FGかふぇ

読書やらカフェ巡りが趣味。読んだ本、行ったカフェの紹介がメインのブログです。ごゆるりとどうぞ。

【小説】『羊と鋼の森』の感想を好き勝手に語る【宮下奈都】

天文学と音楽が世界の基礎だという説にうなずこうとしている。無数の星々の間からいくつかを抽出して星座とする。調律も似ている。世界に溶けている美しいものを掬い取る。その美しさをできるだけ損なわないよそっと取り出して、よく見えるようにする。

(引用:羊と鋼の森 P212/宮下奈都)



心洗われ、静かながらワクワクする宮下奈都の『羊と鋼の森』の感想を語っていく。ネタバレありなのでご注意を。


ネタバレなしの紹介はコチラから。
【『羊と鋼の森』あらすじ・紹介】


目次

あらすじ

高校生の時、偶然ピアノ調律師の板鳥と出会って以来、調律に魅せられた外村は、念願の調律師として働き始める。ひたすら音と向き合い、人と向き合う外村。個性豊かな先輩たちや双子の姉妹に囲まれながら、調律の森へと深く分け入っていく─。一人の青年が成長する姿を温かく静謐な筆致で描いた感動作。

(引用:「BOOK」データベース)


感想

──ピアノの魅力に引き込まれる

ピアノと、ピアノに命を吹き込む調律師の魅力が大いに語られていた。私はピアノは全然弾けないし、ましてや調律なんてまったく縁のないものだったけれども『羊と鋼の森』を読んで、あっという間にこの世界の魅力にひきこまれた。


主人公、外村の成長も物語の魅力の一部だが、私が一番引き込まれたのはピアノの魅力、そしてそのピアノとピアニストの魅力を存分に引き立てる調律の仕事についてだった。私は調律についての知識は、「乱れた音の音程を調節しなおすもの」くらいの認識だったが、調律の奥深い世界を知ることができた。


「相手が求める音を作る」
言うのは簡単だけど、とてつもなく難しいよね。明るい音、暗い音、大きい音、小さい音、硬い音、柔らかい音、響く音、鈍い音……。音程とはまた違う、感覚に近い部分。だから相手が本当に求めるものをくみ取る感性と、更にそれを再現する技術力…。


また、人にそれぞれ個性があるように、ピアノにも一つとして同じものはない。そして演奏者も違う、学生なのか、プロなのか。弾く場所は家庭の部屋なのか、コンサートのホールなのか。今の季節にあった調律は…。奥が深すぎる。


調律師とは、まさにピアノに命を吹き込む仕事だ。そんな奥深い世界を繊細に表現している『羊と鋼の森』が面白くないはずがない。



──主人公・外村の成長に心動かされる

真っ直ぐ、愚直に、時には迷いながらも調律師の道を進む外村に心動かされる。思わずグッときたのは、調律師を目指すと決めた双子の由仁の外村に向けた一言。

「すごいです、外村さん、私も早く調律の勉強をしたいです、外村さんの見習いになりたいです」
〈中略〉
「ううん、このピアノの音色が和音を引っ張ってます。和音がそれに乗って、楽しそうに、見たことない音を出してるんです」

(引用:羊と鋼の森 P230-231/宮下奈都)

外村本人は和音の実力がすごいから、と謙遜しているが、和音のピアノを一番聴いているであろう由仁の言葉に間違いはないんじゃないかな。


この人のようになりたい!という調律師に外村はなれている。外村が板鳥に憧れて調律師を目指したように、外村は憧れられるような調律師に成長していると思ったら込み上げてくるものがあった。



──言葉って美しい

言葉の美しさ、表現の美しさがこの物語を引き立てている。印象に残ったものをあげていく。

「さっきよりずいぶんはっきりしました」
「何がはっきりしたんでしょう」
「この音の景色が」
音の連れてくる景色がはっきりと浮かぶ。一連の作業を終えた今、その景色は、最初に弾いたときに見えた景色より格段に鮮やかになった。

(引用:羊と鋼の森 P10/宮下奈都)

"音の景色"
音の感想なのに、視覚の表現の景色っていうあたりいいよね。物語序盤で、まだピアノになんの関心も持ってなかった外村がこの感想を持てるって、ある種の予感めいたものを感じる。

「美しい」も「正しい」て同じように僕には新しい言葉だった。ピアノに出会うまで、美しいものに気づかずにいた。知らなかった、というのとは少し違う。僕はたくさん知っていた。ただ、知っていることに気づかずにいたのだ。
 その証拠に、ピアノに出会って以来、僕は記憶の中からいくつもの美しいものを発見した。
 たとえば、実家にいる頃ときどき祖母がつくってくれたミルク紅茶。小鍋で煮出した紅茶にミルクを足すと、大雨の後の濁った川みたいな色になる。鍋の底に魚を隠していそうな、あたたかいミルク紅茶。カップに注がれて渦を巻く液体にしばらく見惚れた。あれは美しかったと思う。

