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『虹を待つ彼女』あらすじ・紹介:衝撃的な自殺を遂げた彼女の真意とは…【逸木裕】


世界が変わって見えた。まさにこのときだった。工藤賢は、生まれて初めて、恋に落ちた。水科晴。六年前、奇妙な方法でこの世を去った、彼女に対して。

(引用:虹を待つ彼女 P149/逸木裕)



第三十六回横溝正史ミステリ大賞受賞作、ゲームの世界と現実の世界を連動させ、何も知らないプレイヤーに渋谷で銃を乱射させる……衝撃的な場面から幕を開ける逸木裕のデビュー作『虹を待つ彼女』を紹介していく。人工知能をテーマに、近未来の世界観で描かれるストーリーは一気読み必至だ。感想はコチラ。


【『虹を待つ彼女』:感想】


目次

あらすじ

2020年、人工知能と恋愛できる人気アプリに携わる有能な研究者の工藤は、優秀さゆえに予想出来てしまう自らの限界に虚しさを覚えていた。そんな折、死者を人工知能化するプロジェクトに参加する。試作品のモデルに選ばれたのは、カルト的な人気を持つ美貌のゲームクリエイター、水科晴。彼女は6年前、自作した”ゾンビを撃ち殺す”オンラインゲームとドローンを連携させて渋谷を混乱に陥れ、最後には自らを標的にして自殺を遂げていた。
晴について調べるうち、彼女の人格に共鳴し、次第に惹かれていく工藤。やがて彼女に”雨”と呼ばれる恋人がいたことを突き止めるが、何者からか「調査を止めなければ殺す」という脅迫を受ける。晴の遺した未発表のゲームの中に彼女への迫るヒントを見つけ、人工知能は完成に近づいていくが──。

(引用:虹を待つ彼女/逸木裕)


見所

『死者を人工知能化するプロジェクト』
『オンラインゲームとドローンを連携させての自殺』

と、あらすじを読んだだけでも興味を惹かれるポイントがいくつもある。先のよめない展開と、これらの気になる要素が物語の中でどう交わっていくのか。近未来の世界観が好奇心を刺激してくれる。


癖のある主人公

主人公の『工藤 賢』。この工藤がかなり癖のある人物。所謂”天才”なのだが、それをひけらかすわけではなく、目立たず仮面をつけた生活を小さい頃から送っていた。とくに未来に対しての「予想」の能力がずば抜けていた。


「自分のポテンシャルの見積もりと、どれくらいの労力でどれくらいのリターンが出るかの費用対効果」を予測できてしまう。予測できすぎてしまうが故に、スポーツも、勉強も、遊びも、人間関係も彼にとっては退屈な物だった。そしてそれは恋愛に関しても顕著に現れていた。

恋愛はサプリメントと同じだ。工藤はある時期から、そう考えるようになった。ドーパミン、ノルアドレナリン、フェニルエチルアミン。恋愛ホルモンなど俗称されるそれらが、脳内で活発になっている状態、それが「恋をしている」状態だ。恋愛とは脳内物質の分泌に過ぎない。必要な時に、必要な分だけ摂取すればいい。
中学、高校。工藤はひたすら人間関係の調整を行い、ときに「サプリメント」を摂取して過ごした。

(引用:虹を待つ彼女 P25/逸木裕)


こんな考えをもっていた彼が初めて本気で恋に落ち、物語の歯車が回り始めるわけだが、よからぬ方向へ進み始めてしまう。工藤が恋に落ちたのはすでにこの世から去っている『水科晴』という人物だった。


天才クリエイター『水科晴』

水科晴は6年前、自作した”ゾンビを撃ち殺す”オンラインゲームとドローンを連携させて渋谷を混乱に陥れ、最後には自らを標的にして自殺を遂げていた。


彼女の美貌、そしてこの奇妙な自殺方法も相まって熱狂的なファンが多く、カルト的な人気を死してなお持っていた。


何故、こんな奇妙な自殺をしたのか?
そもそも、何故自殺してしまったのか?


多くの疑問が解消されていないなか、ひょんなことから、工藤が進める『死者を人工知能化するプロジェクト』の試作に『水科晴』をモデルとすることに決まり、工藤は人工知能作成のために水科晴の情報を集め始めるのだが……。


最後に

水科晴の自殺の理由
死者の人工知能化プロジェクトの結果
そして物語がどんな終着を迎えるのか?


気になる点がたくさんある『虹を待つ彼女』。メインジャンルはミステリだろうが、個人的には恋愛小説としてみても面白いなぁと思う。死者に恋をした主人公、そしてその人物を人工知能での復活を試みる……。


常識的に考えたら報われるはずのない恋にどんな結末が待っているのか?気になる方はぜひ読んでみては?


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