FGかふぇ

読書やらカフェ巡りが趣味。読んだ本、行ったカフェの紹介がメインのブログです。ごゆるりとどうぞ。

『図書館の魔女』″キリヒト″の疑問・考察【高田大介】

″言葉″のファンタジー『図書館の魔女』
今回はその主要な登場人物である″キリヒト″について思ったことを書いていく。



がっつりネタバレには触れてしまうので未読の方はコチラをどうぞ。


『図書館の魔女』感想・考察・まとめなどはコチラ
【『図書館の魔女』の記事まとめ】

″キリヒト″の謎

キリヒトの正体は2巻の後半で明らかになり、その場面では度肝を抜かれた方も多いことだろう。


キリヒトからの証言、また図書館メンバーたちの推論も2巻の後半でなされているが、まだまだ″キリヒト″の謎は明らかになっていない部分が多い。(図書館の魔女1~4巻の時点では)



″キリヒト″について

先代の″キリヒト″が今のキリヒトの先生のようだが、″キリヒト″について現時点での情報をまとめる。

キリヒトからの証言

・″キリヒト″は一子相伝で名を譲り、各代に一人
・″キリヒト″になれるものが出る家系がある
・先生は浅黒い肌、背は高くなく、痩せがた、眼は黒、白髪でだいぶ抜けている。
・先生はキリヒトの父親

マツリカの十年前の記憶での″キリヒト″

・キリヒトに似ていない
・キリヒトの父親というには、歳がいき過ぎている
・キリヒト同様、足音がしない
・黒の杖を持っていた。

ハルカゼの疑問

マツリカは先代のキリヒトを思い返して、(中略)キリヒトは先代の老齢になってからの子だというのだろうか。たとえば必要があって血を残さなければならなかったとか......
だとすればこれがキリヒトし自身の言葉とは微妙に矛盾する。キリヒトは「先生」の様子を聞かれて「十年前ともなれば様子が違っているかもしれない」などと言っていた。若年のものならともかく、ある程度の高齢にあるものならば十年で「様子が違っ」たりするものだろうか。なにか不自然だ。なにか証言の間に微妙な齟齬がある。

(引用:図書館の魔女 第2巻 P417/高田大介)

マツリカとハルカゼの会話より

・ロワンが若いときにエレニカという場所で先代の″キリヒト″と出会う
・先代″キリヒト″は海峡向こうで武術と兵法の訓練係だった。
・ロワンが先代″キリヒト″をタイキに紹介し、一ノ谷にやってきた。
・十年前まで一ノ谷にいた。

鍛冶の里の親方

「里を出るんだってな」一番鎚の大男が聞く。
「ああ。戻ってくるって言ってたけど」黒石は鎚を振り上げて構えに入った。
「キリヒトはすぐには戻ってこない。戻ってきた例はない」
親方は炉の火から目を離すことなく、黒石を窘めるように呟いた。(中略)戻ってきた例は無いって、親爺は誰のことを言ってるんだろう?

(引用:図書館の魔女 第1巻 P22/高田大介)


考察

※以下ではわかりやすくするため、主人公であるキリヒトはアカリと呼んで進める。またアカリの先生は先代と呼んで進める。

鍛冶の里の親方は「キリヒトはすぐには戻ってこない。戻ってきた例はない」と言っているが、黒石が言うようにこの″キリヒト″は誰を指すのだろうか。


このキリヒトがアカリを指していることはないだろう。もしそうなら黒石は疑問を抱くことはないはずだ。


では、このキリヒトは先代を指すのだろうか。その様に仮定すると、親方は先代であるキリヒトとアカリであるキリヒトの両方を知っていることになる。


親方はキリヒトの名を譲ることを知っていると考えるのが妥当だろう。もしかしたらもう少し細かい事情も知っているのかもしれない。


しかし親方の言うキリヒトが先代であったとしても、疑問の残る点がある。
「キリヒトはすぐには戻ってこない。戻ってきた例はない」
この表現から察するに、先代は鍛冶の里を出てしばらくしてから(何ヵ月?何年?)帰って来たということになる。


では何故里をでて、しばらく戻れなかったのか?
一番妥当なのは『起こらなかった第三次同盟市戦争』の書簡を配っていたためではないだろうか。


しかしそうするとまた新たな疑問が出て来てしまう。
第1に何故、先代は鍛冶の里にいたのか。
第2にアカリはどうしたのか。


ハルカゼとマツリカの会話より先代は元々鍛冶の里にいたわけではなく、海峡向こうから約10年前に一ノ谷に来たことが伺える。一ノ谷に来た理由は当然、書簡を届けるため、それとタイキの護衛としてだろう。


そうすると第1の疑問、何故先代は鍛冶の里にいたのか?
一ノ谷から3日はかかる鍛冶の里。タイキのために一ノ谷に来た先代が、わざわざ鍛冶の里に行く理由が見当たらない。


唯一の理由があるとすればアカリの修行のためとは考えられるが、10年前ともなればアカリはまだ2~3歳くらい。


先代とアカリが同じ時期に鍛冶の里にやって来たとすると、第2の疑問、アカリはいったいどうしたのか?


