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物語のスケールに圧倒される『三体』のあらすじ・紹介【劉慈欣】


「それは、宇宙のどの場所においても適用できる物理法則が存在しないことを意味する。ということはつまり……物理学は存在しない」

(引用:三体 P78/劉慈欣)


SF小説の話題作、中国作家である劉慈欣(りゅう・じきん)の『三体』のあらすじ・紹介をしていく。


【感想はコチラ】



目次

1.あらすじ

物理学者の父を文化大革命で惨殺され、人類に絶望した中国人エリート科学者・葉文潔(イエ・ウェンジエ)。
失意の日々を過ごす彼女は、ある日、巨大パラボラアンテナを備える謎めいた軍事基地にスカウトされる。
そこでは、人類の運命を左右するかもしれないプロジェクトが、極秘裏に進行していた。
数十年後。ナノテク素材の研究者・汪森(ワン・ミャオ)は、ある会議に招集され、世界的な科学者が次々に自殺している事実を告げられる。
その陰に見え隠れする学術団体“科学フロンティア”への潜入を引き受けた彼を、科学的にありえない怪現象“ゴースト・カウントダウン”が襲う。
そして汪森が入り込む、三つの太陽を持つ異星を舞台にしたVRゲーム『三体』の驚くべき真実とは?

(引用:三体 /劉慈欣)

2.三部作で綴られる『三体』

中国作家・劉慈欣の『三体』は三部作で構成されている(今回詳しく紹介するのは第一部のみ)。


第一部:『三体』
第二部:『三体 黒暗森林』
第三部:『三体 死神永生』

このうち現在日本では、2020年6月28日に『三体 黒暗森林』が発売されている。『三体 死神永生』に関しては2020年9月現在では、まだ発売日は未定となっている。



3.見所・ポイント

──序盤は読むのに苦労する

紹介しておいていきなり「読みにくいよ!」というのは恐縮なのだが、序盤は読むのに苦労するだろうと思う。逆にいえばそこを乗り越えられれば、あとはノンストップでいけるはずなので、少し我慢して読み進めてみてほしい。その「読みにくい!」と感じてしまう理由は、主に3つある。



1つ目は、作者が中国の方であり物語の舞台が中国であること。私自身、中国の文化や歴史や地理に疎いため、世界観に順応するのに少し手間取った。


2つ目は、登場人物が覚えづらい。これはあるあるが、海外の作品で横文字の登場人物の名前がわかりにくい、覚えづらい、というのはよくあると思う。これと同じで、登場人物が総じて馴染みのない漢字と読み方なのでスッと頭に入ってこなかった。


3つ目は、序盤は先がまったく見えないこと。『三体』の”さ”の字もでてこないし、歴史の闇を見るような暗い話もでてきて、とっつきにくい感がある。


少し具体的に説明すると、『三体』は3章で構成されている。


第1章 沈黙の春
第2章 三体
第3章 人類の落日

この第1章が先程述べたようになかなかに曲者な部分。あとから振り返ってみれば必要不可欠なことがわかるわけだが、この最初が難問。しかし450ページほどの本書で、第1章は50ページほどしかないので、そこは安心してほしい。

──科学者の相次ぐ不審死と怪現象

主人公で、科学者である汪森(ワン・ミャオ)は、軍と警察の共同組織の会議に招集され、科学者が相次いで不審な死を遂げていることを告げられる。

汪森は共同組織の指令に従い、学術組織「科学フロンティア」のスパイを引き受けるのだが、その後彼の身を『ゴースト・カウントダウン』という怪現象が襲う。物理学の常識を覆す体験をした汪森は、やがて3つの太陽がある異星を舞台としたVRゲーム『三体』にたどり着くのだが……。

──VRゲーム『三体』とその由来

そもそもタイトルの『三体』とは、古典力学の三体問題に由来するものであると思われる。

 天体力学の一分野。三個の物体が、万有引力で引き合っている場合の運動を明らかにする研究。二体問題はニュートンによって解かれたが、三体問題は今日に至るまで厳密な解は得られていない。

(引用:三体問題(さんたいもんだい)とは? 意味や使い方 - コトバンク)


つまりどういうこと?と思った方、百聞は一見にしかず。You Tubeで『三体問題』と調べるとシミュレーションの動画がいくつかでてくる。

三体問題 - YouTube

簡単に説明すれば、3つの物体は、万有引力の影響で常に位置を変え続けるため歪んだ軌道になり、予測不可能になる。というもの。


そして主人公は、この摩訶不思議な軌道を描く3つの太陽がある異星を舞台としたVRゲームに出会う。誰がなんのためにこのゲームを作ったのか、そしてこのゲームが示唆するものはなんなのか?


徐々に明らかになっていく、壮大なスケールを目の当たりにしたらもう戻れない。

最後に

冒頭でも述べたが、序盤こそ乗り切ってしまえば、あとはノンストップの読書体験ができるはずだ。私自身、まだ第2部は読めておらず、これから読むのだが楽しみでしかたない。


そう思えるほど、この『三体』は素晴らしいものだと思う。SF好きはもちろん、普段SFを読まない方も一度手にとってみてはいかがだろうか。




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