FGかふぇ

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『χの悲劇』の感想を好き勝手に語る。衝撃の事実が明らかになる後期3部作【森博嗣】


天才とは儚いものだ、と皆が語った。そうして、自分たちの社会を守ろうとした。
天才は寂しいものだ、と皆が感じた。そうすることで自分たちを慰めたのだ。

(引用:χの悲劇 P175)


森博嗣のGシリーズ第10弾『χの悲劇』の感想を語っていく。ネタバレありなので未読の方はご注意を。


前回の感想
【『キウイγは時計仕掛け』感想】

【『Gシリーズ』一覧まとめ】


目次

あらすじ

香港で仕事をする島田文子のもとに男が現れた。島田が真賀田研究所にいた頃に起きた飛行機事故について質問があるという。その日、走るトラムの中で殺人が起き、死者の手に「χ」の文字が遺される。乗客として警察の捜査に応じた島田だったが、そこである交換条件を持ちかけられ……。Gシリーズ後期三部作開幕。

(引用:χの悲劇 裏表紙)

感想

ラストの衝撃といったらもう……。個人的に、Gシリーズの大きな謎の一つが海月の存在だった。Gシリーズにおける探偵役の一人を担い、西之園萌絵との関連も匂わせ、犀川と似た思考展開ができる人物。絶対に重要人物なのに、これまで一切の情報がでてこず、モヤモヤしていたが、この一冊で一気に晴れた。


各務亜樹良の息子……ねぇ。まったく予想してなかった事実だけど、意外なほどにしっくりくる。それに各務亜は各務亜で、飛行機事故の重要人物だったし、四季はでてくるし、もう後期3部作の1冊目にしてもうお腹いっぱい。


今回、海月の真実を知ったわけだけど、それを念頭に読み返したらまた面白いんだろうな。Gシリーズを読み返すのはエネルギィがいるけど……。


──島田文子と事件の結末

もはやGシリーズの恒例で、事件の結末(犯人がだれか、どんな手法で殺人が行われたのか)は重要視されていない『壊し屋』と『ブレイカー』の下りはなるほどとは思ったが。


今回のメインは事件を通して明かされる、島田文子という人物のディテールだろう。根源である『すべてがFになる』から登場する島田文子。彼女の過去の四季とのやりとりから、そして最後に息を引き取るまでを描き、その過程で各シリーズの人物相関の繋がりも明らかにする。そして四季も登場する。


読み始めは、島田を軸にした話ってどうなるんだろうと思ったけど、結果をみれば贅沢すぎる一冊だった。萌絵や犀川、紅子や保呂草もたびたび登場するGシリーズなだけに、彼らを登場させずにこの読み応えは凄まじかった。



──印象に残ったセリフ・名言等

日本を離れようと決心したのは、やはり、あれから逃れたかったからだった。逆に言えば、日本にいる間彼女は、あれに縛られていた。完全なる支配下にあったといっても過言ではない。
あれとは、何だろう?
言葉にすることができない。名称がなかったからだ。
意図的に、名称を作らなかった。
データになることを避けたかった。
あれが始まったのは、妃真加島での事件があってからだ。真賀田四季が研究所から脱走した、あのときからだ。

(引用:χの悲劇 P33)

島田の心境。『あれ』ってなんだろう。死について、命が狙われること。のような気もするが。

天才とは儚いものだ、と皆が語った。そうして、自分たちの社会を守ろうとした。
天才は寂しいものだ、と皆が感じた。そうすることで自分たちを慰めたのだ。
しかし、それは希望的観測でしかなかった。
天才は大衆が望まないほど大きかった。天才は既存の社会を守ろうとはしなかったし、また、少しの寂しさも感じてはいなかった。そのことに大衆が気づくのは、いつだろうか?

(引用:χの悲劇 P175)


「この病気が治りますか?」
「その肉体では治りません。ダメージは蓄積するだけ。命を保つには、ダメージを生じないクリアさを求めるしかありません」
「その……、命とは何ですか?」島田は尋ねた。
「そう。そのとおりです。その問いが、すなわち命なの」

(引用:χの悲劇 P323)

──備忘録

重要そうな点のメモ的。

・飛行機事故の生存者が2名いた。その2人の代わりに飛行機に乗った人がいて、身代わり?で亡くなった。一人は以前、真賀田研究所にいた『小山田真一』。もう一人は『各務亜樹良』。(P24-25)


・χ(海月)は小山田真一と各務亜樹良の子供(P203、P331-332)


・金(キン)は、西之園萌絵と繋がりがある人物。そして、飛行機事故で姉を亡くしている。(P269-271)

──金(キン)の正体は金子勇二?

先程述べたように、金は萌絵と関わりのある人物である。


そして以前、『ηなのに夢のよう』で萌絵と金子が飛行機事故について話をしていた。(ちなみにだが、金子は萌絵と同じ学年の建築学科の学生だった)

あの日、あの場所で、事故は起こった。その事実は不動だ。金子の家族も、あの事故の犠牲となった。そうだ、そのことさえ、すっかり忘れていた。

(引用:ηなのに夢のよう P77-78)


飛行機事故で、家族を亡くしている。そして萌絵と関わりがあり、事故の事を調べている人物というと金子がドンピシャに当てはまっている。


名前の"金"も同じだしね。


【『ηなのに夢のよう』感想】
『ηなのに夢のよう』の感想を好き勝手に語る【森博嗣】 - FGかふぇ

最後に

Gシリーズって完結してるかと思ったら、まだ完結してないのか……。とりあえず次の『ψの悲劇』はすでに発売されているらしいので、そこまでは読むとして、最新刊は気長に待ちたいと思う。


それまでは積んであるXかWかな。順番的にはXから読むのがよさそうだけど、気になるのはWなんだよなぁ。悩みどころ。



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