書簡の配達のため、危険な海峡向こうへ一緒に渡ったとは考えにくい。しかし幼子のアカリを鍛冶の里に置いていくのも考えにくい。


堂々巡りである。
謎が謎を呼んでわけがわからなくなってくる。


キリヒトの父親にしては歳がいきすぎているというマツリカの言葉や、ハルカゼの気づいた矛盾を考えるとキリヒトはアカリと先代とは別にもう一人いた。
と考えても面白いかもしれない。


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『図書館の魔女』口のきけない魔女の物語はすべての読書家に捧げたい1冊だった【高田大介】

図書館にある書物は、すべてが互いに関連しあって一つの稠密な世界を形づくっている。〈中略〉図書館は人の知りうる世界の縮図なんだ。図書館に携わるものの驕りを込めて言わせてもらえば、図書館こそ世界なんだよ。

(引用:図書館の魔女1巻 94P/高田大介)


「いつまでもこの物語の世界に浸っていたい。読み終えてしまいたくない。」と思った作品は『図書館の魔女』が初めてだった。私の読書人生の中で一番好きな作品を少しで多くの人に知ってもらいたくてこの紹介を書いている。


文庫本では第1巻~第4巻で構成されており、合計のページは1800ページを越える長編作品だが、ページ数もさることながら内容が非常に濃密である。


今回はそんな『図書館の魔女』の魅力を重要なネタバレはなしで紹介していく。


『図書館の魔女』の感想・考察・まとめなどはコチラから
【『図書館の魔女』の記事まとめ】


目次

1.あらすじ

鍛冶の里に生まれ育った少年キリヒトは、王宮の命により、史上最古の図書館に暮らす「高い塔の魔女(ソルシエール)」マツリカに仕えることになる。古今の書物を繙き、数多の言語を操って策を巡らせるがゆえ、「魔女」と恐れられる彼女は、自分の声を持たないうら若き少女だった。超弩級異世界ファンタジー全四巻、ここに始まる!

(引用:図書館の魔女1巻 裏表紙/高田大介)



2.魅力

──剣でも魔法でもない。少女は言葉で世界を拓く。

【ボーイミーツガール】であり、【知的エンタメ】であり、【国家謀略戦争】であり、【大冒険】でもある。しかし何より『図書館の魔女』の最大の魅力は"言葉"がテーマのファンタジー作品だという点だ。


タイトルは『図書館の"魔女"』だが、魔術で物を浮かせたりだとか、大釜で怪しげな薬を作っていたりだとかそんなことはない。ファンタジーに出てくるような竜だとか、伝説の剣だとかもでてくるわけではない。


むしろファンタジーなのに非現実的要素を全否定するような場面すらある。


そんな世界観の中、図書館の魔女と呼ばれるマツリカは言葉を使って世界を拓いていく。いくつもの言語を扱い、難解な書物を繙き、言葉一つで世界を動かす。いわば”言葉の魔術師”と言えるのだが、そんなマツリカはなんとしゃべることができないのだ。このギャップに惹かれないことがあるだろうか、いやない。


手話を用いた意思伝達を主としているマツリカのもとにある日、少年・キリヒトが手話通訳として図書館に遣わされる。特別な境遇に生まれ、特別な能力をもった二人の出会いで物語は幕を開ける。


──登場人物

物語の登場人物はどのキャラクターも魅力的で個人的に好きなキャラクターばかりだ。ここでは先程も少し触れた主人公の『マツリカ』と『キリヒト』に絞って紹介する。


──図書館の魔女『マツリカ』
一ノ谷の図書館「高い塔」の主であるマツリカ。


年齢はまだ若く、物語の中でも「うら若き少女」と表現されていた。(年齢は12~14歳くらいだろうか?)
が、しかしその風貌とは裏腹に頭脳明晰で知識、観察力、推理力あらゆる能力がずば抜けている。わずかな手掛かりから真実を導きだす様は、凄腕の探偵を連想させられる。


しかし、そんな彼女は声を持たない。いくつもの言語を修得しているマツリカだが、口をきくことができないため手話によってコミュニケーションをとっている。


──鍛冶の里の少年『キリヒト』
マツリカの手話通訳として鍛冶の里からやってきたのがもう一人の主人公であるキリヒト。常人を上回る、察知能力と運動能力を持った少年で、歳はマツリカと同じくらいである。


読み書きはまったく出来ないが、その感覚の鋭さをかわれ、マツリカにつかえることになる。


特別な境遇に生まれ、特別な能力をもった二人。お互いの能力で欠点を補いながら、そして、なくてはならない存在へと変わっていく。その過程が、やりとりがたまらなく愛おしい。


──言葉

この物語で一番のポイントなのがやはり”言葉”についてだ。著者の高田大介氏が言語学者なこともあり、”言葉”の魔力と魅力が物語の中に如何なく詰め込まれている。


普段、誰しもが意識せずに使っている”言葉”。では、そもそも言葉とは一体何なのか…?文盲だったキリヒトにマツリカが「言葉とは何か」を説くシーンが物語に引き込まれる最初のポイントだと思う。


文字が言葉?それとも発せられるのが言葉?そんな身近な何気ない疑問から、言語についての専門的な領域まで作中では展開している。


しかし、そんな難しげで専門的な言語の知識が独り歩きするわけではなく物語の展開に関わってくるのだから面白い。まさに言語学とファンタジーが融合して新たな世界を作り出している。


物語の中で好きなシーンの一つを引用しておく。

もし話したいことがあるのなら、伝えたいことがあるのなら、きっと人はその言葉を手に入れる。語るべきことを持つことは、語る言葉を持つよりずっと初めにあって、それでいてずっと難しいことなのだ。

