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『四季 冬〈BLACK WINTER〉』の感想を好き勝手に語る【森博嗣】


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「僕を、殺してくれるんだね?」彼は言った。
彼の瞼が一瞬震える。
「はい、お約束しましたから」彼女は頷いた。

(引用:四季 冬 P50/森博嗣)

森博嗣の四季シリーズ最終巻、『四季 冬』の感想を語っていく。ネタバレありなので未読の方はご注意を。


前巻『四季 秋』の感想はコチラ。


目次

あらすじ

「それでも、人は、類型の中に夢を見ることが可能です」四季はそう言った。生も死も、時間という概念をも自らの中で解体し再構築し、新たな価値を与える彼女。超然とありつづけながら、成熟する天才の内面を、ある殺人事件を通して描く。作者の一つの到達点であり新しな作品世界の入口ともなる、四部作完結編。

感想

面白かった。ただただ夢中になって読んだ。


四季の、理解の範疇を超えた天才の思考をなぞるだけでも面白い。そして、四季シリーズはこの『冬』で終わりになるが、今後のシリーズでおそらく鍵になるであろう伏線も随所にあって、今後の展開が楽しみでしかない。


今回一番気になった、今後出てくるであろう点は、四季の子供(クローン)について。


冬で明らかになった概要は、
①『すべてがFになる』で四季が持ち出したミチルの細胞から、人間を再生した。

②その再生をした久慈という人物は、その細胞から育った個人と四季が会わないことを条件に再生を行った。

③久慈の曾孫と、②で再生した四季の子孫が殺人事件に巻き込まれ、久慈の曾孫は頭を銃で撃たれ即死、四季の子孫は腹部を撃たれ重症。久慈は四季の頭脳を曾孫の肉体に移植。手術は無事成功した。

④久慈と四季がした②の条件が撤廃された。


簡単にまとめると以上なのだが……こんなの絶対今後物語に関わってくるに決まってるやん。今後の展開に期待だ。


他に細かい点を上げるとすれば、四季にスカウトされて(?)連れていかれたG・Aという人物がどうなったのか、とかあるが上記に比べれば些末な問題である。

──ウォーカロン

森博嗣のWシリーズを2巻までだけ読んでいるから、『ウォーカロン』の単語が出てきてびっくりした。読み直す前はWシリーズにまだ手を出してなかったから気づかなかったけど、四季シリーズにも登場してたんだなぁ。こういう繋がりが見えると、お!!ってなる。

「パティ」彼には珍しいシチュエーションだったので、多少照れくさかった。「失礼を承知で尋ねるが……」
「はい、何でしょうか?」
「君は、人間かね?」
「いいえ」彼女は即答した。「私はウォーカロンです」

(引用:四季 冬 P163)

人間とほぼ同じ人形を作れている時点で伏線ではあった。Wシリーズは、この時代よりだいぶ未来を描いた作品のようだが、四季はこの時代にすでにウォーカロンのプロトタイプを作成していたんだな。


ちなみにウォーカロンとは下記の通り。

ウォーカロン〈Walk Alone〉。「単独歩行者」と呼ばれる、人工細胞で作られた生命体。人間との差はほとんどなく、容易に違いは識別できない。

(引用:彼女は一人で歩くのか? 裏表紙)

『彼女は一人で歩くのか?』はWシリーズの一作目。面白さは保証するので気になる方は是非。

──印象に残った台詞・名言

「君が過去の記憶をすべて鮮明に再現できることは知っている。劣化しない歴史は、もう歴史とはいえない、すべて現実だ。君の現実は、空間も時間も越えている。それはわかる。しかしその場合、君にとって、実在する人間と、死んでしまった人間の差は、何?」

(引用:四季 冬 P105)

上記は四季と其志雄の会話から、其志雄の台詞。
『劣化しない歴史は、もう歴史とはいえない』

周りには、信じる者は少なかったが、彼はその技術を確信した。物理的に可能性だと直感したからだ。
特別な人間が、
つまり、
人間の思考の細部を、厳密な意味で解析できる優れた頭脳さえあれば、
可能なのだと……。
人を再現するためには、人を超えた頭脳が必要なのだ。

(引用:四季 冬 P125)


四季(ミチル)とG・Aが対面した場面より。
『人を再現するためには、人を超えた頭脳が必要なのだ。』
それをなし得るのは四季しかいないよなぁ!?

我々は長い間、子供は大人より劣っていると考えていました。《中略》生まれて、この世界の身近なものの存在、自分の存在、そして、それらの相互関係、さらには、それらを表現する言葉の存在、思考による予測を伝える手法など、子供は最初から、人生最大の難関を解決しなければなりません。これを、なんなくクリアしてしまう能力を想像してみて下さい。人間は最初に最も理解力を持ち、知識を蓄え、それらの応用と試行を繰り返すことによって、次第に制限され、思考力を失うのです。簡単にいえば、最初は誰もが天才、そして、だんだん凡人になる。

(引用:四季 冬 P156)

子供は大人より劣っているという幻想。言われてみれば確かに、と思えるが……。理解はできるが受け入れがたいのは、私も凡人だからだろう。

天才の思考が、凡人のそれを超越しているとしたら、そこには一般化されていない概念が当然、存在するだろう。それらには、対応する言葉がないかもしれない。言葉とは、凡人が共通に認識できる概念を記号化したものだ。

(引用:四季 冬 P219)

四季と久慈の会話より。

「自分の人生に干渉してもらいたい、それが、愛されたい、という言葉の意味ではありませんか?

(引用:四季 冬 P245-246)


最後に

彼女の事を知りたくて、この『四季シリーズ』に手を出したはずなのに、読み終えた今、彼女の謎がより一層深まった気がする。深淵を覗いた感じかな。


天才を理解しようなんて、浅はかこの上ないが、せめてもう少し近づいてみたいもの。


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