FGかふぇ

読書やらカフェ巡りが趣味。読んだ本、行ったカフェの紹介がメインのブログです。ごゆるりとどうぞ。

『ジグβは神ですか』の感想を好き勝手に語る【森博嗣】

異常なんてものは、存在しない。あるとしたらみんながそれぞれ異常を持っている

(引用:ジグβは神ですか P372)

森博嗣のGシリーズ第8弾『ジグβは神ですか』の感想を語っていく。ネタバレありなので未読の方はご注意を。


前回の感想
【『目薬αで殺菌します』感想】

【『Gシリーズ』一覧まとめ】

目次

あらすじ

βと名乗る教祖をあおぐ宗教団体の施設・美之里。調査に訪れた探偵・水野は加部谷恵美たちと偶然の再開を果たす。つかの間、フィルムでラッピングされ棺に入った若い女性の美しい全裸死体が発見された。あちらこちらに見え隠れする真賀田四季の影。紅子が、萌絵が、加部谷たちが近づいた「神」の真実とは。

(引用:ジグβは神ですか 裏表紙)

感想

ついにGシリーズも8作目。まず驚いたのは、時は流れて加部屋たちが社会人に、または院生になっていたこと。そして水野という人物が出てきたかと思ったら、かつての赤柳で更には女性だったと……!



驚きの連続で始まった『ジグβは神ですか』だったが、衝撃は終盤も止まらず。ついに真賀田四季の姿が……!


ジェーン・島本と紅子の対面は、もしかしたら四季なのかもしれないっていうワクワクがあったけどやっぱり偽物だったね。偽物でがっかりしたけど、ちゃんと最後に本物も登場してシリーズも着実に進行しているんだなって感じた。


『天才なら凡人の振りができるが、凡人には天才のふりはできない』と紅子から名言が出ていたが、まさにそのとおりで、何がと説明するのは難しいがジェーンは天才にはなりきれてなかった気がする。強いて言うならパソコン投げ捨てるシーンかな。優雅じゃない。


あとは海月はやっぱりW大にいったんだね。前回の感想でも触れたがどうしても萌絵を追っていったとしか思えない。水野(赤柳)の正体も気になるが、個人的にはそれ以上に海月が何を考えているのか、何者なのかが気になる。Gシリーズ内で明かされる日はくるのだろうか。


──ラッピングされた死体

『フィルムで綺麗にラッピングされた全裸死体が棺の中から見つかる』っていう特殊すぎる状況。普通のミステリなら、この不思議すぎる謎を解き明かすために登場人物たちが奮闘するのだろうが、相変わらずGシリーズではそんな特殊な事件すらオマケのような扱い。


どうしても関心は真賀田四季のほうへ傾いてしまうからね。しょうがないね。


綺麗にラッピングされてた理由も明かされていた。常識を逸してはいるけど、なんとなく理解はできるんだよなぁ…。


紅子は「ラッピングされた死体を神様に見てもらいたかった。生贄に捧げた。」と言っていて、まだここでは理解が追いつかなかったけど、後で海月が詳しく解説してくれててしっくりきた。

自分の最愛の者を殺すことは、古来、神に対して行われている。生け贄という形で世界中で行われているんだ。特に、相手が真賀田四季であれば、どうだろう。彼女自身、自分の娘を殺したと言われている。神に認められたいのならば、確固たる動機になるだろう。自分の信念を示す、自分のコントロールの力を示す、そういう意味で充分な効果を持つ。逆に言えば、これを否定できる材料がない」

(引用:ジグβは神ですか P369)




──『ジグβは神ですか』

タイトルの意味を考えていく。
本文でも説明があったが、ジグ(治具)とは、モノづくりで使われる位置合わせの道具である。

「ものを作るときに使う、位置合わせとかの道具なんだけど、ようするに、汎用的じゃないもののことをいうんだよ」
〈中略〉
「いろいろな場合には使えないということ。ある場合にしか使えない道具だね

(引用:ジグβは神ですか P205)


私は仕事の関係で治具の知識はあったが、普通に生活してたらあまり馴染みが無いものだよね。治具という言葉は知っていたけど、読み進めるまでタイトルの『ジグ』が『治具』だと結びつかなかった。だってタイトルの意味よくわからんし。


また、βについて本文から語られていた部分を抜き出していく。

「この美之里には、代表と呼ばれる人物がいて、その人の名は曲川さんっていうんです。曲がる川と書きます。それで、その人について、私、事前に調べてきたんですけど、自分のことをですね、なんと、βと名乗っているんですよ。
〈中略〉
「ベータですか?アルファ、ベータの?」山吹が目を細めた。
「そうです。聞くところによると、神様の次に偉いという意味があるそうです。」

(引用:ジグβは神ですか P152-153)


本文に出てくるものから考えると、『ジグ(汎用的ではない)β(神の次に偉いもの)は神だろうか?』って感じ。


さらに水野が考察で下記のように述べていた。

あるいは、とてつもなく飛躍した発想として、真賀田四季の関与も考えなかったわけではない。すなわち、彼女が作ったプログラムが、曲川として信者の相手をしていたのではないか。βという命名が、その連想を誘発したからである。

(引用:ジグβは神ですか P388)


βを四季のプログラムと考えると、『βは神ですか』は『β(神の作ったもの)は神(四季)ですか』意訳すると『神は神を作り得るか』とできる。

ちょっと無理やりか。
でもまぁ個人的には納得できる解釈。


──印象に残ったセリフ・名言

「科学者というのは、悲観的な人間です。真賀田四季は科学者ですし、世界一の天才なのですから、世界中の誰よりも悲観しているはずです。楽観しているのは、計算をしない幸せな凡人たちよ」

(引用:ジグβは神ですか P317)

「百パーセントなんてことが、普通にありますか?ピタゴラスの定理じゃないのです。これは。真賀田四季の計算でもありません。そうですね……、無理に確率にするならば、九十九パーセント以上、確かです。あの方は、ご自分を真賀田四季に見せようとしています。でも、明らかに能力不足。天才なら凡人の振りができますが、凡人には天才のふりはできません。真賀田四季に見せようとしていることが、真賀田四季ではない証拠です

(引用:ジグβは神ですか P337-338)

紅子さん…ばっさり言うね。でも確かにジェーンの行動って四季っぽくないのは感じてた。


最後に

P35で山吹が姉について、加部谷に言及しないように言ってたのが、ちょっと気になった。これまでに特に情報はなかったと思うが……。




【オススメ】