(引用:羊と鋼の森 P19/宮下奈都)

「明るく静かに澄んで懐かしい文体、少しは甘えるいるようでありながら、きびしく深いものを湛えている文体、夢のように美しいが現実のようにたしかな文体」

(引用:羊と鋼の森 P57/宮下奈都)

『羊と鋼の森』を読んだ方、おそらく全員が気をひかれた一文だと思う。板鳥が目指している音として答えた一文。実際には原民喜の小説の一文だ(調べたら『沙漠の花』という作品の一文らしい)。

 ホールでたくさんの人と聴く音楽と、できるだけ近くで演奏者の息づかいを感じながら聴く音楽は、比べるようなものでない。どちらがいいか、どちらがすぐれているか、という問題ではないのだ。どちらにも音楽のよろこびが宿っていて、手ざわりみたいなものが違う。朝日が昇ってくるときの世界の輝きと、夕日が沈むときの輝きに、優劣はつけられない。朝日も夕日も同じ太陽であるのに美しさの形が違う、ということではないだろうか。

(引用:羊と鋼の森 P147/宮下奈都)

例えが素晴らしすぎる。本書で1、2を争うくらい好きな表現かもしれない。


──『羊と鋼の森』

タイトルがもう秀逸
ハンマーのフェルトで"羊"
ハンマーが叩く弦で"鋼"
そして"羊"と"鋼"でできたピアノで"森"


一見すると意味がわからないが理解するとスッと胸に入ってきて、これ以上はないと思えるタイトルである。こういうタイトルが大好き。他の例をあげるとすれば『すべてがFになる』とかかな。


最後に

続きが読みたい、と切に思った。中途半端だからという事ではない。物語はしっかり区切りよく終わっている。でも、まだ彼らの歩む道を、歩んだ道を見てみたい。


外村の今後の活躍はもちろん。和音は一流のピアニストになれるのか。板鳥の調律師になったきっかけの話とか。まだまだ気になることがありすぎる。短編集とかでもかまわないから、続編でないかなぁ。


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【オススメ記事】






十二国記シリーズを読み終えたので感想を好き勝手に語る【小野不由美】



小野不由美の十二国記に出会ってはや1ヶ月。十二国記のおかげでこの1ヶ月は濃密すぎる読書生活をおくる事ができました。


現在刊行されている『魔性の子』〜『華胥の幽夢』まで読み終わったので、出会ったきっかけ、感想を好き勝手に語っていく。十二国記シリーズのネタバレありになっているのでご注意ください。
ネタバレなしの作品紹介はコチラ
【十二国記の全作品紹介】


目次

十二国記との出会い

Twitterが十二国記との出会いのきっかけでした。私がフォローしている方は読書好きがほとんどなので、本に関する情報がタイムラインを埋め尽くす訳なんですけど、ある日タイムラインが十二国記に染まったんです。


「ついに十二国記の新刊がでる!」と。
『十二国記』の文字はどこかで見たことあったかもしれませんが、そこまで気にとめたことがありませんでした。そこまで話題にあがるなら是非とも読んでみよう!!と思い読み始めたのですが、まさかここまでのめり込むとは思いませんでした。
毒にも薬にもならない私のTwitterはコチラ
よかったらのぞいてネ。
FG (@furikake_gohan_) / Twitter


読み始めてみて

「『魔性の子』から刊行順に読んで、でっかい鼠が出てくる所までがんばって読んで!!」

という曖昧な前情報だけで、とりあえず読み始めたのですが『魔性の子』を読み終わった後の素直な感想は…
「ファンタジーじゃねぇ!てか鼠もでてこねぇ!!」


把握していなかった私が完全に悪いのですが、『魔性の子』って所謂"エピソード0"の作品だったんですね、知らなかった…。ファンタジー作品を読むテンションで読み始めたので不意をつかれましたね。


『月の影 影の海』からはガッツリのファンタジーでわくわくしながら読んでたんですが、「でっかい鼠がでてくるまでがんばって」の意味がよく分かりました。まぁひたすらに救われない。『魔性の子』の広瀬しかり、陽子しかり、重くのしかかる現実に読み進めるのが辛いときもありました。


だからこそ楽俊の存在は安心します。全部読み切って魅力的なキャラはたくさんでてきましたけど、楽俊は1.2を争うくらい好きなキャラです。



完結はいつ…?

