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新しい世界を知れる!お仕事小説5選




『お仕事小説』というジャンルの小説がある。主人公が仕事に取り組む様子がメインで描かれ、主人公が仕事を通して成長いく様子、プロ意識や職務を全うする大切さを教えてくれる。


また、自分とはまったく縁のなかった新しい仕事の内容、その裏事情を知れるのも魅力の一つだろう。


今回はそんなお仕事小説の中でも、普段の生活ではあまり関わる事が少ない人が多いであろう、変わった仕事に焦点を当てた作品5作品を紹介していく。

注意事項

  • 2022年現在の私が実際に読んだ作品から紹介している。
  • 紹介はランキング形式ではなく、ランダムに紹介する。
  • あらすじは、基本裏表紙のものを引用している。
  • 物語の核心に触れるネタバレはしていない。
  • 一人の作家に対して、一つの作品を採用している。

1.舟を編む/三浦しをん

──あらすじ

出版社の営業部員・馬締光也は、言葉への鋭いセンスを買われ、辞書編集部に引き抜かれた。新しい辞書『大渡海』の完成に向け、彼と編集部の面々の長い長い旅が始まる。定年間際の下手な編集者。日本語研究に人生を過ぎる老学者。辞書作りに情熱を持ち始める同僚達。そして馬締がついに出会った運命の女性。不器用な人々の想いが胸を打つ本屋大賞受賞作!

──『言葉は海であり、辞書とは海を渡っていく舟 』

お仕事小説としても、かなりメジャーな作品である『舟を編む』。本書は、"辞書作り"がメインテーマの物語である。誰もが一度はひいたことがあるであろう辞書。しかし、その辞書を『誰が』『どうやって』『何を思って』作ったか……考えたことはあるだろうか?


『船を編む』では、そんな辞書作りについて焦点をあてつつ、携わる人たちの成長や思い、そして辞書作りに人生をかける人たちの情熱がつまった作品である。


固いイメージが湧くかもしれないが、仕事や人間模様を静謐に、時にコミカルに描いているので軽快に読み進めることができるはずだ。主人公の不器用な恋愛も歯がゆさがあるが素直に応援したくなる。


2.羊と鋼の森/宮下奈都

──あらすじ

高校生の時、偶然ピアノ調律師の板鳥と出会って以来、調律に魅せられた外村は、念願の調律師として働き始める。ひたすら音と向き合い、人と向き合う外村。個性豊かな先輩たちや双子の姉妹に囲まれながら、調律の森へと深く分け入っていく─。一人の青年が成長する姿を温かく静謐な筆致で描いた感動作。

──静かな情熱に勇気をもらえる一冊

ピアニストの物語は多くあれど、そのピアノを支える"調律師"の物語はどれくらいあるだろうか?『羊と鋼の森』は、そんなピアノの調律師を目指す青年の物語である。


劇的な展開や大きな事件が起こる訳ではないが、繊細な心情描写と、主人公の確かに成長の様子は、ジワジワと熱を帯びてくるような面白さがある。


読みやすくスッキリした読了感。そして単行本で243ページと文量も多過ぎず少なすぎず、普段あまり本に触れない方も読みやすい作品だと思う。


『羊と鋼の森』は、一つひとつの表現が、心理描写が、情景が繊細だと思う。とくにピアノ…つまり"音"を表現する描写が必然的に多い。もちろん本で音を聴けるはずがないのだが…「こんな音なんだろうなぁ」と自然とピアノの音が頭に浮かぶような、そんな繊細な表現が魅力の一つだ。


ピアノの音と向き合って、ピアノを通してお客さんや職場の先輩と向き合って成長していく。ひた向きに調律の道を進む主人公の静かな情熱が私は少し羨ましかった。


3.本日は、お日柄もよく/原田マハ

──あらすじ

OLの二ノ宮こと葉は、想いをよせていた幼なじみ厚志の結婚式に最悪の気分で出席していた。ところがその結婚式で涙が溢れるほど感動する衝撃的なスピーチに出会う。それは伝説のスピーチライター久遠久美の祝辞だった。空気を一変させる言葉に魅せられてしまったこと葉はすぐに弟子入り。久美の教えを受け、「政権交代」を叫ぶ野党のスピーチライターに抜擢された!目頭が熱くなるお仕事小説。

