FGかふぇ

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『ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人』の感想を好き勝手に語る【東野圭吾】



「自分の手でって、そんなことできる?叔父さんは捜査のプロじゃないでしょ?」
「もちろんそうだが、できないときめつける理由は何もない。警察にはできないが、俺にはできるということもあるしな」

(引用:ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人 P95/東野圭吾)


東野圭吾最新作『ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人』の感想を語っていく。東野圭吾をひさしぶりに読んだが、安定のテンポの良さと読みやすさでサクサク読めた。


著者の筆のはやさには驚くばかりで、はやくもコロナの時代背景を反映させているこの作品は、世の中に広がる不安や不透明な将来を投影していてるとともに、タイムリーな話題のためどこか本当にあった話のようにも感じるリアルさがあった。


以下ネタバレありなので未読の方はコチラから。
【『ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人』あらすじ・紹介】



目次

感想

ストーリーなど

率直に感想を言って面白かったな。個人的には好きな部類。ガリレオシリーズや加賀恭一郎シリーズなど様々な作品がある東野圭吾だが、マスカレードシリーズが好きな人は今回の『ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人』は好きそうな印象。かくいう私はマスカレードシリーズ大好き。


探偵役の武史がひたすらにカッコいい。マジシャンらしい手先の器用さ、観察力、話術。表の顔と裏の顔のギャップがいい。そしてなにより警察を出し抜く様子が見てて楽しい。


仮にこのシリーズの続編がでるのなら彼の過去編の話(アメリカでの話)とかがきたら面白そう。というのも武史が過去を語ろうとしなかった場面があった。

さすがだね、といってみた。「さすがはサムライ──」
がんと大きな音をたて、武史がビールのジョッキを乱暴に置き、真世を睨めつけていた。
「その名を口にするな」
「どうして?」
「どうしてもだ。口が裂けてもいうな」
真世は首をすくめた。
サムライ・ゼン──この叔父がマジシャンだった頃の芸名だ。

(引用:ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人 P78)


この場面の他にも、マジシャンとしてアメリカで成功していたと推測されるのに突然帰国してバーを始めたりと本作では説明しきれていない箇所もあるので続編でこのあたりにスポットがあてられるのかな(たぶん説明されてなかったはず……見逃してたら教えていただけると助かる)。


あともう一つ、明らかになっていなさそうなのは最後の真世に送られてきているメールの件。親切心を装った真世たちの結婚を妬んだ誰かの嫌がらせだろうとの推測だが、誰の仕業なのか明確に語られてはいなかった。再読する際に注意して読んでみようと思うが、次作への伏線なのだろうか?


広がるコロナと大人気アニメ

冒頭で述べたようにコロナの時代背景をいち早く取り入れていて、今の時代のリアルさを感じる。それとともに物語の鍵に爆発的ヒットのアニメの存在があるのも昨今の世の中と似ている部分がある。


作中では幻脳ラビリンスなるアニメが大ヒットしているが、どうしても今ブームである鬼滅の刃が頭をよぎる。内容はまるっきり違うが、原作は漫画で、アニメとなって大ブームを起こすという流れは同じである。今後はこんな時事ネタ(コロナとか)を取り入れた小説も増えてくるのかな。


最後に

小説の中で、自分が読んだことある小説がでてくると嬉しくなるよね。『オデッセイ』っていう映画の話がチラッとでてきたけど、原作の『火星の人』おもしろいからオススメ。ハードSF好きな人はハマるはず。


【オススメ】