『魔性の子』を読み終わって、今後の展開を想像したときに、
①高里が神隠しにあっているときの話
②高里が蓬莱(日本)に帰ってきているときの話
③高里が十二国記の世界に帰ったあとの話

まぁこの①〜③は触れられるだろうなぁと漠然と予想はしていた訳ですよ。それで私が十二国記シリーズに手を出して『魔性の子』を読んだのが2018年12月。『魔性の子』が刊行されたのが1991年。もう27年前だし、この①〜③くらいはすでに物語に登場していて、その後どんな展開になっているのかなぁと考えていました。


それが蓋を開けてみたらビックリ、十二国記本編である最新刊『黄昏の岸 暁の天』で、まだ②までしかいってないという事実!!


まぁしょうがないですよね、十二の国あって、それぞれの国でそれぞれの物語が展開されていってる訳ですから、進みが遅いのは致し方ないです。


とはいえ、完結はいったいいつになるのでしょうか…?それとどのようにこの物語が締めくくられるのか気になるところです。『黄昏の岸 暁の天』の終わり方を見る限り、泰麒たちによる驍宗の捜索を描いた物語は間違いなくあると思います。


それと、個人的に陽子がメインの物語が好きなので慶国の成長と陽子の成長を描いた物語はまだまだ読みたいところ。『月の影 影の海』では陽子の決意と成長を描き、そして『風の万里 黎明の空』でようやく国としてのスタートを切った。流石にまだまだ終わらないだろうと思います。


ただ、短編集『華胥の幽夢』の『帰山』では、利広がこんなことを言っていました。

「そう──勢いがあるね、今度の慶は。いい感じた」
利広は微笑む。慶の端々には、いまだに強く王に対する不信感が残っている。だが、王都に近づけば近づくほど、民の顔は生彩を帯びてくる。王の膝元から希望が広がり始めている証拠だ。なにしろこれほど波乱を繰り返してきた国だから、臣下の硬直は岩のように堅固だが、それを吹き飛ばすだけの勢いを感じる。たぶん慶は最初の十年を乗り越えるだろう。それもかなり良い形で。

(引用:華胥の幽夢 P335/小野不由美)

なので次に陽子がメインとなるストーリーは十年後が舞台になるのかなと思ったり思わなかったり。


慶や戴の今後の展開が気になるのは間違いないですが、加えてまだ全然登場していない国があることを考えると…まだまだ十二国記の世界を堪能できそうですね…。問題はそれがいつになるか?ということ。



最後に

こんなに夢中になって読める本と出会えたのは久しぶりでした。本当に夢中になれる本と出会ってしまうと、読み終わるのが惜しくなってしまいます。読了後の余韻を楽しみたいという気持ちよりも、その世界にずっと浸っていたい気持ちが勝ってしまうんですよね。


待ちに待っている十二国記新刊は2019年中にはでるらしいので、シリーズを読み返しながら首を長くして待とうと思います。

──追記(2019.10.18)

シリーズ最新作『白銀の墟 黒の月』〈一、ニ〉読みました。

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十二国記『華胥の幽夢』の感想を好き勝手に語る【小野不由美】



陽子は鳥を、書卓の脇にある棚の上に留まらせた。そっと翼を撫でてやる。
鳥は語る。この世界で最初に得た友人の言葉を。──彼の声で。

(引用:華胥の幽夢 P166/小野不由美)

十二国記の短編集『華胥の幽夢』の感想を語っていく。ネタバレありなので未読の方はご注意を。

ネタバレなしの作品紹介はコチラ
【十二国記の全作品紹介】


目次

感想

──冬栄

泰麒がひたすらに愛らしい話。廉王と泰麒のやりとりが和む。廉王みたいな平和な王もいるんだね。漣の国が安定していて平和だったからこそ、廉王みたいな人物が選ばれたんだろうなと思う。


いたずらに改革などを行って国を乱さない。ただ、ゆったりと見守り続けるような王。緊張感が漂っている戴国とは真逆の印象。


ただひとつ疑問があって、何故、ただの農夫が王に選ばれたのか?こんな性格の漣王が昇山するとは思えないし、なにか特別に理由で王に選ばれたとのかなと思ったり思わなかったり。


自分になにができるのだろうと葛藤を抱える泰麒に漣王が助言をくれるのだが、その答えがまた…いい。「動き廻って何かをするだけが仕事じゃない、見守るのも大切な仕事」泰麒にもできる…いや、泰麒にしかできない大切な役割。


