「ですから、それはわかりません。もっと未来に、ああ、これがそうだったのか、とわかるような問題なんですよ」
(引用:目薬αで殺菌します P216/森博嗣)
森博嗣のGシリーズ第7弾『目薬αで殺菌します』の感想を語っていく。ネタバレありなので未読の方はご注意を。
前回の感想
【『ηなのに夢のよう』感想】
【『Gシリーズ』一覧まとめ】
目次
あらすじ
関西で発見された劇薬入りの目薬の名前には「α」の文字が。同じ頃、加部谷恵美が発見した変死体が握りしめてたのもやはり目薬「α」!探偵・赤柳初郎は調査を始めるが、事件の背景にはまたも謎のプロジェクトが?ギリシャ文字「α」は「Φ」から連なる展開を意味しているのか?Gシリーズ第7作!
(引用:目薬αで殺菌します)
感想
今作もまたやられたね。
矢場と倉居が同一人物かぁ……。確かに二人の会話?と倉居視点の時に違和感はあったけど、そうくるとは思いもしなかった。ただそうすると二人の会話は、倉居の妄想として片がつくが、P304あたりがちょっと解釈が難しい。
竹中に「彼女が着替えるから、外へ」と言っているように思うが、この”彼女”が竹中にとっては目の前の人物になるはず……どうなるんだろ。
これまでのシリーズは、タイトルが現場に残されていたが(『ηなのに夢のよう』とか)、今回の『目薬αで殺菌します』だけは目薬の箱に『α』が書いてあっただけでタイトルの『目薬αで殺菌します』がそのまま登場することはなかった。
──目薬の箱の意味は?
直里と倉居が共犯で劇薬入りの目薬騒動を行っていた、と竹中が言っていた。本当かどうかはわからないが、一番楽にこの騒動を起こせるのは直里と倉居の二人だし、二人が共犯となれば事はスムーズに進むだろう。
竹中の死体が何故目薬の箱を握っていたのか、結局語られていなかったが目薬に劇薬を入れていたのはこの二人なはず。死体とギリシャ文字「α」を、これまでの事件の関連付けるために倉居は死体に握らせたのではないかと思う。
もちろん加部谷たちが推測したようにダイイングメッセージの可能性も有り得はする。倉居はTTK製薬に務めていたので、「α」の目薬の箱を手に持つことは「倉居が犯人だ!」というダイイングメッセージになりえる。
しかし、殺害された竹中が目薬の”箱”をたまたま持っていて、ダイイングメッセージにしようした可能性ってどれだけありえるだろうか?目薬を持ち歩くのはわかるが、わざわざ箱まで一緒に持ち歩くだろうか?しかも劇薬入り事件が起きてる目薬なのにもかかわらず。
以上から、本編では語られていないが、「α」の目薬は倉居が握らせたものだと私は考えている。
──海月の視線の先には
海月と加部谷の二人が……まさかの展開になったね。酔った勢いとはいえキスまでしてしまうとは加部谷もやるではないか。まぁ案の定というか海月の対応は予想通りだったわけだが……。
やっぱり海月の視線の先にあるのは加部谷ではなくて、萌絵なんだろうか。萌絵が東京のW大に移ったタイミングで海月も東京の大学を受験し直すと。どこの大学とは言ってなかったけど、流れ的に萌絵と同じW大としか思えない。
以前の巻からちょくちょくと海月の萌絵に対する匂わせがあるけど二人はどんな関係で繋がってるんだろう。恋愛感情ではなさそうだが……。あとは飛行機事故関連とかかなぁ。
──一連の事件等の備忘録
・『すべてがFになる』で登場した島田文子が久しぶりの登場(名前だけだが)。今後の物語のキーになりそう。
・『τになるまで待って』で殺害された神居静哉について
事件とは無関係かもしれないが、一つ出てきた話しがある。東寺昌子の入院中の夫、東寺健夫は、地元で建築業を営んでいたのだが、以前に殺された神居静哉の館を建築した人物だった。
(引用:目薬αで殺菌します P224)
──印象に残ったセリフ・名言
「そうかもしれない。新たなネットワークというか、仕組みを作ろうとしている。しかし、実験というよりは、これは、これまでの宗教と呼ばれていたものに一番近い、と私は感じます。ただ、異なる点は、とにかくゆっくりと、目に見えないほど、静かに、深く進行している、ということですね」
(引用:目薬αで殺菌します P207)
赤柳の一連の事件に関する解釈。
「うーん。つまり何なのでしょう?これは、犯罪ですか?それとも研究ですか?真賀田四季がやっていることですか?何をしているのですか?」
「ですから、それはわかりません。もっと未来に、ああ、これがそうだったのか、とわかるような問題なんですよ」
「もっと未来に?」
「そこが、つまり、時間がゆっくりだ、という感覚になるんでしょうね。実際は、遅く進行しているわけではありません。それどころか、もの凄いスピードで進んでいるでしょう。しかし、どんな天才でも、時間を消費しなければならない対象があります」
《中略》
「まあ、よくわかりませんが、僕がイメージできることといえば、彼女は、新しい生きものを作ろうとしているんじゃないか、ということですね」犀川は言った。
(引用:目薬αで殺菌します P216-217)
近藤刑事と犀川の会話。犀川による一連の事件と真賀田四季に関する事。
「ごめんなさい。それでは、躰ではなく、地面、あるいは地層でもけっこうです。一瞬で起これば地震として大きな被害が出る。何万年もかけて起これば、それより大きな変動なのに、誰も気づかない。そんなゆっくりとした外乱なのです」
(引用:目薬αで殺菌します P287)
最後に
謎が謎を呼ぶGシリーズ、またもや犯人が逃亡したままおしまいである。
色々と読み込み不足は否めないが、再読する前に次のGシリーズへ進もうと思う。
次読むときは、章題についての考察もしたいと思う。
第1章 さまざまちらほら
第2章 ときどきはらはら
第3章 つぎつぎまたもや
第4章 さらさらぜんぜん
とか、読み終わったけど訳わからんもん。
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