2018年に最新作品『オリジン』が刊行され、『ダ・ヴィンチ・コード』シリーズは現在5作品ある。そして5作品中の3作品はすでに映画化されている。
今回はそんな大人気シリーズの魅力と特徴について触れ、そのあとに各作品を一つずつピックアップしてあらすじ・紹介をしていく。
(※長いので目次を活用していただけると幸いです)
目次
『ダ・ヴィンチ・コード』シリーズとは?
『ダ・ヴィンチ・コード』シリーズとは、ハーヴァード大学の象徴学者ロバート・ラングドンを主人公とした物語で、主人公の名前をとって、ラングドンシリーズとも呼ばれる。
『ダ・ヴィンチ・コード』シリーズと呼ばれているが、そのシリーズ第一作目は『ダ・ヴィンチ・コード』ではなく、『天使と悪魔』。
『ダ・ヴィンチ・コード』は44言語に翻訳され7000万部を越える異例の大ヒットを記録している。
このため、そのシリーズを世に知らしめるきっかけとなったダ・ヴィンチ・コードの名前をとって、『ダ・ヴィンチ・コード』シリーズと呼ばれるようになった。
シリーズ5作品と刊行年
1.天使と悪魔〈2000年〉
2.ダ・ヴィンチ・コード〈2003年〉
3.ロスト・シンボル〈2009年〉
4.インフェルノ〈2013年〉
5.オリジン〈2017年〉
シリーズの特徴・魅力
シリーズ通しての特徴、魅力を挙げていく。
──1.史実にまつわるストーリー
事実
この小説に登場する芸術作品、建築物、場所、科学、宗教団体は、すべて現実のものである。
どの物語も上記の謳い文句で始まる。
実在する舞台で語られる、実在する芸術作品や宗教に纏わるストーリーは、フィクションなのだがノンフィクションのようなリアルさがある。
歴史上の名だたる偉人を、芸術作品を、秘密結社を取り上げて構成される。実在するものゆえに知的好奇心が刺激されてやまない。
──2.暗号
作中に登場する歴史、芸術作品、象徴、時には数学など、様々な要素を絡めた暗号は、読者を引き込むこと間違いない。
一つの暗号を解き明かすごとに、また立ちふさがる次の暗号。それを解読する爽快感と驚愕の連続は他にはない読み心地を与えてくれる。
──3.観光ミステリー
ラングドンは、実際に存在する国で、実際に存在する教会や美術館を訪れる。そこで語られるのは建物に関する細かい描写や歴史、美術品に関する膨大な知識と興味深い蘊蓄...。
読んでいるだけで実際にその土地を訪れたような満足感を与えてくれる。また実際に『ダ・ヴィンチ・コード』を片手にパリのルーブル美術館やサン・シュルピス教会を見学する観光客も多いという話である。
その土地を訪れたことがある人には
「こんな秘密が隠されていたのか!!」と驚くこと間違いない。
──4.宗教と科学
宗教や偉人や芸術作品が登場するのは前述した通り。そこだけを聞くと、歴史上のモノを取り扱う堅いイメージがわくかもしれない。
しかし『ダ・ヴィンチ・コード』シリーズでは「歴史」だけでなく、最先端の化学も取り扱われる。
読んでいただければ一目瞭然たが、第1作『天使と悪魔』では、宗教と科学の対立を描いた物語だし、最新作『オリジン』では、今話題のAIが活躍する物語である。
『ダ・ヴィンチ・コード』シリーズ5作
1.【天使と悪魔】
──あらすじ
ハーヴァード大の図像学者ラングドンはスイスの科学研究所長から電話を受け、ある紋章についての説明を求められる。それは16世紀に創設された科学者たちの秘密結社″イルミナティ″の伝説の紋章だった。紋章は男の死体の胸に焼き印として押されていたのだという。殺された男は、最近極秘のうちに反物質の大量生成に成功した科学者だった。反物質はすでに殺人者に盗まれ、密かにヴァチカンに持ち込まれていた──。
(引用:天使と悪魔〈上〉裏表紙/ダン・ブラウン)
評価9/10
──伝説のはじまり
シリーズ第二作目となる『ダ・ヴィンチ・コード』が爆発的ヒットとなり、第一作目となる『天使と悪魔』も注目を集めるようになった。
しかし、クオリティーを見ても『ダ・ヴィンチ・コード』と比べて遜色がないくらい密度が濃く、練り込まれた作品であるのは間違いない。
『天使と悪魔』は宗教と科学の対立について片寄りなく双方からの主張がなされている。
宗教と科学
物質と反物質
希望と絶望
天使と悪魔
相反する二つが織り成すストーリー
──コンクラーヴェ
コンクラーヴェとは「教皇選挙」を意味する言葉で、カトリック教会においてローマ教皇を選出する選挙システムのことである。最近では2013年にコンクラーヴェが行われ、メディアに取り上げられていたので聞いたことのある方も多いのではないだろうか。
『天使と悪魔』の事件は、この厳正なるコンクラーヴェの真っ只中に起きる。有力候補の枢機卿4人が消え、犯人からは一時間ごとに一人を殺すという予告が...!!