そして驍宗自身も泰麒のその役割をしっかり把握していて、やっぱり驍宗は只者ではないなぁと改めて思った。だからこそ、『黄昏の岸 暁の天』で語られたように、そんか傑物である驍宗の身に何が起こったか、これから物語がどう展開していくのか気になるところだ。


──乗月

『風の万里 黎明の空』で出てきた芳国・月渓の葛藤を描いた物語。


峯王・仲韃は、祥瓊の父親で月渓に討たれた王。『風の万里 黎明の空』を読んだだけでは、民に権を振りかざす暴君のような印象しか持っていなかったが、視点が変わると受ける印象がだいぶ変わる。



タイトル『乗月』の意味が染みた。

「仮朝と偽朝と、二つしか呼び名がないのは不便です。王が玉座にある朝を日陽の朝だとすれば、王のいない朝は月陰の朝じゃないかな。月に乗じて暁を待つ──。」

(引用:華胥の幽夢 P115/小野不由美)


また、恭王・珠晶もチラッと出てくるが、彼女はでてくるたびに評価があがっていく。『風の万里 黎明の空』では、嫌な印象しかなかったが、『図南の翼』で大きく見方が変わって、今回での対応もまた…器が大きい。

──書簡

陽子と楽俊のやり取りは相変わらずで安心する。お互いに信頼してるなぁって。王になって立場が変わってしまった陽子には、気兼ねなく話すことができる楽俊の存在は尚更大きくなったんじゃないかな。


麒麟と王のコンビがなんだかんだ好き。それは景麒と陽子だけじゃなくて、泰麒と驍宗、延麒と尚隆しかり。

そうだな──でも、実を言えば、あまり優しくされると思い上がってしまいそうな気がするから、景麒くらいが私には丁度いいのかも。それでなくても、大勢の人間が頭を下げてくるわけだからね。うん、わりの上手くやれてるんじゃないかな。たはだ、あの堅苦しいところさえなかったら、もっと上手くやっていけそうな気がするんだけど。

(引用:華胥の幽夢 P142-143/小野不由美)


あとは元号の『赤楽』。『月の影 影の海』では気付かなかったけど、たしかにラストで………


──華胥

才国の失道を描いた物語。今までも失道やそれに近いものが書かれた物語はあったが、『華胥』ほど詳しく国が傾いていく様子が描いているのは初めてだったんじゃないかな。


国がぎりぎりの状態だからセリフの一つひとつが重いのだが、その中でも特に刺さったセリフをあげておく。

「ああ、そんな貌をなさらないでください。姉上のそれは、蔑むようなことじゃないです。道なんか投げ捨てて、奏でやり直したいと思うのは、人として当然のことですよ。誘惑を感じないはずがない。それを抑えて、ちゃんと道を守っていられるから、姉上は立派だと思うんです。最初から誘惑を感じない人が道を守っていられるのは当然のことで、立派でも何でもないんです。罪に誘惑を感じる人が罪を断固として遠ざけていられる。そのことのほうが何十倍も立派なことなんですよ。──でしょう?」

(引用:華胥の幽夢 P266/小野不由美)

「……私は、今になって、母上の仰っていたことが、ちょっぴりだけど分かるような気がします。責めるのは容易い。非難することは誰にでもできることです。でもただ責めるで正しい道を教えてあげられないのなら、それは何も生まない。正すことは、何かを成す事だけど、非難することは何かを成す事じゃないんだって」

(引用:華胥の幽夢 P286/小野不由美)


──帰山

──なぜ王朝は死ぬのか、と利広は思う。天意を、得て立った王が、道を失うのはなぜなのだろう。王は本当に自信が道を踏み謝ったことに気づかないものなのだろうか。気づきもしないのだとしたら、最初から道の何たるかが分かっていなかったということなのでは。そんな者が天意を得ることなどあるのだろうか。ないとすれば、王は必ず道を知っているのだ。にも関わらず踏み謝る。違うと分かっている道に踏み込んでしまう瞬間がある。

(引用:華胥の幽夢 P321/小野不由美)


私が十二国記を読んでいて疑問に思っていた点がここに詰まっている。長く続いている国ならまだしも、ほんの数年で滅んでいく国もいくつかある。では、天意とは一体何なんだろうと思わざるを得ない。600年生き、多くの国の衰退を見てきた利広ですらわからないんだから、わかる人なんていないのかな。


あと、十二国記のwiki見てて驚いたんだが、利広と話してた雁国の風漢って男、尚隆だったのか!!全然気づかなかった…。てっきり雁国が各国の見回りのために旅をしている男かと思っていたからビックリだった。確かに答えを知ってしまったら、もう尚隆としか思えないけど、なんで気づけなかったのか…。



