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『図書館の魔女』の好きな所「小さな欠片を未来に届ける」【高田大介】


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『図書館の魔女』の好きな所を書いただけ。今回は、図書館の本質を語っている、小さな欠片を未来に届けるについて。引用が多めになってしまったがご容赦いただきたい。ネタバレありなので未読の方はコチラからどうぞ。
【図書館の魔女 あらすじ・紹介】


──小さな欠片を未来に届ける

『図書館の仕事』『図書館の責務』について語られる場面がたまらなく好き。場所でいうと、3巻のP62-65にかけて。

──そうだね。「書物一般」なんてものは在りはしないんだよ。あるのはかくかくの書物だけ。それどころかしかじかの「書の断片」だけ。今に残っているのは「書一般」どころか、書の一欠片だけ。かりに一冊、一巻き、あるいは粘土版の一枚がきれいに丸ごと遺ってたとしても、それもまた今は失われた文化のほんの一欠片に過ぎない。ほんとうに小さな欠片だけが、なにか歴史の偶然によって、遺され、秘匿され、拾い集められ、掘り当てられてきた。そうした欠片を誰かが丁寧に取り集めて取っておいたなら、また別の誰かがずっと先、ずっと未来にその断片を失われた全体の中に置き戻す作業を手がけるのかも知れない。失われた文化が一部分だけでもその時よみがえるのかも知れない。ならばどんなに小さな欠片でも、小さな断片であればこそむしろ、誰かが未来に届けなくてはならない。誰かが大事に守っていかなければならない。
「それが図書館の仕事であると」
──そうだ。この小さな欠片を未来に届けるのが図書館の責務だ。この上なく具体的な責任だ。「書一般」なんていう得体の知れない抽象物に拘っている暇はないな。

(引用:図書館の魔女〈3〉P62-63/高田大介)


マツリカが語る上記の引用した部分も刺さるものがあるし、そのあとのイズミルの回想シーンもまたどストライク。


60年間、一度も繙かれなかった本との出会い。イズミルが生まれるずっとずっと前から、自分を待っていたかのように書架で眠り続けていた本。


遠い未来の誰かと巡り合わせるために、図書館の誰かが保存し続けてきた。それは「小さな欠片を未来に届ける」ため。


最近気づいたんだけど、ちゃんと「図書館の仕事」についての前ふり……のような伏線が2巻でされてるんだよね。

──キリヒト、これはね、「それだけのこと」なんかじゃない。ここで彼女らが守ろうとしているものは、彼女らを使嗾した者達が守ろうとしていた議会の権益だの、王室の威光だの、そんなものよりはずっと重要でずっと永続的で、それでいて守るに難しいものなんだ。それを倦まず弛まず数千年を超えて守ってきた高い塔の伝統にくられれば、王権の三百年の威光やら議会の埒もない利害の葛藤なんて、吹けば飛ぶようなものに過ぎない。
 それはハルカゼにだって、キリンにだって、それぞれの来歴もあれば義理もあろう、任務もあろう、それは勝手にやってくれればいいんだ。でもあの二人ならもうとっくに判っている。高い塔が何のためにあるのか、図書館が何故ここにあり続けばならないのか。
「それは何のためなんですか」
──大層なことを軽々しく聞くんじゃないよ。しばらく自分で考えなさい。

(引用:図書館の魔女 〈2〉P15-16/高田大介)



2巻で、「しばらく自分で考えなさい。」ってキリヒトと読者を突き放しておいて、3巻でイズミルの回想っていう具体的な例を出して答えにたどり着く形になっている。


ただし読者には「図書館がなぜここにあり続けなければならないのか」のヒントは、このページの4ページ後ろにハルカゼについての記述に含まれている。


ハルカゼの関心は地質や鉱物、人の歴史に比べれば遙か永遠にも近い時間軸の中で展開する無機物の繰り広げるドラマの方に向けられていた。ところがこれら鉱物の永遠の片鱗が、書物と図録と標本の森となって、この図書館の一劃に、その価値を知る者の来訪をずっと待っていたのである。
《中略》
ハルカゼはこの図書館の書架の狭間で、世の鉱物学者や地質学者の書きためた資料と、集めた標本とを総合して地下数十尋におよぶ、岩石と鉱物の織りなす、幾重にも重なった綴れ織りのような立体地図を構想しつつあった。ちょうどマツリカが、焼け残った写本の束から、歴史上失われている原本を脳内で再構をしているように、ハルカゼもこの図書館の書棚の前で、野山に足を踏みいれるものでも気がつかぬ深層の地質の歴史を、ありありとまぶたの裏に描き、彼女の愛する好物の歴史物語を心の中に組み立てていたのである。彼女の偏愛に応える地質と鉱物の真実は、大地の下に隠されているばかりではない、むしろ図書館の中にこそひっそりと隠されてあったのである。

(引用:図書館の魔女〈2〉P19-20/高田大介)


マツリカは、「焼け残った写本の束から、歴史上失われている原本を脳内で再構をしている」と書かれている。
これはまさに、3巻で語っていたいたように、誰かが取り集めた欠片を全体の中に置き戻す作業だし、ハルカゼがおこなっていることも同様だ。


こうやってマツリカ、ハルカゼが残した欠片がさらに未来で誰かの手によって、さらに精錬されていくのだろう。


こういう話がファンタジーの作品で書かれているって物凄く贅沢な寄り道だと思う。好き。


本編では、語られていないけどキリンは、兵法や蝶々の世界を作りあげて、未来に残そうとしているんだろうな。そうなると、ゆくゆくはキリヒトやイズミルたちも未来に欠片を残すことになるのかな……彼らは何を残すんだろう。


最後に

高い塔といえば、『謎めいた螺旋階段』とかに注目しがちだけれども、図書館としての本質もしっかり語られているのがたまらなく好きなポイント。


他にも、登場人物紹介、考察など色々書いてるので興味があれば是非どうぞ。

【図書館の魔女 まとめ】



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