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傑作ぞろい!圧倒的な世界観に引き込まれるオススメSF小説4選




宇宙、知的生命体、未来、タイムトラベル、パラレルワールド……。人間の想像によって生み出されたSFの世界は、そのディテールの細かさ、完成された世界観から、あたかも本当にそんな世界があるかのように錯覚させられる。


今回は、読み始めたら世界に引き込まれて読む手が止まらなくなる傑作作品たちを4作品紹介していく。さっそくどうぞ。



1.地球の長い午後/ブライアン・W・オールディス

──あらすじ

大地を覆いつくす巨木の世界は、永遠に太陽を片面に向けてめぐる植物の王国と化した地球の姿をだった! わがもの顔に跳梁する食肉植物ハネンボウ、トビエイ、ヒカゲワナ。人類はかつての威厳を失い、支配者たる植物のかげでほそぼそと生きのびる存在になりはてていた。人類にとって救済は虚空に張り渡された蜘蛛の巣を、植物蜘蛛に運ばれて月へ昇ること。だが滅びの運命に反逆した異端児が......ヒューゴー賞受賞の傑作

(引用:地球の長い午後 裏表紙/ブライアン・w・オールディス)


──植物が世界を支配する地球の未来
現代から数億年未来の話。地球の自転が停止し、世界は永遠の昼と夜となる。片面は太陽が照り続ける植物の世界。もう片面は明けることのない夜の世界。つまり明けることのない長い昼..….それがタイトルの『地球の長い午後』という訳だ。


永遠の昼となり熱帯と化した世界では、巨大に進化した樹木が大陸を覆い尽くし、活動する食肉植物たちが世界を支配していた。生存している動物は巨大化した数種類の昆虫と人間のみ。


その人間すら現代の文明は完全に廃れ、昼夜を問わず食肉植物に命を狙われるちっぽけな存在となってしまっている。


太陽から永遠に降り注ぐ紫外線の攻撃により多くの生物が絶滅に追い込まれる。もちろんそれは人間も例外ではない。なんとか絶滅は免れているものの、人間も体格は現在の五分の一にまで縮み、知能そのものも著しく退化している。


物語の主人公は、グループの仲間と対立し追放されてしまった少年・グレン。ここ弱肉強食の世界での孤独は、まさに死に直結するもの。心も身体も弱りきったときに、とある寄生植物と出会ってしまい……。


独特の生物や設定など、すんなり入って来ない部分も多いが、とにかくこの圧倒的な世界観がすごい。まさに想像力の限界に挑んでいると言っても過言ではないだろう。


2.三体/劉慈欣

物理学者の父を文化大革命で惨殺され、人類に絶望した中国人エリート科学者・葉文潔(イエ・ウェンジエ)。
失意の日々を過ごす彼女は、ある日、巨大パラボラアンテナを備える謎めいた軍事基地にスカウトされる。
そこでは、人類の運命を左右するかもしれないプロジェクトが、極秘裏に進行していた。
数十年後。ナノテク素材の研究者・汪森(ワン・ミャオ)は、ある会議に招集され、世界的な科学者が次々に自殺している事実を告げられる。
その陰に見え隠れする学術団体“科学フロンティア”への潜入を引き受けた彼を、科学的にありえない怪現象“ゴースト・カウントダウン”が襲う。
そして汪森が入り込む、三つの太陽を持つ異星を舞台にしたVRゲーム『三体』の驚くべき真実とは?

──圧倒的スケールの傑作SF
『三体』は三部作の構成である。


第一部:『三体』
第二部:『三体 黒暗森林』《上・下》
第三部:『三体 死神永生』《上・下》


2021年についに第三部:死神永生まで発売され、無事完結を迎えた。一部より二部、二部より三部と、スケールが大きくなっていき、それと比例するように物語の面白さも増していく。一部を読み終える頃には、この先の展開が気になりすぎて、すぐに二部に手を出したくなることだろう。



──科学者の相次ぐ不審死と怪現象
主人公で、科学者である汪森(ワン・ミャオ)は、軍と警察の共同組織の会議に招集され、科学者が相次いで不審な死を遂げていることを告げられる。


汪森は共同組織の指令に従い、学術組織「科学フロンティア」のスパイを引き受けるのだが、その後彼の身を『ゴースト・カウントダウン』という怪現象が襲う。物理学の常識を覆す体験をした汪森は、やがて3つの太陽がある異星を舞台としたVRゲーム『三体』にたどり着くのだが……。


やはりこのVRゲームが登場してからが、一気に流れが変わってワクワクする。あの不可思議な世界……そして、そのゲームの存在意義がわかるときに……。






3.星を継ぐもの/ジェイムズ・P・ホーガン

──あらすじ

月面で発見された真紅の宇宙服をまとった死体。だが綿密の調査の結果、驚くべき事実が判明する。死体はどの月面基地の所属でもないだけでなく、この世界の住人でさえなかった。彼は5万年前に死亡していたのだ!一方、木星の衛星ガニメデで、地球のものではない宇宙船の残骸が発見される。関連は?J・P・ホーガンがこの一作を持って現代ハードSFの巨星となった傑作長編!


──月面探査で見つかったのは5万年前の人間の死体だった!?
『星を継ぐもの』がきっかけでSFが好きになり色々読み漁っているが、未だにコレを超える作品には出会えていない。


名作は色褪せない。『星を継ぐもの』は1977年に発売され、2018年には驚異の100刷を達成した、数字にも裏付けられた名作である。


物語は月面で宇宙服を身につけた死体が発見されて幕をあける。月面で死体が発見されることでも驚きなのに、調査の結果その人物は5万年前に死んでいたことが分かったのだ!!