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【オススメ記事】






【映画】『マスカレード・ホテル』の感想&原作と映画の違い【東野圭吾】


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東野圭吾原作の映画『マスカレード・ホテル』を見てきた。『マスカレード・ホテル』は私が東野圭吾にはまったきっかけの作品であり、大好きな作品だったので、映画化されたのは、すごく、すごくうれしかった。


絶対に映像映えする作品だと思っていたので映画化されると知ったときは「ついにきたか!!」と心が踊った。

さて、感想はネタバレありなのでご注意を。『マスカレード・ホテル』ってどんな作品?と知りたい方はコチラからどうぞ。

【マスカレードシリーズをまとめて紹介】


目次

感想

 
映画が始まって序盤にタイトルが出るじゃないですか。そのタイトル"マスカレード・ホテル"の文字とまだ刑事の風貌の新田と何も知らない山岸、最初の2ショットがとても絵になっていて、そこから一気に引き込まれ、あっという間の2時間だった。


原作には、ほぼほぼ忠実に描かれていた。登場人物は減らさずに、省ける所をなるべく省いたといった印象。そのため連続殺人事件の詳細が分かりにくいのではないかと思った。私は原作を知っていたから問題なく観れたが、映画が『マスカレード・ホテル』の初見だと理解しきれないのではないだろうか。


逆に、新田と山岸の活躍をひたすらに追っていたという印象。文庫本で500ページを超える分量がある原作を思えば、最低限の内容は盛り込みつつ、よく映画の枠に納めたなぁと思う。原作ファンの私も満足な内容だった。


新田はフロントでの潜入捜査だったので必然的にホテルの入り口・ロビー・フロントのカットが多かった。私のイメージはもっとシンプルなイメージだったけど、だいぶごちゃごちゃしたロビーだったなぁと(あと流石に狭い気が…)。ホテルのきらびやかな表舞台とは違ったホテルの裏側を見れるのも面白いよね。


原作で感じた『マスカレード・ホテル』の面白い所は、犯人が最後までわからないところと、最悪の印象で始まる新田と山岸が、次第にお互いをプロとして認めあっていくところだと思っている。
 

この2点が映画でもうまく表現されていたと思う。特に原作でも印象に残っていたのがこのセリフ。

「ホテルマンはお客様の素顔を想像しつつも、その仮面を尊重しなければなりません。決して、剥がそうと思ってはなりません。ある意味お客様は、仮面舞踏会を楽しむためにホテルに来ておられるのですから」

(引用:マスカレード・ホテル P410/東野圭吾)

フロントに立ってロビーを眺めつつ二人が背中で語ってるのが見ていて、信頼関係を感じられた。


ラストの仮面舞踏会の幻想のようなシーンはついつい『マスカレード・ナイト』の仮面舞踏会の様子を想像してしまって、はやくも続編でもこの二人の活躍が見たいなぁと思った。もしやるとしたら犯人役は大変だろうなぁと思ったり思わなかったり。


あとはエンディングまで素敵だった。エンドロールの両脇を絵で飾っていて、またその絵が芸術的なタッチかつ、物語の見せ場見せ場を描いているもんだから、最後の最後まで飽きることなる映画を堪能することができた。


原作と映画の違い

感想部分でも述べたが、原作にかなり忠実に描かれていた。原作でホテルを訪れる客は全員、映画にも登場していた。その分、客一人ひとりのエピソードはだいぶ省略された形となっている。


カットされている部分をあげていくときりがないので、原作と映画の相違点を覚えている範囲で書いているので抜けている部分もあると思うがご了承ください。


──政治評論家と和風美人

客である政治評論家と着物の美人がホテルに訪れたとき、原作では山岸の勘違いがあって一波乱あったが映画ではトラブルもなくスムーズに進んでいる。

──ペーパーウェイト

山岸が犯人に捕まり、部屋に閉じ込められたてとき、新田が押したインターホンに二人はバスルームに隠れる。その時、新田は二人に気づいていないふりをする訳だが、山岸と犯人がいることに気付いた理由が原作と映画では違っている。


映画では、ホテルコルテシアのロゴが入ったペーパーウェイトが気付いたきっかけだった。山岸がいつも向きと位置を直していたペーパーウェイト、それが所定の位置ではなく乱れていた。


それに対して原作では以下の通りである。

「ベットの乱れに気づかないほど鈍感じゃありません。それに何より、入った瞬間にあなたの気配を感じました」

(引用:マスカレード・ホテル P503/東野圭吾)


