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『三体2 黒暗森林』の感想を好き勝手に語る【劉慈欣】

「”わたしがおまえたちを滅ぼすとして、それがおまえたちとなんの関係がある?”」

(引用:三体 黒暗森林〈下〉P212)


前作からの圧倒的な物語の余韻をそのまままに、さらなる興奮の展開をみせる劉慈欣(りゅう・じきん)の『三体 黒暗森林』の感想を語っていく。


ネタバレありなので未読の方はコチラからどうぞ。
【シリーズ第1段 『三体』あらすじ・紹介】


目次

感想

前作では、本当に続きが気になりすぎるいい所で終わってしまってノンストップで『黒暗森林』に手を出す事となった。結論から言えば大満足の一冊だった。


『三体』は三部作でまだ続きがあるらしいけど、二部作目の『黒暗森林』は一部作の流れを引き継いでほぼ完結のようにみえた。だから三部構成と知ったときはずいぶん驚いた。


次回の三部作目ではどんな展開を見せるのか?今までとは違った意味で楽しみだ。


──面壁計画

三体人、そして智子〈ソフォン〉は人の思考を読むことができない。その唯一といっていい弱点をついた面壁計画。これが出てきてから物語が一気に面白くなる。


面壁計画を雑に説明すると「思考を読むことができないならば、優秀な頭脳を持つ個人に地球防衛の策を丸投げする」っていう無茶苦茶な作戦だけど、確かにこれ意外の打開策は見当がつかないよなぁ。


面壁計画で生じてくる弊害……「すべての行動は作戦のうちと見られてしまう」とかの理不尽さも、個人を尊重している暇なんてない追い詰められた人類のなりふり構ってられてない様子がよくわかる。


話の流れ的には羅輯が鍵になるであろうことは予測できるが、優秀な人物であるとはいえ、他の面壁者たちは元国防長官だったり、大統領だったり…と、ただの社会学の大学教授である羅輯とは天と地ほどの差があるといってもいい。それを文潔に授けられたヒントだけでどう状況を打破するのか、とても見応えがあった。(思ってた以上に本気を出すのが遅くてやきもきしたが)


──圧倒的絶望感

下巻、羅輯がコールドスリープから覚めると雰囲気が一変する。技術が進んだ世界で三体世界との戦争に対する楽観主義が浸透する中で、ついに地球の宇宙軍と三体の宇宙軍が接触する。前作から待ち望んだ展開、やっとか…!と。


まぁ物語の展開的にも地球の宇宙軍が三体の宇宙軍に勝てるとは思ってなかったけど、たった一つの探査機に完膚なきまでやられるとは思わなかったよね。いっそすがすがしい、すばらしいほどの圧倒的絶望感だった。


三体の探査機と思われるもの…水滴が地球の宇宙軍を殲滅する様子はもちろん強烈だった。だが個人的にはその前のシーン、水滴を分析するシーンが三体と地球の技術格差を改めて突き付けているのが、それ以上に印象的だった。


三体の圧倒的な力の根源…というか理由が説明されてるのが面白い。ページでいうと下巻のP208〜212あたり。未知の技術の登場ってわくわくする。あとは冒頭にも引用したが、水滴が猛威をふるうまえの下記のセリフが忘れられない。

「知るものか。ほんとうに、ただのメッセンジャーなのかもしれない。だが、これが人類に伝えるのは、想像されているのとはべつのメッセージだ」丁儀はそう言うと同時に、水滴かは目をそらした。
「どんなメッセージですか?」
「”わたしがおまえを滅ぼすとして、それがおまえたちとなんの関係がある?”」

(引用:三体 黒暗森林〈下〉P212)



──2つの公理と2つの概念

答えはシンプルなほどインパクトがあるし、ド肝を抜かれるもの。序盤に葉文潔が羅輯に残した2つの公理と2つの言葉は、物語を読み進めている途中、つねに頭の片隅に引っかかっていた。

宇宙社会学の2つの公理

『生存は、文明の第一欲求である。』
『文明はたえず成長し拡張するが、宇宙における物質の総量はつねに一定である』


2つの概念

『猜疑連鎖』
『技術爆発』


あの文潔が残した言葉がなんの意味がないなんてあり得ないだろうし、どうやって物語にリンクしてくるのか楽しみだったけど、まさにすべての答えだったのは興奮した。


羅輯の説明を聞けば、こんな単純明快なものが真理なのかと思えてしまうが、このシンプルさが美しい。

 単純だからと見くびってはいけない。単純であることは堅固であることを意味する。数学という大伽藍は、これ以上単純にできないほど単純な、それでいて岩のように堅固な、公理という基礎の上に建てられる。

(引用:三体 黒暗森林〈下〉P287)



デッドマン装置と、大量の爆薬、今までの面壁者が残したモノやアイデアが使われてるのも熱いし凄まじい伏線だなって思う。

──印象に残ったセリフなど

「あなたがいま書いているのは作文ね。小説の登場人物になっていない。キャラクターの十分間の行動は、彼女の十年分の経験が反映されているのよ。プロットの中だけで考えてちゃだめ。彼女の人生すべてを想像しなきゃいけない。実際に文字になるのは氷山の一角」

(引用:三体 黒暗森林 〈上〉P99)


そう、どこなのか知ったら、世界が一枚の地図みたいに小さくなってしまう。どこなのか知らないほうが、世界を広く感じられる。

(引用:三体 黒暗森林〈上〉P152)


単純だからと見くびってはいけない。単純であることは堅固であることを意味する。数学という大伽藍は、これ以上単純にできないほど単純な、それでいて岩のように堅固な、公理という基礎の上に建てられる。

(引用:三体 黒暗森林〈上〉P287)


「いま現在、人類の生存にとって最大の障害は、人類自身だからな」

(引用:三体 黒暗森林〈下〉P62)


智子が近くにいるのはわかっているが、あなたたちはいままで人類の呼びかけを無視してきた。沈黙は最大の軽蔑だ。われわれは二世紀にわたってこの軽蔑に耐えてきた。

(引用:三体 黒暗森林〈下〉P322)

最後に

第1部からの期待を裏切らない、素晴らしい展開だった。第3部も発売されたらそっこうで買おうと思うくらい楽しみだ。

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