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『天冥の標Ⅷ〈ジャイアント・アーク〉』の感想:二つの”ジャイアント・アーク”【小川一水】


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一千メートルの柱を登り、長い長いドーム天井の道を歩いてもなお、この巨大な箱舟〈ジャイアント・アーク〉の輪郭を実感きていなかったのだとカドムは思った。多分、今もなお実感しきっていないのだ。自分たちは、あとどれほどのことを理解していないのだろう……。

(引用:天冥の標Ⅷ〈ジャイアント・アークpart2〉P219)

天冥の標シリーズ第8段、『天冥の標Ⅷ〈ジャイアント・アーク〉』の感想を語っていく。ネタバレありなので未読の方はご注意を。

前回の感想はコチラ
【天冥の標Ⅶ〈新世界ハーブC〉の感想】

目次

感想

相も変わらず濃い展開だった。
「岸無し川」の訳がわからない断章から始まり、1巻のイサリ視点、〈恋人たち〉視点で、あの時の事情が明らかになって、ついに1巻の……〈メニー・メニー・シープ〉の物語の続きが明らかになる……と。これは間違いなく欲張りセット。「そういう事だったのかー!!」という伏瀬回収のオンパレード。そして懐かしい登場人物たちとの再開。


1巻の続き(時系列的な意味で)が8巻にしてようやく読めるようになるとは、2ヶ月前の自分は思いもしていなかっただろう。

──1巻で気になってたこと

過去に1巻の感想を書いたときに、気になった点を8つ上げていたが、その疑問はこれまででほぼほぼ解消されていた。その疑問点は以下の通り。

1.イサリについて
2.メニー・メニー・シープの外の新天地
3.地球からの訪問者
4.アクリラの生死
5.ハーブC
6.羊飼い
7.ダダー
8.カドムが地下通路で聞いた謎の音

どこがどう気になっていたのか?などはここでは省略。詳しくはコチラで書いている。
【天冥の標Ⅰの感想】


今回8巻を読んでも解消されず、むしろ謎が増したのが『3.地球からの訪問者』について。


1巻では、『ルッツとキャスランという人物が地球から植民地へ、救援要請を出してほしい。と登場。』くらいの情報しかでていなかった。


今となっては、『地球からの訪問者』ってだけで疑問がいくつもでてくる。つまり、プラクティスに地球は征服されきれなかった?メニー・メニー・シープの存在をどうやって知ったのか?カルミアンを凌駕しそうな技術力は一体なんなのか?本当に救助のために来たのか?などなど……。


他に1巻ではよく分かっていなかったけど、〈恋人たち〉内部の関係も明らかになってきてようやく1巻で起きたことの重要性が見えてきた。とくにベンクト……。彼が〈恋人たち〉であるにも関わらず人を殺せた理由、そして彼を失ったことの重大さ……。


──アクリラとカヨ

アクリラが生きててくれて嬉しいと思った矢先にカヨの正体、そしてカヨの行動に再びの絶望。


これ……予想外すぎるだろ……。カヨの正体は全くわからんかった。これミスチフだったって理解でいいんだよな…?これまで度肝を抜かれる展開はいくつも味合わされてきたつもりだったけど、これはその中でも上位にくる驚きだった。


カヨの無機質だけど、どこか暖かみがある性格(?)に好感を抱いていたのも大きかったかもしれない。


──二つのジャイアント・アーク

物語中に『ジャイアント・アーク』という記載が恐らく2ヶ所あったのだが、意味がわかると、このタイトルなかなか痺れるものがある。


まず下記がその2ヶ所。

一千メートルの柱を登り、長い長いドーム天井の道を歩いてもなお、この巨大な箱舟〈ジャイアント・アーク〉の輪郭を実感きていなかったのだとカドムは思った。多分、今もなお実感しきっていないのだ。自分たちは、あとどれほどのことを理解していないのだろう……。

(引用:天冥の標Ⅷ〈ジャイアント・アークpart2〉P219)

太陽──にしては明らかに大きすぎる二つの恒星が天の半分を圧して浮かび、お互いがこぼす白金色の光の尾を、お互いの煮え立つ光球面へと注ぎかけているのでだった。
それはまさに、人知を超えたスケールで交換される、赤色の巨大な放電〈ジャイアント・アーク〉──。

(引用:天冥の標Ⅷ〈ジャイアント・アークpart2〉P349)


P219のほうがカドムの視点、P349のほうがアクリラの視点。


カドムのほうでは『巨大な箱舟』に〈ジャイアント・アーク〉のルビ。アクリラのほうには、『巨大な放電』に〈ジャイアント・アーク〉のルビがついている。


『Ark』が「箱、大箱、箱舟」の意味。そして『Arc』が「円弧または、二つの電極間の放電によってつくられる光の円弧。電弧。」の意味を持っている。


つまり、タイトルの『ジャイアント・アーク』にはこの二つ両方の意味が込められているのだと推測できる。


カドムとアクリラの二人ともお互いの消息が把握できていない中で、巨大すぎる箱舟と巨大すぎる放電、二つのジャイアント・アークに二人が唖然とする様子が印象深かった。


ともに巨大すぎるモノに打ちひしがれる様子が、これから抗うであろう困難を示しているように思えた。

最後に

舞台がメニー・メニー・シープに帰ってきていよいよ本番といった感じ。気づけばⅨとXを残すのみとなってしまった。まだまだ先は読めないし物語がどう着地するのかワクワクが止まらない。


『天冥の標〈ヒトであるヒトとないヒトと〉』の感想



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