映画では、何度もペーパーウェイトを映して注目をひいていたし予想はできたが、演出的には映画のほうが好き。


──ラストシーン

事件解決後、山岸と新田がホテルのレストランで乾杯をして終了のわけだが、原作は夜なのに対して、映画では外がまだ明るかった。(細かい事を言えば原作はシャンパンなのに、映画は赤ワイン?だった)


何故こんな細かいとこまで覚えているかというと、原作のラスト一行が好きなんですよ。

かちんと合わせたグラスに、東京の夜が映っていた。

(引用:マスカレード・ホテル P515/東野圭吾)

なのでそこの部分が映画ではどう表現されているかが気になっていたのだが…まさかの夜じゃないとは…。

──仮面舞踏会

事件解決後、コルテシアのロビーで新田と山岸が出会うとき、新田が仮面舞踏会のような幻想をみる。そのあとの長澤まさみがまた美しくて…映画ならではの演出だった。

最後に

キャストが発表されたときに、新田=キムタクと聞いてイメージがわかなかったが、蓋をあけてみればいいキャスティングだったと思う。刑事の風貌のキムタクがカッコ良かったですねー。序盤しか見れないけど。


エンドロールでは明石家さんまの名前があったけど、私は全然気づかなかった…。どこにいたのかすごい気になる…。もしこれから見る方がいたら探してみてください。



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十二国記『風の万里 黎明の空』の感想を好き勝手に語る【小野不由美】



『月の影 影の海』で活躍した陽子のその後を描いた物語、十二国記シリーズ『風の万里 黎明の空』の感想を語っていく。

ネタバレなしの作品紹介はコチラ
【十二国記の全作品紹介】


目次

感想

──良い国とは?良い王とは?

十二国記の今まで読んできたシリーズは、総じて言えば「国作り」が基礎になっている物語だと思う。


今回の『風の万里 黎明の空』では、陽子の目指す「良い国」とはなんなのか?物語序盤に陽子が己に投げた疑問に対して、真っ向から向き合い、悩み、現実を見つめながら答えを出している。だからこそ、最後に陽子が出した答えには痺れるのだろう。


『月の影 影の海』で陽子は景麒に選ばれて景王になったわけだが、その時点では何故、陽子が王に選ばれたのかよくわならなかった。


というのも、延王・尚隆は蓬莱で一国を背負っていた経験があるし、泰王・驍宗は、禁軍の将軍で人望が厚く、知略に優れた武将であったりするのに対して陽子はあまりにも普通すぎた。


なぜ陽子は王に選ばれたのか?
その疑問も『風の万里 黎明の空』を読んでいて、朧気ながら分かった気がする。

  

「私は蓬莱で人に嫌われることが怖かった。終始人の顔色を窺って、誰の気にも入るよう無理な綱渡りをしていたんだ。──今とどう違う?愚王と呼ばれることが怖い。溜息をつかれることが怖い。諸官の、民の、景麒の顔色を窺って、誰からも頷いてもらえるよう、無理をしている」

(引用:風の万里 黎明の空〈上〉P/166小野不由美)

陽子自身が語っているように、弱さは確かにある。だが、弱さに目を背けず正面から向き合い、国の現状を把握しようとしたり、この世界について理解を深めようとする姿勢。それは陽子の前の予王にはなかった強さなのは間違いない。


蓬莱生まれだからこそ、この国の考えに縛られない。周りから見たら異端だろうが、荒廃が進んだ慶国を導くのは"普通"では務まらない。慶を新しい国に変えるため、新しい風を吹かせるためには、今まであったこの世界の常識を覆せる陽子のような人物が適任だったのだろう。



──景麒のセリフにぐっときたのは私だけじゃないはず

先程も述べたように、王になってからも苦悩が絶えない陽子。世界の様子もなにもかもわからない、同じ蓬莱から来た延王とは違い国を納めた経験などあるはずもないただの女子高生。


だからこそ、臣下に任せっきりでなく、街に下りようと、陽子が決心したときの景麒のセリフはしみた。

少なくとも陽子は予王と違い、己と闘うことを知っている。予王と同じく、官に畏縮して玉座を疎んじる気配があったが、陽子はそれを己で自覚した。それを乗り越えるために自ら動き始めた。──この差は大きい。
「──班渠」
景麒は己の使令を呼ぶ。はい、と足元に落ちた影の中から答えがあった。
「主上におつきして、お守りせよ。決して危険のないように。──あの方は慶にとってかけがえのない方なのだから」

(引用:風の万里 黎明の空〈上〉P169-170/小野不由美)


「あの方は慶にとってかけがえのない方なのだから」
あの…あの景麒がこれを言ってくれるのか…と。


麒麟の苦悩は、泰麒や延麒の物語で痛いほど感じてきた。景麒も不安だったことは容易に想像がつく。
なぜ、なにも知らない蓬莱の少女が王なのか?
なぜ、また女王なのか?
彼女に国を背負えるのか?