『星を継ぐもの』の面白い点は、宇宙、そして宇宙人という壮大なテーマの物語であるにも関わらず、ストーリーは一貫して月面の死体は何者なのか?どこから来たのか?に特化している点だ。


物理学、言語学、天文学、数学、化学、地理...ありとあらゆる専門家が様々な視点から謎に迫っていくのだが、その様子がたまらなく面白い。


例えるとすれば難解なパズルだろう。偽物も混じるたくさんのピースの中から専門家たちが、正しいピースを見つけ出す。そしてその正しいピースを主人公のヴィクター・ハントがあるべき所に並べ変える。


こんなにワクワクする小説は、そうないだろう。緻密な構成と宇宙の壮大なスケールが織りなす極上のハード系SF小説だ。



『星を継ぐもの』シリーズの紹介はコチラ



4.天冥の標/小川一水

──あらすじ

西暦2803年、植民星メニー・メニー・シープは入植300周年を迎えようとしていた。しかし臨時総督のユレイン3世は、地中深くに眠る植民船シェパード号の発電炉不調を理由に、植民地全域に配電規制などの弾圧を加えつつあった。そんな状況下、セナーセー市の医師カドムは、《海の一統》のアクリラから緊急の要請を受ける。街に謎の疫病が蔓延しているというのだが……小川一水が満を持して放つ全10巻の新シリーズ開幕編。

──宇宙の支配者は誰だ……!?
物語は、今からおよそ800年後、地球から遥か彼方にある植民星、『メニー・メニー・シープ』で幕を開ける。


2800年という圧倒的未来の話……かと思いきや、実はそうではない。すべては現代と繋がっているのである。1巻こそ未来の話なのだが、2巻の舞台はまさかの2000年の現代に巻き戻る。そして巻を重ねるごとに再び2800年に近づいていくのである。


1巻はこれから始まる壮絶な物語の序章にすぎない。2巻以降で歴史が語られ、徐々に1巻で描かれていた物語の裏側が明らかになってくる。その1巻では隠されていた真実が明らかになり、パズルのピースがハマるようか感覚がたまらない。しかしそれ以上に、それらの真実は過酷な現実でもあり心が揺さぶられる。


人々の歴史、異星人との邂逅、ヒトの底力、そして想像もできないような存在…。圧倒的スケールで語られる10巻、全17冊構成の特大ボリュームSF。



最後に

最後までご覧頂きありがとうございました。SFに関しては、まだまだ読み漁ってある途中でそこまで詳しいとは言えないが、そんな私でも自信を持って面白い!!と思える4作品である。


SF作品のオススメがあれば是非、ご教授願いたい。



【オススメ】






読みたい小説がきっと見つかる!?オススメリンク集




あなたの好き・読みたい小説がきっと見つかるオススメリンク集。これまで書いたオススメの小説一覧や、シリーズ一覧をまとめたもの。気になる所へ飛んでいただければ幸いである。



目次

──1.オススメまとめ

──厳選14作品

1著者1作品の厳選14作品

──長編ファンタジー8選

日本人作家のオススメ長編ファンタジーまとめ

──ジャンルフリー59選

タイトル列挙型59選

──冒頭が印象的な小説14選

印象的・美しい冒頭まとめ

──オススメSF小説4選

世界観に圧倒されるSF4選

──オススメミステリ小説9選

衝撃続きのミステリ9作品

──お仕事小説5選

新しい世界が見えるお仕事小説

──2.東野圭吾

──大好きな東野作品10選
とにかく好きな東野作品を並べたもの。

──東野圭吾初心者へ向けた11選
コレを読んでおけば間違いないっていう東野作品まとめ

──心に刺さる東野圭吾作品9選
重いテーマの東野作品まとめ

──加賀恭一郎シリーズ一覧・紹介
加賀恭一郎シリーズまとめ

──長編ガリレオシリーズ一覧・紹介
長編ガリレオシリーズ5作品まとめ。短編は載せていないので注意。

──マスカレードシリーズ一覧・紹介
マスカレードシリーズ4作品まとめ。

──ラプラスの魔女シリーズ一覧・紹介
ラプラスの魔女シリーズ2作品まとめ。

──3.森博嗣

──S&Mシリーズ紹介
シリーズ10作品すべて紹介

──Vシリーズ紹介
シリーズ10作品すべて紹介

──四季シリーズ紹介
シリーズ4作品すべて紹介


──Gシリーズ紹介
シリーズ12作品の紹介・感想

──4.高田大介

──作品一覧・紹介
著者の小説一覧

──『図書館の魔女』の記事まとめ
一番好きな小説『図書館の魔女』の感想・考察などのまとめ

──5.小野不由美

──十二国記作品一覧
十二国記の作品一覧。シリーズ未完結(?)

──6.有川浩

──自衛隊三部作紹介
著者の原点である自衛隊三部作+αを紹介

──7.支倉凍砂

──作品一覧・紹介
人気ラノベ『狼と香辛料』で知られる著者の作品一覧

──8.ダン・ブラウン

──ダ・ヴィンチ・コードシリーズ一覧・紹介
シリーズ5作品の一覧・紹介

──作品一覧
著者の作品一覧

──9.ジェイムズ・P・ホーガン

──『星を継ぐもの』シリーズ一覧
シリーズ4作品+αの紹介

──作品一覧・紹介
ホーガンの前作まとめ。翻訳されていないものも含める。

──10.上橋菜穂子

──作品一覧・紹介
著者の小説一覧まとめ。読む順等。

『χの悲劇』の感想を好き勝手に語る。衝撃の事実が明らかになる後期3部作【森博嗣】


天才とは儚いものだ、と皆が語った。そうして、自分たちの社会を守ろうとした。
天才は寂しいものだ、と皆が感じた。そうすることで自分たちを慰めたのだ。

(引用:χの悲劇 P175)


森博嗣のGシリーズ第10弾『χの悲劇』の感想を語っていく。ネタバレありなので未読の方はご注意を。


前回の感想
【『キウイγは時計仕掛け』感想】

【『Gシリーズ』一覧まとめ】


目次

あらすじ

香港で仕事をする島田文子のもとに男が現れた。島田が真賀田研究所にいた頃に起きた飛行機事故について質問があるという。その日、走るトラムの中で殺人が起き、死者の手に「χ」の文字が遺される。乗客として警察の捜査に応じた島田だったが、そこである交換条件を持ちかけられ……。Gシリーズ後期三部作開幕。

(引用:χの悲劇 裏表紙)

感想

ラストの衝撃といったらもう……。個人的に、Gシリーズの大きな謎の一つが海月の存在だった。Gシリーズにおける探偵役の一人を担い、西之園萌絵との関連も匂わせ、犀川と似た思考展開ができる人物。絶対に重要人物なのに、これまで一切の情報がでてこず、モヤモヤしていたが、この一冊で一気に晴れた。


各務亜樹良の息子……ねぇ。まったく予想してなかった事実だけど、意外なほどにしっくりくる。それに各務亜は各務亜で、飛行機事故の重要人物だったし、四季はでてくるし、もう後期3部作の1冊目にしてもうお腹いっぱい。


