「偶然のうちの半分は、人の努力の結晶です」
(引用:月は幽咽のデバイス P59/森博嗣)
森博嗣のVシリーズ第3作目『月は幽咽のデバイス』の感想を語っていく。ネタバレありなので、未読の方はご注意を。
目次
感想
予想外すぎる結末だった。
王道のミステリーを求めている人からしたら、賛否両論は生むかもしれない作品だと思うけど、個人的にはすき。
物語の中で「人はすべての現象に、意味を持たせたがる」というニュアンスのセリフがあったけど(どこのページか忘れた)、まさにそれを逆手に取った事件の結末。予想外の方向からぶん殴られるような衝撃だった。
一冊で完結する物語でこの結末だったら、拍子抜け……というか納得いかなかったかもしれない。けれどシリーズ作品のうちの一つならば「あぁ、こういう事もあるよな」と自然に受け入れることができた。
あとは作者が森博嗣だったのも受け入れられた要因の一つかもしれない。いちファンとしてのおごりではなく、彼なら何か新しいコトを見せてくれるのではないか?という期待を見事に叶えてくれたからだ。
──プレジョン商会
「えっと、確か、アート・ギャラリィ・プレジョン商会」
「プレジョン?どんな意味かしら?」
《中略》
「いえ、英語じゃないのね」にっこりと紅子は微笑む。
(引用:月は幽咽のデバイス P60)
意味深な場面で、最初はまったくわからなかったけどコレ、『プレジョン商会』がアナグラムになっている。私は個人の方のブログでこの事実を知ったのだが、ノーヒントで気づいた人すごいな…。
プレシジョン(precision)なら『正確、精密』などの意味になるがらプレジョンなる単語はない。しかしプレジョン商会をローマ字にすることで答えが見えてくる。
「プレジョン商会=purejonshyoukai」
これを並べ替えると
「horokusajyunpei=保呂草潤平」
になる。『h』が少し無理矢理感あるけど。
だからなんだ!保呂草よ!そんなコトしてなんの意味がある!と言われればそこまでだが、この小ネタを仕込むところが面白いじゃないか。
──新しい登場人物
シリーズ3作目にして保呂草たちがすむ阿漕荘に新たな住人が引っ越してきた。
その人物『森川素直』は、「大人しく素朴な若者」「平凡」などあたりさわりのない紹介で登場。物語中でもとくに変わった様子は見せず、ザ・一般人という感じだった。
でも、何か気になる。
阿漕荘の住人って総じて一般的な名前ではない。保呂草潤平をはじめ、小鳥遊練無、香具山紫子……と個性的な名前が続く中、森川素直って……。
普通すぎて逆に浮いてる。こうなってくると、彼も今後の物語で何か鍵を握ってるのでは?と勘ぐってしまう。何にせよ今後の物語に期待。
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