がない」と書かれたカードが入っていた。また四人とも、死後、強制的に歯が抜かれていた。謎だらけの事件に迫る過程で、西之園萌絵は欠け落ちていた過去の大切な記憶を取り戻す。
──感想
萌絵と犀川の登場頻度が高くてS&Mの延長を読んてる感があった。二人の関係性が目に見えて進展していて月日が流れてるんだなぁ……って改めて感じる。そして頭脳明晰の犀川は健在。常に萌絵とか海月の一歩先をいってるよね
ギリシャ文字の謎は一向に答えが見えてこないけど、登場人物たちの関係は徐々に動きがでてきたのが印象的。
──6.ηなのに夢のよう
地上12メートルの松の枝に、首吊り死体がぶら下がっていた。そばには、「ηなのに夢のよう」と書かれた絵馬が。その後も特異な場所での自殺が相次ぐ。一方、西之園萌絵は、両親の命を奪った10年まえの飛行機事故の真相に近づく。これら一連の事件に、天才・真賀田四季は、どう関わっているのか──?
──感想
S&M→V→四季→Gとシリーズを駆けてきて、ここにきて今更また萌絵の飛行機事故について言及されてくるとは……。しかもとんでもない事実を突きつけられ……!?
正直、なかなか先が見えなければ、先も読めない展開のGシリーズだが、萌絵の変化や、真賀田四季の登場(?)など今までにない進展を見せた巻で非常に見所がある巻。
──7.目薬αで殺菌します
関西で発見された劇薬入りの目薬の名前には「α」の文字が。同じ頃、加部谷恵美が発見した変死体が握りしめてたのもやはり目薬「α」!探偵・赤柳初郎は調査を始めるが、事件の背景にはまたも謎のプロジェクトが?ギリシャ文字「α」は「Φ」から連なる展開を意味しているのか?Gシリーズ第7作!
──感想
またずいぶんと懐かしい人物の登場があった。彼女は『すべてがFになる』以来の登場か……?『有限と微小のパン』でもでてたかも…?
シリーズ作品らしく、過去キャラの登場。そしてメインキャラクターたちの心境の変化など、どことなく流れの変化を感じる一冊。
──8.ジグβは神ですか
βと名乗る教祖をあおぐ宗教団体の施設・美之里。調査に訪れた探偵・水野は加部谷恵美たちと偶然の再開を果たす。つかの間、フィルムでラッピングされ棺に入った若い女性の美しい全裸死体が発見された。あちらこちらに見え隠れする真賀田四季の影。紅子が、萌絵が、加部谷たちが近づいた「神」の真実とは。
──感想
まず読み初めて驚くのが時は流れ。加部屋たちは社会人に、または院生になっている。そして唐突に赤柳探偵の秘密が明らかになり……!?
『天才なら凡人の振りができるが、凡人には天才のふりはできない』と紅子から名言が出ていたが、まさにそのとおり。本物は……神は、やっぱり格が違うんだよなぁ。
──9.キウイγは機械仕掛け
建築学会が開催される大学に、γこ字が刻まれたキウイがひとつ届いた。銀のプルトップが差し込まれ手榴弾にも似たそれは誰がなぜおくってきたのか。その夜、学長が射殺される。学会に参加する犀川創平、西之園萌絵、国枝桃子、海月及介、加部谷恵美と山吹早月。取材にきていた雨宮純らが一堂に会し謎に迫るが。
──感想
Gシリーズではお馴染みの感想になってしまうが、次の作品に期待したいと思う。
こう書くと『キウイγは時計仕掛け』は面白くなかったの?と思われてしまうがそういった意味ではない。犀川、萌絵含め登場人物は勢ぞろいだし、相変わらず哲学チックな森博嗣節は炸裂しているし、人間関係にちょっと変化があったり……。
だがしかし、やっぱりシリーズを通して癖が強い。
──10.χの悲劇
香港で仕事をする島田文子のもとに男が現れた。島田が真賀田研究所にいた頃に起きた飛行機事故について質問があるという。その日、走るトラムの中で殺人が起き、死者の手に「χ」の文字が遺される。乗客として警察の捜査に応じた島田だったが、そこである交換条件を持ちかけられ……。Gシリーズ後期三部作開幕。
──感想
Gシリーズはとくに謎が多い印象だが、今回『χの悲劇』では、多くの読者が謎に思っていただろう、ある人物の秘密が明かされる。
そしてメインのストーリーが、加部谷たちではなく、まさかの島田文子というのもまた面白い。彼女のルーツ、そして彼女の人生はどうなっていくのか、目が離せない。
──11.ψの悲劇
遺書ともとれる手紙を残して老博士、八田洋久が失踪した。一年後、洋久と親しかった人々が八田家に集まり、失踪の手がかりを探して実験室に入ると、コンピュータに「ψの悲劇」と題された小説、ノートに〈真賀田博士への返答〉とのメモが。その夜、八田家に悲劇が訪れた。Gシリーズ後期三部作、第二弾。
──感想
このレベルの衝撃を味わったのは久しぶりな気がする。
物語のほとんどが鈴木という人物の視点で展開され、鈴木の思考も惜しみなく描写されている。ホントに惜しみなくだ。彼にはとんでもない秘密があり……。
今まではシリーズを通した人間関係で衝撃を受けることが多かったが、シンプルに『ψの悲劇』単体の物語の展開、とくにラストシーンの衝撃が凄まじかった。最終巻にむけて期待が高まる。
──12.ωの悲劇
最終巻(予定)
詳細はまだ未発表である。
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