自分が選んだ王が道を外しているのを目の当たりにしている景麒は陽子に不安があったことは間違いないと思う。私は景麒がそう思っているだろうなぁと予想していたからこそ、このセリフを見たときに色んな意味で泣きそうになった。

──ラストシーン

身分を隠し民の反乱に参加して活躍する陽子。
そのような展開で読者が期待している『お約束のシーン』といえば「そ、そんなあんたが王だったのか…!?」…と身分を明かすシーンだと思っているのだが、王にしか仕えない麒麟に騎乗し、王直属の禁軍に勅命を下すこれ以上ない登場…。


驚く民と兵の姿。そして威風堂々の陽子の姿。たまらない。このスカッとするラストシーンが好きすぎて何回でも読み返せてしまう。

最後に

『魔性の子』
『月の影 影の海』
『風の海 迷宮の岸』
『東の海神 西の滄海』
と十二国記シリーズを順当に読み進めているわけだが今回読んだ『風の万里 黎明の空』は、今までの読んだシリーズの中で一番面白かった。


上下巻あるにも関わらず、夢中になりすぎて2日で読破してしまった。とくにラストは、お約束の展開と陽子のカッコ良さにしびれ、帰宅途中の電車の中でニヤニヤしながら読んでいた。


一心不乱に本に目を落としニヤニヤする男の姿に、周りの乗客からはさぞ不気味に映ったことだろう。



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【オススメ記事】






十二国記『東の海神 西の滄海』の感想を好き勝手に語る【小野不由美】


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嘘でもいいから賢帝だと信じたい。──そこにつけこむ」
「お前、王より詐欺師のほうが向いてないか?」

(引用:東の海神 西の滄海 P158-159/小野不由美)


500年続く雁国の延王・尚隆と麒麟・六太の始まりの物語、十二国記シリーズの『東の海神 西の滄海』の感想を語っていく。ネタバレありなので未読の方はご注意を。

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目次

感想

このシリーズはとにかく読了後の爽快感がいい。前に読んだ『月の影 影の海』然り『風の海 迷宮の岸』然り、物語の終わりが何か新しい事が始まるような終わり方な気がする。


もちろん物語が終わってしまう名残惜しさはあるが、それ以上に、彼ら、彼女たちのこれからの物語に期待する気持ちのほうが大きくなるのでわくわくした気持ちのまま本を閉じることができる。


尚隆と六太は、500年間ずっと馬鹿みたいなやりとりを繰り返しながら国を納めていったんだろうなぁ。仲の良い兄弟みたいで羨ましい。

尚隆がとにかくカッコイイ

不真面目なように見えて、実は考えを巡らせて最善の一手を打つ尚隆が無茶苦茶だがとにかくカッコイイ。


臣下たちにボロボロに言われながらも、とても王とは思えない軽いやり取り、気取ってないところに好意がいくのかな。

「……おれ、ときどきお前って正真正銘のバカ殿なんじゃないかと思う」
「ほう。ときどきか?」
「うん。常日頃は単なる大ボケ野郎だと思ってるからな」

(引用:東の海神 西の滄海 P63/小野不由美)


尚隆の強さを支えるのは、過去の一度すべてを失った経験と国を、民を守り抜こうとする意地。一度、大きな失敗をしている尚隆と、過ちを怖れている斡由とじゃ器が違う。結果は一目瞭然だったんだよなぁ

「生き恥晒して落ち延びたはなぜだ!俺は一度すでに託された国を亡くした!民に殉じて死んでしまえばよかったものを、それをしなかったのは、まだ託される国があると聞いたからだ!」

(引用:東の海神 西の滄海 P271/小野不由美)


普通に生きていれば巡り合うはずのない二度目のチャンスを麒麟に選ばれた事によって得られた尚隆の意地を感じるセリフ。


普段は馬鹿な王として振舞ってはいるものの、尚隆のラストのセリフは一言ひとことがホント心に刺さる。

出会いで人は変わる

生まれた環境もそうだが、生きていく環境と、特に出会った人によって人生は大きく変わってしまうのだな、と六太と更夜を見ていると改めて考えさせられた。


六太と更夜、口減らしのために捨てられた哀れな境遇をもつ二人。運命の分かれ道はそれぞれ仕えた人物の違い。


更夜がどんどん暗い道に墜ちていく様子が哀れすぎる…。もしも最初に斡由ではなく尚隆に会っていれば…ってついつい思ってしまう。




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『巨人たちの星』の感想を好き勝手に語る【ジェイムズ・P・ホーガン】