2.【ダ・ヴィンチ・コード】
──あらすじ
ルーヴル美術館館長のソニエールが館内で死体となって発見された。殺害当夜、館長と会う約束をしていたハーヴァード大教授ラングドンは、フランス警察より捜査協力を求められる。ソニエールの死体は、グランド・ギャラリーでダ・ヴィンチの最も有名な素描〈ウィトルウィウス的人体図〉を模した形で横たわっており、さらに、死体の周りには、複雑怪奇なダイイングメッセージが残されていた。館長の孫娘でもあり、現場に駆けつけてきた暗号解読官ソフィーは、一目で祖父が自分だけに分かる暗号を残したことに気付く...。
〈モナ・リザ〉〈岩窟の聖母〉〈ウィトルウィウス的人体図〉──。
数々のダ・ヴィンチ絵画の謎が導く、歴史の真実とは!?
(引用:ダ・ヴィンチ・コード〈上〉/ダン・ブラウン)
評価10/10
──暗号
私が初めて読んだダン・ブラウンの作品がこの『ダ・ヴィンチ・コード』だった。そのときの衝撃は今でもありありと思い出せる。
圧倒的な密度で語られるストーリー、予想できない結末・どんでん返し、そしてなにより練りに練り込まれた暗号さらにそれが史実に基づき実在する芸術作品を絡めてつくられている。
『ダ・ヴィンチ・コード』に登場する最初の暗号を載せておく。
(出典:ダ・ヴィンチ・コード〈上〉P61/ダン・ブラウン)
わくわくしませんか?答えと続きは是非ご自分で読んで見てください。
──レオナルド・ダ・ヴィンチ
タイトルになっている『ダ・ヴィンチ』、そして表紙の『モナ・リザ』。
レオナルド・ダ・ヴィンチは、イタリアのルネサンス期を代表する芸術家だが、その才能は芸術の枠だけに収まらず、音楽、建築、数学、幾何学、天文学...などなど、とどまるところを知らない。
『ダ・ヴィンチ・コード』ではレオナルド・ダ・ヴィンチの作品である〈ウィトルウィウス的人体図〉〈モナ・リザ〉〈岩窟の聖母マリア〉〈最後の晩餐〉などの謎に始まり、歴史上で隠された謎に迫っていく。
3.【ロスト・シンボル】
──あらすじ
世界最大の秘密結社、フリーメイソン。その最高位である歴史学者のピーター・ソロモンに代理で基調演説を頼まれたラングドンは、ワシントンDCへと向かう。しかし会場であるはずの連邦会議事堂の〈ロタンダ〉で待ち受けていたのは、ピーターの切断された右手首だった! そこには第一の暗号が。ピーターからあるものを託されたラングドンは、CIA保安局局長から、国家の安全保障に関わる暗号解読を依頼されるが。
(引用:ロスト・シンボル〈上〉裏表紙/ダン・ブラウン)
評価6/10
──フリーメイソン
『ロスト・シンボル』を語る上で外すことができないのが、秘密結社″フリーメイソン″だ。というより物語の大半はフリーメイソンに纏わるストーリーである。
「フリーメイソン」という名前を、組織があることは知っていても、その組織の実態について知っている方はほとんどいないのではないだろうか。
「フリーメイソンが世界を支配している」といった隠謀論もあるなか、『ロスト・シンボル』では、アメリカ建国の父を始め、世に知られるさまざまな人物が、フリーメイソンの会員だという設定が与えられる。
そんな世界を動かした彼らが残した、フリーメイソンの″秘密″。その″秘密″をめぐる争いにラングドンは、いつの間にか巻き込まれていく。
──暗号
あらすじには「国家の安全保障に関わる暗号解読を依頼される」とあるが、この暗号がまぁ濃密。
①の暗号を解いたら、次は②の暗号
というわけではなく
①の暗号が、見る角度を、着眼点を、解釈を変えることによって何重もの答えを持っている。
驚きの連続に流石、ダン・ブラウンと思わざるを得ない。
私が個人的に印象に残っているのが『魔方陣』と呼ばれるモノ。『ロスト・シンボル』では暗号を解くための鍵でしかないのだが、この存在は初めて知った。
【魔方陣】
(出典:ロスト・シンボル〈中〉P183/ダン・ブラウン)
ちなみにこの数字群は、アルブレヒト・デューラーの版画「メランコリアⅠ」に描かれている一部である。
あなたはこの16個の数字が意味することがわかりますか...!?
