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『彼女は一人で歩くのか?』感想と考察を好き勝手に語る【森博嗣】


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「もしかして、生きているのですか?」「生きているかどうかは、問題ではないのでは?」シモダは言った。
その意味は、よく理解できる。今の時代、生きていることの定義が非常に曖昧だ。人は死なないし、人工知能は、既に人間の能力をはるかに超えている。実際に言葉にするものは少ないが、世界を支配しているのは、その種の完璧な知能であることは勇気のない事実だ。

(引用:彼女は一人で歩くのか? P250/森博嗣)


森博嗣の『彼女は一人で歩くのか?』を読んだので感想と考察を語っていく。ネタバレありなのでご注意を。


目次

感想

今より約2世紀後の世界で、人間と人間そっくりの人工人間『ウォーカロン』がいる世界の物語。シリーズ作品でまだまだ続きがあるらしいので続きは近いうちに読んでいきたい。


このシリーズだけでなく、他の森博嗣作品も読んでいる方なら誰でも知っているであろう”あの人”がでてきたのは完全に予想外だった。興奮したね。


著者はミステリー作家のイメージだったが、SF寄りのこの作品も新鮮で面白かった。

──未来の世界が印象的

やっぱり個人的な一番の衝撃はマガタ博士の登場。『マガタ』とカタカナ表記だが、ほぼ間違いなく他シリーズに登場する真賀田四季と考えていいと思う。彼女に限らず登場人物の名前がすべてカタカナなのは何か意味があるのかな?ただ単に未来の世界観を示しているだけなのかな?


『ミチル』が登場したとき、最初は気づかなかったけど途中から、「そういえば『すべてがFになる』ででてきてたよなぁ」ぼんやりと思ってたら、その直後に圧倒的な語り口の女性がでてきて、これはもしや…ってなった。終盤にはきっちり『マガタ博士』と名前を出してくれてたしね。


この物語で彼女はどんな役割を果たすのか…。今後のシリーズでもでてくるだろうから今後の登場が楽しみ。


──『彼女』とは誰を指すのか?タイトルの意味は?

タイトル『彼女は一人で歩くのか』の”彼女”とは誰の事を指すのだろうか。またタイトルにはどのような意図が込められているのだろうか。


タイトルの副題は『Does She Walk Alone?』で、直訳すれば『彼女は一人で歩くのか?』とタイトル通りになる。


しかし、物語に登場するウォーカロンは
『Walk-Alone』と書かれている。なのでタイトルのもう一つの意味は『彼女はウォーカロンなのか?』というもう一つの意味を持つと考えられる。


さてここで、主要な女性登場人物でウォーカロンなのは誰だろうか?可能性がある人物をあげていくと
①ウグイ
②マナミ
③マガタ博士
④ミチル
の4人に絞られる。


①ウグイ
ハギリのボディガードのウグイは人間だと思われる。下記はウグイのセリフである。

「私も先生も、比較的新しい人間なのですね」

(引用:彼女は一人で歩くのか? P190)



②マナミ
物語途中からハギリの助手を務めはじめたマナミ。彼女はハギリが人間と推測していた。

一つ収穫があった。助手のマナミが人間だとわかった。これは僕の判定だが、しかし、僕はこの分野の世界的権威なのだから、たぶんまちがいない。

(引用:彼女は一人で歩くのか? P103)



③マガタ博士
マガタ博士は人間かウォーカロンかわからない。

「私は、ウォーカロンです」
「嘘だ。そんなはずはない」
「では、人間です。先生の判断に従いましょう」

(引用:彼女は一人で歩くのか? P180)


ここではマガタ博士は曖昧な様子だったが、ラストではウォーカロンではないか?という推測がなされている。

「おそらく、本人ではない。本人の分身というか、ウォーカロンです。その科学者は、ウォーカロンの生みの親でもあります。歴史的な人物です」

(引用:彼女は一人で歩くのか?P249)



④ミチル
ミチルは自らをウォーカロンと言っていた。

「スミレさんもウォーカロンと言ったけれど、ほかに、誰がウォーカロンなのかな?」
「私」
「そうなんだ。それは、誰に教えてもらったの?」
「うーん、わからない」

しかし、自らをウォーカロンと名乗ってはいるが、グレーな箇所がいくつかある。一つは彼女が普通のウォーカロンとは違い、最新型らしいという点(ここだけならウォーカロンという点には変わりないが)、もう一つはハギリの判断が曖昧な点だ。

