どうも、夏が大好きなFGです。
今回は『ギンカムロ』の感想を語っていきます。
内容には触れていくので、読んだことがない方は、こちらをどうぞ。
きっかけ
本屋さんで、その鮮やかな表紙に思わず目を奪われる。
そして冒頭部分を読んでいただき購入を決めました。
「花火には、二つしかない」
山頂から吹き降りてくる秋の風が、厳粛な空気の隙間を舐めるように吹いていた。
「一瞬で消えるか、永遠に残るか...その二つしかない」
(引用:ギンカムロ P7/美奈川護)
花火には二つしかない。一瞬で消えるか、永遠に残るか。
なんか深いと思いません?
感想
花火そして花火職人に焦点を当てた作品なので、当然かもしれないが、花火の描写が丁寧で文章からでも夜空に浮かぶ大輪が目に見える様だった。
そして様々な種類の打ち上げ花火が登場する。
第一章は花万雷
第二章は紅色千輪
第三章は五重芯変化菊
第四章は銀冠
と章題もすべて玉名になっている。
打ち上げ花火の種類なんて、初めて知りました。
今までは3号玉とか、4号玉などの大きさ
また、スターマインなどの打ち上げ方しか知らなかった。
第三章に出てくる花火の正式名称なんて『昇群光小花付五重芯引先銀乱』ですからね。RPGのゲームに出てくる必殺技のようですね。
さて、第一章の花万雷だが
花万雷とは、花火玉の中に大きな炸裂音を発する『音物』と呼ばれる粒を複数個入れ、更にチタン合金などを混ぜて光を放つようにした花火のことである。夜の花火打ち上げの開始の合図を告げる際に打ち上げられることが多い。
(引用:ギンカムロ P50/美奈川護)
物語の始まりとして、これ以上の花火はないだろう。
万雷は、始まりを告げる花火
物語の始まりを、そして昇一の花火職人への第一歩をうまく表現していると感じた。
また第一章のうちから、心に残るシーンや台詞がどんどんでてきた。ひとつ挙げるとするなら
「たった一人の人間の心も動かせない花火師が」
高峰煙火工業の藍染印半纏が、明滅する星のように一瞬だけ光る。
「何百万人もの観客を、感動させることはできませんよ」
(引用:ギンカムロ P83/美奈川護)
風間さん...あんたカッコよすぎるよ...
職人魂ですね...
この他にも風間さんは、身にしみる事を言ってくれるんですよね。小さな事を疎かにしてて、成功はありえないって事がよくわかります。
第一章は盲目の方へ向けてなので音で、第二章では色弱の方へ向けて様々な赤を。
と、色鮮やかで華やかさだけが花火なのではないと、そんな単純な物ではないと思いしらされた。
さて、タイトルでもあり表紙でもあり章名にもなっているギンカムロについて。
銀冠は、もっとも難しい花火と言われている。
銀は、非常に高い温度で星を燃焼させなければ出ない色だ。更に『冠菊』という型は光跡が消えずに垂れ下がる花火なので、星を長い時間、高い温度で燃焼させ続けないと、最後まで美しい色が保てない。銀色の冠菊...つまり銀冠は,非常に高度な技術が必要な花火だと言われている。
(引用:ギンカムロ P112/美奈川護)
第四章では、ギンカムロとはなんなのか?誰の、どんな思いが込められているのか?
それが集約されているようだった。
実際、第四章はかなり暗い話題が続く章だったが、それでこそ、いやだからこそ「鎮魂の花火」と言われるギンカムロ、これが映えているのだろうと感じた。
今までただ漠然とキレイだなぁ、と眺めていた花火だったが、「何故花火は美しいのか?」本書を読んで、その意味がわかった気がする。
打ち上げてから消えるまでの、たった7秒に職人が全てを賭けているんですからね。それがキレイじゃないはずないですよね。
物語自体も、もちろん堪能しましたが、
普段は絶対見ることのない、花火職人目線の世界、打ち上げ花火の知識に触れることができ、とても満足しています。