今回、海月の真実を知ったわけだけど、それを念頭に読み返したらまた面白いんだろうな。Gシリーズを読み返すのはエネルギィがいるけど……。


──島田文子と事件の結末

もはやGシリーズの恒例で、事件の結末(犯人がだれか、どんな手法で殺人が行われたのか)は重要視されていない『壊し屋』と『ブレイカー』の下りはなるほどとは思ったが。


今回のメインは事件を通して明かされる、島田文子という人物のディテールだろう。根源である『すべてがFになる』から登場する島田文子。彼女の過去の四季とのやりとりから、そして最後に息を引き取るまでを描き、その過程で各シリーズの人物相関の繋がりも明らかにする。そして四季も登場する。


読み始めは、島田を軸にした話ってどうなるんだろうと思ったけど、結果をみれば贅沢すぎる一冊だった。萌絵や犀川、紅子や保呂草もたびたび登場するGシリーズなだけに、彼らを登場させずにこの読み応えは凄まじかった。



──印象に残ったセリフ・名言等

日本を離れようと決心したのは、やはり、あれから逃れたかったからだった。逆に言えば、日本にいる間彼女は、あれに縛られていた。完全なる支配下にあったといっても過言ではない。
あれとは、何だろう?
言葉にすることができない。名称がなかったからだ。
意図的に、名称を作らなかった。
データになることを避けたかった。
あれが始まったのは、妃真加島での事件があってからだ。真賀田四季が研究所から脱走した、あのときからだ。

(引用:χの悲劇 P33)

島田の心境。『あれ』ってなんだろう。死について、命が狙われること。のような気もするが。

天才とは儚いものだ、と皆が語った。そうして、自分たちの社会を守ろうとした。
天才は寂しいものだ、と皆が感じた。そうすることで自分たちを慰めたのだ。
しかし、それは希望的観測でしかなかった。
天才は大衆が望まないほど大きかった。天才は既存の社会を守ろうとはしなかったし、また、少しの寂しさも感じてはいなかった。そのことに大衆が気づくのは、いつだろうか?

(引用:χの悲劇 P175)


「この病気が治りますか?」
「その肉体では治りません。ダメージは蓄積するだけ。命を保つには、ダメージを生じないクリアさを求めるしかありません」
「その……、命とは何ですか?」島田は尋ねた。
「そう。そのとおりです。その問いが、すなわち命なの」

(引用:χの悲劇 P323)

──備忘録

重要そうな点のメモ的。

・飛行機事故の生存者が2名いた。その2人の代わりに飛行機に乗った人がいて、身代わり?で亡くなった。一人は以前、真賀田研究所にいた『小山田真一』。もう一人は『各務亜樹良』。(P24-25)


・χ(海月)は小山田真一と各務亜樹良の子供(P203、P331-332)


・金(キン)は、西之園萌絵と繋がりがある人物。そして、飛行機事故で姉を亡くしている。(P269-271)

──金(キン)の正体は金子勇二?

先程述べたように、金は萌絵と関わりのある人物である。


そして以前、『ηなのに夢のよう』で萌絵と金子が飛行機事故について話をしていた。(ちなみにだが、金子は萌絵と同じ学年の建築学科の学生だった)

あの日、あの場所で、事故は起こった。その事実は不動だ。金子の家族も、あの事故の犠牲となった。そうだ、そのことさえ、すっかり忘れていた。

(引用:ηなのに夢のよう P77-78)


飛行機事故で、家族を亡くしている。そして萌絵と関わりがあり、事故の事を調べている人物というと金子がドンピシャに当てはまっている。


名前の"金"も同じだしね。


【『ηなのに夢のよう』感想】
『ηなのに夢のよう』の感想を好き勝手に語る【森博嗣】 - FGかふぇ

最後に

Gシリーズって完結してるかと思ったら、まだ完結してないのか……。とりあえず次の『ψの悲劇』はすでに発売されているらしいので、そこまでは読むとして、最新刊は気長に待ちたいと思う。


それまでは積んであるXかWかな。順番的にはXから読むのがよさそうだけど、気になるのはWなんだよなぁ。悩みどころ。



【オススメ】





『キウイγは時計仕掛け』の感想を好き勝手に語る【森博嗣】



「僕の考えを聞いても、意味はない。真実は、推論の中から生まれるんじゃない。現実の観察から明かされるものだ」

(引用:キウイγは時計仕掛け P302-303)

森博嗣のGシリーズ第9弾『キウイγは時計仕掛け』の感想を語っていく。ネタバレありなので未読の方はご注意を。


前回の感想
【『ジグβは神ですか』感想】

【『Gシリーズ』一覧まとめ】

目次

あらすじ

建築学会が開催される大学に、γこ字が刻まれたキウイがひとつ届いた。銀のプルトップが差し込まれ手榴弾にも似たそれは誰がなぜおくってきたのか。その夜、学長が射殺される。学会に参加する犀川創平、西之園萌絵、国枝桃子、海月及介、加部谷恵美と山吹早月。取材にきていた雨宮純らが一堂に会し謎に迫るが。

感想

Gシリーズではお馴染みの感想になってしまうが、次の作品に期待したいと思う。


こう書くと『キウイγは時計仕掛け』は面白くなかったの?と思われてしまうがそういった意味ではない。犀川、萌絵含め登場人物は勢ぞろいだし、相変わらず哲学チックな森博嗣節は炸裂しているし、人間関係にちょっと変化があったり……。


まぁGシリーズでは恒例だが、今回も事件にあまりスポットはあたっていない。なおかつタイトルの『キウイ』『γ』『時計仕掛け』全てにおいてタイトルの意味がわからないまま終わってしまった。(深く読み解けばわかるのかもしれないが、私はわからなかった)


なぜ、キウイを手榴弾に見せかけたのか?(犀川が言ったようにアボガドでは駄目だったのか)
γの意味はなんだったのか?
時計仕掛け、とはどんな意味なのか?


ここまで放っておかれると、逆にこの先回収があるのだと期待してしまう。


無理矢理答えを出そうとするなら、『時計仕掛け』の一般的な意味は、時限装置であとから指定の時間に作動させる。といった意味なので、今回の『キウイγ』はこの巻ではなく、先の巻で意味が明らかになる(再び登場する)。って所かな。


流石にこれで『キウイγ』の意味がわからず終わりってことはないと思いたい……。

──キウイの謎

前述と被る所も出てくるが、今回のキウイの謎について列挙しておく。

・なぜ、キウイを手榴弾に見せかけたのか?(犀川が言ったようにアボガドでは駄目だったのか)

・キウイに刻まれたγの意味はなんだったのか?

