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『幻惑の死と使徒』の感想を好き勝手に語る【森博嗣】


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記号覚え、数式を組み立てることによって、僕らは大好きだった不思議を排除する。何故だろう?

(引用:幻惑の死と使徒/森博嗣)


奇怪で奇妙で奇数な物語『幻惑の死と使徒』の感想を語っていく。ネタバレありなので未読の方はご注意を。


目次

感想

──目次からワクワクが止まらない

私が森博嗣作品で好きなのは、緻密に組み立てられたストーリーや個性的なキャラなど、あげればきりがないが、その好きな理由の一つが目を引く「章題」だ。


「章題」を意識するようになったのは、森博嗣の代表作『すべてがFになる』がきっかけ。
【『すべてがFになる』の目次】
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色で統一された章題は、見た目もさることながら、もちろん内容とリンクしていて見事としか言えない。「無色の週末」とかセンスが溢れてる。


さて、そして今回の『幻惑の死と使徒』の目次が以下である。
【『幻惑の死と使徒』の目次】
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章題が「奇」統一なのと、奇数章しかない!!インパクトはばっちりだし、発想もセンスも飛び抜けてる…。


気になる偶数章は?というと次作の『夏のレプリカ』で偶数章は構成されている。
【『夏のレプリカ』の目次】
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同じ時系列で進行している事件なのでこのような形態になっているわけだが……思い切った構成だ。『幻惑の死と使徒』の中で『夏のレプリカ』の話題に触れたり、逆もあったりと時系列をしっかり整理し直してもう一度じっくり読みたいものだ。



──トリックと真実

霊柩車のトリックは、すぐに気付いてドヤ顔で「これしかないだろ!!」って思って、事実当ってたわけだが……「これくらいは、わかって当然」くらいに萌絵や他のマジシャンに流されて喜び半分、悲しみ半分。


霊柩車の運転手が死体のフリをしているしかありえないと思ってからトリック自体は感づいたものの、何故運転手がそんなマネをしなければなかなかったのか?有里匠幻との関係は?とわからない事ばっかりだったが、犀川の考えを聞いて納得。


最初の事件が起きた時点では、有里匠幻の名前を華々しく飾るための自殺では?と思ったが死体が消えてしまう霊柩車のトリックで考え方改めさせられ、まさかこんなどんでん返しだったとは……。

──印象に残った言葉・名言

「妄想と幻想の違いは何ですか?」萌絵は突然思いついた質問をした。
〈中略〉
「同じだね」犀川は答える。「前者は現実より悪い空想、後者は良い空想に使われる場合が多い。また、妄想は他人に見せられないが、幻想はマジックみたいに他人に見せることができる。しかし、成立する条件も、結果も、特に違いはない。つまりは、同じものだね」

(引用:幻惑の死と使徒 P236/森博嗣)

「精神の復元力みたいなものじゃないかな。僕もよくわからないよ、そんなこと。専門じゃないからね。でも……、西之園君。物理の難しい法則を理解したとき、森の中を散歩したくなる。そうすると、もう、いつもの森とは違うんだよ。それが、学問の本当の目的なんだ。人間だけに、それができる。ニュートラルネットだからね」

(引用:幻惑の死と使徒 P283/森博嗣)

 誰もが、日常生活でマジックを体験し、マジックの中で生きている。いちいち「不思議だ」などと驚いている暇はない。本来、人類の特徴ともいえる、最も敏感だった感覚、不思議なことを発見し、それが不思議だと感知するセンサは、現代では無用となった。そればかりか、現代社会は、その感覚を完全に麻痺させようとしている。
 身の回りは不思議なことに満ち溢れ、それらを鵜呑みにしないかぎり生きていけない。生まれたときから、そんな環境の中にいるのである。たとえ、不思議に思ったとしても、すべての仕組みを分解するには小さすぎ、理解するには複雑すぎる。

(引用:幻惑の死と使徒 P437-438/森博嗣)

「ものには名前がある、という意味は?」
「人間のすべての思考、行動……、創造も破壊も、みんな名前によって始まる」犀川は、答える。「ヘレン・ケラーを知っているだろう?三重苦の。もの心がつく以前から盲目で耳も聞こえなかった人が、何を最初に理解したと思う?そういう人に言葉を教えるには、何が必要だろう?」
「実物に触れさせて、言葉を教えたのでしょう?」
「それ以前に、重要なことがあるんだ。それは、ものには名前がある、という概念なんだよ。すべてのものに名前がある、ということにさえ気づけば、あとは簡単なんだ。ものに名前があることを知っている、あるいは、ものに名前をつけて認識するのは、地球上では人類だけだ」

(引用:幻惑の死と使徒 P509/森博嗣)



──Vへの伏線

「なんだ、眠っていたんじゃないのかい?」犀川はトーマに言った。犬を相手に話しかけるなんて、何年ぶりのことだろう、と思った。

(引用:幻惑の死と使徒 P514-515/森博嗣)


犀川の何気ない一言だけど、これはVシリーズの伏線っぽい。こういう地味な伏線が張り巡らされているのがたまらない。


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