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『τになるまで待って』の感想を好き勝手に語る【森博嗣】



「思考というのは、既に知っていることによって限定され、不自由になる」犀川が煙草を消しながら言った。「まっさらで素直に考えることは、けっこう難しい。重要なことは、立ち入らないことだ。

(引用:τになるまで待って P305)


森博嗣Gシリーズの第3弾『τになるまで待って』の感想を語っていく。ネタバレありなので未読の方はご注意を。
前回の感想はコチラ。
【『θは遊んでくれたよ』感想】


【『Gシリーズ』一覧まとめ】

目次

あらすじ

森に建つ洋館は”超能力者”神居静哉の別荘で《伽羅離館》と呼ばれていた。この屋敷のに探偵・赤柳初朗、山吹、加部谷ら7人が訪れる。突然轟く雷鳴、そして雨。豪華な晩餐のあと、密室で館の主が殺された。死ぬ直前に聴いていたラジオドラマは、「τになるまで待って」。大きな謎を孕む、人気のGシリーズ第三作。

(引用:τになるまで待って 裏表紙)

感想

密室トリックは分からなかったが、異界へ送る手品は、完璧ではないがトリックは海月の解説前に解くことができた。最初は加部屋たちが議論していた中に出てきたエレベータ説を考えていたが、屋敷の見取り図見て扉が開閉時に干渉してしまう違和感に気付けたので、そこから加部屋と、その他の人たちが入った部屋は最初から違ったのでは?と思い至れた。


でもこのトリックに気づくこと自体は、著者の想定の範囲内。むしろ気付いてほしかったから、わかりやすく本書冒頭に部屋の見取り図を描いてくれていたまである。


エレベータ(部屋自体に仕掛けがある)説を思いつき否定され、見取り図の違和感によって神居のマジックは解けたけど、それにとらわれて密室トリックまでは思い至らず……まさに著者の手のひらの上だったな。


密室トリックについては、拍子抜け……というか奇想天外じゃない現実的なトリックだった。この巻で重要なのは密室トリックうんぬんよりも、後々に関わってくるであろう、もろもろの伏線なんだろうな。


今回の事件も前回、前々回と同様に一応は解決しているものの、どこか不完全燃焼感のある展開。ラジオドラマ『τになるまで待って』についてもわからないまま。密室の謎は解けたが犯人は逃走中。なぜ神居が殺されたのかも謎。2階のコンピュータだらけの部屋の意味。


2階の部屋に関しては、赤柳が「真賀田四季の衛星通信の拠点だったのでは?」との意見もでていたが。
『すべてがFになる』に登場した妃真加島の建物に似た要素が伽羅離館にもあるし、まぁわからない話でもない。

──印象に残った台詞・名言

加部屋も海月に話しかけていたが、同様である。会話のブラックホールのような存在といえよう。

(引用:τになるまで待って P10)

『会話のドッチボール』は、キャッチボールをもじった表現でよく目にするが、『会話のブラックホール』は新しい。海月に対して的確すぎる表現。

「思考というのは、既に知っていることによって限定され、不自由になる」犀川が煙草を消しながら言った。「まっさらで素直に考えることは、けっこう難しい。重要なことは、立ち入らないことだ。海月くんが真理を見抜いたのも、その視点によるところが大きい」

(引用:τになるまで待って P305)

──最後に

途中の感想でも少し触れたが、密室トリックやらは面白みに欠けるところがあったが、シリーズ全体で考えた際には今後の展開が更に期待される巻であった。


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