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『有限と微小のパン』の感想を好き勝手に語る【森博嗣】


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「その言葉こそ、人類の墓標に刻まれるべき一言です。神様、よくわかりませんでした……ってね」

(引用:有限と微小のパン P827/森博嗣)



「そうだ、私はこんなミステリーを求めていたんだ」


これまで積み上げたモノすべてが一瞬でひっくり返され、想像もしていなかった結末を与えてくれる。


特にラスト100ページでは、読む手が止まらなくなる。


ということで、森博嗣の『有限と微小のパン』の感想を語っていく。ネタバレありなので未読の方はご注意を。


感想

  1. ちょっと個人的な話
  2. 真賀田四季
  3. ストーリー全体について
  4. ラスト

1.ちょっと個人的な話


ご存知の通り『有限と微小のパン』はS&Mシリーズであり、以下の全10作品である。

1.『すべてがFになる』 The Perfect Insider
2.『冷たい密室と博士たち』 Doctors in Isolated Room
3.『笑わない数学者』  Mathematical Goodbye
4.『詩的私的ジャック』 Jack the Poetical Private
5.『封印再度』 Who Inside
6.『幻惑の死と使途』 Illusion Acts Like Magic
7.『夏のレプリカ』 Replaceable Summer
8.『今はもうない』 Switch Back
9.『数奇にして模型』 Numerical Models
10.『有限と微小のパン』 The Perfect Outsider


今回感想を書いている『有限と微小のパン』はS&Mシリーズ最終作品となるわけだが、私はシリーズすべてを読んだわけではない。


読んだのは『すべてがFになる』『冷たい密室と博士たち』『笑わない数学者』『詩的私的ジャック』『封印再度』の5作品だ。


森博嗣は『すべてがFになる』で初めて知り、その内容に度肝を抜かれた。そしてそれがシリーズ作品であると知り、期待に胸を膨らませつつS&Mシリーズ2作目、3作目と読んでいったわけだが...。


「なにか違う」


『冷たい密室と博士たち』も『笑わない数学者』も決してつまらない訳ではない。つまらない訳では無いのだが、なにか物足りない。


『すべてがFになる』の衝撃か大きすぎたために、S&Mシリーズのハードルが上がりすぎていたんだと思う。


そのために5作品まで読んで、続きは読んでいなかった。


だがしかし、やはり『すべてがFになる』の衝撃を忘れることができず、また『有限と微小のパン』が傑作だ!という話を聞き、シリーズをとばして10作目に手を出した訳だが...大正解だった。

2.真賀田四季

彼女の存在はやはり大きい。シリーズ2作品目以降に感じていた「物足りなさ」の原因は、『真賀田四季』の不在によるものだったと思う。


そう思えるくらい『すべてがFになる』と同様に今回も彼女は逸脱していた。


四季の話を聞いているだけで、圧倒される。それは犀川自身も語っている。

真賀田四季に直接あったことは、一度しかない。三年半まえの夏だった。
話をしたことは幾度とある。
だが、すべての機会を含めても、時間は僅か。
どれほどの言葉を交わしたというのか。
しかし、彼女の才能を垣間見るのには、充分だった。一分話すだけで、その力に圧倒される。誰だって、そうだろう。
完璧だ。
完璧な人間なのだ。
地球上のすべての人間の生命が、彼女一人と釣り合う。

(引用:有限と微小のパン P593/森博嗣)


四季の言葉の一つひとつが、重く響く。常人には理解できない思考回路。


メタ的に言えば、その圧倒的な存在感を放つ人物像を創っている森博嗣が異次元なのだが。



最後に明らかになる瀬戸千衣=真賀田四季は予想外すぎた...が、P64で儀同との会話で四季が「きゃあ」とか言ってるのは、まぁ想像ができない。ギャップがありすぎて。


演技の分野でも天才だったのか。それとももう一つの人格だったのか。


3.ストーリー全体について

「やられた...!」としか思えなかった。何一つとして予想できなかった。


どのように殺害したのか?どのように逃走したのか?などトリックを必死に考える訳だが...事件自体がトリックだったとは!!


まさに裏をとられた感じ。


事件もフェイクなら、記者も、テレビも警察すらもフェイクって...しかも警察は『すべてがFになる』で会っている顔見知り、気づけないってこれは。


犀川が語るラストの100ページほどが驚きの連続だった。まったく進まない事件の真相が一気に明らかになる様は見事。


すべてがフェイクだった、という真相には賛否両論ありそうだが、私は存分に楽しめた。このくらいぶっ飛んでいて、予想できない結末のほうが好き。

4ラスト

四季の居場所をつきとめた犀川の思考が、論理がすばらしい。これはしびれる。

長崎は那古野からどれくらいの距離だろう、と彼は考えた。六百キロくらいか......。だとすれば地球の円周の一.五パーセントになる。日本の経度では、その距離は、回転周囲のおおよそ二パーセントくらいか。一日の二パーセントは、0.四八時間で、つまり三十分くらいいになる。だから、那古野よりも、ここ長崎は、日の入りがそれだけ遅いわけだ。

(引用:有限と微小のパンP444/森博嗣)

犀川の思考でこの部分は何故か印象に残っていたが、これが伏線になっていたとは思いもしなかった。思わず震えた。


あと気になるのは、最後に四季といた男は誰だったのかな?


最後に

S&Mシリーズは主人公である犀川創平と西之園萌絵のファーストネームのイニシャル、「S」と「M」に由来するものだが、犀川の「S」と真賀田の「М」をとってS&Mシリーズでいいんじゃないですかね(すっとぼけ)


そう思えるほど二人のやりとりが印象に残った作品だった。

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