・最初にダンボールで送られてきたキウイの依頼主名の意味『GOSIP』(P30)。

・加部谷と雨宮が入った温泉に、キウイが浮かんでいた意味。

・大学の講堂の床が、模様も色もキウイの断面そのもので、キウイホールと呼ばれているが、今回のキウイと関連があるのか?

──印象に残ったセリフ・名言

「僕の考えを聞いても、意味はない。真実は、推論の中から生まれるんじゃない。現実の観察から明かされるものだ」

(引用:キウイγは時計仕掛け P302-303)


最後に

真賀田四季関係で言うと、以前四季の元で働いていた島田文子が登場していた。エピローグで今の会社をやめて、人形を作っている中小企業に行く。といっていたが、人形と聞くと前回『ジグβは神ですか』の四季そっくりの人形を思いだすんだよなぁ……。なにか繋がってくるのだろうか。



【オススメ】





東野圭吾オススメ10選!!大好きな東野作品をランキングで紹介



これまでで100を超える作品を世に放ち、数多くの名作を生み出してきた東野圭吾。今回は、東野圭吾ファンである私がみなさんに読んでみてほしい10作品を紹介していく。


前回は、東野圭吾作品をあまり知らない方向けに作品紹介をしたが今回は完全に自分好みのランキングなので、その辺はご了承いただきたい。


前回のまとめはコチラ。東野圭吾作品をあまり知らなくて何を読めばいいか悩んでいるからはコッチがオススメ。
『東野圭吾初心者へオススメ11選』



※あらすじは裏表紙から引用している。

10位『悪意』

──あらすじ

人気作家・日高邦彦が仕事場で殺害された。第一発見者は、妻の理恵と被害者の幼なじみである野々口修。犯行現場に赴いた刑事・加賀恭一郎の推理、逮捕された犯人が決して語らない動機とは。人はなぜ、人を殺すのか。超一流のフー&ホワイダニットによってミステリの本質を深く掘り下げた東野文学の最高峰。


──人の”悪意”は底知れない
『悪意』は加賀恭一郎シリーズの4番目の作品である。あらすじにある通り、この作品は犯人の動機についてひたすらに追及していくちょっと変わった作品。


加賀恭一郎シリーズは、普段は隠れている人間の本性が垣間見えるのが一つの特徴だと私は思っている。今回はタイトル通りまさに人間が持つ『悪意』を思い知らされる一冊である。


読了した後味がいい作品ではない。私自身そういった作品は苦手だったが、『悪意』は好き嫌い以上に、東野圭吾が語る、人間の本質が胸に刺さる作品であった。


【加賀恭一郎シリーズの紹介】
加賀恭一郎シリーズの作品一覧とあらすじ・紹介【東野圭吾】 - FGかふぇ

9位『ラプラスの魔女』

──あらすじ

円華という若い女性のボディーガードを依頼された元警官の武尾は、行動を共にするにつれ彼女には不思議な《力》が備わっているのではと、疑いはじめる。
同じ頃、遠く離れた2つの温泉地で硫化水素による死亡事故が起きていた。検証に赴いた地球化学の研究者・青江は、双方の現場で謎の娘・円華を目撃する──。
価値観をくつがえされる衝撃。物語に翻弄される興奮。
作家デビュー30年、80作目の到達点。
これまでの私の小説をぶっ壊してみたかった。
そしたらこんな作品ができました。──東野圭吾

──彼女の瞳は何を写すのか

『ラプラスの魔女』は、フランス人数学者の「ピエール・シモン・ラプラス(1749-1827)」が提唱した「ラプラスの悪魔」という仮説を題材にした物語となっている。どんな仮説かというと以下の通りだ。
 

 「もし、この世に存在するすべての原子の現在位置と運動量を把握する知性が存在するならば、その存在は、物理学を用いることでこれらの原子の時間的変化を計算できるだろうから、未来の状態のがどうなるか完全に予知できる。」

これは実際に『ラプラスの魔女』本文から引用したものだ。


「もし、未来がわかったら…」と、だれもが一度は考えたことがあるはず。そんな力を得てしまった登場人物と、巻き起こる事件に一気読み必死の作品だ。


賛否がわかれる作品ではあるが、個人的には推したい一冊。何よりも『ラプラスの悪魔』を持ち込んできた設定が好みすぎた。また映画化もされているが……小説で楽しむ事をオススメする。


8位『流星の絆』

──あらすじ

何者かに両親を惨殺された三兄妹は、流れ星に仇討ちを誓う。14年後、互いのことだけを信じ、世間を敵視しながら生きる彼らの前に、犯人を突き止める最初で最後の機会が訪れる。三人で完璧に仕掛けはずの復讐計画。その最大の誤算は、妹の恋心だった。涙があふれる衝撃の真相。著者会心の新たな代表作。


──兄弟たちの復讐劇
『流星の絆』は、両親を殺害された幼い三兄妹による復讐劇が描かれた一冊だ。その復讐劇に「詐欺」「禁じられた恋」などの要素が絡められながら物語が進んでいく。


メインは復讐劇のわけだが、あらすじに『最大の誤算は、妹の恋心だった』とある。妹が好きなってしまった相手が実は……という訳なのだが、この妹の葛藤が実に胸にくる。


ページ数は600ページと多いが、それを感じさせないスリリングな展開の連続、そして最後の最後まで気が抜けない小説の醍醐味をあじわえる作品。


確かだが、私が東野圭吾の作品で初めて読んだのが『流星の絆』だった。思い出補正もあるかもしれないが、それを差し引いても名作であることは間違いない。


7位『白夜行』

──あらすじ

1973年、大阪の廃墟ビルで一人の質屋が殺された。容疑者は次々に浮かぶが、結局、事件は迷宮入りする。被害者の息子・桐原亮司と、「容疑者」の娘・西本雪穂──暗い眼をした少年と、並外れて美しい少女は、その後、全く別々の道を歩んで行く。二人の周囲に見え隠れする、幾つもの恐るべき犯罪。だが、何も「証拠」はない。そして十九年……。息詰まる精緻な構成と、叙事詩的スケール。心を失った人間の悲劇を描く、傑作ミステリー長篇!