(引用:図書館の魔女〈3〉P45-46/高田大介)


物語の展開から目を離せないのはもちろんのこと、こんな素敵な表現も各所に散りばめられているんだからもう最高。


──二人だけに通じる言葉

先程のべたようにマツリカは話すことができないため手話を使うのだが、物語の中で”指話”という新しい手話が登場する。


マツリカにとって手話こそが意思伝達手段なのだが、どうしても表現に限界があると感じていた。そこで感覚が鋭いキリヒトにのみ伝わる“指話”という二人だけの言葉を作り出してしまう。


指話は文字どおり、指を使って話す言葉である。手を繋いだ状態で指だけを使って話せる言葉なので、はたから見るとただ手を繋いでいるだけのように見えて、実は秘密にやりとりができていたりする。


この指話の存在が物語を一気に面白くしてくれると言っても過言ではない。


二人だけの秘密の言葉という存在だけでも尊いが、その言葉が生まれる過程から活躍する様まで図書館の魔女を語るにおいて指話の存在は欠かせない。


地の分が多く、出てくる表現も難解なものが多く読み進めるのが大変だ、などの感想をよく目にするが、この指話が登場するシーンまで頑張って読んでみてもらいたい。そこからはもう止まらないはずだ。

最後に

『図書館の魔女』は現在、2部作刊行されており、今回紹介した『図書館の魔女〈1〜4完結〉』、そして続編の『図書館の魔女 烏の伝言〈上・下〉』がある。


そして3作目は発売日は未定だが(2022年現在)、タイトルだけは発表されていて『図書館の魔女 霆ける塔』である。


少しでも気になるようだったら是非とも『図書館の魔女』の世界に飛び込んでみてほしい。”言葉”がテーマなこともあり、本好きなら間違いなくハマる一冊だ。



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『ナミヤ雑貨店の奇蹟』映画と原作小説の違いをまとめる。【東野圭吾】

その手紙は時を越え
人と人とを繋ぎ
奇蹟を起こす


今回は東野圭吾の『ナミヤ雑貨店の奇蹟』の映画版と原作小説の違いについてまとめた。

1.映画と原作の相違点
2.原作にはないアレンジ

以上の2点についてしぼってまとめているので参考になれば幸いだ。



※ネタバレありなので、ネタバレNGの方はこちらをどうぞ。
【小説紹介】

【映画紹介】


目次

1.映画と原作の相違点

映画でカットされた部分

まずは原作にはあるが映画ではカットされている部分についてだが大きくカットされている部分は2箇所ある。それが、第一章 『回答は牛乳箱に』第四章 『黙祷はビートルズで』だ。


第一章 『回答は牛乳箱に』

原作ではナミヤ雑貨店に忍び込んだ3人に最初に届く手紙は『月のうさぎ』からの相談だが、これは丸ごとカットされている。


第四章 『黙祷はビートルズで』

第一章と同じくこの章の『ポール・レノン』からの相談も丸ごとカットされている。




原作では
第一章 『回答は牛乳箱に』
第二章 『夜明けにハーモニカを』
第三章 『シビックで朝まで』
第四章 『黙祷はビートルズで』
第五章 『空の上か祈りを』
の一~五章で構成されているが、先程説明した通り、それのうち2章分が、ほぼ丸ごと抜けている。


それにともない残りの3章分の内容も、抜けた2章との関わりがある部分がカットされ、若干内容が薄くなっている感は否めない。


詳しく挙げていく
第五章 『空の上から祈りを』 より
この章では『迷える子犬』こと武藤晴美から相談を受ける。


何故『迷える子犬』というペンネームになったのか?また彼女が立ち上げた社名が何故『リトル・ドッグ』なのか?その疑問は第四章『黙祷はビートルズで』の相談者『ポール・レノン』こと藤川博との話で解決できる。


藤川博から丸光園時代に貰った手彫りの犬をお守り代わりにずっと持っていたことが『迷える子犬 』の名前に繋がっているのだが、その辺の詳細は映画では語られていない。


また、武藤晴美がナミヤ雑貨店を知った経緯、そして信頼するにあたった理由は第一章の相談者『月のうさぎ』こと北沢静子との関わりで明らかになるのだが、北沢静子は映画では登場しないので、その辺の詳細もカットされている。

時間の流れ

原作では、ナミヤ雑貨店の店内と外とでは時間の流れが違く、店内では外と比べてとてもゆっくりと時間が流れているとあったが、映画ではこの設定は触れられていなかった。



2.原作にはないアレンジ

では逆に原作にはなかった映画版ならではのアレンジは何があったのか?

悪事を働いた三人組について

強盗をしてナミヤ雑貨店に逃げ込んだ三人組、敦也・翔太・幸平

映画版では序盤、ナミヤ雑貨店の雰囲気に違和感を覚え、店をでて商店街を走り抜けるシーンがあった。(原作では、ナミヤ雑貨店から少し出るくらいで、三人が商店街へは行かない)


そこでいくら走っても同じ場所をループしたり、バスをすり抜けたり、いつの間にかにナミヤ雑貨店の前にワープしていたりと、いかにも不思議な世界に迷い混んだしまったような演出があった。


そして商店街から寂れた様子はなく、過去に飛んでいるような印象を受けた。


また、映画では原作以上にこの三人に焦点を当てて心情や葛藤が描かれていた。
現状を変えたいと思ってはいるが、心の底ではそんなことは無理だという感情が支配してしまっている三人。