4.【インフェルノ】
──あらすじ
「地獄」。そこは″影″──生と死の狭間にとらわれた肉体なき魂──が集まる世界。目覚めたラングドン教授は、自分がフィレンツェの病院の一室にいることを知り、愕然とした。ここ数日の記憶がない。動揺するラングドン、そこに何者かによる銃撃が。誰かが自分を殺そうとしている? 医師シエナ・ブルックスの手を借り、病院から逃げ出したラングドンは、ダンテの『神曲』の〈地獄篇〉に事件のてがかりがあると気付くが──。
(引用:インフェルノ〈上〉裏表紙/ダン・ブラウン)
評価8/10
──ラングドンの『空白の記憶』
アメリカにいたはずのラングドンが目を覚ますと、そこはイタリアの病院だった...!?
丸々2日間の記憶が抜け落ちている。ふと悪夢のように思い出すのは、″銀髪の老女″と″疫病医の仮面″...手元にはバイオハザードの象徴が印された金属の円筒。
『空白の2日間』でラングドンの身にいったい何が起きたのか...!?
──『神曲』
『インフェルノ』の最大の題材がイタリア・フィレンツェ出身の詩人『ダンテ・アリギエーリ』によって創られた『神曲』である。ちなみに表紙の人物こそダンテだ。
ダンテの『神曲』は世界文学史上屈指の名作とうたわれ、〈地獄篇〉、〈煉獄篇〉、〈天国篇〉で構成される叙事詩である。
【地獄の見取り図&ダンテのデスマスク】
(出典:インフェルノ〈上〉/ダン・ブラウン)
写真の上が〈地獄篇〉の様子を忠実に再現したボッティチェルリの作品地獄の見取り図。
ラングドンは予想外の形で〈地獄の見取り図〉と出会い、『神曲』の〈地獄篇〉に事件の手がかりがあると気付き、物語の歯車が動き出す。
【インフェルノをもっと詳しく知りたい方へ】
5.【オリジン】
──あらすじ
宗教象徴学者ラングドンは、スペインのビルバオ・グッゲンハイム美術館を訪れていた。元教え子のカーシュが、“われわれはどこから来たのか”“われわれはどこへ行くのか”という人類最大の謎を解き明かす衝撃的な映像を発表するというのだ。
カーシュがスポットライトを浴びて登場した次の瞬間、彼は額を撃ち抜かれて絶命した。カーシュ暗殺は、宗教界によるものか?もしくは、スペイン王宮の差し金か?かくして、誰も信用できない中で、ラングドンと美貌の美術館館長・アンブラは逃亡しながら、人工知能ウィンストンの助けを借りて謎に迫る!
評価9/10
──我々はどこから来て、どこへ行くのか
『オリジン』で問い掛けられる一番の謎...もといテーマが上記の通り「我々、人類はどこから来て、そしてどこへ行くのか」
未来学者のエドモンド・カーシュが提示した真実は驚きだった。とくに「人類の運命」については驚愕なものだった。その答えについて知るだけでも読む価値があると思う。
もちろん、それだけで終わらないのがダン・ブラウン。カーシュが暗殺されたことにより、闇に葬られたと思われた
──カーシュが残した人工知能″ウィンストン″
カーシュの無念を引き継ぎ、真実を世に明らかにするためにラングドンはカーシュが残した人工知能″ウィンストン″の協力の元、謎に迫る。このウィンストンの活躍が見所の一つと言ってもいいだろう。
人工知能らしい正確無比かつ膨大な情報処理能力を生かしたサポートは正に最強の相棒。
現代ではまだこのレベルのAIは存在しないだろうが、科学の発展のスピードを考えるとウィンストンのようなAIが現れるのもそう遠くない未来なのかもしれない。
【オリジンをもっと詳しく知りたい方へ】
ダン・ブラウン最新作品について
次のダン・ブラウン作品はいつになるのか!?ファンの方は気になって仕方がないだろう。ダン・ブラウン作品を訳している越前敏弥氏のTwitterより下記のツイートが2021年12月12日にされた。
ダン・ブラウンからのちょっと早いクリスマスメッセージ。ラングドン・シリーズの最新作はまもなく完成するそうです。https://t.co/jmkERoUCGp
— 越前敏弥 Toshiya Echizen (@t_echizen) 2021年12月12日
ラングドンシリーズの最新作がまもなく完成…!!
その後に訳されて……と手順を踏むわけで、日本語版を読めるのはまだ先になるわけだが、期待して続報を待とうと思う。
終わりに
私個人の好みで言えば
1位:ダ・ヴィンチ・コード
同率2位:天使と悪魔、オリジン
同率3位:ロスト・シンボル、インフェルノ
と言った感じ。
第一作目の『天使と悪魔』から順番に読んでいくのが順当だが、気になった作品から読んでもらってかまわない。
第二作目の『ダ・ヴィンチ・コード』では、ちらっと第一作の『天使と悪魔』の内容に触れられたりするが、物語の大筋には関係ないので問題ないだろう。
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