──圧倒的支持を集める長編ミステリー
『白夜行』でまず目をひくのが、その鈍器と言っても差し支え無い質量だろう。文庫本で全860ページと圧巻のボリュームで、東野作品で一番の文量である。そのボリュームには、なかなかに手を出す勇気が必要だが、読み始めてしまえば一気に物語に引き込まれてしまう。


『白夜行』の一番の特徴は、主人公である二人の心理描写が一切描かれておらず、第三者の視点や周りの状況だけで二人の人間性・関係性が表現されていることだろう。


物語は、大阪の廃ビルで一人の男が殺害されることで幕が開ける。被害者の息子・桐原亮司と容疑者の娘・西本雪穂は、その接点を持たせないままに、二人の心情は直接語らせないまま物語が進行していく。


太陽のように明るくはない。しかし夜の闇のように真っ暗でもない。そんな白夜を歩む二人の19年の長い道のりが描かれているのが『白夜行』だ。


『白夜行』を「東野圭吾の最高傑作である」という意見も多々見受けられる。その納得のストーリー、是非体感して頂きたい。


6位『真夏の方程式』

──あらすじ

夏休みを玻璃ヶ浦にある伯母一家経営の旅館で過ごすことになった少年・恭平。一方、仕事で訪れた湯川も、その宿に宿泊することになった。翌朝、もう一人の宿泊客が死体で見つかった。その客は元刑事で、かつて玻璃ヶ浦に縁のある男を逮捕したことがあったという。これは事故か、殺人か。湯川が気づいてしまった真相とは──。

──博士と少年 一夏のストーリー
『真夏の方程式』はガリレオシリーズの第5作目の作品だ。2022年現在、ガリレオシリーズは短編5作、長編5作が刊行されている。個人的には長編のガリレオ作品はハズレがないと思っている。『真夏の方程式』もその長編の一つだ。


ガリレオこと湯川と、恭平少年のやりとりがミスマッチのようで、どこか微笑ましく、その湯川の普段とのギャップがこの作品一つの魅力といっていいだろう。



恭平は両親の仕事の都合により、一人で伯母の家に泊まらされることに対して不満をつのらせていた。しかし皆が恭平のことを子供扱いするなかで唯一、正面から向き合ってくれたのが湯川であった。恭平のために湯川が”ある実験”を行うのだが、その場面がとても印象的だ。


湯川と少年・恭平を中心に物語がすすんで行くのだが、もちろんミステリーの面も抜け目がないのは言うまでもない。東京と玻璃ケ浦、現在の事件と過去の事件、そして人間関係……それぞれ絡まり合ったすべての糸が解ける瞬間がたまらない。


【長編ガリレオシリーズ紹介】
【東野圭吾】長編ガリレオシリーズにハズレなし!!最新作『透明な螺旋』含む6作品のあらすじ・見所をまとめて紹介する - FGかふぇ

5位『マスカレード・ゲーム』

──あらすじ

解決の糸口すらつかめない3つの殺人事件。
共通点はその殺害方法と、被害者はみな過去に人を死なせた者であることだった。
捜査を進めると、その被害者たちを憎む過去の事件における遺族らが、ホテル・コルテシア東京に宿泊することが判明。
警部となった新田浩介は、複雑な思いを抱えながら再び潜入捜査を開始する──。
累計490万部突破シリーズ、総決算!


──シリーズ最新作!新田にまさかの展開が…?!
2021年に映画が公開された『マスカレード・ナイト』が2017年の初刊だったので、『マスカレード・ゲーム』は実に5年ぶりの最新シリーズである。


前作『マスカレード・ナイト』のような派手さはないが、毎度お馴染み潜入捜査も利用し淡々と真実に迫っていく様子があいも変わらず面白い。そして今回は新たな登場人物が新田の苦悩を増やすことになるが……!?


エンタメだけじゃなくて、罪についての話がありこれまでのシリーズにはなかった深みがある。世の中悪い人間ばかりじゃないと思えるいい話。
もちろんシリーズものとしての進展もあるのでファン必見の一冊である。


マスカレードシリーズ紹介
『マスカレードシリーズ』の作品一覧とあらすじ・内容を全4作品まとめて紹介する【東野圭吾】 - FGかふぇ

4位『祈りの幕が下りる時』

──あらすじ

明治座に幼馴染みの演出家を訪ねた女性が遺体で発見された。捜査を担当する松宮は近くで発見された焼死体との関連を疑い、その遺品に日本橋を囲む12の橋の名が書き込まれていることに加賀恭一郎は激しく動揺する。それは孤独死した彼の母に繋がっていた。シリーズ最大の謎が決着する。


──加賀恭一郎シリーズ最高傑作
『祈りの幕が下りる時』は、先程紹介した『悪意』と同じく加賀恭一郎シリーズの一つ。そして10作品からなるシリーズの最終巻である。

以下シリーズ一覧


①卒業
②眠りの森
③どちらかが彼女を殺した
④悪意
⑤私が彼を殺した
⑥嘘をもうひとつだけ
⑦赤い指
⑧新参者
⑨麒麟の翼
⑩祈りの幕が下りる時

『祈りの幕が下りる時』だけでも、一つの話として完成されているが、やっぱりこれはシリーズを通して読んでこそ、その本領が発揮される。


東野作品のシリーズものといえば、ガリレオシリーズと加賀恭一郎シリーズが有名どころだと思うが、個人的なイメージとしては、ガリレオシリーズはどこから読んでも楽しめる。加賀恭一郎シリーズは通して読んでこそ楽しめる作品だと思っている。


号泣必至の物語、そしてこのシリーズを是非とも堪能してみてほしい。


【加賀恭一郎シリーズの紹介】
加賀恭一郎シリーズの作品一覧とあらすじ・紹介【東野圭吾】 - FGかふぇ

3位『容疑者Xの献身』

──あらすじ

天才数学者でありながら不遇な日々を送っていた高校教師の石神は、一人娘と暮らす隣人の靖子に秘かな想いを寄せていた。彼女たちが前夫を殺害したことを知った彼は、二人を救うため完全犯罪を企てる。だが皮肉にも、石神のかつての親友である物理学者の湯川学が、その謎に挑むことになる。ガリレオシリーズ初の長篇、直木賞受賞作。


──天才vs天才 慟哭のミステリー
ガリレオシリーズから2作目の紹介。『容疑者Xの献身』は映画もされている有名作品。



簡単に作品説明するとすれば、惚れた女性の犯罪を隠す石神と、犯罪の秘密に迫る湯川の二人の天才による対決が描かれた物語である。
 

石神と湯川は大学時代の同期であり、お互いに「天才」という意味では同じであったが、決して似ている二人ではない。


湯川は頭脳明晰、容姿端麗おまけにスポーツ万能...とすべてを兼ね備えた完璧人間と言っても過言ではない。このようなことに対して石神は、湯川と対極の人物である、と説明すればわかりやすいだろう。


この二人によって展開される頭脳戦が『容疑者Xの献身』の見所の一つ。石神による人の盲点を突く、天才的発想の隠蔽工作は予想の斜め上をいく。また、その石神の隠蔽工作に対して湯川はどこから真実を見抜くのか...!?