「ミチルは、本当にウォーカロンなのですか?」僕は変な質問をしてしまった。
「面白い……」彼女はそこでくすっと笑った。「面白い質問だわ。それは、先生がもうご存知のことです」
「私は、人間だと判断しました」
「そう、それが、ミチルが人間だという証拠です」

(引用:彼女は一人で歩くのか? P179)


以上の点よりミチルはウォーカロンか人間かは現段階ではわからない。



結果をまとめると
①ウグイ、②マナミは人間
③マガタ博士、④ミチルはどちらかわからない

と考えられる。


詳細は後々の物語で明らかになってくるのかな?
個人的な根拠のない予想だと、ミチルは人間でマガタ博士がウォーカロンじゃないかなぁと思う。

つまりタイトルが指すのはマガタ博士。


──『魔法』とはなんなのだろうか

物語で登場する『魔法』とはなんなのだろうか?

「黒い魔法を知っている?」
「そんなものは怖くないさ」と熊は言いました。
「白い魔法を知っている?」少女は続けて尋ねました。
「そんなものはなんでもないさ」と熊は笑います。
「じゃあ、赤い魔法を知っている?」
それを聞いた熊は、そのまま動かなくなりました。
そして、砂が崩れるように、地面に落ち、散ってしまったのです。

(引用:彼女は一人で歩くのか?P140)

初めて魔法について出てきた場面。唐突に現れる意味深な描写である。

「黒い魔法を知っているか?」僕はきいた。
「何?」
「赤い魔法を知っているか?」続けてそう尋ねた。
何も起こらなかった。
僕は、数秒待った。男たちは動かない。

(引用:彼女は一人で歩くのか?P237)

そして上記がハギリがウォーカロンに襲われた際の描写。『赤の魔法を知っているか?』でウォーカロンの動きが止まっている。

話し合う時間は、いくらでもあるのではないか、とそう思うのである。
もしかしたら、その時間を気づかせることが、〈赤い魔法〉なのかもしれない。

(引用:彼女は一人で歩くのか?P253)

赤の魔法はウォーカロンの停止のスイッチのようなものなのかなと思う。
なので、P253はウォーカロンを停止させて人類の今後を考えろってことかな?


長くなるので省略しているがP252-253でハギリが考えを述べているので見てみてほしい。


黒の魔法はウォーカロンに対して、反応がなかった。白の魔法はP140のおとぎ話にしかでていない。単純に推測するなら停止があるなら動き出す魔法もありそう。白か黒の魔法がそれにあたるのかな。

──印象に残ったセリフなど

「それは、肉体のあらゆる部位に対しても言われてきた。生物は複雑なものだ。これを作ることができるのは神のみだ、とね。だけど、結局は、単なるタンパク質だ。化合物なんだ。その仕組みが明らかになれば、いたって単純だといえる。単純でなければ、細胞は再生できない。単純だからこそ、これだけ膨大な数が集まっても、だいたい同じものになる。複雑だと思い込みたい傾向を人間は持っているんだ。自分たちを理解し難いものだと持ち上げたい心理が無意識に働く。でも、誰もがだいたい同じように怒ったり笑ったりしているんじゃないかな」

(引用:彼女は一人で歩くのかP106-107)


複雑はカッコいいと漠然と思いがち。
前回読んだ『三体』でも同じような表現があった。単純こそ美しい。数式と同じ。

「もしかして、生きているのですか?」「生きているかどうかは、問題ではないのでは?」シモダは言った。
その意味は、よく理解できる。今の時代、生きていることの定義が非常に曖昧だ。人は死なないし、人工知能は、既に人間の能力をはるかに超えている。実際に言葉にするものは少ないが、世界を支配しているのは、その種の完璧な知能であることは勇気のない事実だ。

(引用:彼女は一人で歩くのか? P250)

最後に

これは完全に個人の意見なんだけど、この『彼女は一人で歩くのか?』を読むより先に著者の代表作品『すべてがFになる』を先に読むことを提唱したい。


理由は……読んだことある人ならわかるよね…?


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