──言葉は、世の中を変える力を持つ

"スピーチライター"という職業にピックアップした物語『本日は、お日柄もよく』。この職業柄、本書にはいくつもの名言が散りばめられている。そのうちの一つに下記のような言葉がある。

言葉は、ときとして、世の中を変える力を持つ。

(引用:本日は、お日柄もよく P331/原田マハ)


このセリフ通り、私たちが普段なにげなく使っている『言葉』の力、『言葉』の可能性をスピーチという形で読者に投げかけている。


スピーチがメインテーマなだけあって、スピーチの場面は思わず引き込まれる。私はスピーチ……というか目立つこと一般がとても苦手なのだが、そんな私でもちょっと人前で話すのも楽しそう!『言葉』で世界を変えてみたい!と思えたほどだ。

4.ギンカムロ/美奈川護

──あらすじ

花火には、二つしかない。一瞬で消えるか、永遠に残るか。幼い頃、花火工場の爆発事故で両親を亡くした昇一は、高校卒業後、一人東京で暮らしていた。ある日、祖父から電話があり、四年ぶりに帰郷する。そこには花火職人として修行中の風間絢がいた。十二年前に不幸な出来事が重なった。それぞれが様々な思いを抱え、苦しみ、悩み、葛藤していく。花火に託された思いとは──。希望と再生の物語。

──花火は2種類、一瞬で消えるか永遠に残るか

『ギンカムロ』は、『花火師』にスポットを当てた作品である。打ち上げ花火を見たことがない、という人はいないだろう。しかし、その華やかな舞台を支える職人たちの仕事を見たことがある人がどれだけいるだろう?


恥ずかしながら私は、花火職人たちの仕事を見たことはない。それどころか心に残るような花火を見たことがあるのに、その花火に魂を込めた職人の事を考えたはなかった。


この物語では、そんな素晴らしい職人たちの舞台を覗くことができる。 本書を読んだら、次から見る花火は今までとは少し違った見え方をすること間違いない。



5.マスカレード・ホテル

──あらすじ

都内で起きた不可解な連続殺人事件。容疑者もターゲットも不明。残された暗号から判明したのは、次の犯行場所が一流ホテル・コルテシア東京ということのみ。若き刑事・新田浩介は、ホテルマンに化けて潜入捜査に就くことを命じられる。彼を教育するのは、女性フロントクラークの山岸尚美。次から次へと怪しげな客たちが訪れる中、二人は真相に辿り着けるのか!? いま幕が開く傑作新シリーズ。


──超一流のホスピタリティ
少し番外編で、本格派のお仕事小説ではないが、一流ホテルマンのホスピタリティを感じることができる『マスカレード・ホテル』を紹介していく。


ミステリーがメインの作品だが、刑事とホテルマンという異色のコンビが活躍する作品だ。


優秀だがプライドの高い刑事の新田
ホテルウーマンとして優秀な能力を持つ山岸


犯人の仮面を暴こうとする新田と、お客様の仮面を守ろうとする山岸。職業柄、価値観のまったく違う二人は最悪の印象で物語は始まる。


しかし、警察という仕事、フロントクラークという仕事を通して、お互いがお互いをプロとして認め、信頼関係を気付いていく様子がとても印象的な作品。


メインのミステリーの他にも、ホテルという舞台、そしてそこで働く人たちの喜びや苦労が楽しめるのもこの作品の大きな魅力の一つだろう。最後まで予測のつかない犯人と、その緊張感。そして主人公二人の息のあったコンビがたまらない。



マスカレードシリーズ紹介
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