敦也と他二人の意見が対立する場面が原作にもあるが、映画では敦也が翔太を殴ってしまう場面もあった。


さらに、原作では三人がナミヤ雑貨店の店主『波矢雄治』から白紙の手紙の返事を読んで終わるのだが、映画では三人のその後も少し描かれていて、武藤晴美を助けに行くシーンと、三人が更正して働いているシーンが加わっていた。


未来からの手紙

ナミヤ雑貨店店主・波矢雄治が未来からの手紙を受けとるシーン。原作では息子の波矢貴之と内容を見る場面。映画では貴之の代わりに、過去に波矢雄治と駆け落ちをしようとしていた、丸光園の初代園長である明子が登場する。


しかしすでに亡くなっている明子、幽霊だったのか、雄治が見た幻覚だったのかは定かではない。




最後に

映画ではある時間の制約があるため、原作である小説や漫画の良さをすべて伝える事は難しい。


しかしそれを補うのが原作にはないアレンジだったり、小説や漫画には出せない音や映像による演出だ。


原作を知ってなお映画を見たいと思うのは、余程その原作が好きというのもある。しかし私がそれ以上に思うのは、小説の場合『文字を読んで自分のイメージしていた世界と実際に映像化された世界との答え合わせがしたい』という感情が大きいのだと思う。


誤解がないように言っておきたいのだが、今回映画版に対して厳しめの意見を述べてしまっているが映画が決してつまらなかった訳ではない。むしろ原作を知っていてなお、面白かったと思えるくらいだ。


抜けた2章を敦也たち三人組に焦点を当てて補ったり、他の3章の内容を際立っていたと思う。


特に『夜明けにハーモニカを』は映画のほうが好きだ。もう涙止まらなかった。


『ナミヤ雑貨店の奇蹟』は小説、映画共にそれぞれの良さがある素晴らしい作品だった。

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小説『ナミヤ雑貨店の奇蹟』紹介:過去と繋がる奇蹟の手紙【東野圭吾】

ナミヤ紹介



『悪事を働いた3人の元に届いたのは、過去からの手紙だった!?』
今回は東野圭吾の『ナミヤ雑貨店の奇蹟』を紹介していく。



2017年9月に映画化したこの作品、映画のほうも原作とは一味違った面白さを堪能できた。小説の感想、映画の感想はそれぞれ下リンクからどうぞ。

【『ナミヤ雑貨店の奇蹟』感想】

【映画版の紹介&感想】


目次

あらすじ

悪事を働いた3人が逃げ込んだ古い家。そこはかつて悩み相談を請け負っていた雑貨店だった。廃業しているはずの店内に、突然シャッターの郵便口から悩み相談の手紙が落ちてきた。時空を超えて過去から投函されてのか?
3人は戸惑いながらも当時の店主・波矢雄治に代わって返事を書くが・・・。次第に明らかになる雑貨店の秘密と、ある児童養護施設との関係。悩める人々を救ってきた雑貨店は、最後に再び奇蹟を起こせるか!?

(引用:ナミヤ雑貨店の奇蹟 裏表紙/東野圭吾)



悪事を働いてしまった青年3人組。逃走中に乗っていた車がトラブルを起こし、深夜で行くあてのないまま途方にくれてしまう。


そんな中、近くに廃業した雑貨屋を見てつけ3人は、朝が来るまでそこで時間をつぶすことに。


今後の事を話し合っていると、突然物音が…!
なんとシャッターの郵便口から突然手紙が投函されたのだ。急いで雑貨屋の周辺を確認するが、人気はまるでない。



3人が逃げ込んだ雑貨店『ナミヤ雑貨店』は、まだ営業していた頃には店主が悩み相談をしていたことで有名な雑貨店だった。しかし、こんな真夜中に……しかも廃業したお店に……、そして中身を確認してみると、どうやらその手紙は過去からやってきているようで……!?



3人は手紙に戸惑いながらも、当時の店主・波矢雄治に代わって返事を書き、過去の人間の悩み相談を受けること。そして徐々に雑貨店の秘密とある児童養護施設との関係が見え始め……!!



注目ポイント

──現在と過去を繋ぐ奇蹟の手紙

『東野圭吾史上、最も泣ける作品』との触れ込みもあるが、それに恥じない感動と、心暖まるストーリーである。


『ナミヤ雑貨店の奇蹟』の特徴は、ヒューマンドラマとファンタジーの性質を合わせ持っている点。ファンタジー要素というのが、青年たちが忍び込んだ廃墟に突如、30年前の過去から手紙が届くのだ


現在と未来が繋がる、また『ナミヤ雑貨店の奇蹟』のように現在と過去が繋がる。小説の設定としては、ありきたりのものだ。しかし、この物語の本質はヒューマンドラマである。過去と現在でやり取りされる手紙は、過去軸の人間の”悩み相談”を現在軸の人間が答える形式となっている。


この手紙のやり取りを通して、3人の青年は相手の事を考え、自分自身を見つめ直し成長する過程が、描かれている。


物語は5章構成になっていて各章ごとに新しい相談者の話になるのだが完全に独立した話という訳ではなく、端々で繋がっていることで全体像があきらかになってくる。



──ヒューマンドラマ

先程も述べたが、各章ごとに新たな相談が舞い込んでくる。その一つひとつ、一人ひとりが人生に悩み、すがる思いで手紙をだしている。


5章ごと5人の悩みが明かされるわけだが、読む人によってはそれと近しい悩みを抱えてる人がいるかもしれない。その答え……とまではいかないが、ヒントくらいはこの作品からもらえるかもしれない。

──ミステリー

もちろん東野圭吾がただのヒューマンドラマだけでは終わらない。なぜ、過去から手紙が?雑貨店と児童養護施設との関わりは?次第に明らかになる事実に手がとまらなくなる。

──回答とその後

様々な相談者からの難問に『ナミヤ雑貨店 』はどのような回答を示すのか?そしてその答えをもらった相談者はどのような未来を歩むのか?