もう一人の見所としてはタイトルの意味だろうか。読了後にはタイトルの意味を深く噛み締める事になるだろう。


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2位『マスカレード・ホテル』

──あらすじ

都内で起きた不可解な連続殺人事件。容疑者もターゲットも不明。残された暗号から判明したのは、次の犯行場所が一流ホテル・コルテシア東京ということのみ。若き刑事・新田浩介は、ホテルマンに化けて潜入捜査に就くことを命じられる。彼を教育するのは、女性フロントクラークの山岸尚美。次から次へと怪しげな客たちが訪れる中、二人は真相に辿り着けるのか!? いま幕が開く傑作新シリーズ。


──名コンビ誕生 伝説のはじまり
”マスカレード”シリーズは、一流シティホテル「コルテシア」を舞台に繰り広げられる物語。先程紹介した『マスカレード・ゲーム』の第一弾の物語。2022年現在では
『マスカレード・ホテル』
『マスカレード・イブ』
『マスカレード・ナイト』
『マスカレード・ゲーム』
以上の4作品が刊行されている。


そして、新田&山岸のコンビが誕生したのがシリーズこの第一作『マスカレード・ホテル』だ。


犯人不明
動機不明
いつ事件が起こるか分からないし
誰が狙われるかもわからない


判明しているのは次の犯行現場が一流ホテル「コルテシア東京」だということのみ。


優秀だがプライドの高い刑事の新田
ホテルウーマンとして優秀な能力を持つ山岸


犯人の仮面を暴こうとする新田と、お客様の仮面を守ろうとする山岸。職業柄、価値観のまったく違う二人は最悪の印象で物語は始まる。


しかし、警察という仕事、フロントクラークという仕事を通して、お互いがお互いをプロとして認め、信頼関係を築いていく様子がとても印象的な作品。


ミステリーのジャンルの作品だが、ホテルという舞台、そしてそこで働く人たちの喜びや苦労が楽しめるのもこの作品の大きな魅力の一つだろう。最後まで予測のつかない犯人と、その緊張感。そして主人公二人の息のあったコンビがたまらない。


マスカレードシリーズ紹介
『マスカレードシリーズ』の作品一覧とあらすじ・内容を全4作品まとめて紹介する【東野圭吾】 - FGかふぇ



1位『ナミヤ雑貨屋の奇蹟』


──あらすじ

悪事を働いた3人が逃げ込んだ古い家。そこはかつて悩み相談を請け負っていた雑貨店だった。廃業しているはずの店内に、突然シャッターの郵便口から悩み相談の手紙が落ちてきた。時空を超えて過去から投函されたのか?
3人は戸惑いながらも当時の店主・波矢雄治に代わって返事を書くが・・・。次第に明らかになる雑貨店の秘密と、ある児童養護施設との関係。悩める人々を救ってきた雑貨店は、最後に再び奇蹟を起こせるか!?


  
──現在と過去を繋ぐ奇蹟の手紙
『東野圭吾史上、最も泣ける作品』との触れ込みもあるが、それに恥じない感動と、心暖まるストーリーである。


『ナミヤ雑貨店の奇蹟』の特徴は、ヒューマンドラマとファンタジーの性質を合わせ持っている点。ファンタジー要素というのが、30年前の過去から手紙が届くのだ。


現在と未来が繋がる、また『ナミヤ雑貨店の奇蹟』のように現在と過去が繋がる。小説の設定としては、ありきたりのものだ。


しかし、この物語の本質はヒューマンドラマである。過去と現在でやり取りされる手紙は、過去軸の人間の”悩み相談”を現在軸の人間が答える形式となっている。


この手紙のやり取りを通して、3人の青年は相手の事を考え、自分自身を見つめ直し成長する過程が、描かれている。


また、物語は5章構成になっていて各章ごとに新しい相談者の話になる。だが完全に独立した話という訳ではなく、端々で繋がっていく。


個人的に第二章の『夜明けにハーモニカを』の話がたまらなく好きだ。
音楽の道に進むか、家業の魚屋を継ぐか。そんな人生の二択に迫られた青年がナミヤ雑貨屋に相談の手紙を出して……という流れなのだが最後は思わず涙があふれるだろう。



最後に

今回の紹介はランキング形式ではあるが、どれも魅力的すぎて順位をつけるのが難しかった……。正直全部同率1位でもいいくらい。




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『ジグβは神ですか』の感想を好き勝手に語る【森博嗣】

異常なんてものは、存在しない。あるとしたらみんながそれぞれ異常を持っている

(引用:ジグβは神ですか P372)

森博嗣のGシリーズ第8弾『ジグβは神ですか』の感想を語っていく。ネタバレありなので未読の方はご注意を。


前回の感想
【『目薬αで殺菌します』感想】

【『Gシリーズ』一覧まとめ】

目次

あらすじ

βと名乗る教祖をあおぐ宗教団体の施設・美之里。調査に訪れた探偵・水野は加部谷恵美たちと偶然の再開を果たす。つかの間、フィルムでラッピングされ棺に入った若い女性の美しい全裸死体が発見された。あちらこちらに見え隠れする真賀田四季の影。紅子が、萌絵が、加部谷たちが近づいた「神」の真実とは。

(引用:ジグβは神ですか 裏表紙)

感想

ついにGシリーズも8作目。まず驚いたのは、時は流れて加部屋たちが社会人に、または院生になっていたこと。そして水野という人物が出てきたかと思ったら、かつての赤柳で更には女性だったと……!



驚きの連続で始まった『ジグβは神ですか』だったが、衝撃は終盤も止まらず。ついに真賀田四季の姿が……!