「夢を描くことがなくなったのだね」ダンチェッカーは悲しげに頭をふった。「それは悲劇だ。わたしたちが今当たり前と思っていることはすべて、誰かが突拍子もない夢を描いたところから始まっているのだからね」

(引用:巨人たちの星 P259/J・P・ホーガン)


ジェイムズ・P・ホーガンの『星を継ぐもの』シリーズの第三作目『巨人たちの星』の感想を語っていく。


『巨人たちの星』は『星を継ぐもの』、『ガニメデの優しい巨人』に次ぐ作品なので未読の方は『星を継ぐもの』から読むことをオススメする。


『星を継ぐもの』あらすじ・紹介

前作『ガニメデの優しい巨人』の感想

目次

感想

『巨人たちの星』は、今までの作品『星を継ぐもの』や『ガニメデの優しい巨人』とはちょっと毛並みが違う印象を受けた。


それは宇宙への探求をひたすらに描いていた過去の二作とは違い、『巨人たちの星』は政治や経済、外交に対しても目を向けられて描かれているからだろう。


ネットの感想をチラッと見ると、「『星を継ぐもの』『ガニメデの優しい巨人』は面白いが、『巨人たちの星』はそうでもない」と言った意見がチラホラと見受けられる。


それは、政治・経済・外交などに対しても風呂敷を広げたことが、この好き嫌いの分かれ目なのかな、と思ったり思わなかったり。

すべては異星人の手の上で

私が一番面白いと思った所は、現代社会に蔓延る謎や、過去の地球人の歴史と異星人の侵略をうまく溶け込ませて物語が描かれている点だ。


過去長い間、地球人は呪術や無力な偶像などの迷信を信じ非科学的な精神構造を持っていた。なぜ、合理主義的な生き方ができていなかったのか?


なぜ、19世紀のヨーロッパで科学や理性の発達を妨害するような、心霊教やオカルトなど荒唐無稽な信仰や運動が蔓延したのか?


なぜ、20世紀に入っても反核運動など、科学技術を否定し、経済成長に反対する大衆運動が盛り上がったのか?


現実の世界であったこれらの出来事がすべて、地球人が紆余曲折を経て作った歴史ではなく、異星人の侵略のために作っていた歴史であったという衝撃の事実だったと明かされたときは、もう圧巻だった。


「非科学的な迷信を持ち、合理主義的な生き方ができていなった」それは、異星人が文明初期の地球人に迷信を刷り込んでいたから。


「なぜ、近代になっても非科学的な思考が抜けずに心霊やオカルトが信じられているのか」それは、真の科学が発達しないようにするための異星人の妨害だったから。


我々人類が抱える矛盾した性質を、ホーガンが独自の視点で切り開いている様子は見事の一言だった。

どんでん返しと伏線回収

地球人たちの宿敵ジュヴレン人たちを追い詰めていく様子も読んでいてスカッとしたが、それだけで終わらないのがやはりこのシリーズ。


衝撃なラストと共にしっかりと『星を継ぐもの』『ガニメデの優しい巨人』で残された伏線を回収していくのだからたまらない。


なぜ、ミネルヴァには対立する二つの集団がでてきてしまったのか。セリアン人が地球に渡った真実など、すべてを把握しているテューリアンとの接触で三作すべての謎が明らかになっていた。


ハントたちが導きだしていた答え(月が地球の衛星になったおかげでセリアン人が地球に渡ることができたこと)で納得していたので真実が明かされたときはなるほどなぁと驚かされた。確かに木星から地球に渡るまで生存できていたとは今思えば考えにくいよな。


今までに張られたミスリードもしっかり改め『星を継ぐもの』とかの答えが覆されしっかりと物語が完結されたと思う。


想像力

SFって未知・空想の技術力を堪能できるところも魅力の一つかなと思う。その点で言ってもこのシリーズは面白い。


『ガニメデの優しい巨人』で出てきた重力工学もなかなかにぶっ飛んでいて面白かったけど、今回登場した技術もそれ以上にぶっ飛んでいて感心した。


『巨人たちの星』の初版が1983年なので今から約35年前ということだけど、この想像力は素直に凄まじいなぁと思う。


五感すべてを伝送させてどんなに離れた所にいても、一瞬のうちに任意の場所に行くことができる。なんだか現代のオンラインゲームみたいだなぁと思うところもある。


「人間の想像し得ることは実現することができる」みたいな格言は聞いたことがあるけど、こんなぶっ飛んた未来もいうかは実現できるのかな?


できるのならそこまで生きてみたいものだ。


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