読み終えて

個人的に第二章の『夜明けにハーモニカを』の話がたまらなく好きだ。
音楽の道に進むか、家業の魚屋を継ぐか。そんな人生の二択に迫られた青年がナミヤ雑貨屋に相談の手紙を出して……。


また章ごとに新しい相談者の話になるのだが、完全に独立した話という訳ではなく、端々で繋がっている。その辺も意識して見つけてみると面白いだろう。



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【東野圭吾】映画『ナミヤ雑貨店の奇蹟』の紹介&感想を好き勝手に語る


2017年9月23日に公開された映画、東野圭吾原作の『ナミヤ雑貨店の奇蹟』を観てきたので、紹介と感想を語っていく。


原作小説の紹介はコチラ
【『ナミヤ雑貨店の奇蹟』あらすじ・紹介】

感想はコチラ
【『ナミヤ雑貨店の奇蹟』感想】



目次

──『ナミヤ雑貨店の奇蹟』とは

2012年3月に単行本が発売された東野圭吾の作品である。

「悩み相談、未来を知っている私にお任せください。」
「あの時の回答は、あなたを救いましたか?」
「東野圭吾史上、最も泣ける感動作」
などをキャッチコピーに2017年現在で全世界累計部数が1000万部を突破した人気作品である。


──あらすじ

悪事を働いた3人が逃げ込んだ古い家。そこはかつて悩み相談を請け負っていた雑貨店だった。廃業しているはずの店内に、突然シャッターの郵便口から悩み相談の手紙が落ちてきた。時空を超えて過去から投函されてのか?
3人は戸惑いながらも当時の店主・波矢雄治に代わって返事を書くが・・・。次第に明らかになる雑貨店の秘密と、ある児童養護施設との関係。悩める人々を救ってきた雑貨店は、最後に再び奇蹟を起こせるか!?

(引用:ナミヤ雑貨店の奇蹟 裏表紙/東野圭吾)



──感想(ネタバレなし)

映画は原作にほぼほぼ忠実であったと思う。もちろん時間の都合でカットしている部分はあるし、若干のオリジナルストーリーはあった。


しかし、原作大好きな私としても許せる範囲だったし、むしろいいスパイスだったと思う。


物語の中盤にミュージシャンの話があるのだが、その場面では涙が止まらなかった。


ひとつ気になった点としては、時系列が少し分かりにくいかもしれない。私は原作を知っていたので問題なかったが、そうでない方は注意しながら見たほうがいいかもしれない。


東野圭吾ファンはもちろん、そうでない方にもオススメの一作であると思う。


※以下ネタバレありの感想











この『ナミヤ雑貨店の奇蹟』だが、実は私が東野圭吾の作品の中で一番好きな作品である。


普段、映画はあんまり見ないのだが『ナミヤ雑貨店の奇蹟』はあまりの見たさに、初めて一人で映画館に足をのばした。



さて、一言で感想を言うなら『大満足』だった。

語りだしたらきりがないので、個人的に良かった点と残念だった点を一つずつ、あげようと思う。



原作で一番心に残っているのが、魚屋ミュージシャンの『再生(REBORN)』の話。原作では思わず涙してしまったシーン。


映画で見ても涙がとまらんかったわ。むしろ映画のほうが泣いた。


何が一番良かったかって、『再生』の歌が聴けたこと。どうしても小説で歌は聴けないからね……。


原作を読んでいるときも『再生』ってどんなメロディーで、どんな詞がついているんだろう?ってずっと疑問だったので、物語の中でセリ役、門脇麦さんの歌声を聴けて本当に良かった。一言ひとこと、魂が込められているような歌声、そして涙声に心が揺さぶられた。






逆に個人的に少し残念……というよりは見たかったシーンがあったのだが、原作のラストでナミヤのじいさんのひ孫が活躍するシーン。(原作ネタバレになるので詳しくは省く)
それがあれば私的には、もう何も言うことなしだったかな。



まとめ

最後に声を大にして言いたいのは、「映画を観て満足のいくものだったなら、是非原作を読んでもらいたい」ということ。


原作にはない映画の良いところがあるように、映画にはない原作の良さがそれ以上にあるのが、この『ナミヤ雑貨店の奇蹟』だと思う。

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【東野圭吾】心に刺さる”重い”考えさせられる小説9選!【2022年版】



本格派ミステリーはもちろん、社会派から思わず涙を誘う感動作品、SFチックなものまで、もちろん東野圭吾といえば物理学をテーマとした″ガリレオ″シリーズも外せないだろう。

 

そんな様々な引き出しをもつ東野圭吾は、2022年現在短編集も含めればを100冊を越える作品を世に放っている。

 

今回は、そんな数多くの作品の中から、読者に訴えかけるもの、常識がひっくり返りそうにもなるもの、思わず涙があふれてしまうそうになるもの、などおもわず心に突き刺さるような″重い″テーマの作品を9作品紹介する。