ジェーン・島本と紅子の対面は、もしかしたら四季なのかもしれないっていうワクワクがあったけどやっぱり偽物だったね。偽物でがっかりしたけど、ちゃんと最後に本物も登場してシリーズも着実に進行しているんだなって感じた。


『天才なら凡人の振りができるが、凡人には天才のふりはできない』と紅子から名言が出ていたが、まさにそのとおりで、何がと説明するのは難しいがジェーンは天才にはなりきれてなかった気がする。強いて言うならパソコン投げ捨てるシーンかな。優雅じゃない。


あとは海月はやっぱりW大にいったんだね。前回の感想でも触れたがどうしても萌絵を追っていったとしか思えない。水野(赤柳)の正体も気になるが、個人的にはそれ以上に海月が何を考えているのか、何者なのかが気になる。Gシリーズ内で明かされる日はくるのだろうか。


──ラッピングされた死体

『フィルムで綺麗にラッピングされた全裸死体が棺の中から見つかる』っていう特殊すぎる状況。普通のミステリなら、この不思議すぎる謎を解き明かすために登場人物たちが奮闘するのだろうが、相変わらずGシリーズではそんな特殊な事件すらオマケのような扱い。


どうしても関心は真賀田四季のほうへ傾いてしまうからね。しょうがないね。


綺麗にラッピングされてた理由も明かされていた。常識を逸してはいるけど、なんとなく理解はできるんだよなぁ…。


紅子は「ラッピングされた死体を神様に見てもらいたかった。生贄に捧げた。」と言っていて、まだここでは理解が追いつかなかったけど、後で海月が詳しく解説してくれててしっくりきた。

自分の最愛の者を殺すことは、古来、神に対して行われている。生け贄という形で世界中で行われているんだ。特に、相手が真賀田四季であれば、どうだろう。彼女自身、自分の娘を殺したと言われている。神に認められたいのならば、確固たる動機になるだろう。自分の信念を示す、自分のコントロールの力を示す、そういう意味で充分な効果を持つ。逆に言えば、これを否定できる材料がない」

(引用:ジグβは神ですか P369)




──『ジグβは神ですか』

タイトルの意味を考えていく。
本文でも説明があったが、ジグ(治具)とは、モノづくりで使われる位置合わせの道具である。

「ものを作るときに使う、位置合わせとかの道具なんだけど、ようするに、汎用的じゃないもののことをいうんだよ」
〈中略〉
「いろいろな場合には使えないということ。ある場合にしか使えない道具だね

(引用:ジグβは神ですか P205)


私は仕事の関係で治具の知識はあったが、普通に生活してたらあまり馴染みが無いものだよね。治具という言葉は知っていたけど、読み進めるまでタイトルの『ジグ』が『治具』だと結びつかなかった。だってタイトルの意味よくわからんし。


また、βについて本文から語られていた部分を抜き出していく。

「この美之里には、代表と呼ばれる人物がいて、その人の名は曲川さんっていうんです。曲がる川と書きます。それで、その人について、私、事前に調べてきたんですけど、自分のことをですね、なんと、βと名乗っているんですよ。
〈中略〉
「ベータですか?アルファ、ベータの?」山吹が目を細めた。
「そうです。聞くところによると、神様の次に偉いという意味があるそうです。」

(引用:ジグβは神ですか P152-153)


本文に出てくるものから考えると、『ジグ(汎用的ではない)β(神の次に偉いもの)は神だろうか?』って感じ。


さらに水野が考察で下記のように述べていた。

あるいは、とてつもなく飛躍した発想として、真賀田四季の関与も考えなかったわけではない。すなわち、彼女が作ったプログラムが、曲川として信者の相手をしていたのではないか。βという命名が、その連想を誘発したからである。

(引用:ジグβは神ですか P388)


βを四季のプログラムと考えると、『βは神ですか』は『β(神の作ったもの)は神(四季)ですか』意訳すると『神は神を作り得るか』とできる。

ちょっと無理やりか。
でもまぁ個人的には納得できる解釈。


──印象に残ったセリフ・名言

「科学者というのは、悲観的な人間です。真賀田四季は科学者ですし、世界一の天才なのですから、世界中の誰よりも悲観しているはずです。楽観しているのは、計算をしない幸せな凡人たちよ」

(引用:ジグβは神ですか P317)

「百パーセントなんてことが、普通にありますか?ピタゴラスの定理じゃないのです。これは。真賀田四季の計算でもありません。そうですね……、無理に確率にするならば、九十九パーセント以上、確かです。あの方は、ご自分を真賀田四季に見せようとしています。でも、明らかに能力不足。天才なら凡人の振りができますが、凡人には天才のふりはできません。真賀田四季に見せようとしていることが、真賀田四季ではない証拠です

(引用:ジグβは神ですか P337-338)

紅子さん…ばっさり言うね。でも確かにジェーンの行動って四季っぽくないのは感じてた。


最後に

P35で山吹が姉について、加部谷に言及しないように言ってたのが、ちょっと気になった。これまでに特に情報はなかったと思うが……。




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『マスカレード・ゲーム』感想:大きな展開を見せたシリーズ第4作【東野圭吾】



「はい。このゲームにルールはないと思っています。勝つためなら何でもやります。もっと確実にゲームに勝つ方法がある、とおっしゃるなら話は別ですけど」

(引用:マスカレード・ゲーム P130)

2022年4月20日に発売した東野圭吾『マスカレードシリーズ』の最新作『マスカレード・ゲーム』の感想を語っていく。ネタバレありなので未読の方はコチラからどうぞ。

【マスカレード・ゲームのあらすじ・紹介】

前作の感想はコチラ。
【マスカレード・ナイトの感想】


目次

あらすじ

解決の糸口すらつかめない3つの殺人事件。
共通点はその殺害方法と、被害者はみな過去に人を死なせた者であることだった。
捜査を進めると、その被害者たちを憎む過去の事件における遺族らが、ホテル・コルテシア東京に宿泊することが判明。
警部となった新田浩介は、複雑な思いを抱えながら再び潜入捜査を開始する──。
累計490万部突破シリーズ、総決算!

(引用:https://www.amazon.co.jp/%E3%83%9E%E3%82%B9%E3%82%AB%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%89%E3%83%BB%E3%82%B2%E3%83%BC%E3%83%A0-%E6%9D%B1%E9%87%8E-%E5%9C%AD%E5%90%BE/dp/4087754618)



感想

マスカレードシリーズが大好きだから贔屓目もあるかもしれないが、今作も面白かった。前作『マスカレード・ナイト』みたいな派手さはなくて、淡々と進む感じが現実的ですき。


読み始めたらあっという間だったなぁ……事件の方は意外性あり。シリーズとしての進展もあり。エンタメだけじゃなくて、罪の話がありこれまでのシリーズにはなかった深みがある。世の中悪い人間ばかりじゃないと思えるいい話。


そして、ラストはまさかの展開。確かに今後もマスカレードシリーズを続けていくためには、新田がコルテシアに転職することが、一番都合がいいのかな。(これ以上、ホテルで凶悪事件が続くのはコ●ン君もビックリの事件遭遇体質になってしまう)


まだシリーズが続くのかは知らないけど、大好きな作品だから、『マスカレード・イブ』みたいに短編でもいいから続いてほしい。むしろ短編は新田と山岸が同じ職場なら書きやすいんじゃないかな。今後も期待。なんとしても新田・山岸のその後は見届けねばならぬ……!



