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『魔女と過ごした七日間』の感想を好き勝手に語る【東野圭吾】


「そんなこと、なんでわかるの?円華さんって何者なの?」
円華は両手を腰に当て、純也を睨んだ。
「なんでわかるか?あたしだからわかる。そうとしかいえない。もしそれでも満足できないなら、こう答えておく。あたしは魔女だから。それでいい?」

(引用:魔女と過ごした七日間 P127/東野圭吾)



『ラプラスの魔女』、『魔力の胎動』に続くシリーズ第三作目、2023年3月17日に発売された『魔女と過ごした七日間』の感想を語っていく。ネタバレありなので、未読の方はご注意を。


前作の感想はコチラ
【『魔力の胎動』の感想・解説】




目次

あらすじ

AIによる監視システムが強化された日本。
指名手配犯捜しのスペシャリストだった元刑事が殺された。
「あたしなりに推理する。その気があるなら、ついてきて」
不思議な女性・円華に導かれ、父を亡くした少年の冒険が始まる。
少年の冒険×警察ミステリ×空想科学
記念すべき著作100作目、圧巻の傑作誕生! 

(引用:https://www.kadokawa.co.jp/product/322208000298/)



感想

待ちに待っていていた『ラプラスの魔女』シリーズの新作。好きなシリーズだったので続編がでて兎に角よかった……。『ラプラスの魔女』→『魔力の胎動』→『魔女と過ごした七日間』と今回はシリーズ三作目な訳だが、『魔力の胎動』は『ラプラスの魔女』の前日譚的な話だったので、今作『魔女と過ごした七日間』がシリーズの実質的な続編と言っていいだろう。


タイトルから予測できるように、今回の主人公は魔女と共に事件を追った少年であり、円華がメインではなかった。そのため『ラプラスの魔女』のような派手な演出はなかったが、要所要所での魔女の力を使っての活躍は印象に残るものばかりだった。



──少年の冒険×警察の闇×AI×ラプラスの悪魔

事件によって父親を失った少年が、事件の真相に迫っていくと、そこには警察の闇があって……。というのが今回の話。設定としては、突飛なものではないけど、そこに円華の存在があることによって普通のミステリとは一味も二味も違った見応えが生まれている。


まぁ普通のミステリとして見ても、警察の闇の部分を明かしていく所とか、まさかの真犯人とか、『見当たり捜査官』という初めて知った警察の役割とか、今何かと話題にあがるAIの事とか……読み応えのある話なのは間違いないし、そこにシリーズの醍醐味である『ラプラスの悪魔』も加わってくるんだから、面白くないはずがない。


川の流れを予測して殺害現場を特定。カジノのルーレットで無双……など、その後の展開が読めていても、読んでいて爽快感がある。とくに警察を出し抜いて殺害現場特定するところとか。


あと結局心に残るのは、円華のキャラクターとしての魅力なんだよな……。ラプラスの悪魔の力はもちろんだけど、他にも気が強くて冷たそうだけど他人の為に尽力する所とか、素の頭の良さとか、物事の本質を捉えているところとか……。


円華が登場するだけで、何をしてくれるんだろう!?ってワクワクする。ベクトルは違うけど、森博嗣作品の某天才女博士と同じような魅力がある。


物語の要素として、
①少年の冒険
②警察の闇
③AI
④ラプラスの悪魔

上記の4点が今作のテーマだと思うんだけど、④ラプラスの悪魔の要素が個人的に好きというのは前述の通りだけど、他の①、②、③も好みにかなり刺さってる。そりゃ面白く感じる訳だ。




──印象に残ったセリフ・名言

「そう、所詮はお金の話。公営ギャンブルは国にお金が入ってくる。闇カジノはそうじゃない。だから禁止。お金の行き先が反社会的勢力だから、なんていうのは詭弁。結局のところ、ギャンブルを運営する権利を国家で支配したいだけのこと。《中略》法律は国家にとって都合のいいように作られている。国民なんて二の次だし、ましてや正義なんてものは無関係。昨日までは無罪だったものが、ある日突然有罪になる。そんなものに振り回されちゃだめ。何が正しいのかは、自分で考えなきゃいけない。わかった」

(引用:魔女と過ごした七日間 P340)

ド正論パンチ。

「じゃあ、トリックなんかではないと?」
「だからそれを考える必要はありません。すべての出来事を自分の理解できる範囲に収めてしまおうとするのは強引だし、傲慢です。そんな狭小な世界観から解き放たれた時、人間は初めて次のステージに一歩踏みだせるんです」
《中略》
「だったら、同じことが人間にできたからといって驚いてはいけません。人間は、もっと人間の可能性を信じるべきです。AIごときを相手に卑屈になってどうするんですか」

(引用:魔女と過ごした七日間 P356-357)

AIができることを人間ができるからといって驚くことは何もない。それは貴方だから言えるのでは……と思った。でもまぁ普段からそういう人たちと接しているし、円華自身が普通の人間じゃあないし……。


AIとエクスチェッドの能力ってなんとなく似てるなぁと思ってしまった。


『人間は、もっと人間の可能性を信じるべき』ってセリフは、円華の心からの言葉のように思えた。


「うまくいえないんですけど、あの二人──陸真君と照菜ちゃんに、お父さんの本当の姿を見せてやりたいから、というところでしょうか」
《中略》
「警察の捜査が進めば、いろいろなことが明らかになっていくでしょう。犯人の正体や犯行動機なんかもね。でもきっと公表されるのは事件に直接関わる無機質で表面的なことばかりで、月沢克司という人がどんなことを考えながら生きていて、何を望んでいたのかということはわからないままだろうと思ったんです。だからあたしが警察の代わりにそういうことを調べ、二人に示してやろうと考えました。父親のことがわからないままでは、母親の違う二人が心を通わせるのは難しいでしょうから」

(引用:魔女と過ごした七日間 P360-361)


円華の原動力ここなのかよ。優しすぎる。


最後に

全体を通して満足の一冊だった。もう少し個人的な要望を言えば、もっと円華の能力を使った派手な活躍が見たかった。川の流れからの殺害現場の予測、天気の予測、ルーレットの予測、風の予測など、今回でたのは前作とさほど差がなかったかなと。


まぁ個人的に見たかったってだけで、今作も面白いかった。派手な演出は今回の作品には合わなかっただろうし、それは次作に期待。





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