注意事項

  • 2022年の段階で読んだことある作品を紹介する。(随時更新)
  • 紹介はランキング形式ではなく、ランダムに紹介する。
  • 現在個別ページがない作品もいずれ個別ページを作成予定。作品の詳細は個別ページにて確認してもらいたい。
  • あらすじは、裏表紙のものを引用している。(そうでない場合は引用先を明記している)
  • 選考基準はFGの独断と偏見です。ご容赦ください。




──1.『手紙』

──あらすじ

強盗殺人の罪で服役中の兄、剛志。弟・直貴のもとには、獄中から月に一度、手紙が届く......。しかし、進学、恋愛、就職と、直貴が幸せをつかもうとするたびに、「強盗殺人犯の弟」という運命が立ちはだかる。人の絆とは何か。いつか罪は償えるのだろうか。犯罪加害者の家族を真正面に描き、感動を呼んだ不朽の名作。


社長の言葉はいちいち心に突き刺さる。

もし自分が加害者側の立場だったら?被害者側の立場だったら?また周りの人物の立場だったら?と思わずページをめくる手を止めて考えてしまうことだろう。

今までの価値観や常識がひっくり返るかもしれない。ラストは涙なしには読んでいられない。


個別ページ:″重い″話こそ読むべきだと思うから『手紙』を紹介する【東野圭吾】 - FGかふぇ





──2.『赤い指』

──あらすじ

 少女の遺体が住宅街で発見された。捜査上に浮かんだ平凡な家庭。一体どんな悪夢が彼等を狂わせたのか。「この家には、隠された真実がある。それはこの家の中で、彼等自身によって明かされなければならない。」刑事・加賀恭一郎の謎めいた言葉の意味は?家族のあり方を問う直木賞受賞後第一作。

 
加賀恭一郎シリーズの第7作。もちろんシリーズを順に読んでいくのが一番だが、この作品からでも問題なく楽しめる。


家族とはなんなのか?どんな形であるべきなのか?高齢化社会が進む現代の問題を、どこにでもありそうな家族の視線から切り込んだ社会派の一冊。




──3.『さまよう刃』

──あらすじ

長峰の一人娘・絵摩の死体が荒川から発見された。花火大会の帰りに、未成年の少年グループによって蹂躪された末の遺棄だった。謎の密告電話によって犯人を知った長峰は、突き動かされるように娘の復讐に乗り出した。犯人の一人を殺害し、さらに逃走する父親を、警察とマスコミが追う。正義とは何か。誰が犯人を裁くのか。世論を巻き込み、事件は予想外の結末を迎える―。重く哀しいテーマに挑んだ、心を揺さぶる傑作長編。

東野圭吾の″重い″作品はなんだろう?と考えたときに一番最初に浮かんだのがこの作品『さまよう刃』だった。


どんな理由があっても暴力は許されない、たとえそれが復讐であっても。

誰だって理解はしている″常識″だ。だが、いざ我が身に主人公のような出来事が振りかかったときに、果たしてその″常識″を突き通せるのだろうか?


少年法は本当に必要なのだろうか?正義とは何だ?悪とは何だ?

生々しく目を覆いたくなるような場面も多かったが、目を反らさずに読んでよかったと思える一冊だ。




──4.『夜明けの街で』

──あらすじ

不倫する奴なんて馬鹿だと思っていた。
ところが僕はその台詞を自分に対して発しなければならなくなる―。建設会社に勤める渡部は、派遣社員の仲西秋葉と不倫の恋に墜ちた。2人の仲は急速に深まり、渡部は彼女が抱える複雑な事情を知ることになる。15年前、父親の愛人が殺される事件が起こり、秋葉はその容疑者とされているのだ。彼女は真犯人なのか?渡部の心は揺れ動く。まもなく事件は時効を迎えようとしていた…...。

ミステリ色より不倫を中心とした人間関係に主軸を置いた作品。
「不倫なんてするやつはバカ」と思っていた主人公が、思わぬ巡り会わせで不倫の泥沼にはまってしまう心理描写が丁寧に書かれている。


「不倫なんてするやつはバカ」という主人公の意見が世の男性意見の大半だろうと思う。だからこそ、そんな考えを持っていた主人公が泥沼にはまっていく様をどこか自分と重ね合わせて、自分ならどうするか?と考えながら読んでしまうはずだ。


男性なら一度は読んでみるべきだ、自分は絶対に不倫なんてしないと思っている人は特に。

 
個別ページ:不倫とは甘い地獄である『夜明けの街で』のあらすじ・紹介。【東野圭吾】 - FGかふぇ




──5.『天空の蜂』

 

──あらすじ

奪取された超大型特殊ヘリコプターには爆薬が満載されていた。無人操縦でホバリングしているのは、稼働中の原子力発電所の真上。日本国民すべてを人質にしたテロリストの脅迫に対し、政府が下した非情の決断とは。そしてヘリの燃料が尽きるとき...。驚愕のクライシス、圧倒的な緊張感で魅了する結束サスペンス。

原子力発電所をテーマにしたサスペンスミステリー。

タイタニック号事件の『事実は小説よりも奇なり』という言葉はあまりにも有名だが、この作品にも『事実は小説よりも奇なり』の言葉がふさわしいだろう。


原発問題ということで嫌でも2011年3月11日の東日本大震災を思い出してしまう。そして『天空の蜂』が刊行されたのが1995年である。


物語の中での犯人と政府のやり取りを読んでいると、どうしても福島第一原発の事故を彷彿とさせる。そしてそのあと日本中の原発がどうなったか考えると...