──山岸は出ないと思ったが……。

今作は、時系列的には『マスカレード・ナイト』から数年後。山岸はまだロサンゼルスで、コルテシア東京には帰ってきておらず、新しい登場人物の梓と新田のコンビが初期の山岸・新田コンビを彷彿とさせるものがあって、『マスカレード・ゲーム』ではこの路線で進むのかなぁと思っていたが、無事に(?)山岸も登場して安心した。


梓は事件を解決させること第一主義で『マスカレード・ホテル』の頃の新田に似てて、新田はホテル側にも配慮があって山岸役っぽかったけど、この二人は見ててハラハラする(だいたい梓のせい)。やっぱり新田・山岸コンビの安定感が一番なんだと思い知らされた。


「新田警部、お詳しいんですね。まるでホテルの人みたい」
新田は一旦梓から目をそらした後、改めて彼女の顔を見つめていった。「とんでもございません」
「はあ?」
「今日の夕方、管理官にいったでしょう。とんでもございません、と。そんな敬語はありません。正しくは、とんでもないことでございます、です」

(引用:マスカレード・ゲーム P68)


初代シリーズからお馴染みの『とんでもないことでございます』のくだり。このへんのやりとりがシリーズものを追ってきたファンとしてはたまらない所。


この場面では、まだ山岸が登場してなかったけど、このやりとりを見ていたらついつい姿を思い浮かべてしまったよね。

「そんなことはいわれなくてもわかっています。御心配なく、こんな格好をしていますけど、ふつうの客には決して近づきません。怪しい客がいた場合に、なるべく近くから監視したいだけなんです」
新田は、客ではなくお客様、という言葉が浮かんだが、さすがに口には出さなかった。

(引用:マスカレード・ゲーム P91)

『客ではなくお客様』も定番の流れだよね。このあたりのやりとりで山岸の影がチラつかせてからの本人登場…!最高だった…!


──事件の真相

メタ的な考えだが交換殺人(ローテーション殺人)だと『マスカレード・ホテル』とほぼ一緒だし、それはないだろうなぁとは思ってた。


弁護士の三輪葉月が怪しいと思って、犯人では…?と考えていたが、流石にそんな一筋縄ではいかず犯人はまったく別の人物と予想外の展開…。


復讐を果たすこと、犯人が罰せられることだけが遺族の救いになるわけじゃない。犯人を許すことが遺族の救いにもなる……と。その救いが難しいものなのは百も承知だけどね……。だからこそ点字ブロックの展開はグッときた。

「誰かを憎み続けるって、エネルギーのいることなんです。そのくせ、そこから新しいものは何も生まれないし!自分を幸せにしてくれるわけでもない。それがわかっているのに憎しみ続ける自分のことが、ひどく卑しい人間のように思えて、だんだん嫌いになっていくんです。だけど『ファントムの会』に入って、自分だけじゃない、みんなそうなんだと知り、ほっとしました。憎しみっていうのは心の弱さから生じるものだろうけれど、そこ弱さを恥じる必要はないんだと思えるようになりました」

(引用:マスカレード・ゲーム P357)

罪人をどう罰するかだけでなく、救うことも考えるべきなんだと。罪をつぐなうことと自らを救うことは同じなんだって。

(引用:マスカレード・ゲーム P364)



──マスカレード・ゲーム

今作のタイトルは『マスカレード・ゲーム』だが、これまでのシリーズほどタイトルの意図が明確にはわからない。一応、作中で『ゲーム』の単語が出てきた場所は2箇所(抜けがあったら申し訳ない)。


梓と新田の会話の場面と、三輪と新田の会話の場面。

「はい。このゲームにルールはないと思っています。勝つためなら何でもやります。もっと確実にゲームに勝つ方法がある、とおっしゃるなら話は別ですけど」
「そのために我々が潜入しているんですがね」
「だけど容疑者たちの部屋には入れないでしょ?私にいわせれば潜入捜査官は──」少し間を置いてから梓は続けた。「役立たずのままゲームオーバーを迎える可能性が高いと思っています」

(引用:マスカレード・ゲーム P130)

盗聴と盗撮のルール無視で捜査を続ける梓と、潜入捜査のルールを守りつつ捜査を進める新田。

結局のところ裁判なんて、罪の重さを賭けた検察と弁護側のゲームに過ぎないと思った。

(引用:マスカレード・ゲーム P327-328)

罪を犯した人間の内面に寄り添わない現在の制度に煮えきらない三輪。



なんだかな……。わざわざこれをタイトルにすることもないと思うが……。これまでのタイトルは全部しっくりきてたからなんだか煮えきらない感じ。

──印象に残った場面・名言

「盗聴器のこと、総支配人に報告しなくていいんですか」
山岸尚美は眉をぴくりと動かした。「してもいいんですか?」
「いや、それは……」
新田が口籠ると山岸尚美は唇の両端を上げた。
「小さなトラブルをいちいち上に報告していたらきりがありません警察もそうじゃないんですか」
「まあ、たしかに」
彼女は人差し指を立てた。「ひとつ、貸しです」
新田は肩をすくめた。「覚えておきます」

(引用:マスカレード・ゲーム P230-231)

全然小さなトラブルじゃないんだけど、これまでに二人が築いた信頼関係あってこそ。このやりとりはかっこよかったな。

「あの方こそ大変そうですね」安岡がいった。「山岸さんが1610号室に行っている間、ずっと端末を睨んでおられました」
「優秀な方よ、警察官としてはね。あの人がいれば悪いことにはならないと思う。でももしかしたら」尚美は閉まったドアを見つめて続けた。「ホテルマンとしても優秀かもしれない」

(引用:マスカレード・ゲーム P285)


「正義?そんなもんはどうだっていいんだよっ」

(引用:マスカレード・ゲーム P332)
今作一の名言。
ただ一人の人間を救いたい。普段クールな新田の熱い部分が垣間見えた瞬間。



最後に

物語の端々に新田がホテル側の考えに寄ってるなぁとは思っていたが、そこも新田転職の伏線だったのかな。ある意味で刑事らしからぬ新田が見れた。


自殺をしようとした犯人の沢崎(長谷部)も、点字ブロックの件の入江も、自分の罪としっかり向き合っていて救いがあった一冊。これまでのシリーズとはまた違った読みごたえに大満足。





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