『事実は小説よりも奇なり』とはよく言ったものだと思う。





──6.『人魚の眠る家』

──あらすじ

娘の小学校受験が終わったら離婚する。そう約束した仮面夫婦の二人。彼等に悲報が届いたのは、面接試験の予行演習の直前だった。娘がプールで溺れた―。病院に駆けつけた二人を待っていたのは残酷な現実。そして医師からは、思いもよらない選択を迫られる。過酷な運命に苦悩する母親。その愛と狂気は成就するのか―。

(引用:人魚の眠る家 - 東野圭吾 - Google ブックス)

「今、我が家に......うちの家にいる娘は、患者でしょうか。それとも死体なのでしょうか」

(引用:人魚の眠る家 P293/東野圭吾)


″死″とはなんなのか、何をもって″死″とするのか。果たして母親の歪んだともとれる愛に救いはあるのか...。


娘に訪れた悲劇を前に両親はどのような決断をくだすのか。もし自分が両親の立場だったら...と思わず考えてしまう。


脳死、そして臓器移植。現代日本における問題も投げかけた作品。


個別ページ:【小説】2分でわかる『人魚の眠る家』あらすじ・紹介【東野圭吾】 - FGかふぇ



──7.『虚ろな十字架』

──あらすじ

中原道正・小夜子夫妻は一人娘を殺害した犯人に死刑判決が出た後、離婚した。数年後、今度は小夜子が刺殺されるが、すぐに犯人・町村が出頭する。中原は死刑を望む小夜子の両親の相談に乗るうち、彼女が犯罪被害者遺族の立場から死刑廃止反対を訴えていたことを知る。一方、町村の娘婿である仁科史也は、離婚して町村たちと縁を切るように母親から迫られていた──。

幼い娘とかつての妻を殺人によって奪われた中原道正。中原は妻の遺品から見つかった一枚の紙から、偶然とは思えない事件の裏側を覗くこととなり──。


──殺人に対して釣り合いのとれる″償い″とは

『罪を償う』とはどういうことだろうか。真摯に謝罪すること?慰謝料を払うこと?刑務所に入ること?それとも...死刑をもって死で償うこと?


『虚ろな十字架』では、″死刑″について、また″償い″について一石を投じている。


物語の最後、事件の真相とともに語られる殺人に対する償いについては、抜くことのできないトゲのように深く心に突き刺さった。


──8.『祈りの幕が下りる時』

──あらすじ

明治座に幼馴染みの演出家を訪ねた女性が遺体で発見された。捜査を担当する松宮は近くで発見された焼死体との関連を疑い、その遺品に日本橋を囲む12の橋の名が書き込まれていることに加賀恭一郎は激しく動揺する。それは孤独死した彼の母に繋がっていた。シリーズ最大の謎が決着する。

──加賀恭一郎シリーズ最高傑作

『祈りの幕が下りる時』は、主人公の名前をとって”加賀恭一郎シリーズ”と呼ばれるシリーズの作品である。先程紹介した『赤い指』と同シリーズ。

以下シリーズ一覧


①卒業
②眠りの森
③どちらかが彼女を殺した
④悪意
⑤私が彼を殺した
⑥嘘をもうひとつだけ
⑦赤い指
⑧新参者
⑨麒麟の翼
⑩祈りの幕が下りる時


ちなみに『祈りの幕が下りる時』は、シリーズの最後の作品である。『祈りの幕が下りる時』だけでも話はわかるように作られいるのだが……ここで紹介しておいてなんだが、『祈りの幕が下りる時』はシリーズを通して最後に読んでほしい……。


しかし、東野圭吾をあまり読んだことがない方に「1から全部読め!」というのは酷だし、まずはこれを読んでみて、興味が湧いたら他のシリーズをさかのぼってみる、というのもアリかもしれない。


こんな邪道をしてでも読んでほしいと思うくらい、物語に引き込まれ、涙してしまう感動の作品だ。



──9.『白鳥とコウモリ』

──あらすじ

幸せな日々は、もう手放さなければならない。
遺体で発見された善良な弁護士。一人の男が殺害を自供し事件は解決──のはずだった。「すべて、私がやりました。すべての事件の犯人は私です」2017年東京、1984年愛知を繋ぐ、ある男の"告白"、その絶望──そして希望。「罪と罰の問題はとても難しくて、簡単に答えを出せるものじゃない」私たちは未知なる迷宮に引き込まれる──。
作家生活35周年記念作品
『白夜行』『手紙』……新たなる最高傑作、東野圭吾版『罪と罰』。

──東野圭吾版『罪と罰』

あらすじにもあったが、『罪と罰』がテーマの作品。


悪人のせいで善人の人生が狂わされていくのは、見ていてやるせない気持ちになるけど、見えないだけで大なり小なり現実世界でも同じようなことが起きてるんだなぁと思わされる。


テーマは重いが、最後には希望の光も覗かせたりと、個人的にはスッキリした気持ちで読み終えることができる一冊である。



まとめ

気がつけば映像化されている作品ばかりの紹介になってしまっていた。
『赤い指』がドラマで、6作は映画化されている。




映像化されているということは、原作の評価あってこそのものだと思う。その点を考えれば、どれを読んでも心に響くものがあるはずだ。


あなたの小説選びの助けになればと思う。良き読書ライフを。


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【オススメ記事】






【東野圭吾】『マスカレード・ナイト』の感想を好き勝手に語る【ネタバレあり】

「またこんな日が来るとは夢にも思いませんでした」ロビーを見渡し、新田はしみじみとした口調でいった。「この制服を着て、あなたと一緒にいるとはね」

(引用:マスカレード・ナイト P48/東野圭吾)


今回は、「マスカレード」シリーズの第3作目である『マスカレード・ナイト』の感想を語っていく。ネタバレありなので、未読の方はこちらをどうぞ。


【マスカレード・ナイト あらすじ・紹介】

また映画を見た方向けの記事も書いたのでよろしければコチラもどうぞ

『マスカレード・ナイト』映画を見た方への補足解説+映画と原作の違い

目次

感想

最後まで目が離せない展開と新田の活躍に大満足だった。


──新田と山岸

『マスカレード・ホテル』からは数年後の物語ということで、新田と山岸の二人は進展があったのかなぁと思いきや、そんなことはなかった。


山岸に至っては久しぶりに再会して、最初は新田の名前が出てこない始末。『マスカレード・ホテル』では、ラストにあんなにいい感じで終わってたのに、その後はなんの展開もなかったよう...。まぁその辺の事は、また次回に期待ということで。


二人の何気ない会話から山岸は仕事のヒントを得たり、新田は事件の真相に近づいたり、相変わらずこの二人は息の合ったコンビだなぁと思った。

──ホテルという特殊な場所

これは第一作『マスカレード・ホテル』にもいえることなのだが、ホテルという特殊な場所、特殊な仕事の裏側を見ることができてそれだけでも面白い。


今回はコンシェルジュになった山岸の活躍が光っていた。絶対に「無理」という言葉を使わずに、いかにしてお客様の要望に答えるのか?


個人的にはプロポーズの場面が一番印象に残っている。


「相手に恥をかかせず、気まずくなることもなく、プロポーズにノーと答える方法」を考えてくれって無茶苦茶な...。


「いや、無理です」
ってなるでしょうね、私なら確実に。
考える前に言葉に出てしまいそう。


だがしかしそんな困難を覆す山岸の手腕は流石の一言でした。


一流といえば氏原の対応、観察力なども一流のそれ。


新田と初対面のときは憎たらしいキャラだなぁと思っていたが、新田が至らない点があるのは事実だったし経験と実績に裏付けられた一流の仕事だった。実は氏原が犯人なのでは!?と疑っていた自分が恥ずかしい。


──時計

腕時計が今回の物語では重要な役割をしていた。二人が愛用している物はそれぞれ、新田はオメガで山岸は形見の時計。二人の性格をうまく反映していると感じた。


「ここ数十年で、時計は飛躍的に正確に時を刻むようになりました。少々の安物でも一日に一秒も狂いません。でもその結果、約束の時間に遅れる人が増えた、という説があるのを御存じですか」
「いや、知らないな。そうなんですか」
「下手に正確な時間がわかるものだから、ぎりぎりまで時間を自分のために使おうとしてしまうんです。結果、遅刻をする。そういう人には、あまり信用の置けない時計を持たせるといいそうです。遅れているかもしれないと思うから、常に余裕を持って行動しなければなりません。」

(引用:マスカレード・ナイト P223/東野圭吾)

うむ、なかなか興味深い。この説にはとても納得する。



──犯人と結末

犯人は完全に予想外だった。『夫と来てるふりをしていた』という秘密を明らかにして、パーティ前にホテルから去っていたので、考えから外れていて、まんまと犯人の術中にはまってしまっていた。(今思えば『マスカレード・ホテル』でもそんな感じだった)


″女″という仮面をはずし、誰にも気づかれないであろう素顔にまたコスプレで仮面を被って...


今回の犯人、やり手すぎますね。ミイラ男たちを使って警察の注意をそらしたり、偽名や偽の住所を使ってわざと怪しい人物をしたてあげたり...数えきれない。


警察は完全に後手にまわってたし、山岸の時計が狂ってなかったら死んでしまっていたわけだし...


新田の活躍は素晴らしかったけど、″運が良かった″という印象が強かった。

──残念

終盤に犯行の関係者たちの供述があり、それによって事件の裏が見えてくる訳だが...この供述部分が個人的にはちょっと残念だった。


「そう繋がってくるのか!」と思う所もあったが、全体を通してみるとどうしても後付の設定に思えてしまう。


事件が複雑すぎる故に、どうしても後付けの説明を書かなければ、まとまらなかったのだろうか...。


まぁそれを差し引いてもこの物語が面白かったことには変わりない。

最後に

物語の終わり方は、余韻の残る好きな終わり方だった。仕事を通して相棒のような山岸と新田の二人もいいけれど、恋人になった二人を見てみたい気もする。


山岸がロサンゼルスに行ってしまうということで、次回作の舞台はロサンゼルスになるんでしょうか?新田が昔ロサンゼルスにいたということもあるし、十分ありえる展開だとは思う。


『マスカレード・ホテル』が2011年
『マスカレード・イブ』が2014年
『マスカレード・ナイト』が2017年


ということで、次は2020年でしょうか?

次回作も待ちきれない!!



(追記)
マスカレードシリーズの新作作は2022年発売でした。
感想はコチラ
【『マスカレード・ゲーム』感想】



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